未経験で出会った品質保証の世界。ソフトウェアテストの奥深さに惹かれた原点
もともとは人と接することが好きで、レストランやホテルなどで接客の仕事をしていました。しかし、将来のはたらき方を考える中で、土日は休める仕事に移りたいと思うようになりました。せっかく業種を変えるのであれば、自分が想像できる仕事ではなく未知の領域に飛び込んでみたい。そう考え、未経験者を募集していたソフトウェア開発会社に入社しました。
配属されたのは品質保証部門です。最初に担当したのは、製品をユーザーの視点で操作し不具合を見つけるソフトウェアテストでした。製品に関する詳しい知識がなくても、興味や好奇心を持って触れることで不自然な動きや想定外の挙動に気づけます。一方で同じような操作を繰り返すことも多く、当初は単調に感じる場面もありました。
その印象が大きく変わったのは、入社から1年ほど経ったころです。当時の上司から勧められたソフトウェアテストの専門誌には、さまざまなテスト技法に加え、ソフトウェア工学をはじめとする幅広い知識が必要であることも書かれていました。
それまで、ソフトウェアテストは比較的シンプルな仕事だと捉えていました。しかし実際には専門性が高く、とても奥深い領域だったんです。そのギャップに強く惹かれ、専門誌に寄稿している方々の講演やイベントにも足を運ぶようになりました。第一線で活動する方々の熱量に触れ、もっと知りたい、深く学びたいという思いが膨らみ、ソフトウェアテストの世界へのめり込んでいきました。
品質課題の先にある人と組織のつながり。壁を越えた改善を求めてパーソルキャリアへ
ソフトウェアテストを学ぶほど、技術やノウハウだけでは品質の課題を解決できないと感じるようになりました。どの現場でも、開発にかかわる人たちは良いものを届けたいと考えています。それでも、何かの歯車がかみ合わず不具合や障害が起きてしまうのです。その原因は現場によって異なります。たとえば、自分の担当範囲だけを見ている人同士が関わることで、その間に溝が生まれることもあります。失敗を振り返る文化がなく、同じようなミスを繰り返してしまう組織もありました。
そこで、イベントやカンファレンスで他社の事例を学び、現場の課題と照らし合わせながら改善策を試していきました。「この方法なら必ず解決できる」という正解はありません。探偵のように原因を探り、その現場に合う方法を考えていくことに面白さを感じていました。そうした経験を重ねる中で、品質には技術だけでなく、人と人とのコミュニケーションが深く関わっていることにも気づいたんです。実際、部門をまたぐ会話がうまくいっていない現場では、双方の意図をつなぐ通訳のような役割を担うこともありました。
システムやプログラムに向き合う仕事だと思っていた品質保証の領域でも、接客業で培ったコミュニケーション力を活かせるのではないか。人と人をつなぐ役割なら、自分の強みを発揮できると考えたんです。その中で大切にしてきたのが、現場を実際に見ることです。一般的なプロセスや理想論をそのまま当てはめるのではなく、現地・現物・現実を重視する「三現主義」の考え方を軸にしてきました。現場に入りそこで起きていることを見なければ、本当の課題はわかりません。
その後、所属していた品質保証部門が品質コンサルティング会社へ移譲され、お客さまの課題改善を支援する仕事に携わるようになりました。ユーザーの急増に伴って不具合が増えたプロダクトなど、さまざまな課題を抱える現場に入り、状況に応じた改善に取り組んできました。品質の課題を解決するには、チームの中だけでなく、企画や事業などさらに広い範囲との連携が必要です。しかし、コンサルティングの立場では、依頼を受けた部門の外側までは関わりにくく、品質改善に必要な範囲へ踏み込めないことに壁を感じていました。そこで、事業会社であれば部門の枠を越え、より広い視点で品質課題に向き合えるのではないかと考え、転職を決意しました。
これまでスマートフォンアプリやBtoBのSaaSなど、さまざまなサービスの品質保証に携わってきたため、扱うプロダクトの種類に強いこだわりはありませんでした。一方で、転職先を選ぶ上で大切にしていたのは、社会への貢献度と会社が掲げるビジョンです。
パーソルキャリアに最初に惹かれたのも「はたらいて、笑おう。」というビジョンでした。さらに、面接で出会った社員の方々がその言葉を実際に体現しているように感じたことも印象に残っています。スタートアップから大企業まで幅広い会社の話を聞く中で、この会社なら同じ思いや価値観を持つ人たちとともに自分が目指す品質改善に取り組めると思い、2023年にパーソルキャリアへ転職しました。
基準をつくるだけでは終わらない。全社横断で進める品質管理と文化づくり
入社当初は、新規サービス開発本部のQAエンジニアとして、テストプロセスの整備や改善に取り組みました。現場に入り、課題を見つけながら、品質を高めるための仕組みをつくる役割です。所属した組織には、ソフトウェアテストや品質保証を専門とする外部企業が参画しており、必要な品質管理はある程度行われていました。
入社から1年ほど経ったころ、全社横断で品質に向き合う組織が立ち上がり、私もそのメンバーになりました。最初のミッションは、各開発チームにおける開発品質の状態を可視化することです。そこで、対象となる22チームにヒアリングを行い、開発やテストのプロセスが定められているか、文書化されているか、関係者に共有されているかなど、さまざまな指標をもとに確認していきました。回答だけでは実態をつかめない場合には、担当者から詳しく話を聞き、実際のドキュメントも確認しました。
調査を進めていくと、組織ごとに開発環境やテスト環境、使用するツール、カルチャーまで大きく異なることがわかりました。これは、各部署がそれぞれの環境に合わせて部分最適を進めてきた結果でもあります。開発体制も、内製を中心とするチーム、外部に開発を任せるチーム、内製と外部委託を組み合わせるチームなどさまざまで、それぞれ異なる会社のようでした。
現在のミッションは、パーソルキャリア全体で品質管理を標準化することです。しかし、各組織の状況が大きく異なる中で全社共通の品質管理基準を一律に定めても、すべての現場にはフィットしません。そこで、既存のフレームワークや「こうあるべき」という方法をそのまま当てはめるのではなく、最低限必要な基準やガードレールを定め、具体的な守り方は各チームに委ねる。そうした一定の幅を持つ標準をつくろうとしています。何が整っていれば品質を一定水準で担保できるのか。開発現場が迷わず進めるためには、どのような基準が必要なのか。各組織の特性に寄り添いながら、現場に無理なく定着する仕組みを検討しています。
こうした品質管理の土台を支える取り組みの一つが、半期に一度開催しているQA輪読会です。ソフトウェアテストの知識体系をまとめた国際資格試験の公式ガイドラインを教材として使用しています。共通の教材で学ぶことで、同じ言葉と前提を持って品質について話せるようになります。ディスカッションを中心に進めることで、参加者から現場の課題や迷いが自然に語られることも特長です。各組織がどこで困っているのかを肌感覚で把握でき、標準をつくる上でも重要な機会になっています。
輪読会の学びをきっかけに、参加者が現場のテスト計画を見直したり、資格取得につなげたりするなど、実際の行動変容も生まれています。基準や仕組みをつくるだけでなく、品質について共通の認識を持ち現場での実践につなげていくことも、品質文化を育てる上で大切だと考えています。
品質の専門性を組織へ還元し、事業成長を支える。対話と挑戦で描く未来
全社横断の組織へ移った当初はかなり悩みました。それまでは現場に入り、課題を見つけて改善することが中心でしたが、対象が全社へ広がると、仕事の進め方も求められる視点も大きく変わります。新たな役割を任される中で、自分がどのように価値を発揮すればよいのかわからなくなっていました。
その時期に活用したのが、上司との対話や、自分のありたい姿について社内の担当者に継続的に相談できる「キャリア対話」です。自分の強みや、これから何をしたいのかを言葉にする中で、今回の役割を自分のキャリアを広げる機会として捉えられるようになりました。希望すれば、より得意な領域へ移る選択肢もあったと思います。ただ、自分のコンフォートゾーンにとどまるのではなく、経験したことのない課題に向き合い、その先にあるものを得たかったんです。難しい課題に向き合い続けることで、周囲に相談する機会も増え、自分なりの気づきも生まれました。
苦しい時期を越えた今は、自分の強みだけでなく、さらに伸ばすべき力も見えるようになり、以前より大きなやりがいを感じています。ソフトウェアサービスの品質は、事業の成長を下支えするものです。今後も、これまで培ってきた品質の専門性を活かし、サービスと事業の基盤をより強くしていきます。
パーソルキャリアには、育児をしながらでも、自分に合ったはたらき方を選びやすい環境があります。リモートワークを活用しながら仕事をコントロールしやすく、子育てをする社員への理解も根づいています。もちろん、柔軟にはたらくためには周囲への配慮や、仕事に影響が出ないようにする工夫も必要です。誰に仕事を引き継いでも状況がわかるよう、すべてのタスクをチケットで管理し、自分がボールを持ちすぎないようにしています。
周囲には、好奇心や探究心を持ち、自ら学び続けるエンジニアが多くいます。そうした仲間から刺激を受けながら、これまでの経験や学びから得た知見や手法を組織に広く還元していきたいと考えています。
