本部単位で進めてきた現場の変革。試行錯誤を経て、2年目は具体的なテーマに注力
より実践的なレベルで変革を加速させるべく、昨年度から本部へと設置が拡大されたDXO。組立製造業事業本部で重工業と防衛領域を担当する梅田は、その1人として活動を推進してきました。
梅田:私は現在、重工業の防衛・宇宙部門を担うセールスチームを率いながら、本部DXOとして2年目を迎えています。昨年度は、全社的なDXOの活動に積極的に参加し、その取り組みを本部内に取り入れたり、デジタル化を加速させるための施策に取り組んだりと、手探りながら活動を進めてきました。
現在はセールス組織におけるDXOとして、営業のプロセスそのものをどのように変革できるかという、より具体的なテーマに注力しています。
梅田と同じく、営業プロセスの変革という共通のミッションに取り組んでいる増谷。プロセス製造事業本部でセールスチームのシニアマネージャーを務めながら、独自のアプローチで組織の活性化を推進してきました。
増谷:現場のメンバーと向き合うには「DX Officer」という役職は堅苦しく感じます。そのため自ら「DX Ojisan」と名乗り、身近な存在になることをめざしています(笑)。周囲との関係性を築きながら、まずは変革に対して前向きなアーリーアダプターを見つけ出すことで、これまで活動を広げてきました。
現場の変革に取り組むにあたり、それぞれDXOとしての活動方針を定めてきた2人。梅田は、周囲を巻き込むためにまず自ら行動し、楽しむ姿勢を大切にしています。
梅田:私は、未知の領域に自ら積極的に飛び込むことを意識しています。その一例として昨年度は、富士通が主催するアントレプレナーシップ育成プログラムの「Fujitsu Innovation Circuit」に、お客さまをお誘いし、お客さまと共に参加しました。
セールスとしてお客さまとの関わり方を変えることもDXの1つであると考え、自分自身も変わりながら、変革のプロセスを楽しむことを大切にしています。
梅田と同じく、まず自ら動くというスタンスで活動している増谷。その視線は常に、「現場の担当者の幸せ」に向けられています。
増谷:私も、まず自分からAIやデジタルツールを使ってみることを大切にしています。その上でいつも意識しているのは、「これは現場の業務に即しているか」「担当者が幸せになれるか」という視点です。本部DXOとしての使命は現場の業務を変革することですが、何よりもまず、担当者の業務負担が軽減される取り組みを推進したいと考えています。
取り組みを価値のあるものにするために、増谷はすべての基盤となるデータの在り方に着目しています。
増谷:AI-drivenを実践するには、正しいデータが必要不可欠です。それを現場に求めるには、正しいデータを入力すれば正しいアウトプットにつながり、最終的に業務がラクになるという実感が持てなければなりません。一方的にAIやデジタル活用を押し付けるのではなく、まず私自身が率先してツールを活用し、効果の実感を示すことを心がけています。
多様なキャリアを歩み、引き受けた新たな役割。培ってきた知見をDXOの活動に活かす
入社してからDXOに就任するまで、多様な経験を積んできた2人。増谷は法学部で学んだ後、ITの世界に飛び込みました。
増谷:私は2003年に富士通のグループ会社に入社し、ソリューション営業としてキャリアをスタートしました。その後、現在所属している化学事業部の前身組織に出向する機会があり、そこで大手化学メーカーさまを担当した経験が今の礎になっています。
出向から戻った後は、富士通のパートナー営業として、また業界を問わず製造業の中堅・中小企業のアカウント営業として長く従事してきました。 その中で幅広い製造業のお客さまの業務を詳細にヒアリングし、課題解決を提案するという経験と知見が、私の強みだと考えています。
一方の梅田は、入社した当初はセールス職ではなく、エンジニアとしてキャリアをスタートさせました。
