農業のルーツと経営知識を強みに農林中央金庫へ。新人時代に学んだ営業の技術が糧に
祖父が地元長野でりんご農家を営んでいた吉江にとって、農業は幼いころから身近な存在でした。
「大学に進学するまで、果物畑でよく手伝いをしていました。また、祖父はJA職員でもあったことから、JAもまた馴染み深い存在でした」
都内の大学に進み、商学部で組織経営を学んだ吉江。幼少期の経験と大学で学んだ理論的な知識を活かせる場として選んだのが、農林中央金庫でした。
「地元の農家さんと接する機会があり、優れた技術があり高い商品力がある一方、必ずしも経営を理解している方ばかりではないと感じていました。農業にルーツを持つ自分だからこそ力になれることがあると思ったことが、金融機関の中でも農林中央金庫を選んだ理由です」
総合職として入庫した吉江が配属されたのは、本店営業第四部。そこで法人営業を担当しました。
「小売および外食産業のお客様向けの融資が主な仕事です。スーパーの新規出店時などに、融資判断を行うための基礎情報の収集や、融資条件を設定する業務を担当しました。
JAとスーパーなどの小売店を橋渡しするビジネスマッチング業務も経験しています。取引先のスーパーの財務担当やバイヤーと一緒に大規模な商談会に参加したこともありました」
当時、吉江がもっとも苦戦したと振り返るのが顧客とのコミュニケーション。先輩のサポートを受けながら、営業の技術を身につけていきました。
「知識量はもちろん、トークスキルにも先輩とは大きな差があります。初めてベテランの先輩の営業に同行した際、思うように話すことができず愕然としました。
幸いなことに、営業第四部には毎年のように新人が配属されています。年齢の近い先輩が多く、わからないことを気軽に尋ねられる環境に支えられながら、成長することができました」
約3年にわたって法人営業を経験した吉江。いまに生きる貴重な学びを得ました。
「営業において鍵を握るのはお客様との信頼関係です。小手先の話術ではなく、実際に会って話すことの大切さを学べたことは非常に有意義でした。また当庫では、入庫2年目から大きな取引先を任されることが珍しくありません。早い段階で経営層と直接対話できたことは、現在のJAとの折衝においても役立っています」
デジタル化と顧客ニーズの狭間で。支店で直面した経営課題と挑戦を通じて手にした成長
支店への異動を希望していた吉江。2018年、念願かなって富山支店総括班に着任し、JAバンクの推進業務を担当しました。
「県内のJAのサポート役として、業績向上や組織強化に向けて、経営指導や中期戦略の立案などに携わりました。本店が策定したJAバンク中期計画をベースに、各部門の具体的な施策へと落とし込み、JAに提案・説明することが主な業務です。過去の経緯と現状について先輩から情報共有してもらいながら、前回の中期戦略の成果と課題を精査し、その後3年間の重点施策を策定していきました。
現場の状況を把握していく中で、初めて気づいたことが多くありました。たとえば、JAのお客様は年齢層が幅広いことが特徴です。そのため、経営基盤の安定化策を検討すると同時に、実際の人口動態の特性を踏まえた効果的なアプローチ方法を考えなくてはなりません。
本店時代にも経営層との関わりはありましたが、営業担当としての業務は融資やマッチングなどに限られます。さまざまな経営課題に対して最適な施策を選定・実行することは非常に難しく、またやりがいのある仕事でした」
その後、2020年に吉江は同じ富山支店のシステム企画班へ。営業店システムの導入やJA店舗の事務効率化業務に従事しました。
「システム導入といっても、私が主に担当したのは各営業拠点に配備する現金自動預払機や両替機などのハードウェアです。2024年から開始している大規模システム移行を見据えて、新システムの機能説明や拠点ごとに最適な設備構成について協議を重ねました。
これに先立って店舗整理も担当しましたが、これが予想以上に難しい仕事でした。JAの経営効率化のため店舗数の適正化が必要でしたが、お客様の利便性との両立が求められたからです。
結果的に、小規模店舗への大型機器の導入を避け、テクノロジーを活用した効率化を提案し、数値目標を決めて預金量の少ない店舗を大幅に整理することになりました。JAのお客様の中には普段デジタル機器に触れる機会が少ない高齢者が少なくありません。
店舗を整理する地域ではスマートフォンやネットバンキングの講習会を開催して対策を講じるなど、組合員に対して丁寧に説明する各JAのフォローアップに力を注ぎました」
難しい任務をやり遂げた吉江。一連の業務を通じて、大きな成長を得ました。
