行政や地域関係者との連携でめざす地域共生社会と地域持続性の実現
全国各地で生産年齢人口の減少や高齢化が進む中、農林中央金庫では、地域活性化に向けた取組みを強化してきました。その一環として2021年の4月に新設されたのが、JAバンク統括部の地域活性化・外部連携グループ。地域の課題解決に向けて、JAバンクならではの金融仲介機能を発揮することをめざした取組みを行っています。
稲富:JAバンク統括部のミッションは、全国各地のJAが提供する金融サービスの総称である「JAバンク」の全国本部として、事業方針・戦略の総括を行うことです。
中でも、「地域活性化・外部連携」と名を冠している通り、当グループでは各JAが根差している「地域」にスポットライトを当て、行政や外部企業・組織等の地域関係者とも連携しながら、JAの事業基盤維持・強化に向けた取組みを推進する役割を担っています。
JAバンクでは3年に一度「JAバンク中期戦略」を策定しています。2022年度に始まった現行戦略では、従来から取り組んできた「農業・くらし」領域に加え、新たに「地域」が柱のひとつに掲げられているのが大きな特徴です。
JAの事業基盤を維持・強化するためには、全国の地域を元気にしていくことが欠かせません。地域共生社会の実現をめざし、地域の課題やニーズに目を向けながら持続性確保に向けた施策の実施について、JA自身による創意工夫ある活動を後押しする取組みを進めているところです。
稲富 和樹が入庫したのは2008年。さまざまな業務を経験し、現在は地域活性化・外部連携グループで部長代理を務めています。
稲富:最初の10年ほどは、債券投資部、資金為替部といったいわゆる「市場部門」に在籍し、国内外債券投資や外貨資金調達などを担当。その後、「コーポレート部門」における財務企画管理、IT部門でのIT戦略企画業務を経て、2020年10月に現在も所属するJAバンク統括部にやってきました。
現在はJAによる地域活性化の取組み支援、JAグループと外部資本業務提携先との連携の両方に事務局メンバーとして携わっています。
一方の笹崎 弘志の入庫は2010年。稲富と同様、幅広い領域の仕事を担当してきました。
笹崎:「食農法人営業本部」にて大企業向け融資を担当した後、「リテール本部」にて水産系統の都道府県組織へ長期外勤しハンズオンでの経営改善支援に従事。その後「食農法人営業本部」に戻り、企業・大学・官庁と連携し林業・木材産業の活性化に資する新規プロジェクトの立上げに従事しました。
2022年4月にJAバンク統括部に着任し、現在は「ふるさと共創事業」の事務局業務全般を担うかたわら、金庫職員のパーパス発見を支援する「共創サポーター」の事務局メンバーも務めています。
地域活性化の新たな試み「ふるさと共創事業」。地域に根ざし住民に寄り添った活動を
ふるさと共創事業とは、JAバンク統括部が地域活性化をめざして推進する施策のひとつ。稲富と笹崎はその事務局メンバーとして活動しています。
笹崎:ふるさと共創事業は、JAの根差している「地域」の活性化に向け、JAバンクならではの金融仲介機能を発揮し地域の課題解決を通じて、JAグループのファンを増やしていこうという取り組みです。
その中で農林中央金庫は、都道府県組織と連携し、JAによる地域課題の特定や行政・地域関係者への働きかけ、地域活性化計画の策定および実践にかかる各種支援を行っています。
2022年度に始まったふるさと共創事業。これまでにさまざまな取組みが全国各地で進められてきました。
笹崎:たとえば、農業の担い手不足が課題となる地域において、JAが耕作放棄地にレンタルハウスを建設し、新規就農者のスムーズな営農開始に繋げたり、地域の小学校への食育活動や収穫体験といった「地域から応援される産地づくり」に向けた取組みを支援しています。
また、高齢化が進む地域では、JAの金融店舗跡地を活用した高齢者を対象とする健康教室の開催や、農業・食育体験を通じた地域の子どもたちとの触れ合い機会創出により、高齢者の肉体面および精神面の生きがいづくりを支援してきました。
稲富:地域にどんな課題があり、何が求められているかは、地域に根ざして事業活動をしているJAがもっとも良く理解しているはずです。しかし、たとえ取組みの必要性を認識していても、リソースが不足するなどの理由で一歩を踏み出せずにいるケースが少なくありません。
そこで、私たち農林中央金庫や都道府県組織含めた「JAバンク」が一丸となって、知見・ノウハウの提供、課題解決にかかるコンサルティング、金融機関目線での計画の実行可能性の検証等、JAとの協働を進めることで、JAが根差す地域の持続可能性の向上、ひいてはJAの事業基盤維持・強化を後押しすることが、ふるさと共創事業のめざすところです。
こうした取組みは、農林中央金庫にとって従来の金融の枠を超えた新しい試み。一筋縄ではいかない部分も少なくない反面、確かな手ごたえも感じていると言います。
笹崎:これまでリアルな現場と向き合う中で、地域が受益となるストーリーや有効なソリューションの見極め、活動の持続可能性確保等、農林中央金庫として活きたノウハウを蓄積してきました。
実際に、活動が行われている現場を訪問し、行政や地域住民の方からJAの担当者が感謝されている姿を拝見すると、非常に意義のある仕事をしている実感を持ちました。
稲富:JAバンクでは2022年度から利用者満足度調査を実施していますが、たとえばJA祭りの開催等、地域領域に関連する取組みについて、住民の皆様からJAに大きな期待を寄せていただいていることがわかりました。ふるさと共創事業は足元本格展開をスタートしたばかりですが、地域からの期待により応えられるような施策に育てていきたいと考えています。
笹崎:地域活性化の取組みは一朝一夕ではなしえないからこそ、地域の声に寄り添った活動を継続していくことが重要であり、それが地域の持続性向上やJAの基盤維持・強化につながっていくと考えています。
現場体験を通じて原点回帰を。「共創サポーター」にかける想い
農林中央金庫では、JAが地域活性化活動に取組むエリアに職員を派遣しプロジェクトを支援しながら現場を体感してもらう共創サポーターの取組みを行っています。ふるさと共創事業と並行して、笹崎はこの共創サポーターの事務局の運営も担当してきました。
笹崎:農林中央金庫では、人材育成の一環で、新入職員を対象に、JAや農家組合員の現場を学ぶ研修制度があります。「共創サポーター」は、対象範囲を希望する全職員に拡げ、JAによる地域活性化の活動をサポートすることを通じて、職員が自身の働く意義を再認識する機会を提供しています。
共創サポーター制度の取組みの想いについて、納富はこう話します。
稲富:農林中央金庫では約4000人の職員が働いていますが、「農林水産業と食と地域のくらしを支えるリーディングバンク」というビジョンを掲げながらも、JAの取組みや組合員である生産者の方が実際にどんな想いを持って事業に携わっているのかを現場で知る機会はなかなかありません。
そんな中、この共創サポーターの取組みには、何を軸にして仕事と向き合うべきかを職員たちに再確認してもらう狙いがあると思っています。一緒になって汗を流す体験を通して、JAが地域に根ざした活動をしていることを肌で感じると同時に、その地域への愛着をはぐくみ、「第二の心のふるさと」をつくってほしい。そんな想いで共創サポーター制度に取り組んでいます。
地域活性化の実現に向け、その最前線で情熱を傾けてきた稲富と笹崎。その背景にはこんな想いもありました。
稲富:この5年ほどのあいだ、農林中央金庫のパーパスやめざすべき姿に関する議論が経営層を中心に活発に行われてきました。そんな流れの中、私たち職員もまた、組織の存在意義など日々の活動の基盤となる理念のようなものについて振り返るべき時期を迎えていると考えています。
共創サポーター制度は、そうやって職員がいわば原点へと回帰するきっかけになる取り組みとして位置づけられていると個人的には捉えています。
笹崎:私も稲富さんと同意見です。刻一刻と変化する時代だからこそ、現場をしかと自分の目で確かめ、そこで何が起きているのか、何が求められているのかを体感することが、非常に重要な意味を持つと考えています。
キャリアの多様性こそが農林中央金庫の魅力。これからも自分ならではの介在価値を追求
キャリアの中で共に複数の部署を渡り歩いてきた稲富と笹崎。多彩な経験を積める環境こそが農林中央金庫で働く醍醐味だと口を揃えます。
笹崎:農林中央金庫法の第一章 第一条には、「農林中央金庫は、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とする」とあります。私は、農林中央金庫が掲げる公益的かつスケールの大きな理念に共感し入庫しました。
入庫以来、融資業務をはじめ、関係先の経営改善支援や産官学金連携プロジェクト等、本部を跨ぎ現場~企画まで幅広い経験をしてきました。また、そのいずれもが、農林水産業や地域経済の活性化に資することを肌で感じています。
稲富:私もグローバルな投資の世界からローカルな現場まで、幅広い業務を担当してきました。ひとつの組織の中で実に多様な仕事に携われたことでさまざまなノウハウが身につき、また成長もできたと感じています。
笹崎さんが言う通り、これだけいろいろな経験ができたのは、幅広い事業展開をしている農林中央金庫だからこそ。金融機関でユニークなキャリアを築きたいと考えている方にはうってつけの環境だと思います。
今後も引き続き、地域活性化に向けた取組みを続けていく意志を固めているふたり。それぞれのキャリアをこう展望します。
笹崎:変化の速い時代だからこそ、地域やグローバル等複数の視点・視野で物事を捉えることで、新たなニーズ・課題が見えてくると思います。これまでの経験を活かし、内外のさまざまなステークホルダーと目的を共有化することで、農林中央金庫だからこそできる新たな価値創造に取り組んでいきたいと考えています。
稲富:農林中央金庫の人事制度は、自律的な専門性醸成による「プロフェッショナル集団」をめざし、変化を進めてきているものと認識しています。私としては「専門性」という武器は持ちつつも、部門・部署の壁に捉われず、さまざまなことに越境的に挑戦を重ねながら、系統組織がめざすありたい姿の実現に貢献していければと思います。
※ 記載内容は2023年7月時点のものです

