定置用蓄電池システムの電池ソフトP/F開発を担当。カーボンニュートラルを技術で推進
私が所属するCN(カーボンニュートラル)システム開発部は、カーボンニュートラル実現のための技術開発を推進する部署です。業務領域は、太陽電池でエネルギーを「創る」分野、電力を効率よく「貯める」分野、充電システムなど電力を「使う」分野の、大きく3つに分かれています。
その中で私は、「貯める」分野を担当し、車両向けに開発された車両用電池を定置用蓄電池システムとして活用する取り組みを進めています。車両に搭載されている電池を制御するECU(電子制御ユニット)のソフトウェアのプラットフォーム(P/F)を、用途の異なる定置用蓄電池システムでも安全かつ効率的に使えるよう改良することがミッションです。
開発にあたっては、社内のさまざまな部署と連携しながら、「どのような制御が必要か」「どのような機能が求められるか」といった要件をまとめ、仕様書に落とし込む役割を担っています。
車両用電池を定置用蓄電池システムにする際には、仕様や構成が異なる多様な電池パックへの対応や、車両とは異なる使用環境など、いくつかの技術的な課題があります。そうした課題を解決するための技術検討も重要な業務のひとつです。
定置用蓄電池システムは、再生可能エネルギーをより安定的に使うために欠かせません。その開発に携われていること自体が、大きなやりがいにつながっています。
また、循環型社会に強い関心があるため、自分たちの仕事が、エネルギーの使い方を変え、社会課題の解決に貢献していることを実感できる点にも魅力を感じています。
一方で入社10年目となりますが、ソフトウェア開発は今回が初めての経験となります。初めて向き合うテーマも多いため、新しいことに前向きに挑戦しつつ、謙虚な姿勢で周囲から学ぶことを大切にしながら業務に取り組んでいます。
環境への想いが原点に。未知の領域に踏み込み、試行錯誤の中で学んだモノづくりの哲学
私が環境問題に関心を持つようになったのは、中学生の頃に読んだ『沈黙の春』がきっかけです。社会全体が化学物質の便利さを追い求めていた時代に、農薬の無差別的な大量消費について警鐘を鳴らし、環境への影響を問いかける著者の姿勢に心を打たれ、「自分も環境問題の解決に関わる仕事がしたい」と考えるようになりました。
大学では材料化学・電気化学を専攻し、蓄電池の研究に取り組みました。エネルギーをどう貯め、どう使うかというテーマは、環境問題と直結する分野だと感じていたからです。
トヨタ自動車に惹かれた理由も、環境技術への取り組みでした。プリウスをはじめとするハイブリッド車をいち早く量産化するなど、環境技術を製品化してきた姿勢に、強く共感していました。
入社の決め手になったのは、社員一人ひとりの仕事への向き合い方です。先輩社員と話す中で、自分の仕事に誇りを持ち、高い熱量で取り組んでいる姿に惹かれ、「ここでなら、本気で環境問題の解決に向き合える」と感じ、入社を決めました。
入社後、私が最初に配属されたのはエンジン制御関係の部署です。従来から使用されてきた鉛成分を含む補機バッテリに対して、より環境負荷の低い補機バッテリへ置き換えた場合の新しいシステムの検討を担当しました。
新システムの検討は、試行錯誤の連続です。技術を追求するだけでなく、お客さまのニーズを正確に捉えるため「お客さまにとって本当に価値のあるシステムとは何か」を考え、アンケート調査を行ったり、ビッグデータを活用して「使われ方」を分析できないか検討したりと、さまざまなアプローチを模索しました。また、新しい仕組みを導入することでどのような影響が出るのか、関係部署を回って懸念点を丁寧にヒアリングすることにも力を入れました。
こうした経験を通じて、「お客さまの価値を徹底的に考え抜く」というトヨタのモノづくりの姿勢を実体験として学んでいます。
先行開発の仕事は、新しいことに挑戦できる一方で、製品化までに長い時間がかかるのが特徴です。当時検討していたシステムも最終的に世に出ることはありませんでしたが、未知の領域に挑み続けること自体に、大きな手ごたえを感じています。
その後、部署異動により小型モビリティ向けの電池開発に携わることとなり、安全性を中心とした技術検討を担当しました。この業務が補機バッテリの開発と異なっていたのは、短期間でウーブン・シティに実装しないといけない点です。期日を見据えながら安全設計を行う経験は、非常に学びの多いものでした。
学んだ一例を挙げさせていただくと、部署間で連携して異なるニーズを両立させないといけない難しさがあります。たとえば、電池開発を担う私たちは電池の安全を軸に、一方、企画部署は期限を軸に、両者で期限を守った上で、確実に安全を確保するための解決策を見つけるために、熱く議論を重ねました。
