それぞれの「覚悟」と「決意」。神山まるごと高専を選んだ理由とは
神山まるごと高専の1期生として入学した名和 真結美氏と、神山まるごと高専プロジェクトを支えるCrewとして参画する水野。ふたりは、以前より教育に対する強い関心があったと言います。
名和:中学生から国際バカロレア教育(※)を受けて育ったのですが、その教育方法がとても好きで、自然と関心を持つようになりました。また、教育は社会ともっとつながるべきではと感じていました。そんな“社会とつながる教育”を実現したいと考えはじめていた時、神山まるごと高専のことを知って。「この場所で、私の未来を作る」。そんな覚悟で受験しました。
水野:学生時代は、“日本地域での異文化理解教育”を研究しており、教育にはもともと強い関心がありました。そのため、神山まるごと高専のことは早い段階から知っていて、どんな学校になるのか、どんな学生が育つのだろうかと気になっていました。
しばらくして、富士通がスカラパートナーシップ(SP)企業となり、Crewを募集すると聞いたときは、びっくりしました。まさか自分が関わることはないだろうなと思っていたのですが、「これはやるしかない」とCrewに応募しました。
一方、神山まるごと高専との出会いは偶然だと言う1期生の付 媛媛氏とスタッフの廣瀬 智子氏、そしてCrewの鐘ヶ江。ただ、その偶然は自身と向き合う転機になったと言います。
付:進路を決める時期になっても、やりたいことも将来の夢もなかなか見つけられなくて。そんな私に神山まるごと高専を母が紹介してくれたんですね。もしかしたら、そこでやりたいことが見つかるかもと思い、受験しました。
廣瀬:これまで英語教師として長年勤務し、いろんな経験をしてきましたが、人生の節目を前にして、あることを考えるようになったんですね。仕事や肩書を外した時に、いったい自分は何者なのかと。自分自身と向き合い、もう一度人生を見直してみようと思いました。
そんな時に、同僚の紹介でこの高専を知ったのですが、学校のカリキュラムだけではなくスタッフの働き方もすごくユニークで、たとえばフレックス勤務が採用されているんです。また一学年で約40名と、学生一人ひとりと接する時間が十分にある。そういう環境であれば、自身のやりたいことを見つけられるかもしれないと思い、こちらに来ることにしました。
鐘ヶ江:私は、社内インターンシップ制度(Jobチャレ‼)を使って、全社変革プロジェクト「フジトラ」を推進するCDXO Divisionに異動してきたのですが、異動後の上司が神山まるごと高専プロジェクトをリードする濱上だったんですね。その濱上から「神山まるごと高専プロジェクトを専任でやってみないか」と声をかけてもらって。
もともと子どもに何かを教えるのが好きで、いつか子どもたちと関わる仕事がしたいと考えていたんです。でも、これまではそんな機会もなくて。偶然巡り合えたこのチャンスを逃したくないと思い、参加を決めました。
※ 国際バカロレア…世界の複雑さに対処できる生徒を育成し、生徒に対し未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身につけさせることを目的とする国際的な教育プログラム
挑戦の足跡が学校を形づくる。これまでの学校にはない魅力とは
それぞれの想いから、この神山まるごと高専に集った5人。最初の一年が半分以上経過し、同校がどういう場所であるかがわかってきたと振り返ります。
その上で、水野と付氏は、学生、授業、環境、それぞれに神山まるごと高専ならではの特徴があると語ります。
水野:授業風景も校舎も何もかも新鮮で見たことのない世界が広がっていました。たとえば、講義のスライドをスマホで撮影したり、ドキュメントをインターネット上ですぐに共有したりと、誰もが“デジタル”を自由に使いこなしていました。また、新しく綺麗な校舎には解放感がありつつも、人を包み込む温かさもあって、とてもすてきな空気が流れているんですね。
ただ一番印象的だったのは学生たちです。互いの強みを理解し、役割を分担する「理解と尊重」には目を見張るものがあります。
付:神山まるごと高専では、自分の意見を持つ人たちが、語り合い、ひとつのプロジェクトを作り上げます。それは、高専のパンフレットにも描かれた姿そのもので、入学前にイメージしていた通りの世界がそこにはありました。もちろん大変だけど、作り上げた時には大きな達成感があります。
みんなで一から作り上げるのが神山まるごと高専の特徴であり、魅力でもあると語る名和氏と廣瀬氏。学生もスタッフも仲間として日々奮闘中だと言います。
名和:学校では日々いろんなことがあり、さまざまな感情を経験します。ワクワク感もあるし、初めて経験するような困難や、思い通りに進まないもどかしさもあります。でも、それらすべてを含め、経験したことすべてがいいことと思える日々を過ごせている。きれいごとではなく、それを強く実感しています。
廣瀬:それはスタッフ側も同じです。新しい学校にはルールがありません。すべて、1期生の皆さんと議論を重ねながら、ひとつずつ形にしています。正直、とても大変です。でも、本気で取り組むからこそ味わうことのできる楽しさもあるし、何より学生との距離感を近づけることができるんです。
鐘ヶ江:確かに、学生とスタッフの距離が近くて仲良しなのがとても印象的です。私の学生時代とは全然違いますね(笑)。また、自然豊かな土地だからこそ経験できることもたくさんあって、情緒を育むには最高の場所だと思います。
富士通だからこそできること。夢の実現に向け、果たすべきSP企業の役割
みんなで一から作り上げる楽しさと難しさをおのおのが感じながら、より良い学校づくりに励むのが、神山まるごと高専の日常となっています。付氏、名和氏、廣瀬氏が思い描く学校生活とは。