「一般的な銀行業務とは異なる業務でもあるシステム導入支援業務においては、予算と成果が明確です。論理的整合性を欠けば説得力を失うため、数字に基づいた資料を用いて地域への利益をきちんと説明する必要がありました。
交渉プロセスを通じて、論理的思考力、戦略的交渉スキル、そしてプレゼンテーション能力が大いに向上したと実感しています」
また、系統組織の一員として、以前は感じられなかったこんな新たなやりがいも。
「システム導入や店舗整理に関して、JAの皆さんは非常に協力的でした。管理職も含めたメンバーと一致団結してプロジェクトを進められたことで、大きなやりがいを感じながら取り組むことができました。
本店の細やかな対応にも助けられました。当時は、ちょうど社内チャットが導入された時期。本店とのコミュニケーションが格段に効率化されたことも、業務を円滑に遂行できた要因だと思います」
総合職から地域総合職へ。転換制度を利用してワークライフバランスを実現
2023年から系統サポート班の配属となった吉江。現在は、JA各店舗の事務処理体制の整備や事務指導計画の策定実践などを担当しています。
「新システムの導入にともなう事務手続きの整備や、マイナンバーカードと口座の紐づけといった新制度への対応など、JAの組織体制の強化と事務効率化をサポートしています。
そのほか、店舗を巡回して事務処理が適正に行われているかを検証したり、コンプライアンス違反事案発生時の対応や再発防止策の策定を行ったりもしています」
事務手続きは貯金業務だけで1,000ページに及ぶなど、検証業務は複雑を極めます。系統組織の一員としての使命感が、吉江を突き動かしてきました。
「JAが本来の役割を果たすためには、事務処理に費やす時間をできる限り削減しなくてはなりません。JAが業務を円滑に遂行する上で欠かせない仕事として、使命感を持って取り組んでいます。
ATMの点検、規定のフローに沿った重要書類の廃棄、権限者による押印確認など、項目ごとに状況が改善され、その成果が数字として明確に表れることもモチベーションになっています」
2024年4月には総合職から地域総合職への転換を果たした吉江。思い描いた通りのキャリアを築けていると言います。
「私の妻も農林中央金庫の支店の職員で、子どももいます。転勤のない支店総合職として働けることが、ありがたいですね。総合職で入庫しながら、ライフステージの移り変わりと共に生活環境や仕事観が変化し、同じ場所で働き続けたいと考える方は多いはずです。職員の寄り添ったいい制度だと思います」
現場視点でのベストプラクティスを。農林中金だから描ける農業金融の未来に向けて
入庫してからちょうど10年の節目を迎える吉江。農林中央金庫で働く魅力についてあらためて次のように話します。
「メガバンクと比べて従業員数が少ないぶん、当庫では一人ひとりに与えられる裁量が大きいことが特徴です。私が入庫2年目で大きな取引先を担当しておりますし、現在2年目の若手が中期戦略に関わっています。新人のころにJAの投資案件に携わった同僚もいました。早い段階で大きな仕事を任されることは、魅力的だと思います。
また、職場の雰囲気にも満足しています。富山支店はJA信農連と統合してできた経緯があり、JA信農連出身者と農林中央金庫のプロパー、そして転職してきたメンバーが混在する多様性に富んだ組織ですが、職場環境は非常に穏やかです。協力的なメンバーが多く、とても働きやすいと感じます」
各店舗の事務処理体制を改善し、コンプライアンス対応を強化することが当面の目標だと話す吉江。すでに、その先のビジョンを描いています。
「事務指導のために店舗を訪問すると、窓口で出金手続きをする農家の方々をときどきお見かけすることがあります。そのたびに、現代的かつ現実的なアプローチを取りながら、どこまでお客様に寄り添えるか、非常に難しい課題だと感じています。
一方で、青森県産のりんごが東南アジアでは高額で取引されるなど、日本の農業製品は依然として高い競争力を維持しています。本店の方針を尊重しつつ、現場にいる強みを活かして、農家の方々とJAの双方の利益になるようバランスの取れた解決策を見出すことが私の役割。今後もこの場所で、すべての関係者にとっての最大幸福の実現をめざして力を尽くすつもりです」
デジタル化と顧客ニーズの調和を図りながら、農業と金融の架け橋として吉江はこれからも歩み続けます。農林中央金庫にしかできない地域に根ざした取り組みが、持続可能な農業の未来につながると信じて。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです

