近年IT化が進み、変革が求められる中、野村グループはデジタル人材の育成に力を入れています。その一環として、社内イベント“Digital IQグランプリ”が9月26日、東京・大手町の本社内にて開催されました。
野村グループ会社内IT関連会社や部署に所属する社員が集う中、野村ビジネスサービス事務代行部の佐藤・秋田チームが見事優勝を収めました。当初は専門知識がさほどなかったという2人が、デジタルの猛者たちを退けて頂点に立つまでの軌跡を紹介します。
取り組みプロフィール:
佐藤 陽子 2006年入社/事務代行部所属
秋田 聡子 2006年入社/事務代行部所属
▲前列中央でトロフィーを持つ佐藤 陽子
──今回参加された「Digital IQグランプリ」って、どういった大会なんでしょうか?
佐藤:アマゾンウェブサービス(AWS)が提供する18分の1サイズの自動走行型レーシングカー「AWS. DeepRacer」に仮想サーキットで学習させた人工知能モデルを搭載し、決められた時間内での最速の走行タイムを競う社内イベントです。バーチャルレースで競いながら機械学習について学ぶことができます。
野村グループ全体では1,000人以上がエントリーし、バーチャルレースと対面レースの両方が行われました。対面レースでは、バーチャルレースと同じモデルを使用し、コントローラーで速度を調節しながら実際にミニカーを走らせてそのタイムを競いました。東京のほかロンドンやニューヨーク、ポワイ(インド)、シンガポールの海外拠点に加え、仮想空間でも実施しました。
私たちが出場した東京会場ではグループの社員約90人が参加し、38チームに分かれてタイムを競い合いました。
──なぜこの大会に参加しようと?
秋田:日頃から業務の効率化やデジタル化を推進するために、IoTやAI、ビッグデータなど先進分野の知識を身につけ、DXのアイデアを増やしたいと思っていました。そのためにG検定(ディープラーニングに関するジェネラリスト検定)を取得するなど、ITに関する技術について情報を収集していました。
実際に得た知識を実務で使ってみることは難しいのですが、学んでみて初めて理解できることがあると感じていました。そのような思いを抱いていた時にDeepRacerの大会の話があり、さらなる知識習得のため、バーチャルレースにチャレンジしました。
また、チーム対抗戦だったので、チームメンバーと一緒に学びながら楽しくできるかなというイメージもあり、まずはやってみようという気持ちになりました。
──レースはチームで参加されたと聞きました。
佐藤:そうですね。レースは1人でも参加できますが、5人以内のチームを組んで参加することも可能です。チームを組むと、個々のコードを共有したり、相談したりすることができるので大きなメリットがあります。
バーチャルレースは参加してみたい人を事務代行部内で募り、チームを組んで挑みました。対面レースは、チームの中で対面レースに興味があった同期の秋田さんと出場しました。
──大会が開催されるまでの間は、どんなお気持ちでしたか?
秋田:まず、野村グループ全体で募集していたので、ITエンジニアや優秀な人たちに完膚なきまでにやられてしまうのでは、と思っていました(笑)。別にデジタルに強いわけでもなく、聞きかじりの知識しかない中、自分たちがどれだけのレベルの作品を作り出せるのかという不安が非常に大きかったですね。しかし対面レースが近づくにつれて、当日は猛者たちがどんな走りをみせるのかというワクワク感が湧いてきました。
──なるほど。そんな中、どんな方法で取り組みを?
秋田:最初はバーチャルレースについてまったくわからなかったので、AWSのホームページに記載されている事例やコードの書き方などを参考にしながらモデルを作っていくことにしました。レースに参加した経験のある人の話をインターネットで検索して、スピードを求めすぎない方が良いとか、どの角度で進入すると良いかなどの戦略についても学びました。これらの情報を自分のモデルに反映させる戦略を考え、進めていくことにしました。
佐藤:私も秋田さんと同じように、最初はまったくわからなかったです。オンライン上で中高生に教えるイベントを他の会社で行っていると知り、子どもにエントリーしてもらって一緒に話を聞きました。まずは概要を理解して、それから実際に自分自身で試していきました。
──モデルの製作で、とくに難しかった部分はありますか?
秋田:ぐにゃぐにゃに曲がりくねったコースを自分の手ではなく、コードだけで走らせるのでコース上での走行はコードに任せるしかありません。今コーナーに差し掛かっているからと言って、手動でスピードを緩めることもできないので、見守るだけしかできないんです……。想定通りに進入できるはずがコースアウトしてしまったり、スピードに問題はないのに曲がり切れなかったりすることもありました。
佐藤:コードを書いた後、「ちゃんと書けていますか?」というボタンを押すと、コードにエラーがある場合は「書けていません」と表示されます。エラーが出た場合は何が間違っているのかを確認し、そのたびに見直しの繰り返しが必要で、苦戦することもありました。
秋田:確かに苦戦はしたけど、「ここが違います」というヒントはくれます。ただ具体的な書き換え方法までは教えてくれないため、自分で調べて学ぶ必要があります。その過程で、書き方の勉強になると言えますね。自主的に調べることで、より理解を深めることができます。
──対面レース当日に向けて工夫された部分はありましたか?
秋田:バーチャルレースに参加しながらモデルを改善していきました。自分のモデルがある程度良い記録を出せるようになったら、そのコースの学習を進め、佐藤さんと作ったモデルを共有し、ベストなモデルを決めました。
モデルを作る時間は10時間と決まっていたので、その制約の中で、佐藤さんは先んじて作業を進めていました。私はモデル作成のスタートが遅く、佐藤さんからノウハウを教えてもらいながら、自分がわからないとき、つまずいたときに質問しながら進めていきました。
──2人の力で作っていったのですね。ズバリ、戦略はありましたか?
佐藤:スピードは非常に速いけどコースアウトしてしまうモデルや、1周目は問題なく走れるものの2周目でコースアウトしてしまうモデルなど、いくつか候補がありました。最終的には安定性を重視し、コースアウトしないモデルを選択しました。私はスピードを重視するものが好ましいと思ったのですが、秋田さんの戦略がうまくはまりました。
──レースは、予選会から始まるんですよね?
秋田:そうですね。予選は午前中から1時間ごとに何回か行われていて、私たちは終盤でした。
佐藤:私たちが会場に着いたころには音楽も流れていて、みんなノリノリでこちらまで陽気な気分になりました。その時点での予選トップのタイムが掲示されていて、「私たちにはこんなタイムは出せそうにないよね。でも大会に参加したからには、普段接点のない人たちとも交流ができるし、楽しもう」と秋田さんと話していました。
秋田:たとえ自分たちの作ったモデルが1周を回れなかったとしても、子どもを愛でる気持ちで頑張った成果を見守ろう、応援しよう、という気持ちで参加しました。そしたらなんと予選を2位で通過。決勝に進むことができて奇跡が起きたと思いました。
──決勝戦の走りはどうでした?
秋田:実機を走らせるコントローラーには「スタート」「ストップ」「スピードアップ」「スピードダウン」しかありません。レース前にはいろいろなチームのドライバーの動きを見てリサーチし戦略を練りました。
8チームで臨んだ決勝は、最後まで抜かれることなく1位になることができました。ちなみに2位は当社のHRサービス部の龍さんで、当社がワンツーフィニッシュを決めることができたんです。
佐藤:まっすぐな道はスピードアップして、曲がるところは緩めて、秋田さんがタイミングよく操縦してくれたおかげで1位を獲得できたんだと思います。途中、龍さんのモデルが速くて抜かれるのではとヒヤヒヤしましたが、0.213秒の僅差でなんとか逃げ切ることができました。
──優勝した時の気持ちや周囲の反応を教えてください。
秋田:信じられない、の一言です。会場に着いた時に他チームのタイムが速すぎて、かなわないなと思ったことで、逆に楽しむ方に気持ちが向いて気楽になれたんだと思います。気負わずに参加したらまさかの優勝をすることができました。作るのに苦労した分、まるでわが子のように感じていたので、その子で優勝できて感慨深かったです。
佐藤:優勝が決まった瞬間は、会社で待機していた部長や副部長をはじめ、事務代行部のみんなが喜んでくれました。また、今回のことが全国ネットのテレビのニュース番組で特集されたことも、私にとって大きな出来事でした。それだけのイベントに参加できたんだなと感慨深かったです。
──今回参加してみて、良かったことや学んだことがあればお聞かせください。
佐藤:そもそもプログラミング言語のPythonに触れたこと自体初めてでしたが、基礎を学ぶことができました。機械学習でも、学習していく過程を体験できて、デジタル初心者でもここまでできるんだという自信につながりました。
大会は各グループ会社が参加してグローバルな環境だったので、いろいろな人と話す機会を持てたことも、参加して良かったことの1つです。この大会を開催してくれた会社と、教えてくれたAWSの方、事務局にはすごく感謝しています。貴重な経験を積むことができたと思っています。
秋田:今、野村グループ全体がデジタルの知識を取り入れ、使っていこうという流れにあると思います。機械学習を実践してレースで車を走らせるという共通のテーマのもと、野村グループ内のいろいろな部署の人と交流を持ち、共に体験できたことが非常に良かったと思いました。
当社だけでなく、野村グループ全体で、デジタル推進に興味を持って参加する人たちがたくさんいるということを体感できた貴重な場でした。
▲秋田 聡子(左)と佐藤 陽子
──これから機械学習に取り組む人へメッセージをお願いします。
秋田:デジタルというワードだけで苦手意識を持ってしまう人も多いと思うんですよね。私は、「子ども向けにわかりやすく解説」とか「すぐわかる」とか、かみ砕いて説明してくれている本やサイトを参考にしています。
デジタルの波や流れってすごく速くて、日々新しい技術が生み出されていて、それを知ることで自分の仕事がやりやすくなったり、業務改善をスムーズにできたりすることもあります。
日々アンテナを張りながら、まずは身の回りの自動化やデジタル技術に興味を持って調べてみたり、得た知識を意識して使ってみたりして体験を増やしていくことが大切かなと思います。
佐藤:私が思うよりも時代は一歩先に進んでいると思っています。何もしないと取り残されるのではないかという不安も漠然とあるので、5年後、10年後の近い将来を考えて、知識をいまから入れておきたいと思っています。
知識がないから決断できない、他人に決断を任せるという人にはなりたくない。ちゃんと知った上で決断できる人になりたいです。同じ考えを持ってくれる人が増えると嬉しいです。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
