中長期的なグローバル商品戦略を構想。未来を描き、愛され続けるクルマをつくる
事業業務部 商品企画グループは、2030年を見据えたグローバル商品ラインアップと個別商品のコンセプト企画を担っています。
グローバルな商品セグメントをどう設定し、何車種を配置して各車種にどのような役割を持たせるのかといったトヨタ自動車の中長期の商品戦略を描くことが、私たちの役割です。
市場動向やお客さまのニーズ、競合の動き、各国の規制、技術進化など、外部環境の変化を分析することは欠かせませんが、市場分析や収益性の試算は、生成AIでも一定の精度で導き出せる時代になりました。
数字から学ぶことは多くあります。ただし、それだけで確かな未来を描けるわけではありませんし、良い商品を保証してくれるわけでもありません。
私たちが向き合っているのは、その先にある“問い”です。トヨタがお客さまに提供すべき価値とは何か。将来にわたって世界のお客さまに必要としていただき、愛していただける商品とは何か。
「トヨタとしてあるべき姿」を問い続け、数字には表れない潜在ニーズや、言語化されていない期待に想いを巡らせる。そして、真剣に夢を語り、実現性を含めて最後まで語りきること。それが私たちの使命だと考えています。
その責任を担うグループマネージャーとして、私は並行する複数プロジェクトの進行を管理しながら、メンバーの育成にも携わっています。
チームをまとめる立場として大切にしているのは、違いを尊重することです。メンバーの考え方は一人ひとり異なります。多様な視点を前提に議論を重ね、最終的には「正しいかどうか」ではなく、「どうすれば、より社内外のお客さまのお役に立てるか」という軸で意思決定をすることを心がけています。
私たちが取り組む商品企画の仕事は、どれも決められた仕事の進め方はなく、正解もありません。それでも、その中で自分なりの答えを見つけ、描いたものを少しずつ形にしていく過程に大きなやりがいを感じています。
国際社会への関心が原点に。グローバルな現場での対話が育んだ仕事観
現在の仕事につながる問題意識の出発点は、高校時代の経験にあります。私は高校2年生のとき、交換留学でカナダに滞在しました。滞在先はケベック州です。異なる言語や信条を持つ人々が、価値観の違いを抱えながら共生している姿を日々経験し、平和で持続可能な国際社会実現に貢献したいと考えるようになりました。
国連職員を志し、アメリカの大学で国際関係を専攻しましたが、入学直後に起きた9.11同時多発テロが大きな転機に。政治的な議論だけで社会の課題は解決できないのではないか。豊かさや平和を支えるのは技術なのではないか。そう考えて工学へ転向し、材料技術やプラント設計を学びました。
就職活動では、幅広い業界を視野に入れていました。さまざまな産業にじかに触れられる貴重な機会だと考えていたからです。最終的にトヨタを選んだ理由は、最終面接で「あなたのやりたいことは、トヨタの仕事では技術系ではなく事務系ではないか」と指摘されたことです。当時、自分でも言語化できていなかった志向を見抜き、採用するかもわからない一大学生の将来を考えてくださることに心を動かされ、入社を決めました。
入社後、現在と同じ商品企画を担当する部署に配属され、セダンやSUVなど、グローバル車種の市場分析を担当しました。市場の動向や、お客さまのセグメント間の移行トレンドをデータから読み取り、どの領域の伸長が見込めるかという量的変化、お客さまの指向の質的変化、加えて、規制動向を整理し、マネージャーの戦略提案を支える役割です。
大きな方向性が定まった後は、個別商品の企画にも携わりました。データ分析に加え、北米や中国のディーラーさま、お客さまへのインタビューを通じて現地の声を直接聞き、コンセプト提案につなげていきました。
若手時代に担当した、北米専用車の現地自立化プロジェクトも記憶に残っています。アメリカ現地で企画・開発までを一貫して担う取り組みで、当時まだ経験の浅い立場でしたが、本社側の企画担当としてプロジェクトを任され、現地メンバーと共にコンセプトづくりを進めました。
現地メンバーからは、「自立化と言うからには、アメリカ人がアメリカ人のためにクルマを企画するから好きにやらせてほしい」と率直な意見が寄せられました。「アメリカ人の目を持っていないあなたに、アメリカ人に求められるクルマを理解し企画することはできない」と厳しい指摘を受け、議論が白熱する場面もありました。それでも、企画・技術・デザイン部門が三位一体となって対話を重ねる中で、互いの意図を理解し合い、ときに役割を超えて連携しながら前に進めることができました。
当時の商品企画の仕事には標準化されたプロセスがなく、明確な育成カリキュラムもありませんでした。そうした環境の中で、自分は何に貢献できるのかを模索しながら学んだ日々は、大きな財産になっています。
仕事と家庭を両立する中で見えた本質。海外駐在がキャリアの転機に
私はこれまでに3度、産休・育休を取得しています。最初の産休は入社3年目という早いタイミングでしたが、その後も商品企画を軸に仕事を続け、キャリアを積み重ねてきました。
仕事と家庭を両立する上で大切にしてきたのは、「完璧を求めない」ことです。仕事も家庭も、それぞれ8割の事しかできなくても「合わせれば1.6人分の“仕事”をしているはず」。会社に居るときは仕事に、帰宅後は短い時間でも子ども達に全力で向き合う。それでも時間は有限で、仕事も育児も中途半端になっているのではないかと悩む事も多かったですが、そう自分に言い聞かせることで、なんとかキャリアを継続してきました。
それが可能だったのは、仕事の特性も大きかったと感じています。商品企画は、分単位の対応よりも、中長期のスパンで独自の視点や発想を練り上げることが価値を生むからです。たとえ子どもが熱を出してデスクに向かえない日でも、移動中や家事の合間に思考を深めるなど、限られた時間の中で自分なりの強みを発揮し、成果を出し続けることに集中してきました。
もちろん、周囲の存在も不可欠でした。3度の休みをいただく際に、業務を快く引き継いでくれた後輩や、母親であることを理由に制限を設けず、挑戦機会を与え続けてくれた先輩や上司には感謝が尽きません。
後年、自分もマネージャーという立場になり、何を考えながら上司は自分を育成してくれたのかを伺いました。その上司は「時間の制約がある中で、どこまで任せ、どこで支えるべきか正直悩んでいた。でも、君をマネジメントすることで部下育成を学ばせてもらった」と言ってくれました。迷いながらも、温かく見守ってくれる環境があったからこそ、今の私があるのだと実感しています。
こうしたキャリアの中で、とくに印象に残っているのは、入社14年目の海外駐在です。自身の方向性に行き詰まりを感じていた頃、かつての上司から「ヨーロッパに来ないか」と声をかけていただいたのです。
挑戦すればこれまで以上に仕事に専念することが求められます。それでも、「一緒に働きたい」と言ってもらえる機会は今後ないかもしれないと思いました。家族と話し合った結果、夫が仕事を辞める決断をして、同行してくれることに。約5年にわたる海外駐在が実現しました。
現地では、市場に近い立場でお客さまや販売代理店さまと向き合い、率直なフィードバックを直接受ける機会に恵まれました。商品の価値を伝えるためには、自分自身が深く理解していなくてはなりません。クルマに対する熱い情熱を持つ欧州のステークホルダーの皆さまとのやりとりの過程で、多くの学びがありました。
同時に、この海外駐在は家族にとっても大きな節目になりました。夫は子どもと向き合う時間を持ったことで、自分のやりたいことを見つめ直すなど、新しい一歩を踏み出すきっかけになったのです。
また、駐在中はチーム運営にも関わり、本格的にメンバーのマネジメントに取り組みました。評価の透明性が求められる環境で、人と向き合い、責任を持つ立場の重さを身をもって実感しました。
当時の上司から教えられたのは、「決めて、動いて、責任を取る」のがマネージャーの役割だということ。この言葉は、今も私の指針になっています。
こうした経験を通じて、組織として誰にどう報い、どうすればメンバー一人ひとりの力を最大限に引き出せるのかを考えるやりがいを知りました。それが、現在のグループマネージャーという役割につながっています。
与えられた役割を、価値に変える。全員活躍でつくる新しい未来
トヨタでは、人事担当が一人ひとりの強みを見て配置や異動を考えてくれていると実感しています。これまでのキャリアを振り返ってみても、どの仕事にも意味があり、どの場所でもやりがいを見いだすことができました。
「蒔かれた場所で咲きなさい」という言葉がありますが、その教えの通り、これからも与えていただいた役割の中で、自分の価値を発揮し続けていくことが、社会への貢献につながると信じています。
トヨタには、すべての職場に「カイゼン」のマインドが根づき、今日より明日をよくしようとするカルチャーが隅々まで浸透しています。また、多様な考え方を受け入れながら、チームワークを通じて「全員活躍」をめざしています。
企業戦略で掲げる「Mobility for all. Leave no one behind(誰も取り残さない)」という姿勢は、組織のあり方そのものです。職場先輩制度をはじめ、挑戦する人を見捨てず育てようとする風土があり、ファーストキャリアとしてはもちろん、キャリアの再挑戦の場としても胸を張って勧められる場所です。
さらに、日本人として「産業報国」、つまり産業を通じて日本や世界を良くしていくという大きな使命に本気で取り組めることは、この会社で働く大きな誇りです。
自動車業界は今、大きな変革期にあります。業界の特徴として女性比率はまだまだ高いとは言えませんが、トヨタには性別や年齢、ライフステージに関わらず活躍できる環境が整っています。違いを否定せず、協働を楽しめる方にぜひ参画していただきたい。そして一緒に、新しい未来をつくっていきたいです。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです
