医療現場の信頼に応えるブランド価値の創造をめざし、外科手術機器の導入戦略をリード
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
外科手術用デバイスを扱うビジネスユニットに所属し、シニアダイレクターとして事業の中核を担う超音波治療機器のプロダクトマーケティングを統括しています。
担当領域は、製品の企画立案から市場導入、導入後の課題解決まで幅広く、製品ライフサイクル全体を見渡すポジションです。製品仕様の変更にともなう顧客コミュニケーションツールの作成、現場からの問い合わせ対応、供給制約時の販売調整や情報発信など、製造と営業現場をつなぐハブとしても機能しています。
外科手術用デバイスのプロダクトマーケティング部門は国内外に分散しており、システムを構成する各種製品の開発・製造拠点もグローバルに広がっています。オリンパスメディカルシステムズをはじめ、Olympus Surgical Technologies America、Olympus Surgical Technologies Europeなど、タイムゾーン・文化・組織構造の異なるチームとの連携が欠かせません。
製造・開発・品質・サプライチェーンマネジメント・マーケティングインテリジェンス・各地域のセールスチームなど、さまざまなステークホルダーとアライメントを取りながら、プロジェクトを推進しています。
──オリンパスで働くやりがいをどんなところに感じていますか?
オリンパスは日本を代表するメドテックカンパニーとして、医療現場から常に大きな期待を寄せられています。新製品の企画時に、先生方が共同研究の相談に快く応じてくださるのは、長年築いてきた信頼関係と確かなブランドプレゼンスがあるからです。
先日次世代機種を先生方に紹介するイベントを持ちましたが、このイベントを通じて、内科のみでなく、外科領域においてもオリンパスへの期待が高いことを実感しました。その期待に応え、医療の現場に新しい価値を届けていくことこそが、オリンパスで働く醍醐味だと感じています。
開発から企画、マーケティングへ。異なる立場で学んだ全体最適の視点と組織運営の本質
──入社からこれまでのキャリアについて教えてください。
1995年の入社後、消化器内視鏡用の治療デバイス開発に携わり、約10年間にわたって新製品開発を担当しました。その後、企画部門へ異動。現場の声を起点に製品の価値を磨き上げるプロセスに魅力を感じたことが理由でした。
医療機器の世界では、必ずしも革新的な技術だけが価値を生むわけではありません。医療現場の声をもとにデバイスの形状や機能をわずかに変えるだけで、手技の効率や安全性が大きく向上することがあります。単に製品をつくるのではなく、医療の質をどう高め、どう現場に届けるかを追求したい──そんな想いで企画の道へと進みました。
企画部門での経験を通じて市場への関心を高め、2007年にマーケティング部門へ。現場のニーズをどう製品に反映し、先生方にどう伝えれば選ばれるのか。その問いを軸に、消化器内視鏡用処置具の戦略企画立案やマーケティング業務に携わりました。
2017年に総務部の秘書グループへ異動したのは、上司からのすすめがきっかけです。約2年間、社長秘書として経営層を間近で支える中で、経営視点に加え、もうひとつ学んだことがあります。それは、意思決定に必要なのは“頭の良さ”ではなく“心の強さ”だということです。たとえば、企業のトップは1,000のうち700を取るために300を捨てる決断を迫られます。自明なことであっても実行するのは難しい。痛みを引き受け、決め切る覚悟こそがリーダーの資質だと理解しました。
そして2019年、外科分野に異動しました。私にとって外科は未知の領域でしたが、新たな挑戦への期待の方が大きかったです。実際に組織や文化、働くスタイルが異なる中で、多くの新しい発見と学びを得られています。
──これまでのキャリアで、とくに印象に残っている経験を教えてください。
チームで大きな課題を乗り越えた経験を、異なる立場で2度味わったことです。ひとつは開発エンジニアとして、もうひとつは組織を率いるリーダーとして、それぞれの役割で“チーム力の本質”を実感しました。
最初の経験は、治療デバイスの開発を担当していたときのことです。まだ入社して間もない頃で、設計した製品を量産に乗せ、社会へと届けるまでのプロセスをまったく理解していませんでした。ところが、いざプロジェクトが始まると、各分野から集まったプロフェッショナルたちによって、次々と課題が解決されていきます。その様子を目の当たりにして、「仕事はひとりでは完結しない」という当たり前のことを、リアルに体感しました。
異なる専門性を持つ人たちが連携することで、初めてひとつの製品が世の中に出ていく。そのダイナミズムを肌で感じた、若手時代の貴重な経験でした。
もうひとつ印象的だったのが、外科領域の事業に携わっていたときの出来事です。超音波治療機器は、日本とアメリカの2拠点で生産していますが、あるとき、一方の工場でトラブルが発生し、もう一方で増産せざるを得ない状況になりました。
しかし、各拠点はそれぞれ製造・調達などの機能を持ち、独立して運営されています。当時は生産量を柔軟に調整する仕組みが整っておらず、なかなか合意形成が進みませんでした。そこで、私が両拠点の間に入り、調整をリードすることに。双方の各部門に対して、全体最適の視点で「この方向に進むために何が必要か」を示し、具体的なアクションに落とし込むことで、結果的にスムーズな体制移行を実現できました。
若手時代に学んだのは、「個の力が結集してこそ、組織は動く」ということ。そしてリーダーになって学んだのは、「方向性を示すことで、専門家たちが最大の力を発揮できる」ということです。この2つの経験は、今の私のマネジメントスタイルの礎になっています。
100回の対話で築く相互理解と信頼。“火中の栗を拾う”覚悟が組織の推進力を高める
──リーダーとして仕事をする上での難しさ、やりがいをどのように感じていますか?