梅田:私は大学・大学院で半導体プロセスの研究に取り組み、富士通へは2005年に入社しました。当時担当していたのは、映像LSIのハードウェアやソフトウェアの開発、海外市場の新規開拓などです。そこで約8年経験を積みましたが、半導体市場の構造変化に直面したことから、2013年に社内公募制度を活用し、お客様と向き合うフロント組織へと自ら手を挙げて異動しました。
インフラからアプリケーション、グローバルビジネスまで幅広い領域のITセールスを経験してきたことが私の強みです。富士通のセールス職は非常に学ぶことが多く、現在も管理職としてメンバーの活躍を支えるために試行錯誤を重ねています。
それぞれのキャリアを歩み、昨年度から本部のDXOを務めている増谷と梅田。DXOに任命された時の率直な気持ちを明かします。
増谷:最初に打診された際は、正直に言って驚きました。社内の組織再編と重なるタイミングであり、当時の組織よりも大きくなる組織でDXOをやっていけるのかと、不安を感じたというのが本音です。ただ、DXOの設置が本部に拡大することで、現場に寄り添った変革が進められるという期待感もありました。
梅田:私もなぜ自分が選ばれたのか、当初は理由がわかりませんでした。ただ思い当たったのは、AIなどデジタルツール活用して業務の生産性を高めるグローバルなプログラムである「OneDigital」を、現場で積極的に推進してきた姿勢が評価されたのではないかということです。
私が就任した時期は、DXOに求められる役割が変わり始めたタイミングでもありました。かつてのDXOは全社的なテーマに取り組む役割という印象でしたが、本部単位に拡大されたことで、セールスの現場に寄り添った変革ができるようになってきたのを感じています。
AI活用の実践知を、お客様の価値として還元。試行錯誤の末に生まれるセールスの武器
2025年に本部のDXOとして活動をスタートした2人。最初に着手したのは、身近な運営業務の効率化という具体的なミッションでした。
梅田:最初に課されたのは、本部の幹部会におけるExcelベースのアジェンダやタスクを、すべてクラウド上で一元管理できるAsanaに移行するというミッションでした。増谷さんのチームとも連携しながら、取り組みを進めていきました。
増谷:梅田さんと一緒に「どうすればタスクの抜け漏れがなくなり、業務が楽になるか」を徹底的に考えながら進めました。DXO就任前から準備を進め、1カ月足らずで運用を開始しました。Asana以外にもChatAI(富士通独自にカスタマイズした生成AI)などのデジタルツールの使用率が上昇していることがアンケートからも確認でき、一定の成果が得られているのを感じています。
手応えを感じた増谷は、先陣を切って自ら新たな取り組みに挑戦していきました。
増谷:商談の履歴などお客さまに関する情報が散逸しているという課題を解決するために、AIエージェントの構築に挑戦しました。始めたきっかけは、やはり現場の業務負担を減らしたいという想いからです。文系の出身でプログラミングの知識がなかったのですが、AIに質問しながら方法を導き出すことで作成できました。
一方の梅田も、本部内に組織横断的なチームを立ち上げ、現場発の変革を促す仕組みづくりを進めています。
梅田:本部内の各事業部からメンバーを集めてDX推進チームを結成し、情報共有を行うなど現場の活性化に取り組んできました。メンバーが自発的にダッシュボードの構築を試みたり、ChatAIを用いた業務改善のプロセスを横展開したりと、現場発の活動が広がりつつあります。
一方、組織をさらに変革していく上で、業務プロセスのいっそうの効率化が重要なテーマになってきます。CRMを活用したデータドリブンな営業活動が定着する中で、現場のセールスでは多くの情報を日々入力、管理しています。今後は、業務負荷を減らすべく、AIによる自動入力ができる方法がないかを模索しているところです。
データの重要性と現場の多忙さを理解している増谷も、この課題に共感しています。
