「患者さんへの貢献」を世界規模で。医師と共に未来の医療をつくるやりがい
──現在の所属部署と、そこでの役割について教えてください。
私は現在、呼吸器ビジネスユニットで、グローバルビジネスユニットリードを務めています。ミッションは、呼吸器事業のグローバル戦略、製品ポートフォリオ、イノベーションパイプラインを統括し、事業成長と価値創出を推進することです。
具体的には、事業戦略の立案と実行、市場ニーズに基づく新製品の企画、市場導入から販売後の一連のマネジメントまで、製品のライフサイクル全体を見渡すプロダクトマーケティングが業務の中心です。現在はアメリカに駐在しており、チームメンバーは約20名で、日本、アメリカ、欧州と、メンバーの所在は世界各地にまたがっています。
また、事業を推進するためには、開発、製造、薬事、品質保証、メディカルアフェアーズ、ファイナンス部門など、機能を超えた多岐にわたるメンバーと連携する必要があり、日々多くのステークホルダーと関わりながら仕事をしています。
私たちは呼吸器分野を担当しており、肺がんをはじめとする呼吸器疾患の患者さんを救いたいという志を持って働いています。直近では、アジアパシフィックや日本の医師を招いて会議を行いました。そこで発売したばかりの新製品の評価や、将来の技術開発など、「どうすればもっと診断・治療の質を上げられるか」について議論したのです。直接の顧客である医師のみなさんと膝を突き合わせ、共にめざす未来をつくっていける点にやりがいを感じています。
──オリンパスで働く魅力はどのような点にありますか?
もともと「多様な文化や専門性を持つ人たちと、グローバルな環境で働きたい」という気持ちがありましたが、同時に「医療のような社会貢献度の高い仕事がしたい」という想いがベースにありました。現在の仕事は、そのすべてが実現できていると感じています。
働く中で感じているオリンパスの魅力は、何よりも「人」です。社員と顧客である医療従事者との間に、誠実で互いを尊重し合う信頼関係が根付いており、非常に協働しやすい文化があります。
そうした組織風土に加え、オリンパスには長い歴史と高いシェアがあるため、世界中どこへ行っても必ずと言っていいほど私たちのお客さまがいます。国境を越えても共通の製品を通じて議論ができ、自社の技術が世界中で患者さんの命を救うことに貢献している。この規模感と貢献の実感は、オリンパスならではの強みだとあらためて感じています。
「働きながら学ぶのが当たり前」という環境の後押し。変化を続けるリーダーの原点
──オリンパスに入社し、リーダーになった経緯を教えてください。
学生時代の留学経験で多様な価値観に触れて視野が広がり、世界の人と働きたいという思いが強まったこともあり、日本の技術を広める「ものづくり」と「グローバル」を軸にオリンパスを選びました。ただ、2004年の入社当初は、今自身が担当しているビジネスリーダーというポジションはまったく想像していませんでした。
入社後は担当地域や分野を変えつつも、一貫してプロダクトマーケティング業務を推進してきました。初めてリーダーになったのは2012年頃です。当時は「リーダーはメンバーより知識も能力も完璧でなければならない」という思い込みにとらわれてしまいました。自分よりも経験豊富なメンバーを前に、「自分もしっかりしなければ」と必要以上に肩に力が入っていましたね。
そんな時、上司や周囲の先輩から「すべて完璧でなくてもいいんだよ」と言葉をもらいました。自分のできないことは得意なメンバーに任せ、自分は自身の強みでリードすればいい。そう考えが変わってからは、一緒に働く一人ひとりの良いところを見つけて伸ばすことに、リーダーとしてのやりがいを感じるようになりました。
──ご自身のキャリアの中で大きな転機となった出来事はありますか?