担当者同士で何度も議論を重ね、最終的にはマネージャー層も交えながら、「ここまでは対応する」「ここから先は次のフェーズで検討する」といった形で、お互いが納得できる着地点にたどり着きました。現在は、その合意のもと、ウーブン・シティでの実証が進んでいます。
安全性も期限もどちらも大切です。部署間の異なるニーズを両立させるプロセスを経験できたことは、貴重な学びになりました。
育児も仕事もあきらめない。主体的に学び続ける姿勢が、キャリアを前に進める力に
私は2023年に出産を経験し、産休・育休を取得しています。プロジェクトの途中でしたが、上司からも「出産と家庭を最優先してほしい」と言葉をかけてもらうなど、周囲からの手厚いサポートのおかげで、安心して出産と育児に専念することができました。
約1年後の職場復帰後に担当した業務は、復帰前とまったく同じです。フルタイムから時短勤務に切り替えたものの、周囲の方々のご理解や家族のサポートに支えられ、実験のために静岡県の東富士研究所に出張するなど、復職後も働き方に大きな制約を感じることなく業務に取り組めています。
復職後にとくに意識するようになったのは、業務状況の共有です。子どもの急な発熱などで休むケースに備えて、日々の進捗をこまめに周囲に知らせ、スムーズにフォローしてもらえるよう心がけています。
職場には、さまざまなライフイベントと両立しながら働くメンバーが多く在籍しています。互いの状況を理解した上で連携し合う文化が根づいており、チームとして非常によいコンディションで仕事が進められています。
2025年には主任職に昇格しました。上司からは「これまで通りのスタンスで、過度に負担を感じることなく業務を進めてほしい」と声をかけられ、必要以上に気負うことなく、フラットな気持ちで仕事に向き合えています。
一方で、主任職として、全体最適を意識した企画力やチームマネジメントが求められているとも感じています。今後は、そうした領域でも貢献できるようスキルを磨いていきたいと考えています。
そのためにも、引き続き自己研鑽に励むつもりです。先行開発の現場では新しいテーマが次々に立ち上がるため、新技術や業界動向に常にアンテナを張り、キャッチアップするよう努めています。
若手の頃はAIやデジタルスキルを客観的に見える形で身につけるため、資格取得を中心に学習に取り組んでいましたが、現在はソフトウェア開発の業界標準や設計思想といった、より実務に直結する知識の習得に力を入れています。
育児と両立する中で、学習時間を十分に確保するのは簡単ではありません。そのため、社内で提供されている学習プラットフォームのチーム管理者に自ら名乗り出るなど、学びやすい環境を整えるように意識しています。
こうした主体的なキャリアを支えているのが、「環境問題の解決に貢献したい」という、変わらずに持ち続けている人生の軸です。高い専門性を持つ周囲のプロフェッショナルたちと肩を並べ、チームの一員として、そして技術者として、少しでも社会に価値を届けられる存在であり続けたいという想いが、原動力になっています。
だれかのために働く喜びを仲間と分かち合う。環境技術の製品化をめざし、次の一歩を
トヨタでは、「だれか」のために仕事をする、という価値観が、組織の隅々まで根づいていると感じています。日々の業務の中で、その仕事が仲間やお客さま、社会にどんな価値をもたらすのかを自然と考える場面が多くあります。
トヨタウェイ2020に掲げられている「だれか」のために、という考え方は、特別な場面だけでなく、現場での判断やコミュニケーションの中で繰り返し体現されています。そうした姿勢が世代や立場を超えて受け継がれているからこそ、誠実さや熱意が文化として定着しているのだと思います。
また、労使の話し合いや、会社の向かう方向、職場の課題などを踏まえ人事制度が随時アップデートされるなど、モノづくりのプロセスだけでなく、組織や風土そのものもよりよくし続けようとする文化が、結果として働きやすさや挑戦しやすさにつながっていると感じます。
「幸せの量産」をミッションに掲げるトヨタのこうした価値観に共感できる方なら、大いに力を発揮できるはずです。それぞれが歩む道のりは異なりますが、「幸せの量産」という共通のゴールに向かって、前に進んでいけることを楽しみにしています。
私自身の今後については、環境技術を製品化へとつなぐ役割を担うことが目標です。定置用蓄電池システムの分野で経験を積みながら、リユースやリサイクルを含む循環型社会に貢献できるシステムやアイテムを企画・提案できる人材をめざしています。
また、この4月から再び産休・育休を取得します。これまで支えてもらった感謝の気持ちを忘れず、復帰後は技術面でもマネジメント面でも価値を発揮し、会社に貢献できる存在でありたいと考えています。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
