幅広い知識で多様な部署をつなぐ。お客さま視点で電気自動車の「頭脳」を設計する
私は現在、電気自動車(BEV)の開発を行う「BR BEV」という組織で、競争力の高いBEVを生み出すというミッションに向かって邁進しています。中でも私の所属するグループでは電子システムアーキテクチャの設計や評価を担当しています。
電子システムアーキテクチャとは、ソフトウェアや通信、電気系統など車の目に見えない機能を司るシステムの構造のことです。とくに今のクルマは外部のサーバーとつながってサービスを提供することもあるため、「動くスマートフォン」と比喩されることもあります。
私たちのグループは数十人ほどの規模で、アーキテクチャ設計を通じてトヨタが実現したいことを推進する役割なので、幅広い知識が必要なことからベテランのメンバーが多く集まっています。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーがおり、他の部署と比較すると私のようなキャリア採用者も多いほか、多様な専門性が必要なことから協力会社さまから来ている方や出向の方も多いところが特徴です。
仕事の流れとしてはまず企画部門から「こんな機能を実現したい」という抽象的な要望が届き、それを具体的なシステムの要件に落として実現をリードしていきます。その機能を実現させるさまざまな部品の部署とコミュニケーションを取り、「こういう機能を作りたいのですが、これってできますか?」と一つひとつ仕様の整合を行います。
このようにさまざまな部署のメンバーと対等に議論を重ねなければならないので、必要とされる技術分野の知識が多岐に渡ります。基本的には一人ひとりが裁量権を持って個人で業務を進めていますが、自分で解決できない時は困り事をグループ内で共有しあい、チームで解決しています。
私自身も現在複数の機能の仕様作成や評価を行っています。いずれの機能も複数の部品が協調して動作する機能であるため、システム全体を俯瞰したアーキテクチャ設計がしっかりできているかが重要になります。設計にあたっては各部品の部署と話し合い、仕様に問題がないか確認しながら機能の目的を効率よく達成できるアーキテクチャを決定していきます。また、評価の側面では機能が設計した通りに動くかどうか、予想外の動きをした時に危険がないか、お客さまにとって使いやすいかなどを確認しています。
私が仕事をする上で大切にしていることは、設計している機能がお客さまにどんな価値を提供できるのかを常に意識することです。設計業務をしていると、動けば成功と思ってしまいがちなのですが、本当に大切なことは車両に実装された際にお客さまに喜ばれるかどうかです。「設計としてやりやすいから」という理由で物事を決めてしまわないよう、常にお客さまにどんな体験を与えるかを意識して設計に当たっています。
「車両レベル」で考えたい。部品メーカーでの経験を経てカーメーカーへ歩んだ道
大学院でモーター制御の研究をしていた私は、そこで培った知識が活かせると考え、2012年に電動パワーステアリング(EPS)を開発・製造している企業に入社しました。EPSとはハンドルを回してタイヤを動かす際に、ハンドルを動かす力が少なくてもタイヤが回るようにモーターの力でアシストする部品です。
入社後は、制御設計とソフトウェア設計の2つを経験しました。制御設計では大学で研究していた内容を活かし、ある機能を制御の設計からソフトウェアに書き起こしてクルマに実装。評価して、カーメーカーさまのところに持っていくまでの一連の流れを担当させてもらいました。その経験を活かして、次はソフトウェア実装を行う部署に異動。そこで今行っているようなアーキテクチャに携わるようになりました。
転職を考えるようになったきっかけは、車両のことをもっと詳しく知りたいと思ったからです。要件分析をしたり、自分が関わった部品設計の結果が車両にどのような影響を与えるのかをカーメーカーさまに説明したりしている中で、部品レベルでは「こんな振る舞いになります」と答えられますが、車両レベルになるとどうなってしまうか想像できなかったんです。「実際にクルマに乗るドライバーにどんな価値が提供できているのか知りたい」という思いから、カーメーカーへの転職を意識するようになりました。
前職で複数のカーメーカーさまと関わってきた経験や面接を通じて、トヨタの社員の真面目さや課題に対する向き合い方に共感し、2025年に入社しました。入社当初から前職の経験を活かして電子システムアーキテクチャに携わることを希望しており、実際仕事を始めてみても期待通りの業務ができていてうれしく思います。
一方で入社後に苦労したのは、車両としてのシステム全体を見ることです。これまで部品単位でクルマを見てきましたが、トヨタではクルマ全体を見ることになり、その規模の大きさと複雑さに初めは戸惑ったことを覚えています。しかし、周囲のメンバーのサポートもあり徐々にその複雑さにも慣れ、車両のシステム全体を理解できるようになってきました。
ユーザーの顔が見える喜び──完成車づくりで得た新たなモチベーション
トヨタに入社して非常に感動したのが、個人に裁量を持たせてくれる文化です。「こうしたい」と意欲を示すと、かなりの裁量を持たせてくれますし、学ぶ環境も整えてくれます。たとえば「こういうふうにやろうとしたんですが、まったくうまくいきませんでした」と正直に話すと「こういう方法はどう?」と新たなアイデアを提供してくれる人が必ずと言っていいほど現れます。
私が先輩から聞いた言葉でとくに印象に残っているのが「動けば何か起きます」という言葉です。完璧な状態でなくても叩き台を作って関係者を集め、「こういうことを考えているのですが、どうでしょうか?」と相談すると、「それはこうじゃないよ」「ここはこうしてみたら?」とみんなが意見を述べてくれます。
このように一度動き出したら、そこから課題を見つけて潰していくことができますし、関係するメンバーも協力してくれるようになります。逆に言えば、自ら行動せず、考えていることを周囲の人に伝えなければ、何も返ってこない環境なので、できるだけ早い段階で考えていることを行動に移すよう意識しています。
また、多くの部署のメンバーと関わる中で気づいたのは、初対面のメンバーにも質問を投げかけると丁寧に対応してくれることです。私はキャリア採用者ということもあり、まだ初対面のメンバーとコミュニケーションを取ることも少なくないのですが、聞きたいことをしっかり整理し、「それを解決することがトヨタのためになるんだ」ということを理解してもらえれば、誰もが快く協力してくれると感じています。
トヨタで働く最大のやりがいは、完成車づくりに関われることです。実際にお客さまが乗るクルマづくりに直接関われるので、ドライバーの目線に立って仕事ができることに強いやりがいを感じています。
また、大きな裁量を持って仕事を進めさせてもらえる環境もやりがいにつながっています。失敗する可能性があることも「とりあえずやってみよう」という雰囲気があり、日々チャレンジングなことができて、自分の成長にもつながっています。何か提案すると、上司も「やってみたら?」と背中を押してくれることが多く、日々の仕事にワクワクしています。
全体を俯瞰し、アーキテクチャ設計を通じてスピーディーにクルマの構想を実現
トヨタの魅力の1つとして、私はトヨタ生産方式(TPS)が挙げられると思います。入社してから体系的に学ぶことができたのですが、歴史ある考え方ながら、現代でも通用するところが多々あると感じました。歩留まり率を上げる、無駄を削減する、自身の業務や情報の流れ方を見渡してカイゼンをかけていくという考え方はきわめて勉強になりますし、日々の業務にも役立ちます。
また理念的なところを言えば、「自分以外の誰かのために行動しよう」というキーワードにもあるように、常に他者が喜ぶような仕事をしようとしているところが魅力です。社内の他部署のメンバーでもいいですし、最終的にクルマに乗るお客さまでもいい。誰かに喜んでもらえるような仕事をしようという言葉がよく経営層から語られます。普段の業務に追われているとそれを意識するのが難しいこともありますが、大変な時こそそこに立ち返ることが大切だと日々痛感しています。
私たちが電子アーキテクチャの設計を担う部署として活動を始めたのは比較的最近のことなので、日々の業務の中でまだまだ改善すべき点はたくさんあると感じています。しかし、全体を俯瞰した技術開発を率先して行うことにより、トヨタのクルマとしての価値をもっと早く進化させていけるはず。
今後の目標は、今の電子アーキテクチャ設計のやり方/進め方に改善を重ね、お客さまにクルマとしての価値をタイムリーにお届けする仕組みを作ることです。そのために今やっている仕事を体系化・標準化していき、トヨタがめざすクルマの構想の実現を、アーキテクチャ設計を通じてリードしていきたいです。
よりよいクルマづくりにおいては、車両全体に考えを巡らせる必要があるため、ものすごく広い分野の知識が必要です。そのため、トヨタには1つでも得意分野・専門分野を持つ方であれば、何かしら活躍できる場所があると感じています。この分野のことであればなんでも相談してほしい──そんな知識をお持ちの方に入っていただけると、自分の強みを活かしながら、周囲のメンバーと協力してよりよいクルマづくりができるのではないかと思います。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
