分析の先にある意思決定を支える。統計との出会いが導いたデータサイエンスの道
大学では、もともと好きだった数学を専攻していました。卒業後は研究を続けるか教員になる道を選ぶ人が多い環境でしたが、より直接的に社会へ関わる仕事がしたいと考え、当時はまだ新しい分野だったIT企業に就職しました。ネットワークエンジニアとしてキャリアをスタートしてから最初に担当したのは、大量のログを分析し、障害の原因を突き止めたり、検知を自動化したりする仕事です。振り返ると、その頃から「説得力のある分析を通じて、人の意思決定を支えること」を意識していたのだと思います。
その後はIT企業を退職し、鍼灸師として技術を磨く父親の影響で鍼灸師を目指し、3年間専門学校で学びました。卒業後は、学校で鍼灸分野の研究や校内SEの業務に携わりながら学び続けましたが、その中で鍼灸を仕事として続けていく難しさも感じていました。一方で、次第に面白さを感じるようになったのが研究です。仮説を立て、データを集め、統計的に検証しながら治療方法の効果を明らかにしていく過程に惹かれていきました。成果を学会で発表する機会もあり、研究に取り組むほど「統計の分野は面白い」と強く感じ、データに関わる仕事を本業にしようと決めました。
2018年には、本格的に技術を身につけるため、コンサルティングファームへ転職しました。そこでは、データサイエンティストとしてデータ分析や機械学習モデルの開発を担当し、プロジェクトリーダーとして顧客との調整や進行管理も担いました。
顧客企業ごとに事業や課題が異なるため、相手の言葉や背景から本当に実現したいことを読み取り、その目的に合う分析方法や技術を選ぶ必要があります。提案のたびに新しい知識を求められたことで、データサイエンティストとして必要な技術を幅広く学び、さらに顧客の業務や事業の全体像を捉える力、関係者と合意を形成する力、進行を支える力など、ビジネスを動かすための視点も身につきました。
ただ、受託業務では、提案や技術提供を終えた後、その施策が実際のビジネスにどのような効果をもたらしたのかを継続的に追えるとは限りません。結果が分かっても、それを踏まえた改善まで携われないこともありました。そのため、施策の効果を確かめながら改善を重ね、事業に長く向き合いたい。そう考えるようになり、さらなる成長を求めて転職を決意しました。
技術者が主体となって手を動かす。本気の内製環境を求めた事業会社への転身
次のキャリアを考えたとき、重視していたのは、データサイエンスの施策を本格的に内製している事業会社であることでした。事業会社の中には、開発を外部ベンダーに委ね、社内の担当者は進行管理を中心に担うケースもあります。その点パーソルキャリアにおいては、面接でプロジェクトの進め方や内製に対する考え方を聞くことで、技術者が自ら手を動かし、企画や検証にも主体的に関われる環境ということが分かりました。
加えて、入社を決める上で大きかったのは、技術者としてのキャリアパスが明確に用意されていたことです。パーソルキャリアには、テクノロジー領域ではたらく人材を市場価値に即した基準で評価し能力開発を促進する「プロダクト・エンジニア人事制度(PE制度)」があります。専門性を高めながら成長していきたいと考えていたため、技術者として長く会社に貢献できる環境に魅力を感じ、転職を決めました。
実際に入社してみると、想像以上に内製が徹底されており良い意味で驚きました。人材サービスを提供する企業として転職希望者や求人に関する多くの情報を扱うため、データの取り扱いには非常に厳格なセキュリティ基準があります。事業のコアとなる部分を簡単に外部へ委ねることはできません。だからこそ、私たち自身が技術を理解し、仕組みをつくる必要があります。自分たちの技術力や判断力が、そのまま会社のデータサイエンス力につながる。その責任とやりがいの大きさを強く実感しました。
AIで人と仕事の出会いを進化させる。精度と速度を両立する推薦システムへの挑戦
現在は、転職希望者と求人を結ぶ「マッチング・推薦システム」の改善に取り組んでいます。AIを活用し、より満足度が高く、スピーディーなマッチングを実現することが主なミッションです。より良いマッチングを実現するには、転職希望者がどの求人に関心を持ちやすいのかだけでなく、企業がどのような人材を求めているのかも捉えなければなりません。双方の希望や条件が適切に重なってこそ、納得感のある転職につながります。そのため、マッチングを支える推定・予測の精度を高めながら、より早く結果を届けられる仕組みづくりを進めています。
技術面で大きなテーマとなるのが、精度と処理速度の両立です。AI技術の進歩によって、職種や業種といった条件だけで判断する方法から、より多様で複雑な情報を活用した方法へと進化しています。ただ、高度な処理ほど計算時間は長くなり、コストも増えていきます。そうした課題を解決するために、次々と生まれている新しい技術を見極め、パーソルキャリアの環境や課題に適した形で取り入れていくことも私の役割です。
担当するのは技術的な検討だけではありません。関係者の認識をそろえ、課題を整理しながら、企画、検証、実装に向けた調整まで幅広く担っています。データサイエンティストとして専門性を深める一方で、プロジェクトマネジャーに近い立場から全体を前へ進めることも求められます。
こうした幅広い領域に関わるからこそ難しさもあります。厳格な情報セキュリティ基準のもと、サービスへの信頼を守りながら、新しい取り組みをどこまで迅速に進められるか。その両立のあり方を常に考え続けなければなりません。また、多くの部署や関係者が関わるため、組織全体を見渡しながら連携することも重要です。大きな組織では、似たような施策が別の部署で進んでいることに後から気づく場合もあります。情報セキュリティや各部門の動きまで捉え、関係者と合意を形成しながら、技術を実際に使われる形へ落とし込んでいく。そこまで担ってこそ、事業を前へ進められると考えています。
学びを事業へ、個人の知見を組織の力へ。多様な仲間とつくるAIネイティブな未来
私たちの組織が目指しているのは、AIネイティブな会社へ進化することです。その実現に向けて、技術を事業で活用できる状態まで導くことも私の役割だと捉えています。社内には、データサイエンスを活かせるテーマが数多くありますが、実際の事業で使われなければ価値にはつながりません。だからこそ、どこに投資すべきかを経営層へ提案し、関係者を巻き込みながら前へ進めていきたいと思います。
パーソルキャリアではたらく面白さの一つは、事業に近い場所で仕事ができることです。多様な事業を担うメンバーが身近にいるため、現場の課題や反応を確かめながら施策を進められます。自分の分析や提案が業務やサービスにどのように生かされ、どのような変化を生んだのかまで見届けられる――その距離の近さが事業に貢献している実感につながっています。また、OKR(※)の導入によって、会社全体の方針と自部門のミッションとのつながりも明確になりました。自分たちの仕事が何を目指し、会社全体にどう貢献するのかを捉えやすくなったことで、施策を進める際の判断もしやすくなりました。
事業との距離の近さに加えて、日々感じているのが人の良さです。データサイエンスやエンジニアリングは専門性の高い領域ですが、知識や技術の優位性を競うのではなく、それぞれの知見を持ち寄る姿勢が大切にされています。目指すキャリアや学び方、仕事への向き合い方も人それぞれです。そうした違いを自然に認め合う文化が、組織の力につながっているのだと思います。
データサイエンスの観点では、活用できるデータが蓄積されていることに加え、変化の速い技術トレンドを追いながら有効な手法を試せる環境も大きな魅力です。最近は学会で発表するメンバーも増えています。もちろん、発表すること自体が目的ではありません。物事を厳密に捉え、技術への理解を深め、得られた知見を事業やプロダクトへ還元することに意味があります。個人の研鑽を組織全体の力へ変えていく。その取り組みや成果が正当に評価される文化をさらに育てていきたいと考えています。
私自身、52歳になった今も、仕事だけではなくプライベートにおいても新しい技術の研究や実験を続けています。そこで得た知見の中に事業で活かせるものがあれば、社内での活用を提案します。学ぶことを楽しみ、その知識を事業の価値へ変えていくことに、年齢は関係ありません。技術への探究心を持ち続けながら、仲間とともに事業を推進したい方には、パーソルキャリアでその力を発揮してほしいと思います。
※OKRとは、組織の目標と、その達成度を測る成果指標を連動させ、組織全体の方向性を合わせるための管理手法のこと。