最も難しいのは、チーム全体を同じ方向に導くことです。リーダーの役割は、プロジェクトを動かすだけでなく、日々の業務の中でメンバー一人ひとりの考えや立場を理解しながら、自分の意見や価値観を丁寧に伝え続けることだと思っています。
担当業務に長く従事し、メンバーより高い専門性を持っている場合、自身の経験に基づいた方向感で間違うことは少ないのだと思いますが、私が外科分野に異動した当初のように、製品や市場背景、進行中のプロジェクトに関してメンバーのほうが自分より詳しい場合、とくにメンバーや周囲協力部門の状況、考えを理解することが重要になってきます。
ただし、事業を推進するという観点から見れば、社内の各部門に共通する考え方やプロセスがあります。従ってコミュニケーションを重ねて状況やステークホルダーの考えを理解できれば、開発やマーケティング、社長秘書として携わってきた経験が生きています。こうして、方向性を定め、キーパーソンたちと対話を重ねながらプロジェクトを推進し、組織に影響を与えられるのは、リーダーならではの醍醐味です。
とくにマーケティングは、さまざまな機能部門や海外拠点の舵を取るポジションです。意思決定を通じて大きな事業を動かせることに、責任とやりがいを感じます。
多様なバックグラウンドを持つ人が集まるほど、できることの幅は広がるものです。自分ひとりのスキルや経験だけでなく、組織としての力を最大化していくところに、リーダーシップの本質的なおもしろさがあると思っています。
──仕事をする上で心がけていることを教えてください。
「コミュニケーションを重ねること」です。初めて仕事をする人と連携する機会も多いのですが、表面的な意見のやり取りだけでは、その背景にある考えまでは見えてきません。
しかし、根本の目線がそろわないとプロジェクトが前に進まないこともあるため、日頃から相手の人となりを知る努力が欠かせません。業務の話だけでなく、今どんなテーマに取り組んでいるのか、何を大事にしているのかなど、対話を重ねることで相互理解が深まり、自然と信頼関係も築かれていくと考えています。
以前、上司に言われた「100回話せばわかり合える」という言葉が印象に残っています。毎週話せば2年、毎日話せば3カ月で100回です。数字にすると少し極端に思えるかもしれませんが、それくらい継続的なコミュニケーションが重要だと思っています。
もうひとつ大切にしているのが、難しい局面ほど前に出て動くことです。どんなチームでも、思うようにいかない場面がありますが、そんなときこそ、自ら調整役を担うようにしています。
以前、「他部署が動いてくれない」と悩んでいたメンバーに、こう伝えたことがありました。「火中の栗を拾うことで、コンフォートゾーンを抜け出せる。そこから自分の能力や視野が確実に広がる。必ず成長につながるし、誰かが見ているから、そういう経験は買ってでもすべきだ」と。
関係者の間に立って困難な状況を整理した結果、組織が一歩動く瞬間に立ち会えるのは本当にうれしいものです。結果的に、それがチームの信頼関係を育み、組織の推進力を高めることにもつながると確信しています。
信じて託す勇気が、チームを強くする。挑戦と成長のバトンを、次の世代へ
──次世代のリーダーに向けて、メッセージをお願いします。
リーダーの役割は、大きく2つあると考えています。ひとつは、プロジェクトの方向性を示すこと。もうひとつは、メンバーや他部署の仲間を信頼し、託すことです。自分ひとりで完璧をめざすのではなく、チームの力を信じて動かす。その姿勢こそが、リーダーに求められる資質だと思っています。
オリンパスは、自分たちの仕事が医療現場や社会に形となって現れる会社です。リーダーになれば、その影響力や発信力も格段に大きくなるでしょう。うまくいかないことがあっても、チーム全体でリカバリーすればいい。そう思って、積極的にチャレンジしてください。
──今後の展望をお聞かせください。
外科事業に携わって7年目を迎え、課題も可能性もクリアに見えてきました。先生方からの期待や、オリンパスが持つ技術のポテンシャルを見ていると、「まだまだ成長できる」と確信しています。
超音波治療機器を中心に、外科事業を再び成長軌道に乗せ、次の世代へとつながる礎を築いていきたいと考えています。
個人としては、若手の育成にも注力していくつもりです。医療に新しい風を起こせる未来の担い手を育てていくことが、次の目標です。
※ 記載内容は2025年10月時点のものです

