学生時代に見えた、技術を価値に変える視点。「人とデジタル」をつなぐキャリアの原点
ITに興味を持ったのは、経済学部に在籍していた大学時代です。入学当初から、文系学生と理系学生が合同でプロジェクトを組成し、課題解決をしながら学習するという環境に身を置いていました。その繋がりで、理系の大学院生を中心としたチームに唯一の文系メンバーとして加入し、ITコンテストに挑戦することに。企画を考える中で、「技術として優れていること」と「ユーザーにとって価値があること」は必ずしも同じではないことに気づき、自分なりの顧客視点で企画を提案したところ、その案が選ばれチームは入賞。さらに、別のITコンテストでは世界大会にも進むことができました。こうした経験を通じて、最新技術を取り入れるだけではなく、どんな使い方をすれば価値を生み出せるのか。テクノロジーと顧客視点の橋渡しをする役割に大きな意味があると実感しました。この原体験は、今でも私の仕事の軸になっています。
新卒では日系電機メーカーの情報システム会社へ入社し、事業全体をITで変革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の考え方を学びました。ものづくりという「人」が中心に存在するビジネスを、デジタルでいかに進化させるのか。いわゆる「人とデジタル」の共存を通じて、新しい価値を創出する仕事の魅力に気づいた時期でもあります。その後は、人材、通信、EC、生活・リテール、ホテル、金融とさまざまな事業ドメインに挑戦しながら、一貫してプロダクトマネジャーとしてのキャリアを積み重ねてきました。
振り返ると、思い描いていた内容と実際の仕事が違うことや、事業フェーズの変化によって求められる役割が変わり、理想どおりにいかないことも少なくありませんでした。それでも一貫して追い続けてきたのは、「人とデジタル」の融合によってお客さまの体験を改善し、世の中に新しい価値を届けることです。
そして、その思いをさらに実現するため、あらためて人材業界に挑戦したいと考えたとき、事業やプロダクト全体で、「人」に向き合おうとしている会社だと感じたのがパーソルキャリアでした。これまで積み重ねてきた経験を生かせるだけでなく、自分が目指したい未来とも重なっていたことが、入社を決めた理由です。
サービスを個別最適で改善するのでは価値は生まれない。顧客接点全体で改善する視点
現在は、「doda」「doda X」のプロダクト領域と、人材紹介事業のキャリアアドバイザー(CA)の業務DXを担う組織のGMを務めています。「doda」「doda X」を利用した転職活動では、求人検索やCAとの面談、応募後のやりとりなど、お客さまとの接点が数多くあります。しかし、それぞれの機能や体験が個別に最適化されてしまうと、全体として一貫性のないサービスになってしまいます。たとえば、CAが伝える情報と、「doda」「doda X」のWebサイトやスマートフォン向けアプリ上で配信される情報が食いちがっていては、一貫性がないですよね。
そこで大切にしているのが、お客さまとの接点だけでなく、その裏側で動く業務やシステムまでを可視化し、設計する「サービスブループリント」の考え方です。お客さまがどのタイミングでどのような体験をし、どんな価値を受け取るのかといった一連のプロセスを設計し、デジタル接点から裏側で動く人の業務までを含めて一気通貫で改善していく。それによって初めて、シームレスで価値の高い顧客体験を提供できます。
この考え方は、人材業界全体でも十分に実践されているとは言えず、実践できれば競争優位性につながると考えています。その考え方を形にするために、求人マッチング、業務DX、AI活用を一体で進化させながら、「doda」「doda X」を次の時代へ導いていく。それが今の私たちの取り組みです。
私自身としては、こうした日々の業務を通じて、自分がつくった仕組みが誰かの役に立ち、一緒にはたらくメンバーが成長することに、大きなやりがいを感じています。また、「こういうことを実現したい」という事業責任者や経営層の思いをテクノロジーの力でひとつでも多く形にして、お客さまへより良い体験を届けることができれば嬉しいです。
そして今の組織には、そうした考え方を後押ししてくれる環境があります。たとえば、カスタマープロダクト本部の本部長は、さまざまな技術や知見をもった専門人材の個性や意思決定をいつも尊重し、「良いプロダクトづくりに集中してほしい」と背中を押してくれる存在です。 そうした環境があるからこそ、私たちもプロダクトにしっかり向き合い、お客さまへより良い価値を届けることに集中できています。
AIと人の価値をかけ合わせ、人材サービスそのものを進化させる挑戦
今、私たちが最も力を入れているテーマの一つがAIです。AIの取り組みには、大きく二つの視点があります。ひとつは、業務の生産性を高めることです。AIを活用してプロダクトの企画や開発のスピードを上げる。人材サービスにおけるさまざまな業務を効率化し、より多くのお客さまへ価値を届けられるようにする。1%、2%の改善を積み重ねることが、顧客体験やサービス品質に大きな違いを生み、事業としての競争力の強化につながります。
もうひとつは、AIによって人材サービスのあり方を抜本的に変革することです。たとえば人材紹介ビジネスは、サービス登録から転職決定までの間、CAとの面談、応募、面接などの段階が進むにつれて人数が絞られていくファネル型の構造で成り立っています。
しかし、もしAIによって、ファネルの一部が丸ごと自動化されたとしたら、歩留りの改善を追うという営み自体が無意味になってしまいます。海外では、すでに人材紹介の各ファネルをAIで完全に自動化するサービスが数多く登場しています。つまり、こうした変化は未来の話ではなく、目の前にある脅威と捉え、企業として対応できる状態をつくらなければいけないということです。
人材サービスの変革を実現するために、私たちが取り組んでいる一例が、AIエージェントです。私たちが目指しているのは、お客さま一人ひとりのキャリアや志向を理解し、必要なタイミングで最適な情報や選択肢を提案できるパーソナルアシスタントのような存在です。転職を考え始める前からお客さまに伴走し、悩みを整理し、自分では気づいていなかった可能性まで示せるような体験を実現する。もちろん、最終的な意思決定への寄り添いや、経験に裏打ちされたアドバイスなどは、人だからこそ提供できる価値と言えます。AIが日常的な相談や情報提供を担い、本当に重要な場面ではCAの「人」の力によるご支援を提供する。このように、「人とデジタル」を高度に組み合わせることで、これまで以上に納得感のある転職体験を提供できると考えています。
長年にわたり人材サービスを提供してきた私たちは、転職を希望するお客さまがどこで悩み、どのような支援を必要としているのかということに人一倍向き合ってきました。そうした経験を通じて得た知見とAIをかけ合わせることで、一人ひとりに最適な体験を届け、人材サービスそのものを変革していきたいと思っています。AIを活用して、業務の効率化や品質向上を追求しながら、人材サービスのあり方そのものを変える。その両輪を回し続けることが、私たちの組織に求められている役割です。
「失敗上手」が挑戦を後押しする。AI時代の人材サービスを仲間とともに切り拓く
AIによって、プロダクトマネジャーやエンジニアの仕事も大きく変わり始めています。「AIがあるなら人はいらない」という意見もありますが、必要なくなるのではなく、求められる役割が変わるだけだと私は考えています。デザインやコーディング、テストといった領域までAIが担うようになれば、人には「何をつくるべきか」「なぜそれをつくるのか」をより深く考え、AIを活用しながら価値を高速に生み出し、届ける力が、これまで以上に求められます。
だからこそ、私の組織では、「プロダクトの進化をリードするために、私たち自身が変化を楽しみながら学び、成長できる組織」をビジョンとして掲げています。その中でも今期、特に大切にしていたのが「失敗上手」という価値観です。新しい挑戦に失敗はつきものです。ただ、失敗を小さくするために小さな挑戦を重ねるのではなく、大胆に挑戦し、その経験から多くを学び続けることを何より重視しています。そして、私たちの組織では失敗を隠すのではなく、互いに共有する文化があります。挑戦の数だけ学びがあり、次の挑戦につながる。そうした循環が、変化を楽しめる組織を育んでいくと考えています。
また、私たちの仕事のあり方が変わっていくからこそ、若手メンバーには「先輩のやり方を真似するのではなく、一足飛びに新しいやり方を身につける」ことを期待しています。一例として、事業部からプロダクト組織へ異動してきたメンバーは、AIを積極的に活用することで短期間のうちに新しいスキルを身につけ、活躍してくれています。こうした、新しい技術や答えのないテーマに挑戦する経験の積み重ねが、一人ひとりの視座を引き上げ、新しい価値を生み出す力につながっていくと感じています。
私自身も、AIを活用した新しいプロダクトの可能性を日々模索し、仮説を立てながら挑戦を続けています。特に、BtoC領域におけるAIエージェントの活用は、世界的に見ても難易度の高い領域です。それでも私たちが挑戦するのは、「人」に向き合うことを軸に事業を築いてきたパーソルキャリアだからこそ、実現できる価値があると信じているからです。AIは、私たちの仕事を置き換えるためのものではありません。「人」に向き合うという本質を変えることなく、新しい顧客体験を実現していく。その挑戦を、変化を楽しめる仲間とともに進めていきたいと思います。
