経営の羅針盤を担うFP&A──富士通のデータドリブン経営の現在地
経営の未来を予測するデータサイエンスの拠点へと変貌を遂げている富士通の本社財務経理本部。その中心部であるGroup FP&A(Financial Planning & Analysis)Divisionの舵を取るのが玉木です。
「私が率いる部門には、大きく分けて3つのチームがあります。予算を策定するチーム、実績を管理するチーム、そしてそれらを統合して外部へ発信するチーム。合計10名ほどの精鋭が、富士通全社の管理会計という巨大なパズルを扱っています」
富士通はデータドリブン経営を推進している中で、その仕組みは大きく変化しています。
「富士通がデータドリブン経営を掲げてから、現場の景色は一変しました。以前は生データに触れられるのは各事業部の一部に限られていましたが、今は違います。私たち本社のFP&Aがパイプラインや受注の生データに直接アクセスできるインフラが整っているのです。
こうしたデータの『民主化』が進んでいることに加え、現在はビッグデータ分析ソフトを通じて、AIが受注予測を自動レポートとして週に一度の定期配信することも可能となりました。人の手を介さずに『今のままではこうなる』という仮説がタイムリーに共有される。私たちはそのデータをもとに、より高度な意思決定の支援に集中できるようになったのです」
しかし、どれだけテクノロジーが進歩しても、最後は「人」の太さが問われると玉木は言います。
「私たちの仕事は最終的に株価にも直結する、非常に社会的責任の重いものです。だからこそ、高いスピード感と、数字の背後にある事業を理解する解像度が求められます。精神的にも体力的にもタフな仕事ですが、企業の価値を適正に保つという自負が、私たちの背中を支えています。
そして、そんなタフな業務環境だからこそ、私はチームの雰囲気作りを大切にしています。良いことも悪いことも日々起きるので、苦しいことや嫌なことがあった時に他の人に吐き出せる環境が大切です。思ったことを言い合えるチームが理想で、違うと思ったら違うと言ってほしいし、何か要望があったらそれをぶつけてほしい。チームメンバーが考えていることや思っていることは言えるような雰囲気を作ることを心がけています」
富士通の「やらせてみる」文化を通した経験が、自分の血となり肉になっている
幼少期から生き物に興味があった玉木は、学生時代は理工学部で生命情報工学を専攻。海産動物の「ホヤ」の発生プロセスをコンピューターで解き明かす研究に没頭していたと言います。
「生き物の研究はおもしろいものでしたが、ふと立ち止まったんです。研究の世界は非常にスパンが長く、自分の仕事が社会の役に立つのは100年後かもしれない。もっと、今生きている社会に対してダイレクトにインパクトを与えられる仕事がしたい。そう思ったのが、ビジネスの世界を志したきっかけでした。
そこで、自分の専門性をどこに置くべきか考え直した時、数学と英語の掛け合わせにあると思いました。理系として数字を扱う訓練には慣れていましたし、英語も苦ではなかった。この二つを軸にすれば、世界を舞台に戦えるのではないかと考え、1年間の交換留学で米国のウェスタンミシガン大学へ飛びました。そこで初めてマーケティングや管理会計の授業を受け、ビジネスの仕組みに強い関心を持ったのです」
その後、留学中にボストンで開催された日系企業のキャリアフォーラムで富士通と出会い、インターンを通して、当時では珍しかった「職種・職場指定」での採用枠に惹かれて入社を決めた玉木。最初から海外事業に携われるという約束が背中を押してくれたと言います。
「交換留学を終えて日本へ戻った後、最初は海外ビジネスマネジメント本部にて日本から欧州グループ会社FTS(Fujitsu Technology Solutions)を支援する事業管理業務に携わりました。そして、入社して4年目にFTSへ3年間駐在することになったのですが、そこで待ち受けていたのは異国の寒さと、想像を超える孤独でした。
本社からの派遣として着任した当初は、自身の若さもあり、すぐに価値を発揮できないもどかしさと、それが理由で、現地メンバーとの間に距離を感じる場面がありました。また、冬の欧州という環境面の厳しさもあり、単身での生活の中で精神的なつらさを感じる時期もありました。
しかし、その時に救ってくれたのが上司たちの支援、そして富士通の『まずはやらせてみる』という文化でした。実力以上のミッションを与えられ、必死に食らいつく。その過程で、チャレンジングな仕事に挑戦するという社会人としての私の軸が形成されたように思います」
北米グループ会社での「黒字化」達成──困難を乗り越えて得た経験と学び
その後、玉木はさらなる修羅場に身を投じます。2019年から2025年までの北米のグループ会社への駐在です。
「長年にわたり厳しい業績が続いていた会社でした。毎日、『この会社を閉じるべきか』という議論を繰り返す。事業構造を変え、不採算部門を整理し、苦渋の決断として人員削減にも向き合いました。本当にこの先、光が見えるのかと、見通しの立たない日々が続きました」
暗雲が立ち込める中、玉木は黙々とやるべきことを積み重ねました。すると、ある時を境に風向きが変わります。
「徐々に業績が目に見えて良くなっていき、2025年の帰任する直前についに黒字化を達成しました。黒字化における私の貢献が大きいとは思っていません。長い時間軸の中で、諦めずに構造改革を続けた結果、いろんな歯車が噛み合ってようやく追い風が吹いたのだと思います。
仕事を続ける上で、苦しい時期や諦めたくなる瞬間というのは訪れるものです。それでも、ゼロ回答にせずに最後までやり切れば、次につながり、いつか必ず風向きが変わる。その成功体験は、今の私の大きな支えになっています」
そして2025年8月、駐在期間が終わる段階で玉木は本社の財務経理本部にアサインされます。
「それまで海外事業管理一筋であったので、本社のKey Roleへのアサインは正直驚きの人事でした。率直な心境としては、本社経験や日本の事業経験がない私に、果たして自分に務まるのだろうかという不安でした。これまで携わってきた海外の事業規模も、富士通全社の売上規模からすると比べ物にはならず、複雑性もありません。本社で全グループの数字を見るということは、それだけ複雑かつ大きな事業を見ていく必要があるということを覚悟しましたし、また、ビジネスの現場から離れてしまうことへの寂しさもありました。
ただ、私がアサインされた背景は、本社財務経理のやり方を今までの延長でなく、今後よりグローバルな運営へと抜本的に変えていくという本部の意図があると理解し、その変革に携わるのは非常にチャレンジングだと奮い立ちました」
現在、玉木はDivision長として自身の業務やチームのマネジメントに日々奔走しています。
「非常に重責の職務をアサインされましたが、自分の実力が見合っているとは思っておらず、まだまだギャップに苦しんでいるというのが現状です。あらためて、海外のグループ会社の管理会計だけ見ていては決して味わえない、インパクトが相当に大きい部署かつポジションだと感じています。
そのため、唯一無二のキャリアにチャレンジしているという自負を持って、重要な事業上の意思決定や企業価値を適正に保つための情報提供を試行錯誤しながら日々行っています」
FP&Aからボーダレスな未来を切り拓く。次世代の財務経理のプロフェッショナルへ
15年以上のキャリアを振り返り、玉木は厳しくもこれまでに多くの機会や人物に恵まれてきたと語ります。
「欧州駐在時、タックスチームの女性ヘッドには本当に育ててもらいましたし、信頼してもらえました。彼女はもともと外部から来た人なんですが、タックスという一つの軸としての専門性を持ちつつ、それを周辺の業務にもしっかりと活かして進めていく社会人としての強さや価値をしっかりと持っている人でした。今でも尊敬していますし、ゆくゆくは当社の中で彼女みたいな存在になりたいと思っています。
そのためには、新しいロールになってまだ1年も経っていない状況ではありますが、現在のポジションや今の役割をしっかりと果たせるようになるのが当面の目標です。とにかく、まずは今の職務で価値を出せるよう目の前の仕事に向き合っていきたいです」
そんな玉木が、自身の経験を踏まえながら富士通の財務経理に興味を持つ人たちに向けてメッセージを送ります。
「これからの富士通の財務経理は、日本と海外の枠組みを完全に取り払うボーダレスな体制へと進化を加速させていきます。ある事業を担当すれば、その中に日本も海外も含まれる。真の意味でグローバルな視点が求められる時代であり、将来海外で活躍したいという方との親和性はあると考えています。
私が求めるのは、必ずしも会計士の資格を持つ人ではありません。先ほども申し上げたとおり、AIを活用してレポートの自動発出など仕組みが整いつつあり、これからも拡充されていくはずです。そのため、ファイナンス部門ではありつつも、むしろITに長けていたり、数字をベースに合理的な考え方ができたり、あるいはファイナンスとは別分野で何かを突き詰めてきた人。そんな多様なメンバーが、データという共通言語でフラットに議論できる組織でありたいと思っています。
最後に、新人の頃からいろんな機会を与えてもらい、15年前には想像だにできなかったようなものの考え方や社会の捉え方ができるようになった当社への感謝の気持ちはとても大きいです。
もちろん、良いことばかりが日々起こるわけではありませんが、社会人として何が大切かという原理原則がしっかりと根付いており、チャレンジングな課題に挑戦し続ける環境下で仕事をすることで新しい景色が見えるようになってくる。私は富士通という会社をそのように捉えています」
システム環境の整備を行い、データドリブン経営への推進を加速させている富士通。玉木を中心に、FP&A Divisionチームは今日も目の前の職務に全力で向き合い、次世代の財務経理人財が活躍できる環境づくりに貢献しています。
※ 記載内容は2026年6月時点のものです
