富士通のさらなる成長をめざして。社内への活動周知とチームビルディングに向けた挑戦
2020年3月に新設されたStrategic Growth & Investments室(以下、SG&I)。富士通の既存の事業に捉われず、M&Aやベンチャー投資、資本提携、ベンチャーインキュベーションなどの手法を活用して新たな成長分野の開拓を行っています。
「富士通が2021年に発表した社会課題の解決に挑むグローバルソリューション『Fujitsu Uvance』がめざしているのは、現在2000億円の売上を3年で7000億円に伸ばすこと。その目標達成には、SG&Iが担当する買収や他社との協業などの手法を活用することが不可欠です。組織ができて3年、ここからが正念場です」
SG&Iは2023年11月現在、日本とイギリス、そしてオーストラリアの3拠点に約70名のメンバーが在籍しています。
「海外企業を対象とした買収や投資が多いため、買収後の企業統合も含めてグローバルな業務が多いのがSG&Iの特徴です。また、SG&Iのトップを務めるNicholas Fraserをはじめ、メンバーの国籍も多様ですから、日ごろから英語を多用する環境となっています」
その中で、部長の和田が率いるのがOperationsチーム。SG&I内の総務人事および経理でありながら広報的業務も広くカバーするバックオフィスとしてM&Aなどのディールをさまざまな形でサポートしています。
「たとえば、バックオフィスが通常行う人事総務・経理的な役割のほか、投資や買収の判断を行う会議のサポートや、SG&Iの活動を富士通社内でより知っていただくための広報的な活動であるインターナルマーケティングまで幅広く請け負っているのがOperationsチームの特長です」
そんな中で和田が現在力を入れているのが、組織内の心理的安全性の向上です。その取り組みの背景についてこう説明します。
「SG&Iではキャリア採用で入社したメンバーが全体の半数近くを占め、かつM&A、協業、そしてベンチャー投資などそれぞれ専門性をもったプロ集団がいます 。各自のバックグラウンドやキャリアがまったく異なるところで何より大切なのはお互いの信頼関係を築くことであり、このことによって発言しやすく、またネガティブなフィードバックも快く受け止めて成長していける雰囲気が醸成されます。困難ではありますが、そういった環境づくりに組織として取り組んでいます」
IT企業からDX企業へ。変革に向けSG&Iができること
和田にはOperationチームの統率の他に、富士通が全社で進めるDXプロジェクト「フジトラ」において部門の変革をリードするDX Officer(以下、DXO)としての任もあります。
「SG&Iは2023年度から『フジトラ』に参加しています。デジタルはあくまでも手段でトランスフォームすることがなにより重要と考えています。SG&Iの各チームで検討した変革すべき事項について、課題解決に向け取り組みが始まったところという初期段階ですが、変革に関することはすべてDX活動と位置づけて臨んでいます」
IT企業からDX企業への本格的な変革を富士通が実現するためには、従来のビジネスモデルからの脱却を図る必要がある、そしてそのカギを握るのがSG&Iであると和田は言います。
「SG&Iの理想、そして意義は、富士通の新たな事業戦略を実現するために必要な買収、協業、投資あるいは新規ビジネスの育成をわれわれがサポートすることです。そのためには、従来のような自社開発、あるいは自社製品の改善とは異なる形で事業規模を拡大していく発想を関係部門が持っていることが重要です。
ただ、そうした考えが社内に十分に浸透しているとは言いがたく、前述のインターナルマーケティングを通じて買収や投資といった手法、そしてSG&Iという組織に対する認識と理解を高めていく必要があると思っています。
富士通は、長年SIビジネスを行ってきたため、意思決定のプロセスや業務フローもSIビジネスに適したものになっていますが、外部企業との統合や協業では、この既存のプロセスやフローではうまく機能しない可能性もあります。このようなことを解決するために必要な変革をDX活動の本質として位置づけて、取り組んでいかなければと考えています」
とはいえ、富士通のような大きな組織を変革していくのは言うは易し、行うは難し。Operation部長として、またSG&IのDXOとして変革に臨むにあたり、和田には大切にしていることがあります。
「なるべく仕事に前向きな気持ちで取り組めるような環境づくりです。仕事に対して辛いというネガティブな気持ちを抱くことは誰にでもありますが、皆がそうなるとやはり職場の雰囲気も良くならず、チームの成果も出にくくなると思います。
一方、前向きに業務ができていれば、お互いの相乗効果でいい方向に行くと考えます。ですから、まず自分自身が前向きでありたいと思っています」
そう考えるようになったのは、半導体、PC、ソリューションといったさまざまなビジネス領域で働いた経験からの気づきだったと言います。
「社会情勢や業界及び会社の方向性など、自分自身ではどうにもならない状況もあります。しかし、そのような時でもせめて自分自身は明るく前向きに業務に取り組み、少しでもポジティブな影響を周囲に与えていきたいと思うようになりました。
自分の所属する組織が自由闊達に意見を交換し、メンバー同士が相互成長を促す組織、つまり心理的安全性の高い組織にしていきたいと常に思っています」
営業から人事へ。前例のない仕事に挑戦した日々を経てキャリアを築く
和田にとって富士通は2社目。2001年に鉄鋼メーカーに新卒入社し営業としてキャリアをスタートし、2006年に富士通の半導体部門の営業に転職。2008年に初めて人事業務に携わることになりました。
「人事として最初のチャレンジだったことは、当時富士通が展開していたデバイスビジネスの海外子会社の経営層の報酬を決定する仕組みやガバナンス方法を企画する仕事です」
ところが、そのころは海外子会社の経営層の報酬を決めるルールが明確でなく、ノウハウを持った人材も部内には皆無。前例がなく、未経験の和田は不退転の決意で挑みました。
「人事としての経験がなかった私に振ってもらえる仕事はほとんどなかったことから、できるかどうかわからない中でとにかく挑戦するしかないと思いました。教えを請う人が周囲にいない上、英語力にも不安がありましたが、どんなことも受け止め、目の前の仕事をすべてこなしていくつもりで取り組んでいたのを覚えています。社内の関係しそうな部署に聞いて回り、相談をしながら知見を集めることで理解を深めていくことができました。
そうした過程を経る中で、あるべき姿を考えられるようになり、最終的には制度の対象者となる方たちに納得してもらえる提案をすることができました。その時はなんとか形にできたという安堵の気持ちでいっぱいでしたが、人事制度はそこから運用が始まりますので、すぐにきちんと運用ができるようにと気持ちを切替えました」
まさに五里霧中の状態から務めを果たした和田。その後も、事業譲渡先となった外資企業や、グローバルな人材育成プログラムの企画運営など幅広い業務で、着実に人事としてのキャリアを重ねてきました。
そして2020年、富士通でジョブ型人材マネジメントの本格導入など人事のミッションが大きく変わる時期を迎えます。
「そのころの富士通は、ジョブ型人材マネジメントの本格導入のタイミングであり、また平行してHRBP(HR Business Partner)という新たな役割を人事に導入するところでした。単に人事制度を説明し導入を支援するのではなく、担当する組織のために『人事としてどのように戦略の実現に貢献するか』がミッションとなったのです。
戦略実現に向けた人事施策を行うには、担当する組織の戦略や課題などを知る必要があり、そのためにはまずその組織の方々と信頼関係を構築することが必要だということに気づきました。仮説はもちながらも、なるべく先入観を持たずにしっかりと相手の話を聴くことから始めようと思いました。従来の人事が人事制度のゲートキーパーだったとすれば、組織の伴走者であり、まったくアプローチが違うと感じました」
さらに、同じ時期に和田が担当することになったのがSG&Iの立ち上げに関する人事的な支援です。HRBPとしてSG&Iを担当する中で、和田はSG&Iに他の組織とは異なる「ある特色」を見つけます。
「HRBPとして複数の組織を担当させていただく中で、戦略や課題など含め、組織ごとにさまざまな特色があることは認識していました。しかしSG&Iは、組織のトップが外国人であることはもちろんですが、富士通で多くを占めるエンジニア職や営業職とは違った専門性を持ったキャリア採用者が多い組織であるうえに、国籍も多様であり、また業務の特性から他の部門とは異なる人事のニーズがありました。
それまでの業務でも人事としてさまざまな貴重な経験や学びを得ることができ日々充実していましたが、今後の富士通のさらなる成長においてSG&Iが果たすであろう役割の大きさや、自分自身のさらなる成長の可能性を感じ、SG&Iの中で仕事をしてみたいと思い始めました。異動の話がきたのは、まさにそんな時です」
その後、SG&Iに異動してOperation部長に就任し、現在に至ります。
「人事で培ったこれまでの専門性を活かすのはもちろんですが、多様なバックグラウンドを持つメンバーと仕事をする中で、自分自身の既成概念を取り払い、新たなスタイルを取り入れるようないわゆるアンラーニングの必要性も感じています。というのも、SG&Iにきて最初に気づいたのは自分の中に一定のクセのようなものが身についていることだったからです。
人事を離れて今思うのは、おそらくどの部門でも組織固有の『常識』、言わばある程度の型というか行動様式のようなものがあるのだと思います。新たな挑戦をする際には、一旦そのような型や行動様式を手放して適正な形に再構築したり、適切な形で今の環境に取り入れたりすることが必要だと感じています。アンラーニングをするとともに自分がこれからどう価値を発揮していくかを、新たなチャレンジと捉え、模索し試行錯誤しているところです。
一方で、あらためてこれまでの人事での業務を通じて得られた経験や学びが活きていると感じることもあります。業務経験はもとより、感謝、謙虚、共感などこれまでの業務の中で得られた価値観のようなものは組織が変わっても大切なものだと思います。これもさまざまな仕事や経験の機会をいただけたからこそだと思います。本当に感謝しています」
組織にも個人にも、必要なのは変化し続けること
2023年で入社18年目を迎える和田。そのほとんどのキャリアを人事として築き上げ、管理職として約70名の組織を支える立場となった今、今後のキャリアをこう展望します。
「ビジネスに人事がどう貢献できるか、あるべき姿は何かを模索しながらここまでやってきました。よりビジネスに近いとはいえ、広い意味ではSG&Iも間接部門のひとつ。意識改革も含め、バックオフィスのビジネスパートナーとして価値を発揮していけるよう取り組んでいくつもりです」
一方、3年目を迎え新たなフェーズを迎えた「フジトラ」のDXOとしては、社内に向けてこう呼びかけます。
「『フジトラ』は今、ビジネスにおいて本格的な成果を出すべき段階に入ってきていると感じています。富士通全体が部門横断的にDX企業として、またSX(サステナビリティトランスフォーメーション)企業として、ビジネスのプロセスや仕組みを再構築していくためには、社員一人ひとりが変わっていくことが欠かせません。
変革を恐れる気持ちはきっと誰にもあるはず。でも将来を考えたとき、富士通という会社が存続するためにも、またそこで働く社員が新たな価値をつくり出し続けるためにも、一人ひとりが変化を起こし、変化を受け入れ続けることが大事だと思っています。人事から離れることは自分にとっては大きな変化であり、チャレンジではありましたが、ここでしか経験できないことがあり、この経験の先には新たな価値を提供できる存在に自分はなっていると思います」
「富士通の事業変革のエンジンになるところにSG&Iの存在理由があり、そのためにさまざまな挑戦をしていく」と話す和田。そこには前向きに、楽しんで進んでいこうとする姿がうかがえます。自らに課された使命を果たすために、これからも和田が挑戦の手を緩めることはないでしょう──富士通が新たな価値を提供し、持続的な事業拡大を遂げることをめざして。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
