※ 本記事は、2024年6月に稼働開始した欧州リサイクル拠点(欧州地域での資源循環を促進する生産拠点)の開設に向けた活動記録です
富士フイルムビジネスイノベーション(以下、富士フイルムBI)では、欧州でのリサイクル拠点立ち上げに向けた活動が進められています。欧州リサイクル拠点の概要や、拠点立ち上げの進捗状況などについて、本プロジェクトを推進し、2023年4月から2カ月間にわたり、欧州リサイクル拠点となる富士フイルムのオランダ現地法人FUJIFILM Manufacturing Europe B.V.(以下、EF)に出張した、リサイクル事業推進部の吉田 有佑さんにお話を伺いました。
デバイステクノロジー事業本部(DT事本) リサイクル事業推進部 吉田 有佑さん
2016年に入社して以来、一貫してリサイクル事業に携わる。
原価改善や再資源化費用の低減などに取り組む中、生産企画管理を担当する部署も兼務し、生産や調達の戦略立案も経験。2017~2023年にかけては、複合機、プリンター、プロジェクターおよびシュレッダーなどのビジネス機器を製造・販売する企業が会員となっている業界団体である一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の委員も務め、業界としての資源循環の対応方針を協議・推進。
2022年からは欧州リサイクル拠点の立ち上げプロジェクトに参加。
▲リサイクル事業推進部 吉田 有佑
オランダにトナーカートリッジのリサイクル拠点を立ち上げる
──欧州でのリサイクル拠点はいつ頃から稼働を開始する予定ですか?
EFの敷地内にリサイクル拠点の立ち上げ準備を進めており、24年度からの稼働開始をめざしています。
▲リサイクルラインが入る建屋の外観
──現在は、どこまで準備が進んでいますか?
現在はリサイクルを行うための工程設計や部品集結の準備を進めています。今回は欧州の拠点ということもあり、現地法令対応が必要なことから、主要な生産設備は欧州のメーカーに発注することにしました。富士フイルムBIと取引のある日本のメーカーとは異なるため、設備の詳細設計には多くの時間を要しましたが、発注の目途が立ち、年明けからはリサイクルラインの立上げが本格化します。
──この立ち上げプロジェクトはどのような体制で進めているのですか?
リサイクル事業推進部がプロジェクトの事務局として全体を取りまとめており、EFからはエンジニアリングチームと生産管理のチーム、オール富士フイルムBIからは事業管理部門、開発部門、調達部門、生産技術部門、さらに生産を担う富士フイルムマニュファクチャリングのメンバーに支援してもらう体制を構築しプロジェクトを推進しました。
──リサイクルの対象品は決まっていますか?
まずは、トナーカートリッジのリサイクルから開始しますが、次のステップとして、パーツのリユースや機械本体のリサイクルなどに対応できるよう生産能力の拡大も考えています。
それぞれのライフサイクルを見ると、トナーカートリッジは、数カ月から半年程度で使い切って回収されますが、パーツは1年程度、機械本体は5年程度使用されるため、富士フイルムBIの元に戻ってくるまでのリードタイムが長いです。そのため、対応の優先度としてはトナーカートリッジから着手するという判断に至りました。
欧州でビジネス展開を進める上で不可欠な拠点
──そもそも、なぜ欧州にリサイクル拠点を立ち上げることになったのですか?
一番の理由は、欧州での環境規制が強まる中、環境対応のインフラを整備することが、欧州でのビジネス展開を進める上で不可欠だからです。すでに欧州の一部の国では、入札条件として納品物の内、一定比率をリサイクル品とするよう求められるケースがあり、今後こうした動きが欧州域内で強化・拡大される様相のため、欧州内にリサイクル拠点を構えることになりました。
──2カ月間のオランダ出張では、どのようなタスクに取り組みましたか?
リサイクルラインに必要な設備の発注に向けEFとの仕様認識のすり合わせや、発注予定先との交渉などを行いました。EFはグラフィックコミュニケーション事業の刷版や、ライフサイエンス事業の培地などの生産を担っているものの、トナーカートリッジのリサイクルに関する知見は持っていません。
一方で、トナーカートリッジのリサイクルを行うためには、トナーカートリッジを分解・清掃する設備や、トナーを充填する設備が必要なので、ライン構築には富士フイルムBIが全面的に支援しています。当然、出張前からオンラインで要求仕様のすり合わせを行ったり、EFのエンジニアが富士フイルムマニュファクチャリングの事業所を訪問し、現場で治具を実際に操作してもらいイメージを掴んでもらう機会を設けたりしました。
しかし、EFの環境に合わせた治具設計では細かい部分の意思疎通が難しく、コストの考え方やリードタイムの縮め方など具体策の議論が長引く懸念が出てきたので、現地で膝を突き合わせて話した方が、検討も早く進むと考え、出張しました。
──具体的にはどのような内容を議論したのですか?
そもそも使用する設備や作業工程に関して、設計思想や工場の作業環境における制約を十分に理解してもらえていなかったので、そのあたりの背景情報をあらためて説明し、EFではどのようにカスタマイズするべきかを議論しました。
たとえば、慣れない作業者でも作業ミスが発生しないよう、誤った操作をした場合にはアラートを表示し設備が動作しない仕様にしたり、品種ごとに使い分けが必要な設備やアタッチメントを取り違えないようにEFメンバーにとってわかりやすい刻印を入れたりと、細部まで認識・理解の共通化を図りました。
──やはり、オンライン上でのやり取りだけですべてを伝えるのは難しいということですね。
当初はメールとウェブ会議を併用しながら進めていましたが、日本とオランダは7時間の時差があるため、どうしてもメールでのコミュニケーションが増えてしまいます。そうすると、リアルタイムで状況を把握することが難しくなってしまいます。また、ウェブ会議をしたとしても、双方の認識に微妙なずれが生まれ、お互いに誤解したままというケースもあったので、オンラインだけですべてを完結するのは難しいです。
誰も経験したことのないプロジェクトに携われることは大きなやりがい
──2カ月の出張に不安はなかったですか?
不安はありましたが、誰も経験したことがないプロジェクトにチャレンジできているので、やりがいの方が大きかったです。EFの人たちは日本からメンバーが来ることを歓迎してくれたので、仕事を進め易かったです。
話してみると、EFのメンバーも日本とのコミュニケーションにはやりづらさを感じていたようで、現地に富士フイルムBIのサポーターがいない中で知見のない領域の準備を進めることに苦労していたと言っていました。
▲(左)本プロジェクトに携わるEFエンジニアチームとの一枚。ピース(2本指)ではなく3本指なのは、Reuse-Reduce-Recycleの頭文字を取って3Rプロジェクトと名付けたことに由来 (右)EFメンバーとのティータイムの一枚。推しのサッカークラブの話題などで盛り上がりました
──今回、導入する設備は欧州のメーカーに発注するということですが、日本とまったく同じ設備を導入するという選択肢はありましたか?
当初は富士フイルムBIが使っているものと同じ仕様の設備を日本から送る案を考えていました。しかし、設備の構成部品がさまざまな欧州規制にすベて対応できているかの確認や現地当局への許認可申請時に必要な書類準備に時間を要する懸念があり、EFから欧州のメーカーに発注したいという要望が出ました。
そこで、設備技術は富士フイルムBIがしっかりサポートする一方、欧州規制に対応できるメーカーの探索はEFが主体となる形で相互に補完し合い、現地メーカーから設備を購入する体制を取ることにしました。
──ほかにも、難しかったポイントはありましたか?
EFのエンジニアは、富士フイルムBIが普段扱う治具(※)の使用経験がないため、富士フイルムBIが提供した図面を見るだけでは、その仕様や使い方を十分理解できていませんでした。現地に現物がないので、EF内にあった箱やパイプで使い方をデモしながら、図面に記載しきれない特徴を伝え、認識共有化を図りました。
複数品種のリサイクルを行うため、30点以上の治具仕様を一つひとつ確認したことに関しては、「オランダに来てくれてなかったら、理解に膨大な時間がかかるところだった。ありがとう」と言ってもらいました。日本にいると、こうした細かい確認作業が難しいので、密にコミュニケーションが取れて準備が格段に進められたと感じています。
※ 補助工具とも呼び、品質の安定や生産性の向上を実現するための補助的な装置
──稼働開始までの準備はまだまだ残っているとは思いますが、最後に、このリサイクル拠点立ち上げに対する思いをお聞かせください。
欧州という新たなフィールドでビジネスを展開するための重要なプロジェクトに関われることは、私にとって非常にチャレンジングですので、稼働開始にむけて全力を尽くします。またリサイクル事業は、商品を開発するところから使い終わった商品が再資源化処理されるところまで、すべてに関係しているというおもしろさもあります。
今後富士フイルムBIがさらにビジネスを拡大させる上で、リサイクルはキーワードになりますので、より多くの方と一緒に事業拡大に向けて活動していきたいと考えています!
▲EFの敷地内を自転車で移動する吉田。オランダは自転車大国とも言われ、多くの人が移動手段に自転車を使用する
※ 記載内容は2023年6月時点のものです
<プレスリリース>
欧州地域での資源循環を促進する生産拠点「 Circular Manufacturing Center(サーキュラー・マニュファクチャリング・センター)」を開設します。新拠点では、第一弾として、欧州で販売する複合機の使用済みトナーカートリッジを回収し、新品のトナーカートリッジに再生します。なお、新拠点は2024年6月より稼働します。
