中学生のころから「起業」を意識。その近道が神山まるごと高専だと信じて
2023年4月、19年ぶりに国内に新しい高等専門学校(高専)が誕生。徳島県神山町で産声を上げました。入学した学生は44名。11社のスカラーシップパートナー企業(以下、SP企業)がそれぞれ出資や寄付をし、学生たちはSP企業の奨学生としてそれぞれの企業に所属しています。
神山まるごと高専は「モノをつくる力で、コトを起こす人」をめざし、それに共感した学生たちが入学しています。富士通の奨学生として入学した、宮野 柊太氏、山口 空氏は、どのような想いで入学を決めたのでしょうか。
宮野:中学生のころから、漠然と起業したいという気持ちがありました。関東出身のこともあり、徳島は田舎だし、遠いなという思いもありつつ、起業への近道になるのではないかと考えたんです。
山口:私は父の言葉がきっかけとなりました。起業家である父を尊敬していて、その父が行きたいと思えるような学校って、どんなところだろうか、と。興味が湧き、学校説明会に行き、入学したい気持ちがどんどん高まってきました。
起業という目標に向かい、歩み始めた2人。神山まるごと高専では各方面で活躍されている起業家を講師として招いているほか、授業も一般の高校とはまったく異なり、とても充実していると言います。
宮野:起業家の方のお話を聞いていく中で、起業家に対する印象が変わりました。しっかりとプロセスを考え、理詰めで起業をし、成長させていると考えていたのですが、話してみると硬い印象はまったくなくて。お会いした方々は、いい意味で頭のネジがぶっ飛んでいるなと(笑)。いろんなゲストの方がいらっしゃるので、起業に対して、以前よりももっと前向きにとらえられるようになりました。
山口:起業家の方のお話だけでなく、普段の授業もスタッフ(神山まるごと高専では先生のことをスタッフと呼ぶ)によって全然やり方が違っておもしろいです。以前は「暗記」を重視することが多かったのですが、今では「考える時間」がとても増えました。
授業の回数も、たとえば中学生のときなら、毎日のように国語の授業がありましたが、ここでは各教科1回。しかも国語ではなく、文章表現という授業で、書く力をつけたり、筆者の気持ちを考えたりと、これまでとまったく異なっています。
一番好きなのは化学の授業ですが、感覚としては雑学系の動画サイトを見ている感じです。
自分のコトバで伝えることが、「未来を創る」ことにつながる
宮野氏、山口氏をはじめ、富士通の奨学生4名は、日々の授業と並行して、SP企業とともに、さまざまな取り組みに挑戦しています。大人と子どもという関係ではなく、お互いが学びあい、刺激を受けあうことで、新しい可能性を生み出そうとしています。
富士通ではプロジェクトリーダーを担う濱上 隆道を筆頭に、神山まるごと高専クルーや、社内のスペシャリストなど、多彩なメンバーが関わっています。そのメンバーの一人が、武田 幸治です。
武田:神山まるごと高専が開校して間もなく、濱上から声をかけてもらいました。実はあまり詳しい話はなく、ちょっとエバンジェリストのキャリアを話してほしいという感じでした(笑)。初めて奨学生のみなさんに会ったのが5月頃。私のキャリアについて話したところ、友達感覚でいろんな質問をぶつけてきてくれたことが印象的でしたね。
私も高専出身なので自由な風土は理解していましたので、初対面であってもこのフランクな感覚は懐かしいなぁと思いました。そして本当は当たり前のことなんですが、わからないことを素直にわからないと認め、自分のコトバ、自分の意志や共有・共感・共鳴したいことを一生懸命話してくれる姿を見て、何かサポートできるのでは、と思ったんですね。濱上の作戦勝ちでしたね(笑)。
もし、いま15歳に戻れるなら、みんなと一緒に学びたい。そう思わせる魅力がここにはあると語る武田。そんな武田は15歳のときになぜ高専に進むことを選んだのでしょうか。
武田:当時は、いい大学に入って、一流の会社に入ることが成功って言われていた時代でした。皆と一緒でいいのかなぁと思っていたタイミングに、学校の先生から高専を紹介され、「普通と違う学校」というフレーズに妙に惹かれたんですね。5年間で実践的な能力を身につけられ、早く社会人デビューできることにも魅力を感じて、入学を決めました。
高専で学び、そして社会人人生が始まりましたが、順風満帆ではなかったと言います。
武田:高専時代は漠然とコンピュータの仕事に携われたらいいな、と考えていました。当時は第2次AIブームでしたので、研究や卒論はAIに関するものでした。今思えばAIをちょっとかじっただけなんですが、新しい魅力ある世界を自分の手で創れると信じて、当時の国内ナンバー1のITベンダーに面談しに行ったんですが、見事に不合格でした。冷静に考えれば、技術も未熟だったわけですが、何より自分のコトバで伝えることができなかったことがすべてだと思います。
だからこそ、耳当たりの良いコトバに頼るのではなく、自分の想いを自分のコトバでわかりやすく伝えることにこだわって富士通での社会人生活をスタートしました。富士通でのキャリアはシステムエンジニアからスタートし、コンサルティング、プロモーション、共創ビジネス推進などを経験して、現在はエバンジェリスト(富士通の伝道師)として活動しています。振り返ってみると今の仕事は必然なのかもしれないなと。
起業家をめざす彼らは多くの人と関わり、そして多くの困難に直面することになると思います。そんな彼らには自分のコトバで伝えることで未来が拓けることを伝えていきたいですね。
全力で応援してくれることへの感謝が、新しい挑戦に向かわせる
武田と奨学生との活動はこれから本格化しますが、具体的にどんなことをやろうとしているのでしょうか。
武田:人生はプレゼンテーションの連続なので、「伝える力」を伸ばしたいと思っています。自分の想いをうまく伝えて、めざす人生をつかみ取るためにも、プレゼンテーションはうまい方がいいに決まっていますからね。すでに2人ともプレゼンテーションは上手なんですが、まだまだ大きな伸びしろがあります。「伝える力」は努力すれば必ずうまくなるスキルですので、2人の夢の実現に向けて全力で応援したいと考えています。
最終的にはイベントで一緒に登壇など、近い将来さまざまなイベント講演してもらえればと思っています。
一方の宮野氏と山口氏は、これから富士通と一緒にどんなことをしていきたいと考えているのでしょうか。
宮野:今は濱上さんなど富士通の方から、いろんなことを提供してもらってばかりいるようで、申し訳ないと感じていて。受け身ではなく、自分たちが富士通を使い倒すくらいのつもりで、もっと積極的に活動していきたいと思っています。
ただ、SP企業の中でも活動が多いという富士通。それはどう彼らにどう映っているのでしょうか。
山口:周りからは大変そう、と言われることもありますが、自分としてはいろんなことに挑戦できているのでポジティブに捉えていて。今はパッと思いつかないのですが、今後は別のSP企業の方とのコラボ、ワークショップとか交流イベントができるとおもしろいかなと考えています。
さらに、2人自身のこれからも徐々に見えてきたようです。
宮野:中学生のころは、起業について真剣に話せる人がいなかったのですが、神山まるごと高専では、そういう意識を持っている同級生がほとんど。入学前は高専を卒業してから、起業しようと考えていたのですが、今年中にも起業してもいいのでは?と思えるところまで、意識が高まりました。
山口:(宮野)柊太とは、部屋も相部屋だし、仲も一番良くて。休日以外はほとんど一緒に過ごしています。特に起業への意識の高さというのが相性の良さにもつながっているのかなと。刺激をくれる大切な友だちです。
またスタッフのみなさんが、失敗に寛容だし、やりたいことを全力で応援してくださる。そういった方々への感謝の想いが自然と挑戦に向かわせてくれている気がします。
神山で触れ合うモノ、ヒト、コトで成長し続けてほしい
宮野氏と山口氏がより一層、起業への想いを強くしていることを聞いた武田。その志に関心をしつつ、神山だからこそ到達しえた言葉なのではないか、と語ります。
武田:最初に会った時からの熱量は今でも変わらずすごいなと思います。時代が異なることもありますが、私たちが高専生だったときには起業するという選択肢はまず考えられなかったですからね。それを今年中にも、というのには驚かされます。
おそらく、神山にいるからこその価値を、半年という短い間でも吸収している結果なのかなと。同級生や学校の先生だけでなく、神山町の人や、私たちのようなSP企業の社員、それ以外に神山まるごと高専に出入りしている人たちなど、多くの接点が生まれています。何気なく生活しているだけでは絶対に会えないような人たちとの関わりが、彼らを成長させているのかなと思いますね。
最後に、自身の人生を振り返りながら、武田は、宮野氏や山口氏をはじめとした奨学生に対して、こんなメッセージを送ります。
武田:彼らは決して口に出して言わないとは思いますが、必ずしもすべてが順風満帆じゃないはずなんですよ。親元から離れ、学校や学生寮などで近い距離にいる同級生とは、ときには意見の対立なんかも生まれると思います。彼らは1期生なので、高専にとっても、私たちにとっても初めてのことだらけで、模索することも多いはずです。
そんな時こそ「遊び心」を持って自分らしく行動してほしいなぁと思います。元高専生、そしてエバンジェリストとして全力で5年間伴走したいと思っています。
3人から語られた魅力いっぱいの神山まるごと高専。一度その場を訪れ、奨学生や神山に携わる人たちと一緒に、新しいチャレンジをしてみませんか?
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