2014年から初の米国駐在を経験したことも大きな刺激となりましたが、最大の転機は2回目の駐在です。一度日本へ帰国して経験を積んだ後、2022年から再び米国に駐在しました。そこで任されたのが、シニアリーダーが掲げる戦略やアイデアを、具体的な形にするための推進役という仕事でした。
その業務を通じて経営会議にも同席するようになり、これまでの立場では知り得なかった情報の量と質に圧倒されました。シニアリーダーたちの意思決定の場面を目の当たりにした時は「グローバル企業で活躍し貢献するとはこういうことか」とリーダーの解像度が一気に上がったことを覚えています。「私が見たリーダーたちのように物事を考え、見極められるようにならなければならない」「足りない部分を学びたい」と痛感しました。
ちょうどそのころ駐在していたボストン近郊は学園都市で、周りを見渡せば「働きながら学ぶこと」が当たり前という環境でした。そうした風土に背中を押されたこともあり、MBAへの挑戦を決めたんです。当初は「40歳を超えて今更遅いのではないか」とも思いましたが、実際に参加してみると、クラスメイトの中心は30代後半から40代前半の中間管理職で、70代の経営者もいるなど、年齢なんて関係ないんだと気づかされました。
プログラムはすべてオンラインで、グローバルなチームでプロジェクトを進める実践的なものでした。まったく違う業界の人たちと議論をする中で、業界は違っても抱えているリーダーとしての悩みは一緒なんだと知ることができたのは大きな刺激になりました。
そして卒業が現実味を帯びてきた頃、現在の「グローバルビジネスユニットリード」を打診されました。最初は「私でいいのか」と悩みましたが、「信じて任せてくれるならやってみよう」という思いで引き受け2025年4月に今の役割に就きました。
自分にも相手にも誠実に。「一貫性」と「柔軟性」で築く信頼関係
──リーダーとしてチームを率いる上で、大切にしている姿勢を教えてください。
大切にしているのは、「一貫性」と「柔軟性」のバランスです。 リーダーシップを学ぶ中で、Authenticity(自分らしさ)やConsistency(一貫性)が重要だと気づきました。まずは自分が何を大切にし、会社が何を大切にしているか。その価値観が合致していれば、自分にも他人にも無闇に取り繕うことなく、オリンパスが掲げる「Integrity(誠実)」なリーダーとして振る舞うことができます。
たとえば、会社の方針を伝える際も、自分自身が腹落ちしていることが重要で、そうなっているからこそ、メンバーに対して、単なるメッセンジャーではなく、自分の言葉で“想い”を届けることができます。そうした姿勢があって初めて、メンバーにも真意が伝わり、信頼が生まれるのだと信じています。難しい決定であっても、自分の言葉で、自分の責任として伝えられるリーダーでありたい。そのためにも、誠実に一貫した姿勢を持ち続けたいと思っています。
一方で、世の中の変化は激しく、ただ一貫性を守るだけでは生き残ることはできません。だからこそ、自分の中に「ぶれない軸」を持ちつつも、変化には柔軟に対応し、新しい挑戦を受け入れていく。そんなバランス感覚を大切にしていきたいですね。
──グローバル組織において、多様な意見を尊重するために工夫していることはありますか?
背景や前提が異なることを踏まえて丁寧に聞くことと、全員が発言しやすい場作りです。グローバルな環境では、言わずとも察する、という日本的な文化は通用しないため、相手の言葉を正確に受け取り、曖昧さを残さず明確に言葉にするよう徹底しています。
また、会議には日本メンバーを含め英語が母国語ではないメンバーも多く参加しています。ネイティブ同士のスピードで議論が進むと議論に入りづらくなるメンバーもいるため、英語ネイティブのメンバーに「少しゆっくり話してほしい」と要請したり、発言してくれたメンバーを積極的に称賛したりして、全員が参加しやすい空気を作るよう心がけています。
「リーダー」になることを恐れずに。良い結果を生むために、自ら行動を起こす組織へ
──今後の展望について教えてください。
呼吸器事業のミッションは、肺がんをはじめとする呼吸器疾患の患者さんに、より早期で正確な診断と、低侵襲で質の高い治療を届けることです。だからこそ、製品を安定して供給し続けるという責任の重さと、日々のオペレーションが「患者さんの命」に直結しているという使命感を常に抱いています。シニアリーダーになっても現場感覚を失わず、積極的に現場に出て医師や医療従事者と直接対話しながら、患者さんにとって価値のある技術を届け続けたいと思っています。
また、組織に「Accountability(責任ある行動)」を浸透させたいと考えています。この言葉を、私は「何か問題が起きた際に、事後的に責任を負う」ことだけではなく、「良い結果を生み出すために行動すること」だと定義しています。職位に関わらず、患者さん・医療従事者・事業の成果を出すために、自分の範囲を超えて主体的に行動を起こす組織にしていきたい。そのためにもまず自分自身が実践してそれを示していきたいと考えています。
──最後に、次世代のリーダーをめざす人たちへメッセージをお願いします。
「チャンスが巡ってきたら、恐れずに挑戦してほしい」と伝えたいです。
リーダーに対する責任の重さに不安を感じる気持ちは、私自身とてもよくわかります。尊敬していた完璧に見える元上司でさえ、昇進のたびに「自分でいいんだろうか」と悩んでいたと聞き、「そんなすばらしいリーダーでも迷う瞬間があるのか」と衝撃を受けました。どんなに優れたリーダーでも、不安や葛藤を抱えるタイミングはあるものです。
そして、一度失敗したからといって終わりではありません。やってみて合わなければ別の道を探せばいいし、失敗は次の糧になります。「私でいいのかな?」と思いながら挑戦して良かったと今の私は心から思っています。だからこそ、ぜひ恐れずに一歩を踏み出してほしい。仮に失敗しても機会はまた必ず巡ってきますし、挑戦した事実そのものが未来の選択肢を広げてくれるはずです。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです

