グループビジョン推進と企業風土改革をリード。人や個性をつないで新たな価値創出を
親会社であるJ.フロント リテイリング株式会社が掲げる「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。」というグループビジョンのもと、2017年から「発明創造活動」を推進している大丸松坂屋百貨店。Iが所属する経営企画部では、その浸透活動を担ってきました。
「社内公募制度とは別に、新規事業を自由に提案できる手挙げ式のシート『チャレンジカード』というプラットフォームを用意し、アイデアを募る機会を設けています。
経営企画部ではこうした発明企画に対して、大丸松坂屋百貨店及びグループのリソース、アセットを活用し、スケールアップのお手伝いをしています」
また、Iが注力しているのが、企業風土改革プロジェクトです。その立ち上げ当初から携わってきました。
「2020年に経営トップとなった澤田には、斜陽産業と言われる百貨店業界をふたたび成長軌道に乗せたいという想いがあります。そのために欠かせないのが、お客様や地域社会に支持いただけるような、意味性の高い当社らしいコンテンツ。新たな事業戦略を実行できる組織に生まれ変わるべく、2022年の9月に企業風土改革プロジェクトの運営事務局が発足しました。
その後、半年間じっくり時間をかけて課題を深掘りし、経営層と共に仮説検証しながら、大丸松坂屋百貨店としてめざす姿を設定。それを実現するためのアクションプランを策定し、現在はその実現に向けて動いている段階です」
このプロジェクトの大きな特徴は、ボトムアップで進められていること。その背景にはこんな課題がありました。
「2017年にグループビジョンが掲げられた際、従業員が自ら挑戦できる枠組みはグループで整えました。しかし、クリエイティブ改革と称し、事業会社として愚直に浸透活動を推進する中で一部手段が目的化してしまい、結果としてその波に乗り切れる従業員は一定数に留まったという印象でした。
そこで、今回は従業員全員に一斉に変わってもらおうとするのではなく、想いを持った人を中心にした活動にしたいと考えたんです。少しでも会社を良くしたいと想っている『アーリーアダプター』が自ら行動を起こし、それに賛同した『フォロワー』がジョインするかたちで、改革の輪を徐々に広げていくことをめざしています」
プロジェクトマネジャーの立ち位置でアクションプランの推進を担うI。本社の風土改革と並行して、各拠点の風土改革も段階的に進めてきました。
「東京店をPoC拠点と位置づけ、2023年6月に東京店内にも事務局を立ち上げました。ここでは、スポンサー層が拠点全体の現状課題や今後のありたい姿を検討しつつ、想いのある有志を中心とした44名の取り組みを支援しています。
また、同年8月からは2024年度より改革が始まる名古屋・札幌・上野・心斎橋の4店舗の店長と共に、店長合同ゼミを月に1度のペースで開催し、変革の考え方や動き方を共に学び、お互いに知恵を出し合いながら、2023年度中に変革を構想段階まで進めていく予定です」
大丸松坂屋百貨店が新たな価値を創出するコンテンツホルダーになるために、企業風土改革プロジェクトには目標とする明確な組織像があります。
「当社は近年、効率化を図ることにより一定の成果を出してきましたが、それに伴って分業化が進み、『一緒に考える』という文化があまり浸透していませんでした。
思いや考えを自分の中に留めておく、百貨店らしく言うならば真意を包装紙で包むというような『包装紙文化』があったんです。
めざすのは、今よりさらに風通しが良く、発言が活発になり、共に答えを導き出していける組織。従業員一人ひとりが個性や発想・アイデアを自由に発信し、その結果、人と人とがつながって新たなコンテンツを紡ぎ出していけるような、いわば『紡ぐ文化』を醸成していきたいと考えています」
対話から生まれるつながり。共感を得た想いが紡ぐ新境地
学生時代、スポーツ用品店とホテルでアルバイトを経験したことがきっかけで接客の魅力に目覚め、小売業界を志すようになったI。幼いころに祖父母に連れられ訪れた幸せな記憶を辿るようにして、株式会社松坂屋(当時)に就職しました。
2007年の入社後、Iは松坂屋銀座店に配属されて販売からプロモーション、バイイングまであらゆる業務を担当。大丸との合併を経て、2013年に大丸東京店に移ってからは婦人ファッション・雑貨のマネジメント業務などに携わりました。
そして、2017年にIは本社へ。そこで、化粧品バイヤーとして新編集ゾーン開発・リーシングを経験したことが、現在の業務に活かされていると言います。
「当時、効率が良いとは言えなかったアパレルゾーンを圧縮し、それによって生じた余白スペースで新たな価値を提供する『新編集ゾーン』を構築するプロジェクトが立ち上がりました。MDチームが今までにない部門横断で最初に取り組んだのは、コスメと雑貨と食でゾーンを構成された大丸札幌店の『KiKiYOCOCHO』でした。
今までは、どちらかというと本社が決めたコンセプト・売場を店に落とし込むことが多かったのですが、札幌ではデザイン会社の方を交えながら現場とコンセプトづくりから対話を重ねたことで、店と本社の双方が新しい売場に愛着を持ったかたちでスタートすることができました。
私たちの手が離れた後も現場の初期メンバーが丁寧に想いをつないでくれたことでうまい具合に自走してくれていて、今ではInstagramに投稿するたびに500件近い『いいね』がつくほど、フォロワー数が増加しています」
もちろん、すべての取り組みが成功したわけではなく、苦い経験から学んだことも多いと言います。
