自分の中にある「ワクワク感」を大事に。一貫して持ち続ける催事企画への想い
現在Sは、本社営業本部店づくり推進部で、催事企画開発スタッフとして活躍。2011年に着任して以来、さまざまな催事に携わっています。
「私は催事企画開発スタッフとして、催事会場の企画から運営まで一連の業務を担当しています。年間40本以上の催事を手がけていますが、現在企画のメインとなっているのは集客イベントや展覧会。
構想段階から企画するというよりは、世間的な人気コンテンツやカルチャーを見つけ、コラボレーションできないかを考えることが多いですね。お客様のニーズを見極めながら、多くの人に喜んでもらえるような企画づくりをめざしています」
催事企画において、マーケット情報を得ることは非常に大切だと話すS。お客様のために常にアンテナを張り、多面的な情報収集に努めています。
「マーケット情報をキャッチアップするために、ビジネスセミナーに参加して事業者の生の声を聞くこともあります。また、何よりもエンドユーザー視点に立つことが大事なので、アニメやキャラクターなどエンターテイメントの最新情報を得ることにも注力しています。
いろんな配信サービスを確認したり、SNSから情報収集したり。フォロワー数やリツイート数などエンゲージメントの高さも一つの指標にしながら、常にアンテナを張るように意識していますね。
たとえば最近はアニメコンテンツに絡めた企画が人気なので、そのコンテンツを生かした展覧会など周辺ビジネスにも視野を広げて情報収集することもあります」
従来百貨店のあるべき姿は、多種多様な商品(=百貨)を販売することだとされてきました。時代が移り変わり、消費者の関心が“モノ”から“コト”に変わっても、Sの「楽しさを提供したい」という想いは変わりません。
「私たちの仕事は、『百の好き』『百の楽しさ』を提供することだと考えています。楽しいものをつくりたいし、ワクワクするものをお客様にお届けしたい。
そして、最終的にそのコンテンツを採用するかどうかは、『自分自身がワクワクするか』も大切な指標。実際に足を運んだり体験したりすることで、自分の感性や自分が楽しめるかどうかも重要視しながら、企画を考えるようにしています」
10坪の催事が生み出した大きな転機。IPビジネスの可能性に気づき、挑戦を続ける
1997年に新卒で株式会社大丸(当時)に入社したS。入社理由について次のように話します。
「当時私はファッションが好きで、自分の好きな商品をお客様に提供できる百貨店の仕事に惹かれました。そして、百貨店にはファッション以外にも商品がたくさんあるので、たとえ自分の興味関心が洋服以外に移り変わったとしても、好きなものをお客様に提供し続けられると思ったんです。『好き』を届けたいという気持ちは、入社時から一貫して変わりませんね」
入社後、Sは大丸梅田店に配属となり、婦人雑貨子ども服部(当時)での販売業務や、販売促進部でのお店のプロモーションなど、幅広い業務を経験。2011年には本社へ異動となり新規開発担当バイヤーとして着任しました。
現在は催事企画開発スタッフと職掌は変わりましたが、本社に異動後は一貫して、これまで百貨店になかった商品や取引先の開拓を任されています。
「着任当初はうまくいかないことも多かったのですが、2013年に関西初となる期間限定店『キキ&ララショップ in Daimaru★Shinsaibashi』を大丸心斎橋店で開催したことが私のターニングポイントになりました。ストアは2週間で2,000万円の売上を記録し、同時に同フロアにあるカフェでもコラボレーションしたところ、カフェの売上も前年比で約4倍に。
この経験は私にとって大きな自信となったとともに、IP(知的財産)ビジネスの大きな可能性を感じ、その後さまざまなコンテンツとのコラボを実現するきっかけになりました」
自分自身が取り組む領域をより増やしたいと思い始めたSは、ポップアップストアとコラボカフェを成功に導いた後、事業拡大に向けてさらなるチャレンジを続けます。
「この催事は10坪という小規模なものだったのですが、展示会サイズである200坪規模までに拡大できればさらに売上は伸びるし、メディアに注目される機会も増えると考えました。そこでまずチャレンジしたのが、地方テレビ局とのレベニューシェアによる展覧会の開催。
『チームラボ 学ぶ!未来の遊園地』など人気のコンテンツを各地域のテレビ局と共同で多数開催し、展覧会事業での成功事例を増やすことができました。
また一方で、2016年にはオムニチャネル戦略の一環として、北海道物産展のマーケット拡大を目的に、ECとリアル催事をつなぐWebメディア『to the north』の立ち上げも経験(現在は閉鎖)。外部の方とメディアを作っていく中で、考え方やノウハウといったクリエイティブな部分に触れられたことは非常に勉強になりました。
それらを自社のビジネスに活かしたり、新しい仕組みとして導入したり。外部とのつながりは、自分自身のスキルアップにも欠かせない要素だと感じています」
製作委員会の手法にチャレンジし、収益の多元化に成功。コロナ禍にはデジタルとの融合
数々の展覧会を手がけてきたSが、もっとも印象深いと語るのが2020年に開催した「マーベル・スタジオ/ヒーローたちの世界へ」。この催事でも、新たな試みにチャレンジしたのです。
「『マーベル・スタジオ/ヒーローたちの世界へ』は、私たちが初めて製作委員会として参画した企画です。製作委員会とは、1つのイベントやコンテンツに対して複数企業が共同出資して、ともに運営や開催するシステムで、私たちも企画会社と一緒に企画元として出資し、お互いの強みを発揮して展覧会を成功させました。
企画会社に企画料を支払って各店舗で開催するという、これまでの展覧会のやり方との大きな違いは、展覧会の企画自体を自社以外の商業施設、美術館に販売できることです。『マーベル・スタジオ/ヒーローたちの世界へ』は全国8カ所で開催し、そのうち3つは当社の店舗、5つは他社の会場だったのですが、当社以外で開催しても収益が発生するしくみを確立することができました」
製作委員会に参画するという大丸松坂屋百貨店としても初めての取り組みに挑戦し、収益の多元化にも成功したS。さらなる事業成長をめざして、製作委員会としてコンテンツ数を増やしていきました。そして2020年のコロナ禍以降は、デジタルコラボ企画にも挑みます。
「時間や場所、人数が制約されたコロナ禍においては、百貨店もマインドチェンジが求められました。これまでのリアル開催や大人数での催事以外に、異なる領域で収益手段を模索する必要があったんです。
そこで、2023年に開催した『AKB48大衣装展』では、リアル催事と連動したメタバースコンテンツを開発。また、直近ではAR技術を催事に活用するなど、最新のデジタルテクノロジーを取り入れた企画にも挑戦しているところです。
私たちがめざすのは収益手段の多元化だけでなく、IPコンテンツの体験価値を革新すること。変化する環境に適応しながら、持続可能な事業成長を実現していきたいですね」
いち早く「好き」を具現化できるのが催事の醍醐味。現状に満足せず挑戦を続ける
時代の変化や催事企画を生み出す難しさを感じながらも、前例のないことに挑戦し続ける理由についてSはこう話します。
「どうせ仕事をするなら楽しいことをやりたい、お客様に良いものを提供して笑顔にしたい、という想いがずっと私の原動力ですね。私は、その時代のマーケットのど真ん中にあってもっとも大衆化しているものをエンタメと呼んでいますが、催事の醍醐味はそういう“お客様が求めているもの”をいち早く具現化できることだと思っています。
たとえば、新たな企画にチャレンジする場合、固有の売場づくりから始めてしまうと投資額が大きくなりますし綿密な事業計画が必要になります。一方、催事ならある意味『実験場』のように比較的小規模で始められるため、ワクワク感を覚えながらさまざま挑戦がしやすいんです。これは催事企画という仕事の大きな特徴であり、魅力ですね」
エンタメという人々の「好き」に着目することで、催事の可能性は無限に広がっていく──Sはそう確信しています。
「現在、文具をテーマにした催事を事業者様と一緒に企画していますが、文具は一般的な取り扱い商品と比べて単価が安いことから、催事では開催が難しいのでは?と周囲から声がありました。でも“文具好き”は世の中にちゃんと一定数いて、その人たちを集客できれば大きな成果を出せることがわかりました。
人の『好き』は無限にあり、それぞれの『好き』に焦点を当てれば催事の可能性も無限大。そのためには、さまざまなエンタメをいち早くキャッチする感性や情報力も必要だと感じています」
今後は催事にとどまらず、百貨店全体のコンテンツ開発にも注力していきたいと話すS。
「たとえば、メタバースを活用したデジタル空間での催事イベントや、一年中集客できる常設ショップの企画などにも挑戦し、どんどん領域を広げていければと思います。
また、Z世代のトレンドである韓国ブームに着目し、韓国IPを起点とした韓国グルメ、コスメ、エンタメなどを集めた編集ゾーンのようなコンテンツ開発も視野に入れています」
催事企画に一番必要なのは、「楽しいことがやりたい」という気持ちだと言うS。そんな想いを持つ仲間との出会いを待っています。
「当社のグループビジョンである『くらしの「あたらしい幸せ」を発明する』を、無限のジャンルで実験的に取り組んでいけるのが催事の仕事だと考えています。
ですから常に新しいことにチャレンジできる環境を求め、お客様に『ワクワク感』や『楽しい』を届けたい方にはやりがいを感じてもらえると思うので、ぜひ当社に入社していただきたいですね」
※ 記載内容は2024年8月時点のものです

