世界シェア7割超の誇りと責任。エンジニアと医師の真剣勝負で内視鏡医療に挑む
──所属する部署と、担当する仕事や役割について教えてください。
GIS(消化器内視鏡ソリューション)事業におけるGI R&Dのリーダーとして、体の中に入っていく内視鏡スコープといわれるものと、その画像を処理するプロセッサーの開発を統括しています。私が直轄するチームは300名ほどですが、消化器製品に関わる機能別のチームを含めると、実際にはさらに多くの仲間と協働しています。
事業部の責任者と連携して、技術戦略や製品ロードマップを策定し、実際の開発における品質・投資・コスト・納期・ビジネス性といった、すべての消化器製品の目標達成に責任を負う、重責ながら非常にやりがいのある役割です。
──オリンパスで働く魅力や、仕事のやりがいはどこにありますか?
大学では工学部でヘルスケア領域を研究しており、就職活動では「知識や技術といった自身のインプットを、できるだけ大きな形で価値に変え、社会にアウトプットしたい」と考えていました。その中で、オリンパスが消化器内視鏡分野で世界シェア7割超を誇ると知り、多くの人に価値を届けられることにやりがいを感じて入社しました。約22年を経た今でもその想いは変わりませんし、実際に仕事を通して内視鏡医療について知れば知るほど、素晴らしい技術だと実感しています。
かつては「助からない病気」というイメージだったがんも、現在の内視鏡を使えば治療することが可能です。自身が携わった製品や提案した機能が、オリンパスの高いシェアを通じて世界中の人々の命を助け、健康を支えている。それこそが日々の大きな原動力になっています。
また、医師の先生方との協働で製品を生み出していることも当社の大きな特徴です。企画に対してのヒアリングや試作品へのフィードバックを通して改善を繰り返していきます。その際、リップサービスなしに厳しい意見をいただけるのですが、これは、私たちへの信頼と期待の裏返しだと捉えています。そのほか、世界中の医師とオリンパスが将来の内視鏡医療について本気で討議する会議も開催しており、数十年にわたり先生方と共に歩んできた歴史を糧に製品開発に取り組めることは、オリンパスならではの魅力だと考えています。
製品をいち早く患者さんに届けたい。海外やマーケティングを経て戻った開発への使命感
──入社後のお仕事の変遷と、印象に残っている出来事を教えてください。
2004年に入社後、医療研究部(当時)で約3年間、開発者として大腸内視鏡の挿入性を向上させる要素技術開発に従事しました。とても刺激的な毎日でしたが、しだいに入社の動機でもあった「自分の作った製品が世の中に貢献していることを実感したい」という想いが募っていったんです。また、当時近くにアメリカ駐在から帰国した優秀な先輩がいらっしゃいました。その姿に触発され、「自分も海外で仕事をして成長したい」とキャリアパスを描くようになりました。
その想いを上司に相談したところ、「まずは製品開発の経験を積むといいよ」と便宜を図って下さり、2007年に内視鏡開発部に異動することに。経鼻内視鏡製品開発を担当し、製品や臨床に関する知識を身につけることができました。
その後、2013年にオリンパスアメリカに赴任し、海外勤務の夢も実現しました。とくに印象に残っている出来事は、カリフォルニアの病院で、大腸内視鏡の挿入技術に優れた医師を訪ねた時のことです。ある患者さんの検査前、先生が「彼はこの内視鏡を開発している会社のエンジニアです。製品をより良くするために見学してもいいですか?」と紹介してくださり、見学できることになりました。そして検査が無事に終了した後、先ほどの患者さんと偶然すれ違ったのですが、その時に「素晴らしい製品をありがとう」と声をかけてくださったのです。
普段、開発者が患者さんから直接お礼を言われる機会はめったにありません。私たちの技術が1人の人生に貢献しているのだと実感できた出来事でした。この時の言葉は一生忘れないと思います。
──帰国後は、どのようなキャリアを歩みましたか?
2018年に帰任後は、1年ほど消化器内視鏡の製品開発戦略やプロダクトロードマップの立案、複数プロジェクトの管理などを行っていましたが、当時のオリンパスは企業変革プラン「Transform Olympus」を推進する激流の中にありました。戦略立案機能を強化するためにマーケティング部門に新組織を立ち上げることになり、そのリーダーを任されました。
もともと戦略や企画にも携わりたい想いはありましたが、その業務はこれまで主に開発部門が担っていました。マーケティング部門という新たな環境での挑戦は予想外でしたが、前向きに取り組もうと決意しました。当時の最新機種に続く次世代内視鏡システムのコンセプトをゼロから立案する仕事は非常におもしろく、わくわくしながら、未来の医療に何を届けるべきか徹底的に考え抜きました。
──再び開発に携わるようになった背景には、どのような想いがありましたか?
マーケティングとして働くうちに、現在のオリンパスの課題は「製品開発」にあると感じるようになりました。製品は患者さんに使われて初めて価値を生みます。当時は、新製品がなかなか市場に出せない時期が続き、既存製品も法規制対応などが厳しくなる中で、患者さんのもとに製品が届くまでに時間がかかる状況でした。「いくら戦略を立てても、これでは価値を最大化できない」そんなジレンマがありました。
マーケティングの立場から、製品開発を変革するプロジェクトのリードも行いながら「今、私は何をすれば会社に貢献できるのか?」と考えた末に、開発リーダーの打診を受け、2025年に再び開発部門に戻る決意をしました。
結果として、マーケティング部門で生み出した「戦略」というボールを、今度は開発部門のリーダーとして自らキャッチして実行に移す形になっていますね。だからこそ、最後まで責任を持ってやり遂げなければならないと気を引き締めています。
多様な個性を結集しチームを成長させる。「相手の話を聞くこと」から生まれる信頼関係
──リーダーとしての仕事の難しさと醍醐味を教えてください。
自分1人の力では達成できない大きな課題に取り組むには、協力してくれるチームや力を貸してくれる人を増やす必要があります。そのために、自らの行動の透明性を高め、情報を可視化し、丁寧なコミュニケーションを通じて合意を形成していかなければならない。職責が大きくなるにつれて、このプロセスの重要性と難しさを痛感しています。
一方で、チームがめざす方向を示し、多様なバックグラウンドを持つメンバーの力を結集して成果を出すプロセスをリードできるのは、大きな醍醐味です。とくに、少し高い目標を設定することで、その目標に向けて挑戦したメンバーが、1カ月前にはできなかったことができるようになるなど、成長を間近で見られることが何よりの喜びです。
──多様なメンバーの意見を尊重するために、工夫していることはありますか?
とにかく相手の話をしっかり聞くことです。マーケティング時代、「Transform Olympus」の流れの中で、多国籍なメンバーが部門を超えて集まるプロジェクトが多く立ち上がりました。そこに参加した際に、優れたリーダーたちは「人の話を真摯に聞くこと」を大切にしていたんです。話を聞いてもらえると、自然と相手を好きになるんですよね。身をもって「これは大事なことだ」と学びました。
また、当時の同僚からの「自分のことを理解してほしいなら、まずは相手のことを理解しないと」という言葉も心に残っています。実際に聞く努力をすると、相手もこちらの話を聞こうとしてくれるようになりました。とくに日本人は良い考えを持っていても遠慮してしまう人が少なくないので、できるだけメンバーには積極的に意見を求めるようにしています。
具体的に行っている取り組みとしては、直属チームのメンバーや協働するチームリーダー約30人との定期的な1on1があります。これは、尊敬する元上司から「ネットワークづくりを強化するといいよ」と助言をもらったことがきっかけです。これほどの人数と時間を作ることは簡単ではありませんが、それ以上に効果が大きいと感じています。
そのほか、国際会議などの場では、あえて話したことのない人の隣に座ることも心がけています。そこで軽い雑談を交わしておくことで、後に一緒に仕事をすることになった時にスムーズに進んだ経験が何度もありました。こうした地道なアクションの積み重ねが、強固なチームづくりには欠かせないと考えています。
現状を疑い、果敢にチャレンジする組織へ。主語を自分に、医療の未来を変革する
──開発部門のリーダーとして、これからの組織への展望を聞かせてください。
一番の目標は、製品を最速で患者さんのもとに届けられる組織にすることです。そのために、謙虚に日々学び続けなければなりません。そして、エンジニア全員が健全な危機意識を持ち、「自分たちのやり方はもっと良くできるかもしれない」と現状を疑い、果敢にチャレンジし続ける組織にしていきたい。
ただし、これはカルチャーの側面が大きく、一朝一夕には変わりません。日々のコミュニケーションの中でこうした姿勢を見せ、伝え続け、共感してくれる仲間を少しずつ増やしていきたいと考えています。
たとえ、耳の痛い意見であっても他者に助言を求め、自らの考えをアップデートしていく。そうした謙虚さと探究心を持つエンジニアが集まる組織をめざすことが、結果として最も早く、最高の製品を患者さんに届けることにつながると信じています。
──最後に、次世代を担うリーダーに大切にしてほしい姿勢を教えてください。
まず、必ず自分の考えを持ち、それを表明することです。その際、伝える方法(How)は相手に応じて工夫すべきですが、伝える内容(What)は相手が誰であっても変えないことが重要です。本来、「正しいこと」は相手によって変わるものではありません。そんな透明性と公正さを大事にしてほしいと思います。率直に意見を伝え、対話の中で相手のほうが正しいと思えば、「考えが変わりました」と言葉に出すことができればいいんです。
またリーダーとして、言いにくいことでも、必要ならばしっかりと伝える勇気を持つこと。そして、物事を目的思考でシンプルに捉える姿勢が、周囲からの信頼につながっていくはずです。
最後に、何かを伝える時や行動を決める時に「主語を自分(私)にする」ことを意識してみてください。「予算が」「リソースが」などではなく、「この課題を解決するために、私は何をするのか?」と考える。日々の仕事の中で、一人ひとりが「私」を主語にして語り、主体性を持って行動し続けること。それが、オリンパス、そして医療の未来を動かしていく原動力になると信じています。
※ 記載内容は2026年4月時点のものです

