「命を救いたい」という強い思いがつないだキャリア
看護師である母が、患者さんと献身的に向き合う姿を見ながら育った夏坂。その背中を追うように、大学では救急医療を学びました。
「自然な流れで救急救命士をめざしていました。でも公務員試験には現役合格できず。就職浪人も考えましたが、看護大学に通う妹たちのことを考えると家族に負担はかけられない。悩んでいたら、大学の先生から『夏坂はコミュニケーション能力が高い、営業に向いているのでは』と声をかけられました。その一言がきっかけで、医療関連の企業説明会へ。ブースを回って話を聞く中で、医療機器を通じて命を救うことに貢献できると気づき、卒業後は医療機器営業の道へ進むことを決めました」
日系・外資系メーカーで5年ほど経験を積んだのち、さらなるキャリアアップを求めて目を向けたのが日本ストライカーでした。
「ストライカーは整形外科のイメージが強い会社ですが、実際は救急や搬送、手術、回復まで、患者さんの一連の治療に関わる幅広い領域に製品を届けています。さまざまな領域で医療に向き合う人たちと自分も同じ方向をめざしたいと感じ、それが決め手でした」
入社後3年間は整形外科向け手術用備品の営業として、製品提案に加えて手術にも立ち会い、医療機器のプロフェッショナルとして医療を支える日々。転機となったのは、2021年放送のテレビドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』との出会いでした。
「ストライカーの電動ストレッチャーが救命現場で活躍するシーンを見たときに、鳥肌が立ちました。かつて自分がめざしていた場所で、自分の会社の製品が使われている。救命の現場で頑張っている救急救命士に革新的な製品を届けられるのは、救急医療を学んだ自分ではないか——それが決断のきっかけとなり、主に救急救命製品を扱うメディカル事業本部の社内公募に手を挙げました」
救急救命の現場を支える技術を、どう社会に伝え、届けるか
メディカル事業本部が手がけるのは、電動ストレッチャー、モニター除細動器、AED、自動心臓マッサージ器など、救急救命の現場を支える機器です。これらの製品を通じて、救命率の向上をめざすとともに、救急隊員の負担を軽減するなど、救急医療のあり方を変えていく。これが夏坂が挑んでいる“ゲームチェンジ”です。
「中でも力を入れている取り組みのひとつが、電動ストレッチャーの普及です。患者さんを搬送するストレッチャーを電動化することで、昇降時や救急車への搬入時の作業をボタン操作で行うことができるようにし、救急隊員の身体的負担を軽減します。 従来のマニュアルストレッチャーは手動で高さを調整する必要があり、腰痛は救急隊員の職業病とも言われてきました。これに対し、電動ストレッチャーはボタン1つで昇降が可能で、操作の安定性が向上します。
その結果、腰痛の軽減に加え、女性や高齢の隊員でも無理なく扱えるようになるとともに、搬送中の安全性向上にもつながる点が大きなメリットです。欧米ではすでに広く普及していますが、日本ではまだ普及が始まったばかりの段階にあります。お客さまの多くは消防などの公的機関であること、また導入にあたっては現在使用している救急車では対応できず、車両ごと入れ替えが必要となる場合もあり、お客さまの状況に寄り添った提案が欠かせません」
官公庁向けの医療機器は入札を通じて選ばれることが多く、そのプロセスはやや複雑です。
「製品が良いだけでは導入にはつながらず、入札の条件に合致しなければ選ばれません。あらかじめ定められた条件の中で評価されるため、その前段階でいかに製品の特長を理解していただけるかが重要になります。
その上で、チームで知恵を絞りながら提案を重ね、導入につながったときの手応えはひとしおです。選ばれないこともありますが、その経験も次の提案に活きています」
現在、電動ストレッチャー普及に向けて夏坂が挑んでいるのが、行政関係者への情報提供活動です。
「消防・救急の資機材購入は、現場の意向だけで決まるものではなく、最終的には地方自治体の議会での予算審議を経て導入の是非が判断されます。そのため、電動ストレッチャーがいかに市民の安心・安全に寄与するのか、地方議員の皆さんにも製品の価値を丁寧に伝えていくことが重要になります。最初は戸惑いもありましたが、期待の声も寄せられ、少しずつ手ごたえも感じています。多くの人と関わり合いながら新しい市場を切り拓いている感覚があり、営業職に飛び込むきっかけとなったコミュニケーション能力も磨かれていると感じます」
もちろん、思うようにいかないこともあります。
「行政特有の意思決定プロセスなどは、実際に動きながら理解を深めました。時には軌道修正を余儀なくされることもありましたが、うまくいかなかった経験もチームで共有し、次に活かしていく組織文化があります。マネジャーも結果だけでなくプロセスもしっかり見てくれるため、安心して新しい挑戦に取り組めています」
「夏坂さんだから、ストライカーにした」その一言が、この仕事を続ける理由になる
チームで試行錯誤しながら、少しずつ広がってきた新規開拓の取り組み。難しさもありながら、この仕事ならではの嬉しい瞬間があります。
「電動ストレッチャーを入れてから、体が本当に楽になった。かつて自分がめざした救急救命士の方々にそう言っていただけたときが一番嬉しいです。感謝の言葉をいただくたびに、この仕事を選んで良かったと思います。
ある救急隊員から、こんな話を聞きました。重量のある患者さんを搬送する際、『患者さんの前で辛そうな顔を見せてはいけない』と思いながら、内心では必死に力を使っていたと。電動ストレッチャーに変えてから、その身体的な負担だけでなく、精神的なストレスまで軽減された。道具が変わるだけで、ここまで変わるんだよ、と。自分が扱っている製品が救急隊員の皆さんの働き方に、これほど深く関わっているんだと実感した瞬間でした」
もう一つ、忘れられない言葉があります。
「あるお客さまから、『夏坂さんだから、ストライカーにした』と言われたことです。製品の力だけじゃなく、人として信頼してもらえたんだと感じました。いくら製品が良くても、信頼関係がなければ話が先に進まない。それが営業という仕事の、一番難しくて一番やりがいのあるところだと思っています」
その言葉の通り、信頼を実績に変え、日々邁進する夏坂は2025年2月、アジアパシフィック地域のセールスミーティングで、メディカル事業本部のトップセールスとして表彰されました。数字を追い求めるだけでなく、お客さまやチームメンバーなど幅広いステークホルダーとの信頼を積み上げてきた結果が、形になった瞬間でした。
育児をしながら、最前線を走り続ける
走り続けてきた夏坂に、2025年12月、新しい景色が加わりました。第一子が誕生し、年明けに約1カ月育休を取得しました。
「年明け1~3月は最繁忙期にあたり、当初は取得を迷いましたが、マネジャーが『チームでサポートするから、育児に集中して』と言ってくれて。メディカル事業本部ではここ1年で4人の男性社員が育休を取得し、復帰後も成果を出している前例があります。続く人が働きやすい環境をつくりたいと考え、取得しました。
初めての育児は想像以上に大変で、何もかも手探り状態でしたが、家族で過ごす時間を持てたことは大きな経験になりました。取得して本当に良かったと思っています」
育休から復帰後は、訪問スケジュールを工夫し、なるべく早めに帰宅できるよう調整しています。
「営業はお客さまの都合に合わせて自分でスケジュールをコントロールできるので、共働きの子育て世代にとって働きやすい仕事だと思います。育児も仕事も、どちらも大切にしたい。娘が保育園に入ったら、送り迎えを妻と対等に分担したいと考えています。
育児を経験して、お客さまへの見方が変わりました。電動ストレッチャーは、搬送時の身体的な負担を軽減することで、体力面や勤務条件に制約のある方でも業務に当たりやすくなります。自分自身も子どもを持つ立場になったことで、育児と仕事を両立しながら働く方々の大変さをよりリアルに感じるようになりました。製品によって、そうした人たちが無理なく働き続けられる環境につながっていると考えると、この仕事の意味をより深く捉えられるようになりました。こうした価値を、もっと多くの現場に届けていきたいです。
生活の変化があっても、営業の仕事への思いは変わりません。救急隊員や、その先にいる患者さんの役に立ち続けたい。まだ日本の救急現場に十分に届いていない製品を当たり前の存在にしていきたい。新しいことへの挑戦を楽しみながら、その最前線に、これからも立ち続けていきたいです」
※ 記載内容は2026年7月時点のものです