増谷:正確なデータを入れてもらうには、入力作業そのものが容易であることが求められます。手続きが煩雑すぎると、入力に不備が生じやすくなるからです。入力されたデータが正しくなければ、AIのアウトプットも正しくなりません。セキュリティやガバナンスを確保しながら、システム間の連携やAIによる自動化を進める必要がありますが、まずは取り組みの効果を着実に示し、関係部門とも連携しながら業務改善を前進させていきたいと考えています。
課題も多く、一筋縄ではいかない業務の変革。その地道な試行錯誤の積み重ねは、自社の実践知をお客様に価値として還元していく「カスタマーゼロ」として、提案活動に活かされています。
増谷:自分たちが実体験として苦労し、課題と向き合っているからこそ、お客さまに対しても熱量を持った自分自身の言葉で語ることができます。借りてきた言葉ではなく、「私たちもまさにその課題で困っています」という深い共感を呼ぶ対話ができること。それが、セールスとしての武器になっていると感じます。
AIを使いこなし、人にしか提供できない価値を追求。DXOが描く未来のセールス像
DXOに就任して2年目を迎えた2人。梅田は活動を始めたことによる自身の変化を感じています。
梅田:組織を横断したDXO同士のつながりにより、現場の改善に熱い想いを持つ仲間から大きな刺激を受け、これまで以上に自発的な活動に挑戦できています。
また、経営層と直接対話する機会が増え、会社の方向性を高い視座で捉えられるようになったことも良い変化です。時代の転換点を捉え、危機感を持って変革に取り組まなければならないと感じています。
経営層との対話から得た気づきを活かし、梅田は商談のアプローチも変えていきたいと意気込みを語ります。
梅田:現状は、お客様からのご要望に基づいた商談機会の創出がまだ多い状況です。しかし今後は、蓄積された社内データや過去の行動履歴、外部情報などをAIが分析し、提案内容をサジェストする仕組みを構築したいと考えています。この構想を具体化していくため、他のDXOのメンバーとも連携して取り組みを進めているところです。
増谷もまた、商談数を増やして成約につなげていくためにデジタル活用を進めつつ、セールス職として発揮できる価値を追求しています。
増谷:デジタル化の推進=従来のアナログな営業スタイルの否定ではありません。むしろ双方の長所を活かせると考えています。AIが広く利用される中、誰もがアクセス可能な公開情報をもとにした分析や提案では、差別化は図れません。お客さまとの直接的な対話から得られる熱のある一次情報こそが、AIに『Why Fujitsu(なぜ富士通なのか)』という独自の価値を導き出させる重要なポイントになると考えています。
AIに任せるべき領域と、人間が担うべき領域。それを見極め、成果を最大化することがこれからのセールス職に求められています。
増谷:セールスという職種の本質は、時代を経ても変わらず「人対人」の信頼関係にあると思います。優れたセールスパーソンが持つセンスやノウハウをAIに学習させ、組織全体で再現できる形に昇華させていくことも可能性の1つです。AIにできることはAIに任せ、お客様と楽しく対話する時間を増やせるような取り組みを推進したいと考えています。
AIの登場により、これまでとは異なる役割や働き方が問われている現代。同じ課題と向き合い、現場で奮闘する仲間たちに向けて、2人がメッセージを送ります。
梅田:DXと言われても、どこか遠い存在のように感じたり、新たに導入される取り組みを煩わしく感じたりする場面もあるかもしれません。でも面倒な事務作業をすべてAIに任せることができた先には、デジタル化できない仕事の本質的な楽しさがあるはずです。セールスとして人間同士の付き合いや、人にしか提供できない価値をこれからも一緒に追求していきましょう。
増谷:人と人が向き合って信頼関係を築いていくという従来の営業スタイルが、これからも基本であり最強であることは変わらないと思っています。営業活動をより楽しく、より創造的なものにするために、AIを使いこなし、AIに使われないようにすることが大事です。そのためにも現場で困ったことがあれば、気軽に「DX Ojisan」を頼ってもらえればと思います。
※ 記載内容は2026年7月時点のものです
