世界のモータースポーツを支える、ボッシュエンジニアリング。レーシングカーがサーキットを走り抜けるその裏には、エンジニアの熱い想いがあります。グローバルに仕事をする中で感じるモータースポーツの魅力やエンジニアとしてのやりがいを、松本、清水、野村が座談会形式で語ります。
【動画公開中】ボッシュのエンジニアが語る、モータースポーツの裏側
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ここからは動画内の座談会で語られたエンジニアの想いなどを詳しくお伝えします。
自分がサポートしたクルマがサーキットで走るのを見るとワクワクする
──まずは、現在のお仕事内容を教えてください。
清水 暢昭(以下、清水):私は、SUPER GTのうち、GT300で使われるABS(アンチロックブレーキシステム)のサポートや、スーパー耐久、二輪など他のレースカテゴリの車両開発案件、自社製品の開発を担当しています。
野村 一成(以下、野村):私は現在、清水から引き継いでSUPER GTのトラックサポートをメインに担当しています。
松本 圭右(以下、松本):私は、マネージャーとしてチームをとりまとめながら、これまでの経験を活かして燃料系の部品を担当しています。
──SUPER GTは、世界で活躍するドライバーがハイレベルなレースを繰り広げる大会です。ボッシュの製品は、サーキットを走るクルマすべてに組み込まれているのでしょうか?
野村:SUPER GTには、GT500とGT300という2つのクラスがあります。GT500に参加する15台の車には、すべてボッシュの製品が搭載されています。GT300でも、使っていただいている車両があります。
──実際にサーキットを走っているのを見るのは、どんな気持ちですか?
野村:自分が関わった製品がクルマになって走っていると思うと、すごく興奮しますよね。
清水:ワクワクしますし、その製品が何かトラブルを起こさないかヒヤヒヤしながら見ている面もあります。
──モータースポーツ部の大きな役割は、部品の提供と技術的なサポートだと思いますが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか?
野村:大きく3つあります。1つめは製品導入時のサポート。2つめがオーダーメイドのエンジニアリングサービス、3つめが現場でのトラックサポートです。
清水:製品導入時のサポートというのは、お客様に私たちの製品を納めた後、クルマに搭載するタイミングで、取り付け方などを電話対応などでサポートすることです。
その際、他のメーカーの製品から変更するケースなどでは、データの移行作業が必要な場合があります。そういったお客様それぞれのケースに合わせてサポートするのが、オーダーメイドのエンジニアリングサービスです。
現場でのトラックサポートは、レース中に万が一トラブルが起きてしまった場合に、すぐに私たちがサポートできる体制のことです。
──製品購入時から走行するところまで、ずっとサポートするのですね。自動車メーカーとは、具体的にどんなやりとりをしていますか?
野村:まずは、参加するレースに合わせてクルマを作っていく上で、製品の性能を最大限発揮するためにはどんなシステムや使い方が最適かというやりとりがあります。
清水:導入後は、たとえばレース中にトラブルがあった場合に、その情報を解析するためのデータをいただくこともあります。そのデータを日本側で一次解析して、必要であればドイツで二次解析をして、次のレースまでに対処します。
松本:あとは、トップマネジメントの方たちと将来に向けた話をする機会もあります。メーカーが会社としてどういう方向に進んでいくのか、どのレースに参戦しようと考えているのかなどを知った上で、私たちも製品のポートフォリオや開発の方針を合わせていきます。
ワールドワイドなコミュニケーションを強みに世界中のレースをサポート
──モータースポーツ部は普段、どんな領域で活動をされているのでしょうか?
松本:端的にお話すると、みなさんが目にする世界各国のレースに、私たちの何かしらの製品が使われていると言っても過言ではないと思います。
日本ではSUPER GTがメインですが、世界を見ると「ル・マン24時間レース」に代表される、FIA世界耐久選手権にも私たちの製品が搭載された車両が走っていますし、電気自動車のフォーミュラカーレース「フォーミュラE」にも関わっています。
──まさに、ワールドワイドな活躍ですね。世界にある拠点とも協力しているのでしょうか?
松本:扱っている製品は世界共通で同じものなので、コミュニケーションは日常的にとっています。
野村: 2023年の9月に、世界耐久選手権のラウンドが日本で開催されたのですが、その時はドイツから来ているチームをサポートするために、私たち日本のメンバーも参加しました。
清水:業務以外でも、新しく入ってきた従業員たちが世界から一堂に集まって参加するニューカマートレーニングがありますし、年に1回、北米で技術交流会も行われます。
技術交流会では実際にテスト車両を走らせることができて、自分たちでデータを触り、どういうふうに動きが変わるかを試せるので、とても勉強になります。
野村:普段からチャットで「これを教えて!」と海外のメンバーと気軽に連絡がとれたり、必要な時に必要なサポートをワールドワイドに受けたりできることは強みですよね。
関わる全員が限界を突き詰め、魂が1台のクルマに宿るのがモータースポーツの魅力
──みなさんがモータースポーツを好きになったきっかけは何ですか?
清水:中学生の時に、佐藤 琢磨選手の活躍を見てF1に魅了されたことがきっかけです。高校生になって初めて鈴鹿サーキットに行った時には、涙が出るくらい感動しました。
ボッシュに入ってから琢磨選手に会う機会があったのですが、「中学生の時に琢磨選手を見て、この業界を志しました」と伝えることができて胸アツでした。
野村:私は、親がF1ブームを経験した世代ということもあり、4歳のころにレーシングカートを始めて中学生まで続けていたので、一番身近なスポーツがモータースポーツでした。
中学できっぱりやめ、モータースポーツに関わるつもりはなかったのですが、同世代でSUPER GTに出ている選手もいますし、別のベクトルから関わるのもおもしろいなと思い、この世界に戻ってきました。
松本:私は、2人のような感動的な話はないのですが……。小学校3、4年生のころにはすでにF1を見ていたんです。きっかけは思い出せませんが、それ以来ずっとモータースポーツが好きで、長年見つづけています。
──モータースポーツの魅力を教えてください。
清水:限界を突き詰めているところだと思います。クルマを開発する段階では、設計者や開発者がその時点での知見を精一杯使う。クルマができあがったら、エンジニアが頭をフル回転させて、速く走るようにセッティングをする。そしてドライバーが、ドライブ技術と体力の限界を攻め切る。関わる人の魂が1台のクルマに詰まっているところが魅力です。
野村:全部言われてしまいましたが(笑)、それ以外にも音や見た目など、非日常の世界が広がっているところも魅力です。
ドライバー目線で言うと、1位を走っていたとしても、後ろの勝負の様子を見ながら、そこをコントロールするような走り方をしたり、チームとの作戦もあったり、メンタル面での駆け引きが濃いところもおもしろいです。
ゼロから1を作り上げ、グローバルな環境下で働けることがモータースポーツ部での仕事の魅力
──モータースポーツ部でのやりがい、おもしろさを教えてください。
野村:グローバルな体制があるところが一番の魅力です。同じ製品が世界各国で使われているので、レースで使われた時のノウハウがシェアされていくのは、ボッシュの強みですよね。
清水:まったく形のないところからクルマができあがっていく、ゼロから1を作り上げていくところも、やりがいを感じますし、おもしろいところです。
準備に時間もかかりますし、大変なのですが、初めてエンジンに火が入った時や、初めてテスト走行した時は、それまでの苦労が報われた気持ちになります。
松本:私は35年モータースポーツを見てきていますから、好きなフィールドで仕事ができていることが一番のやりがいです。
入社した時は、周りは日本人ばかりでしたし、グローバルに働けることを求めていたわけではありません。ただ、今結果的にモータースポーツのフィールドでワールドワイドに仕事ができていることは、とても楽しいです。
──みなさん、英語が話せる状態で入社されたのですか?
松本:私はまったく話せませんでした。入社時の研修で、英語のテストを受けてクラス分けされるのですが、当然ながら一番下のクラスでした(笑)。
野村:英語が話せるから入社できるわけではないですし、話せるようになる環境がありますよね。半ば強制的に勉強する場があるのは、良いことだと思います。英語がネイティブな人も、うまいかどうかや、文法は気にしていないんです。伝わることと伝える気持ちが大事だという雰囲気なので、そういった面もグローバルだと感じます。
──普段の業務の中で学んだことを教えてください。
清水:「今ある材料で最高の料理をする」ことです。時間が限られている現場で精度の高いアウトプットをしなければいけないので、「今できるベストは何か」を考え、お客様にとってもベストな回答になるよう意識しています。
野村:私は、コミュニケーションの中で何をしてほしいのかを読み解く大切さを学びました。本当にお客様が解決してほしいことと、その伝え方が必ずしも一緒とは限りませんから、良い意味でお客様の言葉に疑いを持つことを意識しています。
トラブルが起きている時などは、目の前に事象に気を取られてしまうので、「本当の原因は何か」を考え、最短距離で解決策を出すことが大事です。
松本:私たちが扱っている製品は、センサー、エンジンコントロールユニット、パワーボックス、ディスプレイなど、すごく幅広いんです。自分の知識として蓄えていないと、お客様と会話ができませんから、日々勉強するしかありません。
清水:時代の変化とともに部品の数も増えますし、使える技術も増えるぶん、新しいアイデアも生まれます。そこに対応できるよう、私たちも追求し続けないといけませんね。
熾烈なレースに欠かせない「脊髄」「頭脳」「心臓」となるパーツ
──普段みなさんがサポートで扱っている製品がどのように活躍しているのかを紹介したいと思うのですが、ヒトの体のパーツにたとえて説明していただけますか。
清水:GT500クラスのすべてのクルマに搭載している「パワーボックス」という部品があります。これは、クルマ全体の電源をコントロールする部品なので、体でたとえると「脊髄」です。
清水:「頭脳」であるエンジンコントロールユニットからパワーボックスに指令が来て他の部品を動かすこともできますし、人間の反射のように直接センサーの信号が来て、すぐに部品を制御することもできます。
野村:先ほど清水さんが「頭脳」と言ったのが、「エンジンコントロールユニット」です。エンジンからの「今、どういった状態で動いています」という情報をもらって、処理方法をコントロールするものです。
野村:これは乗用車にも積んである部品ですが、レーシングカーに使われるものは、できることの幅広さと深さが違います。
たとえば、サーキットでクルマを作業する場所ではスピード制限があるのですが、その制限速度までしか出ないように切り替えたりすることができます。
松本:「脊髄」「頭脳」ときたので、「心臓」にあたるのが、私が担当している「燃料ポンプ」です。
松本:全身に血液を送るように、ガソリンをエンジンに送る部品です。中に入っているピストンが下がると燃料を吸い込んで、上がると押し出すという単純な動きなのですが、エンジンコントロールユニットがバルブをコントロールすることで送る燃料の量を調整しています。
モータースポーツは「走る実験室」、自動車業界の技術を底上げしたい
──カーレースというと、爆音で排気ガスを出してというイメージを持っている方もいると思いますが、以前のモータースポーツと変化してきている部分はあるのでしょうか?
松本:以前は、速く走るために予選1回だけで使うエンジンやタイヤも存在したのですが、今はあらゆるものに使用数の制限が入っています。
野村:SUPER GTでいえば、レース中に給油やタイヤ交換のためにビットインしなくてはいけないルールになっています。無尽蔵にガソリンやタイヤを使ったとしても、レースでは勝てないようになっているんです。トータルして、どれだけ効率良く省エネで力を出すかという技術や作戦を求められています。
──モータースポーツは「走る実験室」と言われていますが、それはどういう意味でしょうか?
松本:モータースポーツという過酷な環境だからこそ試せることがあるんです。たとえば、日本で行われる「スーパー耐久」というレースでは、水素エンジンの車両など新しい開発要件を持ったクルマのみ参戦できるクラスがあって、実験室という意味では一番熱い場所です。
私たちも、自分たちの技術を磨くことはもちろん、モータースポーツ業界、自動車業界の技術を底上げしていくために積極的に関わって、貢献していきたいと思っています。
野村:もちろん、モータースポーツでしか使われない技術もあるのですが、乗用車にフィードバックできる知見もあります。
たとえば、レースでも乗用車でも、アクセルの踏み方は十人十色。どんな踏み方でも燃費をある程度担保するにはどうするか、といった考え方はモータースポーツから来ています。
──そう聞くと、モータースポーツが身近な世界に感じますね。最後に、今後の展望を聞かせてください。
清水:自動車業界に限らず、世の中に出てくる新しい技術を身につけて、いろいろなアイデアを出せるエンジニアになりたいと思っています。
野村:私はまだゼロから1を生み出すプロジェクトを経験していないので、その経験をしてみたいです。また、せっかくワールドワイドな部署にいるので、世界に通用するエンジニアになりたいですね。
松本:私は、日本のモータースポーツ業界におけるボッシュというブランドを維持しつつ、今後もさらに広めていきたいと思っています。そして、日本のみならず、アジアの国々にもビジネスを広げていきたいですね。
──この勢いで、どんどん世界に広がっていくのが楽しみですね。本日は、ありがとうございました。
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