医療を支えているのは、先駆的なテクノロジーだけではありません。医療現場で医療機器が適切に活用されるためには、それを使用する医療従事者に対し、機器に関する専門的な情報提供を担う存在が必要です。2017年に日本で整形外科領域のロボットとして薬事承認を得た人工関節置換術用ロボティックアーム支援システム「Mako(メイコー)システム」。その運用に関わる専門職であるMako Product Specialist(以下MPS)として、福岡を拠点に西日本エリアで活躍する山本圭亮が、日本ストライカーで感じてきた仕事のやりがいを語ります。
面接でかけられた、忘れられない一言
▲学会展示会場にて
山本が「MPS」という仕事を知ったのは、急性期病院の手術室看護師として働いていた頃。きっかけは、日本ストライカーの営業社員との何気ない会話でした。
「整形外科手術にも多く関わるなかで、人工関節手術で使用するロボティクスとしてMakoの存在を知りました。そしてMakoの専門家として医療従事者が適切に使用できるよう情報提供する役割としてMPSの仕事に興味を持ち、看護師としての臨床経験を活かせる仕事として挑戦してみたいと思うようになりました。
社会人5年目は、その先のキャリアを真剣に考え始める時期でもあります。このまま看護師として経験を積むのか、それとも別の形で医療に関わるのか。将来に悩んでいたタイミングで、思い切って応募することを決めました」
一次面接で緊張を和らげてくれたのが、上司となるシニアマネジャー・櫻井永規の言葉でした。
「『一緒に仕事を楽しもう』と言われたんです。看護師時代は日々大きなやりがいを感じる一方、"仕事を楽しむ"という感覚を持つ余裕は正直なかったので、この言葉はとても新鮮でした」
面接が進むにつれ、日本ストライカーの社員が医療やMakoシステムの可能性についていきいきと語る姿にも惹かれていきました。
「Makoを通じて実現したい未来を、皆さん本当に前向きに話していて、“いい会社だな“と感じたのを覚えています。ここで働いてみたいという気持ちが、自然と固まっていきました」
こうして2023年、山本は日本ストライカーに入社しました。
仲間と一緒に乗り越えた最初の壁
▲九州物流センターの会議室にて、ボーンモデルを手に
入社後、山本が最初に取り組んだのは、MPSとして人工関節手術に立ち会うための社内認定研修でした。
「MPSは、Makoが手術中に適正に使用されるために、必要な情報提供等を行うプロフェッショナルです。日本ストライカーでは、Makoを用いた手術には必ず専門知識を有するMPS資格取得者が立ち会う体制をとっています。
この資格は、部位や手術の形式ごとにそれぞれ約1カ月のトレーニングと社内試験を経て認定されるものです。プレッシャーは大きかったですが、それだけ安全性と適正使用を大切にしているのだと感じました」
山本が所属するジョイントリプレースメント/サージカル事業本部では、人工関節手術に関連する医療機器を主に扱っており、多くの社員がMPS資格の取得を目指しています。取得後は、新たにMakoシステムを導入する施設の安定稼働をめざしたサポートや、日々の営業活動のなかでMakoシステムを用いた手術への立ち会いなどを担い、山本は主に新規施設でのシステム立ち上げを担当しています。
「研修には、MPSとして入社した同期に加え、営業職の社員も参加していました。求められるレベルが高く、全員が必死でしたが、同じ目標のもと製品について集中的に学ぶ中で強い一体感が生まれました。入社間もない時期に悩みや不安を共有できる仲間ができたことは、その後の支えになっています」
手技支援で積み重ねた、一歩ずつの成長
▲社内メンバーと打ち合わせ
MPS認定後、医療の現場に携わり始めた山本を待っていたのは、想像以上に厳しい日々でした。
「Makoを新規導入したばかりの施設では、医師や医療スタッフから機器の仕様や使用方法について専門的な質問を受けます。当時は即答できない場面も多く、毎回宿題を持ち帰っていました。『次は何を聞かれるだろう』と考え続け、気持ちが休まらない時期もありました」
