自動車メーカーとタッグを組み、車体制御性能を作り込んでいくことで車の性能や個性を磨き上げていくアプリケーションエンジニア。ビークルモーション事業部の佐藤、田村、市本は、マツダ社のロードスター開発プロジェクトに挑戦しました。明確なキャラクターを持つロードスターの開発にいかに取り組んだのか。プロジェクトを振り返りながら仕事のやりがいを語ります。
ロードスターらしさとは──検証を繰り返しながら受け継がれてきた個性を磨く
自然豊かな北海道・オホーツク地域にあるボッシュ女満別テクニカルセンター。ここでは、お客様である自動車メーカーから預かった試作車を走らせるテストコースを備えており、車体を安定させるブレーキ制御装置ESC(エレクトリックスタビリティコントロール)の開発、実車試験が行われています。冬期には気温がマイナス20度に達することもあり、ここでしかできない雪・氷路面の走行試験にはかかせない開発拠点です。
このテストコースで試作車を走らせながら、ESC制御による車両の挙動をお客様の要望に合わせて適合していく役割を担うのが、アプリケーションエンジニアです。
佐藤:「走る」「曲がる」「止まる」という車の基本性能をお客様が求めるものに仕立てていくことが私たちの仕事。試作車をテストコースで運転しながらデータを集めて検証し、お客様と相談しながら求めている形にしていきます。
佐藤、田村は2021年から、市本は2022年から、マツダ社のスポーツカー「ロードスター」の開発に従事しました。
佐藤:私が担当したのは、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)。車が曲がる際に横滑りして危険な挙動になった時にブレーキをかけて制御する機能です。
市本:私は、TCS(トラクションコントロールシステム)というアクセルを踏みすぎて危険な状態になった時に自動で安全な状態に戻す機能や、停車した状態からスムーズに発進するための機能を担当しました。
田村:私の担当は、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)です。雪・氷道など滑りやすい路面でブレーキを踏んだ際、タイヤがロックされてハンドル操作が効かなくなることを防ぐ機能です。加えて、設定した速度での定速走行や、前方車との車間距離を一定に保つクルーズコントロールをはじめとしたADAS機能(先進運転支援システム)なども担当しました。
安全性の基準を満たしながら、車の個性やDNA作りにも貢献するのがアプリケーションエンジニアの重要な役割。このプロジェクトで初めてスポーツカーの開発に携わった3人は、いかにお客様の考える個性を制御性能に反映させるかが難しくもあり、やりがいを感じるポイントだったと振り返ります。
市本:TCSは、アクセルを踏みすぎてタイヤがスリップした際に車の挙動を安定させなければならないのですが、過度に安定させてしまうと「スポーツカーらしくない」と感じます。安定性も確保しながら“走り感”をどう出していくか。そのバランスに注力しました。
田村:「スポーツカーらしい」といった性格は、曖昧で抽象的なものですし、人によって感覚も違います。それをいかにパラメーターの具体的な数値に落とし込んでいくかが難しいポイント。お客様と会話を重ね、車走行で評価してもらいながら調整を繰り返して磨いていきます。
先進安全機能の追加など世代進化を加えながらも、受け継がれてきたロードスターらしさをどう作り込んでいくか。それを実現できた時の達成感はとても大きかったですね。
佐藤:「ここを変えれば望むものになるんじゃないか」と思ったものが、その通りになってくれるとうれしいですよね。適合したものがビシッと決まって「これだ!」となった瞬間が気持ちいいんです。
グローバルカンパニーならではの、先を見越した開発と技術力こそボッシュの強み
3人が関わったロードスターには、ボッシュの新世代横滑り防止装置ESCが採用されました。新しいESCには、大幅に改良された制御ソフトウェア「ビークル ダイナミクス コントロール2.0」を搭載。これをもとにモータースポーツ用の制御システム「DSC-TRACK」をマツダ社と共同開発しました。
田村:DSC-TRACKはサーキット走行用のモードで、スピンなどのドライバーの意図しない不安定挙動を検知した場合のみ制御が作動します。サーキットでの走行をより安全にしながら、通常のサーキット走行では制御が邪魔をしないという調整が必要で、それをVDC担当が苦労して作り上げました。
佐藤:ロードスターが新世代ESCを搭載する日本で最初のモデルだったため、その機能育成をしながら、検証のために自分の運転スキルを上げて、ダイナミックな運転をしなくてはいけない点に苦労しました。従来との違いを感じるために、求める状況を再現する必要があったのです。
田村:マツダ美祢テストコースのサーキットコースにて、レース同様の状況で制御の検証もしました。助手席に乗ってレースドライバーの運転を体感しながら性能を磨き上げていくのは、初めての経験でした。また、マツダさんが行ったロードスターパーティーレースでの実戦検証にも立ち合い、実地での作り込みで性能を確かなものまで磨き上げています。
▲レースでの実戦検証で性能を磨き上げた
佐藤:サーキットでの検証は、スポーツカーを担当しないとできません。サーキットだと車がどんな挙動になるのか、データで見ることができたのは良い経験でした。
20年以上にわたりスポーツカーの開発に携わっているマツダ社をはじめ、多くの自動車メーカーから信頼を寄せられているボッシュ。最前線でお客様とやりとりする機会の多い3人は、その理由をこう分析します。
市本:ビークル ダイナミクス コントロール2.0のように、先を見越した開発ができているのだと思います。グローバル規模でさまざまな自動車メーカーとやりとりしているので、どんなニーズがあるのかを先読みできている。だからこそ、先進的な機能をお客様が欲しいと思ったタイミングで提供できるのがボッシュの強みだと感じます。
田村:その根底には技術力があります。ドイツ本国で基礎技術を開発して、それを私たちのようなアプリケーションエンジニアが車に合わせ込んでいく。いわゆるタネから最終製品になるまでが自社の中で完結しているので、お客様の要望に対して高い技術で応えられるのだと思います。
また、マツダさんに関しては長年にわたって適合を担当してきた先輩(※)がいて、その方たちが築いてきた信頼関係の上で仕事ができたことも大きいと感じています。
※約20年にわたりマツダ社のプロジェクトに携わってきたボッシュの大浦は、マツダ社のサイトでもインタビューが掲載されています。
https://www.mazda.co.jp/cars/roadster/voice/rs_partner/05/
佐藤:お客様から、「やりたいことがすぐに実現できる」という言葉をいただくことがあります。先を見越した開発と技術力こそ、信頼される土台だと思います。
仕事も環境も“働きやすさ”を重視しながら、やりたいことに挑戦できる
佐藤と田村は、自動車メーカーのグループ会社での開発を経てボッシュにキャリア入社。市本は新卒で入社しています。
佐藤:以前はサスペンションの開発に従事していましたが、制御系の機能に興味を持ちました。ただ、制御系は奥深くて、サプライヤーでしか知り得ない領域があります。そこがおもしろそうだと思っていた時に、出身地の北海道でボッシュの募集を見つけて転職しました。
田村:私は大学で水産学を専攻していました。しかし当時は知りたいという知的好奇心を主眼に進学先を選んだこともあり、就職活動にあたって何を仕事にしたいか考えた時に、もう一つ好きだった車に携わろうと考えました。
当時は、予防安全技術が普及しはじめたころ。交通事故を減らすという目的にやりがいを持って仕事ができるのではないかと感じ、車載機器を開発する会社に就職しました。そして、より直接的に予防安全技術に関わる機会を持ちたいと思い、ボッシュに転職しました。
市本:私は生まれも育ちも広島県で、ずっとマツダ車が身近にある環境でした。そのため、子どものころから車が好きで、将来は開発がしたいと思っていました。
入社のきっかけは、学生時代にボッシュの横滑り防止装置ESCを知り、「これはすごい!」と感じたこと。ボッシュならいろいろなメーカーと仕事ができるし、いつかマツダさんとも仕事ができるかもしれない。そんな想像をしながら入社しました。
入社以来、それぞれ他の自動車メーカーを担当してきましたが、ロードスターの開発に携わることになったきっかけは、「新しいことに挑戦してステップアップしたい時期だった」こと。そのタイミングでやりたいことに挑戦できる環境があることが、ボッシュの魅力だと口を揃えます。
佐藤:新しい機能を開発した時や、新しいプロジェクトが始まる際に、「やりたい」と手を挙げたら「じゃあ頼むね」と背中を押してくれるんです。
田村:従業員の意見を取り入れようという姿勢も感じますし、トップマネジメントからの発信も定期的にあります。従業員が働きやすいように改善しようという動きが常にありますよね。
市本:働き方のフレキシブルさは、入社前の想像と一番違っていた部分です。休みも取りやすいですし、遅く出社したい日や早く退社したい日など時間も自由に自分で決めることができます。仕事面も働く環境も“働きやすさ”に特化している会社だと感じます。
運転技術の向上、ソフトウェアや実車に触れる機会を通して、可能性が広がるキャリアパス
働きやすく、挑戦したいことに手を挙げられる環境でアプリケーションエンジニアとしてキャリアを積んできた3人。改めて感じる仕事の魅力をこう語ります。
市本:私たちが担当しているのは、車が危険な状態になった際に制御する機能。私自身、雪道を走っていて「危ない」と感じた時に、横滑り防止装置ESCに助けられたことがあります。同じように、この仕事が誰かの助けになっている。それが大きなやりがいです。
田村:そうですね。事故を未然に防ぐ、安全性を高めるためにとても重要な機能を仕上げていくことに責任を感じます。あとは、自分が関わった車を街で見かけるとうれしいですね。
佐藤:それはうれしいですよね。日常の中で、どこかで誰かを助けていると思えることが、この仕事のやりがいです。
そんなやりがいを胸にスポーツカーの開発を経験し、それぞれ「次のステップへ進んだ手応えがある」と言います。だからこそ、さらにエンジニアとしてのスキルと経験を磨いていきたいと続けます。
佐藤:今はまた新しいプロジェクトで、ブレーキ、ステアリング、パワートレインなどを統合制御するシステムの開発に携わっています。これからも新しい技術に挑戦し続けて、さらに次のステップへ行きたいですね。
田村:ボッシュはグローバルな会社なので、海外で働くチャンスも出てくるかもしれません。経験を積んで視野を広げながら、「予防安全は田村に聞け」と言われるくらいにスキルを突き詰めていきたいです。
車全体を把握しながらソフトウェアも理解し、運転技術もあるアプリケーションエンジニアは、キャリアパスを描く上でも大きな可能性が広がっています。その上で市本は、さらに幅広く経験を積みたいと話します。
市本:ソフトウェアの開発にも挑戦してみたいと考えています。車で使うソフトウェアだからこそ、車の挙動を理解している私たちが開発に携われば、より効率的で的確な試験が実施できるようになると思います。さらに言えば、ソフトウェアを作り、運転をして検証して、お客様と共に作り上げていくという一連の流れをすべて行うことができます。
他にも、整備のスキルも磨いていきたいです。実車を使った検証のためには計測器の取り付けや車両部品の交換作業も自身で行います。そこをおろそかにすると自分だけでなく周りにも危険が生じるので、メカニックのレベルも引き上げていきたいです。
佐藤:車も触るし、ソフトも扱うし、お客様とのコミュニケーションも多い。全体を広く知ることができる点がいいですよね。アプリケーションエンジニアとして経験を積めば、いろいろな職種で即戦力になる可能性があると思います。
お客様と共に車の個性を作り上げながら、誰かの安全を守る──やりがいある仕事を楽しみながら、大きく広がるキャリアを描きます。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです
