「いのち」に直結する課題解決を金融の力で促し、持続可能な未来の実現に挑む
現在、安藤が所属しているのはコーポレートデザイン部サステナブル経営班。農林中央金庫および会員である農林水産業の協同組合のサステナビリティにかかる戦略を総括する部署です。
「私たちは『持てるすべてを「いのち」に向けて。~ステークホルダーのみなさまとともに、農林水産業をはぐくみ、豊かな食とくらしの未来をつくり、持続可能な地球環境に貢献していきます~』というパーパスを掲げ、農林水産業、それを糧に生きる『人のいのち』、そして人がつくりだす社会全体を『ほしのいのち』と呼び、これらの連鎖を意識しながらサステナビリティに取り組んでいます。
また、農林中金では、中期ビジョンとして2030年のありたい姿を5つ定める中で、『協同組織と金融の力で、持続可能な環境・社会・経済の実現に向けて、ポジティブインパクトを創出し続けていたい』というサステナビリティにかかる姿を一番目に置いています。これは、私たちが基盤とする農林水産業が気候変動や自然資本・生物多様性といったサステナビリティの課題と密接に関わっているからです。
サステナビリティをめぐる動向は日々急激に変化、進化しており、欧米では国家政策や民間企業の取り組みが先行し、アジアでもシンガポールや中国が政策や再生可能エネルギーを積極的に推進しています。グローバルに活動する上で遅れを取らないためにも、こうした世界の動向をしっかりと把握しなくてはなりません。
そのため、チーム内の雰囲気は非常にチャレンジングです。全員が高い意識を持ってサステナビリティ戦略を推進しています」
人、生物、地球の“いのち”は一体不可分です。その認識のもと、サステナブル経営班では、あらゆる環境問題や社会課題の解決に取り組んでいます。
「気候変動、自然資本・生物多様性、サーキュラーエコノミー、不平等や格差など、さまざまな課題に対して組織的な目標や経営計画を検討、策定し、それを組織全体に浸透させ、実践することが私たちの役割です。
『2050年ネットゼロ』を掲げる中、農林中金自身のGHG(温室効果ガス)排出削減はもちろん、投融資先のお客様のGHG排出削減を促進し、社会全体のネットゼロを達成することが期待されています。
この目標達成に向けて、私たちは推進に力を入れており、お客様のサステナビリティに向けた取り組みを支援するインセンティブ等を交えた金融商品、いわゆるサステナブルファイナンスに注力してきました。2030年までに10兆円の新規実行を目標とする中で、足もとでは6兆円以上の実績となっています。
また、日常的な対話を通じたエンゲージメント活動も重視し、お客様のサステナビリティ課題への取り組みを促進するほか、農林中金の目標や取り組みに対しての意見交換を精力的に行っています。意見交換に留まらず、先述したファイナンスやグループ会社、提携企業と連携したソリューションの提供のようなビジネスへの展開も志向しています。
さらに、農林水産業を基盤とする金融機関として、自然に対するアプローチには力を入れています。プライム上場企業では実質義務化されている気候変動にかかる企業の情報開示フレームワークであるTCFD(※1)に続き、自然関連のフレームワークであるTNFD(※2)が昨年リリースされました。農林中央金庫は世界で40名のタスクフォースメンバーとして、フレームワークの構築に貢献してきました。
一方で、鹿児島の漁業協同組合と連携し、ブルーカーボン(※3)を推進する海域について、漁業者主体の申請としては初となる環境省の『自然共生サイト(※4)』の認定取得を支援したりもしています。このように、国際的なルールメイキングから地域の独自性や特色を生かしたプロジェクト構築まで幅広い取組みを展開しています。
こうした取組みは、2024年3月にリリースしたClimate&Nature Reportにまとまっていますので、ぜひ皆さんにご高覧いただきたいです(https://www.nochubank.or.jp/sustainability/disclosure/report/)。チーム全員の汗と涙の結晶です!
このように、当班の業務は組織の戦略や企画にとどまらず、新規事業開発なども含めて、ウィングの幅を広げながら、持続可能な社会の実現に貢献しています」
※1 企業の気候関連の財務情報開示の枠組みで、現在プライム上場企業には実質義務化されている。足元ではISSB(国際サステナビリティ)基準S1に統合
※2 企業の自然関連の財務情報開示の枠組みで、2023年9月に正式版がリリース。ビジネスにおける自然への依存や与える影響(インパクト)を分析し、リスクと機会の把握とその開示を促すことで、ビジネスや資金の流れを自然の維持や回復に向けることを目的としている
※3 沿岸・海洋生態系に取り込まれ、そのバイオマスやその下の土壌に蓄積される炭素のことを、ブルーカーボンと呼びます。2009年に公表された国連環境計画(UNEP)の報告書「Blue Carbon」において定義され、吸収源対策の新しい選択肢として世界的に注目が集まるようになりました
※4 「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことで、2030年までに陸域と海域をそれぞれ30%以上保全することをめざす「30by30」達成に向けた日本の制度として、昨年から運用がはじまった
地域への愛着が導いたキャリア。多彩な経験が育む専門性と柔軟性
学生時代、経済学部で学んだ安藤。入庫を決めたのは職員の人柄に惹かれたからでしたが、もうひとつ理由がありました。
「選考の過程で出会った人たちの誰もがチームワークを大切にし、穏やかな雰囲気を持っているように感じました。私は何をするかも大事ですが、誰と働くかもまた大事な要素だと考えていたため、農林中央金庫は非常に魅力的な職場に映りましたでした。
また、私は観光業を基幹産業とする町の出身で、地元の旅館でアルバイトを経験する中で、地域の特色や独自性を活かしたビジネス、活性化に少なからず興味を持っていました。そこから発展して、国内のさまざまな地域の基盤をなす農林水産業の振興に関心を抱いていたことも、農林中金を選んだ理由のひとつです。食べることも大好きですしね」
入庫後、安藤が最初に配属されたのは札幌支店。業務事務班で金融事務を経験した後、営業班で森林組合や水産加工会社への融資業務を担当しました。
「森林組合は取引先であると同時に、農林中央金庫の出資者(会員)でもあるため、通常の銀行としての向き合い方だけではなく、その基盤強化に向けた機能発揮が求められます。たとえば、木材の輸送効率化を進めて森林組合や組合員の収益向上を図ったり、不祥事防止のためのコンプライアンス研修を実施したりと、幅広い業務に携わりました」
3年目の終わりに、安藤は仙台支店へ。宮城県におけるJFマリンバンクの指導、組織再編や貸出強化、経済事業における新規事業開発支援などに従事しました。
「農林中金は、JA・信農連と連携してJAバンクを、JF・信漁連と連携してJFマリンバンクを全国に展開しています。私は宮城県のJFマリンバンクの運営や企画、指導業務などを担当しました。
また、宮城県漁協の経済事業にも関わり、県産品の高付加価値化支援にも携わっています。たとえば、全国トップシェアを誇る養殖銀鮭を使った『みやぎサーモン』をブランド化してアメリカに輸出したり、森林組合や農協との連携による新商品『みやぎサーモンSMOKE』を企画したりもしました。
仙台支店で取り組んだもっとも大きな業務は、当時、宮城県漁業協同組合の組織再編です。宮城県における『浜の金融』を担うJFマリンバンクを安定的なものとするために、東日本地域の12信漁連が合併して発足した東日本信用漁業協同組合連合会に、宮城県漁協の信用事業(銀行業務)を譲渡するためのスキーム構築に着手しました。
この組織再編の背景として、水揚げの減少や担い手不足といった水産業の構造的かつ漁協のコアとなる課題に対して、漁協として経営資源を集中し、対応していくことが求めれていたことが挙げられます。最終的には後任の手によって、2024年に事業譲渡が完了し、漁協と信漁連が連携し宮城の漁業をより効果的に支援するための体制が確立されました」
仙台支店の業務と並行して、2021年からは現在も所属する本店のコーポレートデザイン部(当時は総合企画部)を兼務した安藤。全社のDX推進企画に携わりました。
「デジタル技術を活用して会議運営や資料作成の効率化を図る企画チームに所属しました。支店勤務が長かった私にとって、組織全体の動きや意思決定プロセスは未知の領域。本店の企画チームと協業する中で、組織的な意思決定の仕組みや、部署間の異なる立場や考え方を調整して組織の方向性を定めていく過程について学べたことは、貴重な経験になりました」
支店勤務で培った現場経験を糧に、全社戦略構築の最前線へ
2022年から総合企画部(現コーポレートデザイン部)の配属となった安藤。2023年度の1年間は、食農法人営業本部の営業企画部を兼務し、カーボンクレジット等のサステナブルビジネスを企画推進する体制構築に取り組みました。
「農林中金では、2023年にお客様のサステナビリティを支援するためのファイナンスやソリューションの提供を専門とするサステナブルビジネスグループが営業企画部内に新設され、私は上司とふたりでこの立ち上げに参画し、体制構築に携わりました。
注力領域の一つがカーボンクレジットです。これは省エネ設備の導入や森林管理などで生じたGHGの削減効果をクレジットとして経済価値化し、取引できる仕組みです。農林水産業で脱炭素を図りつつ、それが付加価値となりうるクレジットの枠組みは、農林水産業と投融資先への支援を両立するソリューションにつながりうることから、農林中金におけるビジネスのコンセプト整理やモデルケースとなる実証プロジェクトの構築等を担当しました」
また、自然関連の課題解決に向けたソリューション開発と展開に向けて、総合建設コンサルタントとの業務提携の立ち上げをリードするなど、農林中央金庫の特色を活かした新たな領域を探求してきた安藤。支店勤務で培った現場経験が現在の業務に活かされていると言います。
「組織内外の立場の異なる関係者間で、いかに折り合いをつけて進めていくかが、あらゆる仕事に共通するコアと思っています。宮城県漁協の組織再編や、DX関連業務を通じて、内外の立場の違いをどう乗り越え、あるべき方向に物事を進めていくかという課題に取り組んできた経験が、さまざまな人々と関わり、理解を得ながら業務を進める上での基盤になっていると感じます」
コーポレートデザイン部は、経営戦略や方針の策定を担う、組織の司令塔のような存在。大きなやりがいを感じていると安藤は話します。
「コーポレートデザイン部、とくに当班は変化しづけるサステナビリティにかかる戦略を担当していることもあり、日々新しい課題や機会に直面します。配属されて3年目になりますが、常に内外の人と関わり、新しい知識を吸収し、それを戦略や事業開発につなげていくことが求められます。非常に刺激的な環境です」
サステナビリティをさらなるビジネスの基軸に。農林中金で切り拓く金融の未来
キャリア9年目を迎える安藤。農林水産業を基盤とする農林中央金庫だから描けるキャリビジョンがあります。
「銀行員としてのファイナンスといった知見と、サステナビリティ、DXといった専門性を両立した人材をめざしていきたいです。また、私はこれまで農林中央金庫の中でキャリアを積んできました。機会があれば外部機関への出向等も経験し、農林中金や協同組合組織を客観的な立場から見つめ直したいとも考えています。
現在のチームに来る前は、サステナビリティをボランティアやCSRのようなものだと思っていましたが、現在ではビジネスとしての競争力や組織のレジリエンスに直結するものだと理解しています。気候変動、自然資本・生物多様性、サーキュラーエコノミー、さらには人的資本などの課題への対応が、ビジネスの基軸であることを強く認識しながら、これからもサステナビリティの実現に向けて取り組んでいくつもりです。
農林中央金庫は農林水産業を基盤とするグローバルな金融機関であり、サステナビリティに関連するビジネスや課題と非常に親和性が高い組織です。コーポレートファイナンスや市場運用におけるサステナブルファイナンスの活性化、JAバンクやJFマリンバンクとしての地域でのサステナビリティ推進など、農林中央金庫ならではのアプローチがまだまだできると考えています。
農林中央金庫やJAバンク、JFマリンバンクのさらなる発展のために、あらゆるビジネス部門においてサステナビリティへの取り組みや体制を進化させることに貢献していきたいです」
※ 記載内容は2024年7月時点のものです

