前職の経験が強みに。元機械系エンジニアが語る、ソフトウェア開発の新しい視点
現在、私はBR BEVという部署に所属しています。BRとはビジネスリフォームの略で、次世代の電気自動車(BEV)の開発を通して、競争力のある商品を世に出すために仕事のやり方や組織の在り方を改革していくことが使命です。
中でも私は電子システムアーキテクチャを担うグループに所属しています。このグループでは、クルマ全体の最適なシステム構造検討を行っており、各機能をどのようにグループに分けて配置するか、また各機能間のインタフェースをどのように定義するかを検討し、その設計を実際に量産部品に適用しています。またBR BEVの使命の通り、その中でより効率的な開発手法を構築することも重要な業務です。商品として競争力を獲得しつつ、かつそれを効率的に開発できるような長期的な将来戦略を見据えた仕組みを作ることが大切です。
私のチームでは、ドアやシートなどクルマのボディを制御するソフトウェアグループ全体の開発をしています。10数人程度のチームメンバーに加え、他部署のメンバーや協力会社さまのメンバーも合わせると合計数百人規模の大所帯です。その中で私が担当しているのはソフトウェア全体のテスト業務。開発しているソフトウェアが要求を満たしているか評価するために、テストの自動化のシステムを構築したり、テスト設計書をAIで作るシステムを作ったりしています。
トヨタといえば愛知県豊田市に本社がありますが、私は東京都にある九段下オフィスで働いています。チームメンバーは本社と九段下オフィスに点在していますが、上司2人が隔週で交代して九段下オフィスにも顔を出してくれるほか、私自身も月に2回くらい本社へ出張しているので直接コミュニケーションを取る機会も多々あります。また、昨今は勤務地に限らず在宅勤務をするメンバーも少なくないので、拠点に関係なく密なコミュニケーションが取れていると感じます。
私が仕事をする上で大切にしていることは大きく2つです。1つは、仕事を自分1人で抱え込まず、周囲の人の協力を得ながら進めていくことです。私たちのチームにはさまざまな専門性を持つプロフェッショナルがいます。そのため、自分に経験のないことやわからないことを取り入れる際は、彼らの力を借りて実現することを大切にしています。それを繰り返すことで、私自身も新たな知識をキャッチアップできると感じています。
もう1つはわれわれの商品であるクルマのことを常に意識して開発にあたることです。私は前職で、機械設計やハードウェアを含めたシステム開発といったクルマのマクロな挙動を対象にした業務をしていたため、クルマ全体としての挙動や仕組みについてある程度知識を持っています。そのため、ソフトウェアとしての挙動だけに着目するのではなく、商品の仕様として理解して議論するために、「それがクルマになった時どうなるか」を意識して開発を進めることを心がけています。
世界一の企業で働きたい──好奇心を原動力に、新たな専門性へ挑んだ理由
学生時代は理学部で素粒子物理学を専攻していました。自動車業界に入った理由は、規模が大きく安定しているだろうと思ったからで、中でも立地的に通いやすい自動車メーカーへ就職を決めました。前職では、機械系エンジニアとしてドアのパネル部品の剛性を担保するために部品それぞれの断面をどうしたらいいか考えたり、ドアの開け閉めの操作力を適切にするためのパラメーター設定を検討したりしていたほか、システムとしてあるべき挙動を決める業務も経験していました。
軽い気持ちで自動車業界に足を踏み入れた私ですが、業務を続けていくうちに、クルマづくりのおもしろさに気づいていきます。クルマ1台の中には数えきれない技術が詰まっていて、とても奥が深いです。もっとクルマのことを知りたいという気持ちから、いつしか機械系だけでなくソフトウェア系のエンジニアも経験してみたいと思うようになりました。加えて、「別の自動車メーカーではどのようにクルマを作っているのだろうか?」という疑問も湧いたんです。せっかく業務内容を変えるなら、別の企業で働いてみるのもいいかもしれないと思い、転職活動を始めました。
数ある自動車メーカーの中でトヨタを選んだ理由は、自動車販売台数世界一(※1)の企業で働いてみたいという思いがあったからです。世界一の企業ではどんなふうにクルマがつくられているのか、純粋に興味がありました。また、トヨタといえば愛知県のイメージがありましたが、よく調べてみると自分が暮らしている東京都にもオフィスがあることを知り、「ここで働きたい」と思って入社を決めました。
入社後は初めて経験する業務内容だったこともあり、キャッチアップに邁進しました。幸い、上司が独自で作った研修プログラムが非常にわかりやすく実用的で、その研修のおかげでかなり理解度が深まりました。また先輩方も私の素人質問に根気よく答えてくれたので、萎縮することなくのびのびと知識を吸収することができ、本当に感謝しています。
一方で前職での経験が生かされることも多々ありましたね。前職時代から思っていたことなのですが、ソフトウェアの専門家の視点ではどうしても「クルマになった時の挙動」にまで思考が及ばないことがあるんです。私はクルマのマクロな階層での開発経験があるので「そうすると、クルマとしてはこういう挙動になってしまいますよ」と意見することで、ソフトウェアの専門家が意識しづらい視点の意見を言えるところが強みになっています。
また自動車メーカーを2社経験したことで文化の違いも感じました。トヨタはとくに人と人との温もりを大切にする企業だと感じます。拠点が離れていても、意識的に顔を合わせてコミュニケーションを取ることを大切にしているんです。
たとえば、本社でチームの食事会が開催される時も、欠かさずに東京のメンバーにも声をかけてくれます。出張のついでに顔を出せるようにスケジュールにも配慮してくれるので、こちらも無理なく参加できて、その配慮がうれしいと感じます。
ハードとソフト、両方を知る価値。異分野経験が生んだクルマづくりへの新たな視点
入社から1年弱ほどですが、これまで手がけたプロジェクトの中でとくに印象に残っているのは、今も継続で行っているテスト作成の枠組みづくりです。もともと私たちは30人ほどのテストチームでテストの作成・実施を行ってきました。しかし、開発が進むにつれてテストしなければならない実装機能が増え、手が回らなくなったので、テストチームでテストの枠組みだけを作り、各機能の設計担当者にテスト内容の作成を依頼することになったのです。
このプロジェクトでは多くの人に一定のルールや前提条件でテスト作成をしてもらう必要がありますが、その定義を明確にし、さらに理解してもらわなければならない点に苦労しました。日頃からテストを実施している私たちにとっては当たり前のテスト環境でのふるまいや制約でも、設計担当者にとっては「なんで?」と疑問に思われてしまうことが多々あります。このまま設計者にルールを十分に理解してもらえないまま適用すると、どこかで想定外の不具合が出るであろうことが想像できました。
そこで、必要なルールや前提条件の目的と必然性を明確に言語化し、必要に応じて内容をブラッシュアップしました。また説明する際は相手の立場に立ち、相手が疑問に思いそうな点を想定して背景まで含めて丁寧に説明することで周囲の協力を得ていきました。これにより、ルールに基づいた誤りの少ないテストが運用されていくことをめざしています。
入社前に希望していた通り、テストを通じてソフトウェア領域を学ぶことができ、日々刺激的な毎日を送っています。学ばなければならないことが想像以上に多く、「自分ってクルマのこと全然わかっていなかったんだな」と感じることも多々あります。
そんな中でも、ハードウェアとソフトウェアの知識を両方身につけられたことで、クルマづくりに対する解像度がかなり上がってきたと実感しています。前職ではソフトウェアのエンジニアが言っていることの意味がよくわからず、意見がすれ違うこともありました。しかし、自分がソフトウェア系のエンジニアになってみると「あの時言っていたことはこういうことだったんだ!」と数年越しに気づけることもあるのです。そういう意味でも日々自分の成長を感じられて、うれしいです。
カイゼンが根付く環境を存分に活かす。学びを楽しみながら、クルマづくりを極める挑戦
私が思う、トヨタの最大の魅力は「カイゼン」の文化が深く根付いていることです。とくに私のいる部署では、仕事のやり方をより効率的に変えていくことも大切な業務の1つと捉えられています。単に売り上げを出すことだけでなく、よりよくできそうなところにはどんどん投資していくことも重要視されているので、目先の利益だけでなく長期的なカイゼンにも力を注げるところがトヨタそのものの強みにもなっていると感じます。
開発に関するカイゼンはもちろん、働く環境についてもカイゼンの意識が浸透しています。私も入社した際、組合活動として担当の社員の方に「カイゼンしてほしい点」などを直接伝える機会をもらいました。ヒアリングで吸い上げた意見に対し、しっかり対策が行われることも多く、常に社員にとってより働きやすい環境が模索されていると思います。
今後のキャリアとしては、ひとまずテスト業務を通じてソフトウェアの基礎を学び、基盤ができたら実際のソフトウェアの設計にも挑戦してみたいです。日々学ぶことだらけで大変に思うこともありますが、新しい知識が得られることに喜びを感じながら、仕事を楽しみたいと思っています。
最終的にはハードウェアとソフトウェアを両方担ってきた経験を活かして、1つのシステムの開発をやってみたいですね。これまでは自信を持って「クルマづくりのことがわかる」と言い切れなかったのですが、将来的には「クルマづくりのことが一通りわかるよ」と胸を張って言えるような存在になりたいと思っています。
トヨタでは大規模開発ができるので、自分が知らない技術にたくさん出会えます。それにワクワクできる方、自己成長を楽しみながらクルマをつくりたいという方にとっては最高の環境です。
また、トヨタの社員は非常に優しい人が多く、とりわけ「学びたい」「成長したい」という意欲を持っているメンバーに対しては誰もが親身になってサポートしてくれます。安心して挑戦できる環境で、一緒に成長を楽しめる方と働けたらうれしいです。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