プレッシャーはそれだけにとどまりません。山本は元手術看護師として手術の流れを理解していましたが、MPSとして関わる場合は役割が異なります。
「手術看護師は医師の指示のもと進行を支えますが、MPSは機器の専門家として、医師の判断を前提に必要な情報を適切なタイミングで提供する立場です。流れを理解している分、“今何を伝えるべきか”という判断の難しさを強く感じていました。
経験豊富な医師の手技は非常にスムーズで、流れも一定です。その中で情報提供のタイミングを誤ると集中を妨げてしまうのではないかという緊張感がありました。高い精度が求められる環境の中で、医師の進行に合わせて適切に情報提供を行う感覚をつかむまでには時間がかかりました」
1年目を振り返り、山本はこう話します。
「対応に迷う場面も多く、自信を持って対応できていない自分に落ち込む日々もありました。でも、櫻井さんから“最初から完璧を目指さなくていい”という言葉をかけられ、大切なのはどんな状況でも落ち着いて対応できるよう、事前に準備を重ねておくことだと気づきました。
とくに意識したのは、医療従事者との信頼関係づくりと日常的な準備です。機器の保守・メンテナンスを担うフィールドサービスの社員から機器構造を学び、マーケティングに文献情報を共有してもらうなど、できる準備を積み重ねていきました」
そうした中で、少しずつ手ごたえを感じられるようになりました。
「Makoの手術では、術前にシステム上で患者さんの骨の位置情報を確認する工程があります。ある手術で気になる点があり、医師と一緒に画面上の情報を再確認した結果、システム上で必要な調整を行いました。後から『気づいてくれてありがとう』と声をかけていただいたことが、嬉しい経験として印象に残っています。
以前は厳しい指摘を受けることも多かったのですが、いつからか『山本さんがいてくれると、安心してMakoを使うことができるね』と言っていただけるようになりました」
信頼を重ね、仲間とともに医療に貢献
▲同僚メンバーと
現在、入社3年目。山本の仕事の幅はさらに広がっています。
「ある新規施設に導入する際、Makoの基本的な使用に関する説明に加え、医療従事者の皆さんと情報を共有しながら、機器配置や運用面について意見交換を行いました。医療機関側の判断を前提に、安心して使用いただくための準備に関わることができたのは、自分の仕事の意義を実感できた経験でした」
Makoシステムの専門家としてお客様に向き合う姿勢が評価され、お客様の医師から親しみを込めて「マイスター」と呼んでいただけるまでになった山本。医師向けに実施するトレーニングで活躍する機会も多く、学びの場を支える役割も担っています。
「4月は、新しく着任された医師への製品説明や、医師がMakoを安全かつ適切に使用いただくための認定トレーニングが続く時期です。各施設を訪問しながら、手技の流れや機器の操作、症例に応じた使い方などを確認する医師向けのワークショップも担当しています。多いときは、1回3時間に及ぶワークショップを毎週のように実施することも。
以前は“伝えること”に必死でしたが、今は先生方とディスカッションしながら進められるようになりました。『とてもわかりやすかった』『来てくれてありがとう』と声をかけていただくことも増え、プレッシャーよりも“求められている”という実感が強くなっています」
日々を通して、仕事の見方も変わってきました。
「MPSは責任ある仕事ですが、一人で抱え込むものではありません。社内にはそれぞれの専門性を持つ仲間がいて、チームとして手術現場を支えています。周囲を見渡すと、より良い医療のために自分の立場でできることを考え、動いている人たちがたくさんいる。そうした仲間と連携しながら、一人ではなくチームとして価値を発揮できることが、日本ストライカーらしさだと感じています」
あの面接でかけられた「一緒に仕事を楽しもう」という言葉。その意味を、山本は日々の業務と仲間とのやり取りを通して、少しずつ実感しています。
※ 記載内容は2026年5月時点のものです