「その後、他の店舗でも、あらたなコンセプトのゾーンを構築しましたが、オープン後まもなくコロナ禍に見舞われ、不要不急のアイテムで売り上げにつなげること、またコンセプトを体現し続けることが難しくなりました。
新たなコンテンツの開発には大丸松坂屋百貨店がやる社会的意義や大義が重要ですが、あわせてCSVにつなげることも非常に大切だと感じました」
こうした教訓を学んでいく中で、Iには一つの想いが芽生えたと言います。
「何かを変えようとする時、みんな一律一斉に変わろう!みたいな動きが多かったんですが、事務局の想いとしてはみんな一緒に変わらなくてもいいんじゃないかと。
地域のため、社会のために行動できる人は、誰に言われずとも自ら人とつながります。サステナビリティを担当し浸透活動をしていた時、共感した人がジョインし一緒に活動することで、店や地域、ひいては会社を超えた輪が広がっていくのを目の当たりにしました。
当社も、そういった思いがある人が中心となって活動でき、それをサポートする体制を整えたいと考えています」
双方向コミュニケーションを育む契機に。「各店ラウンド会議」で得た手ごたえ
グループビジョン推進の一環として、Iは経営層の「各店ラウンド会議」の立案と運営にも取り組んできました。
「以前より当社では全国14拠点ある店舗や事業所をラウンドし、社長や役員が自分の言葉で拠点のラインメンバー(部長やマネジャー、戦略系スタッフなど)に向けて経営方針や事業計画を語る『社長定例会議』を実施していました。
普段接することの少ない経営層と現場が直接対話できる貴重な機会ですので、もう少し“企業風土改革の実践の場”として工夫できないかと考え、今年から両者の腹を割った対話をめざし、事前質問や事後の匿名アンケートを従業員から募り、イントラネットに様子を上げるなどの取り組みを行いました。
また、ふわっとしがちな企業風土改革そのものについても、社長として取り組みたいと思った理由や、あくまで戦略実現のための手段であると捉えていることを、澤田から現場へダイレクトにメッセージしてもらいました。コロナ禍で各拠点が意気消沈する中、メッセージ内で澤田が10年後の後輩のために投資をすること、成長をあきらめないことを明言したことで、従業員からは『すごく勇気づけられた』といった前向きな反応が集まりました。
現在は主に本社改革の中で、本社のあるべき姿や、今後本社だけではなく全社に波及するような打ち手について、公募で集められた5人のメンバーとの議論がますます活発化しています」
2023年9月には3回目の「各店ラウンド会議」を控えるI。新しい試みへの意気込みをこう語ります。
「今回初めて、対話を中心とした意見交換会の実施を検討中です。次期中計の骨子ができ上がっているので、これを従来のようにトップダウンで伝えるのではなく、計画段階にあるものを従業員と共有し、意見をもらえたらと考えています。
これまでは匿名で質問や意見を集めていましたが、将来的には面と向き合って建設的な議論ができるような環境を整備していくことが今の目標です。コンサル会社の方から『こんなにトップダウンが成功している会社はない』といわれるほどいい意味で組織統制が取れているのが当社の強み。
今ある良い企業文化を骨組みとして横のつながりを育てていくためにも、まずはこうした対話の機会を増やし、『想いを伝えれば経営層はちゃんと応えてくれる』と従業員に思ってもらえる流れをつくっていきたいと思っています」
多様な人財がシナジーを生み出し、くらしの「あたらしい幸せ」を発明する企業へ
「自分が関わるすべての人を幸せにしたい」との想いでグループビジョン推進や企業風土改革に取り組んできたI。大丸松坂屋百貨店が「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する」企業へと生まれ変わり、日本の小売業の先頭に立ち続けるために、これからもより良い組織づくりに貢献していきます。
「お客様や周囲の人に対してどんな価値提供ができるかを、一人ひとりが主体的に考えられるような組織にしていきたいと思っています。決められたことを愚直にやりきる人のことを澤田は『実務家』と表現していますが、アーリーアダプターだけでなく、そんな『実務家』を含むすべての従業員がいきいきと働けるような会社にしていきたいですね。
前述のトップメッセージの中で『実務家』に向けて澤田がメッセージを発信したのですが、『自分たちのことが認められてとてもうれしかった』といった声が多く寄せられました。経営層が従業員に向けてメッセージを正確に伝え、それにみんなが共感しながら働けるような環境づくりのお手伝いができたらと思っています」
そんなIが大丸松坂屋百貨店にとっての最大の強みだと言うのが、人。同社の将来をこう展望します。
「新しいことに挑戦しようとするマインドは、以前から当社の中にありましたが、新規事業に人や資金を投資するなど社内の仕組みや制度がようやくそこに追いついてきたと感じています。
さまざまな仕事を経験してきた個性豊かな人財に加え、新しいグループビジョンに誘われるかたちで、他社での経験があるキャリア採用者などこれまでとは違ったDNAを持つ方もたくさん入ってきました。数年後には、思いもしないようなシナジーを生み出してくれることを期待しています。
また、新しくグループ全体のデベロッパー事業を担う法人やコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げたことで、グループシナジーという言葉がリアリティを帯びてきました。当グループの豊富なアセット、リソースを有効活用できる時代がもうそこまで来ているのを感じます」
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