付:学生が議論し合う姿がこの学校のいいところだと思っています。1つのことに本気で取り組める、これからもそんな学校にしていきたいです
名和:相手も自分も大切にしながら、みんなが本音でぶつかり合える学校にしたいです。そして、そのぶつかり合いの中から、新しいものを生み出していきたいですし、個人としても変化し続け、いろんなことにどんどん挑戦していきたいです。そのためにも、自身の熱量をもっともっと高めていけるよう頑張りたいです。
廣瀬:何かに本気で挑戦していると“点が線になる瞬間”が来るはずです。学生には、あの時あれに挑戦してよかったと思えるような5年間を過ごしてほしいです。チャンスがたくさん転がっているこの学校で、自分自身でチャンスをつかみ、5年後、それぞれが思い描く次のステージへと進んでもらえたらなと思っています。
それぞれの夢の実現にむけ、すでに歩みを進めている学生たち。付氏は、ロボットやプログラミングの知識を身につけたいと語ります。そんな彼女の夢は、一人で悩んでいる人の相談相手になるようなケアロボットを作ること。
付:人に相談することは勇気のいることなのに、今の社会は、人以外に悩みを相談するという選択肢が少ないと感じています。ロボットを通して、悩みを相談できずにいる人の助けになりたいと思っています。その夢への第一歩として、スキル習得をめざし、FIRST Robotic Competition(15〜18歳の学生を対象とする国際ロボットコンテスト)にも挑戦しています。
一方で、新しい教育の形を作るためのスキルを身につけたいという名和氏。将来の夢は、「生涯学習者であふれる社会にすること」だと語ります。
名和:神山まるごと高専は、その名の通り、全寮制で日常と学びが同化し、生活すべてがまるごと学び場となるユニークな環境です。また、富士通との取り組みは、学校では経験できない体験がたくさんあります。それらをまるごと吸収し、夢の実現に向けて役立てていきたいです。
そんな学生を支援する鐘ヶ江と水野。2人の共通の想いは、学生がやりたいことを実現すること。ただ、SP企業として、Crewとして、果たすべき役割に難しさも感じると語ります。
鐘ヶ江:神山まるごと高専はいま世の中の注目を集めています。コラボ依頼も多いですし、学生がやりたいことやこの環境だからこそできることは最大限叶えてあげたいと思っています。ですが、学生は15歳、16歳の若者。SP企業として、その点は忘れることなくサポートしていきたいです
水野:SP企業の役割は、「学生に何かを与える」や「学生がやりたいことだけを叶える」だけではないと思っています。ただその一方で、毎週のように起業家の方と会う機会のある学生に対し、「富士通だからこそできることは何か」は日々問われているし、難しいことだと思っています。
同校のミッションの言葉を借りるとすると、われわれは一緒に「モノをつくる力でコトを起こす」仲間。対等な関係性を持って、一緒にできることを探していきたいですね。
社会に大きなインパクトを。Crewとして描く神山まるごと高専プロジェクトの未来
神山まるごと高専プロジェクトの発足以来、さまざまな活動に参加してきた水野と鐘ヶ江。Crew活動を通して得た学びがあると言います。
水野:学生の皆さんといろんな取り組みを行う中で、自分自身が同じくらいの年代だったころや入社以前のことを思い返すことがあります。そのころの自分はどうだったかと言うと、彼ら、彼女らと同じように「何かを実現したい」という志や想いはあったと思います。ただ、社会や会社に揉まれていくうちに、自分がどうしたいよりも、それが周りの人に受け入れられるかを先に考えるようになってしまった。
でも、人と人とがつながり、何か大きなことを起こすためには、「私はこれを実現したいんです」とまわりに伝えること。それが何よりも大事なんじゃないかと、彼ら、彼女らと一緒に活動する中で実感したんです。初心に戻ってじゃないですが、私自身もやりたいことを掘り起こし、心からやりたいと思えることは何か。それをしっかりと胸に抱いた上で、彼ら、彼女らと向き合っていきたいです。
鐘ヶ江:学生たちだけではなく、いろんな人と出会うことが多く、毎日刺激を受けています。水野さんの話のように、社会人になると、何かとビジネスライクに物事を捉えてしまい、失敗しないことや結果が出るものばかりにフォーカスしてしまいがちだと思います。でも、それでは人は育たない。何かに挑戦する、その挑戦のプロセスこそが大事なんだと気づかされました。
水野には学生と一緒に実現したいことが、鐘ヶ江には神山まるごと高専プロジェクトとしてめざす未来があります。
水野:Crewとして、学生の皆さんと交流する機会をいただけていますし、1期生が卒業するまでに、一緒に社会へインパクトを与えることを成し遂げたいですね。さらに言えば、モノとして実体のあるものを世に出せることが理想です。そのためにも、互いにスキルアップすること、そのスキルを共有していくことが重要だと思います。
鐘ヶ江:現在、全社DXイベントへの参加やうんこドリルの制作など、われわれから持ち込む企画が多いのですが、今後は学生発案の企画にも挑戦していきたいです。また、神山まるごと高専のことを知らない社員はまだまだ多いです。この記事をきっかけに知ってもらえたら嬉しいですし、より多くの社員を巻き込んでいきたいと思っています。一期生の皆さんが卒業するときに、こんなにたくさんの社員と、たくさんの取り組みに挑戦できたと思ってもらえると嬉しいですね。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです
