日の出工場で出会った2人のキャリア。上司と部下が互いに刺激し合う理想の関係性
──これまでのキャリアと現在の業務について教えてください。
三上:入社以来約15年間、蛇管という内視鏡の挿入部の部品の開発と、その製造技術開発に携わってきました。設備の立ち上げや内製化も担当し、工程を一貫して経験できる環境に大きなやりがいを感じていました。
2025年に日の出工場へ異動し、現在はサイトエンジニアリング部門で藤村さんの部下として、処置具製品の生産維持や滅菌・微生物・環境管理区域の維持を担うユニットのSVを務めています。また、アソシエイト・エキスパートとして、工場の将来を描く戦略策定業務も兼務しています。
藤村:私は約20年間カメラ事業に携わり、ガラス成形レンズの技術開発や生産導入を担ってきました。とくにコンシューマー向けの製品は製品サイクルが非常に短く、常にスピード感ある改善が求められるタフな環境でしたね。
その後医療機器に携わるようになり、現在は日の出工場のサイトエンジニアリング部門のマネジャーとして、工場の製品ラインが円滑に動くよう技術面でサポートし、品質やQMS(品質マネジメントシステム)の管理を統括しています。
──日の出工場で上司と部下という関係になったお二人ですが、お互いの印象はどうですか?
三上:藤村さんの「任せる力」と「判断力」には日々感銘を受けています。私はつい自分で手を動かしたくなるタイプなのですが、藤村さんは40人規模の組織を束ねる上で、どこを任せ、どこに自分が入るべきかの見極めが非常に的確です。また、相談すると即座に「こうしよう」とポジティブな判断をくれる。その良い塩梅のサポートは、私にとって大きな刺激になっています。
藤村:三上さんの第一印象は、とにかく真面目な人。でも、ただ真面目なだけでなく、環境が変わることに非常に前向きで、チャレンジ精神に富んでいるところに「この人はすごいな」と驚かされました。
私がカメラ事業に従事していた頃は、1年単位で品質向上や原価低減を求められるなど、挑戦することが当たり前の世界でした。だからこそ、三上さんの新たな課題に真摯に取り組む姿勢が嬉しいんです。安心していろいろなことを任せてしまうほど、信頼を置いています。
新天地でのプロジェクトと戦略策定。背中を押したのは上司との対話と信頼関係
──異動という挑戦を決意した背景と、最初に携わったプロジェクトについて教えてください。
三上:異動前、会津工場で、法規制対応として、医療機器の製造工程が品質を満たしていることを証明し文書化する「プロセスバリデーション」を行うプロジェクトに2年ほど携わっていました。その経験から、オリンパスの製造プロセスの抜本的な改善に第一線で取り組みたいという想いが芽生えていたため、日の出工場への異動は前向きに受け止めました。
15年間究めてきた専門分野や役割を手放すことには葛藤もありましたが、1つの部署に長く留まることで、キャリアの幅が広がらないリスクを感じていたのも事実です。思い切って後輩に引き継ぎ、新しい世界に挑戦することは、自分にも会社にもプラスになると決断しました。
異動して任されたのは、会津工場でも経験したプロセスバリデーションのプロジェクトです。数千ページに及ぶ膨大な文書化が必要で、約20名のメンバーの取りまとめを担当しました。しかし、工場の知識が十分でない中でチームをリードするのは想像以上にハードで、最初の2カ月ほどは悩むことも多かったですね。
──その苦しい時期をどのように乗り越えたのでしょうか?
三上:日々のランチや1on1を通して、藤村さんに頻繁に相談できたことが支えになりました。藤村さんは決して否定することなく、曖昧な回答もせず、部署・工場としてのビジョンや明確な指針を示してくれるんです。その上で、私が決めた物事に対して「よし、それで行こう」と背中を押してくれるので、自信を持って進むことができました。
また、自身でもメンバーとの積極的なコミュニケーションに努めました。そうして短期間でチームの連携を深められたことも壁を乗り越えられた要因の1つだと考えています。
藤村:プロジェクトは非常にタイトなスケジュールで、全員が全力を尽くさなければならない状況でした。その中でも三上さんは、課題に対して「私はこうしようと思います」と提案型で相談してくれるところが素晴らしくて。
全幅の信頼を置いて、私は不足人員の調整など、全体の環境を整える役割に徹することができました。現場をしっかり統括してくれる人が必要な状況だったので、細やかな「報連相」で関係者全員への情報共有を図り、業務を進めてくれた三上さんには本当に助けられました。
──その約半年後、「戦略策定業務」の兼務を決めた経緯を教えてください。
三上:プロセスバリデーションのプロジェクトが終わり、少し手が空いたタイミングで、工場長から打診がありました。プロジェクトを完遂できたことで少し自信はつきましたが、新しい環境にまだ完全に慣れていない不安も感じていました。
その様子を見て、藤村さんが食堂で30分ほど時間を取ってくれたんです。正直な気持ちを吐露したところ、「仕事の幅を広げるチャンスじゃないか」と前向きな言葉をかけてくれたことで新たな挑戦を決意できました。「何かあれば藤村さんに相談できる」という信頼関係が築けていたことも大きかったですね。
藤村:それまでの仕事を通じて三上さんの土壇場での強さを感じていましたし、技術の世界ではまずトライしてみて検証・判断することが不可欠です。私自身、そういった経験を多くしてきたので、「今の立場で巡ってきたチャンスなら、まずはつかんでみるべきだ。ぜひやってみようよ」と背中を押しました。
痛感した仲間のありがたみ。上司の視点に学び、現場の連携や主体的な提案を促す
──2つの挑戦に並行して取り組む中で、三上さんはどのような気づきや学びがありましたか?
三上:入社以来ずっと技術系の仕事をしてきたので、企画や戦略といった数字を扱う業務は新鮮でした。幅広くたくさんのことに目を配る必要があり、工場の全体像への理解も深まりました。異動を決意した動機でもあった「キャリアの幅を広げる」意味では、予想以上の成果を得られていると感じています。
また、メンバーをリードする難しさを痛感したからこそ、周囲のメンバーを頼る重要性、それによって連携が深まるほど視野が広がる喜びを知りました。前の部署では当たり前だと捉えていた、一緒に仕事をしてくれる仲間のありがたみを、新しい環境であらためて実感しています。メンバーとのコミュニケーションで判断に迷う時は、「藤村さんならどうするだろう?」と考えるようにしています。
常に自己研鑽に努める大切さも学びの1つです。前の部署での知見を活かせる部分もありますが、製品や工程が異なれば、仕事の進め方もまったく異なります。細部になればなるほど、新たな知識やスキルを常に蓄え続けなければならないと痛感しています。
──藤村さんは、挑戦者をサポートする立場として大切にしていることはありますか?
藤村:あと数年で定年を迎えることもあり、マネジャーとしてあまり「自分色」を出しすぎないことを意識しています。今後のオリンパスを担うメンバーが自分自身で課題を見つけ、形にするためのお手伝いに徹したい。ですから、細かく指示を出すよりも「あなたが考えている課題は何なのか」「それに対してどうアプローチしていくのか」という対話を大切にしています。
結局、現場に立つ人間が一番状況をわかっているんですよね。だからこそ、現場から離れているマネジャーは、現場のリアルな状況を踏まえた提案が出てくることが嬉しいんです。そうやって現場が「できます」と自ら提案してくれる土壌を作ることこそが、私の役割だと考えています。その点、三上さんは早い段階から、的確かつ具体的なアイデアで自ら道をつくることができていたので、その姿勢をこれからも大切にしてほしいですね。
一歩踏み出す勇気と信じて任せる心で、製造現場の進化の最前線に立ち合う
──今後の展望を聞かせてください。
三上:会津工場、日の出工場でプロセスバリデーションに携わる中で、これは個別の工場だけの話ではなく、全工場が一貫した考え方で取り組むべき活動だと強く感じました。今後はこの経験を活かし、他の工場も巻き込みながら主体的にオリンパスの製造現場をより良くしていきたいです。
また、オリンパスの内視鏡製造は手作業の工程が多く、プロセスバリデーションのデータ取得が非常に難しいという側面があります。工程を記録する検査表も手書きで運用しているのが現状です。だからこそ、今後はeDHR(電子製造履歴管理)を導入し、デジタル化や自動化を推進したいという新たな夢も抱いています。
現在のオリンパスは、製造を自らの手で改革できる進化の過渡期にあり、技術者にとって非常におもしろいフェーズです。兼務している戦略策定業務も含め、将来の方向性は模索中ですが、工場横断的な技術開発に携わっていけたら嬉しいですね。
藤村:課題解決のおもしろさを感じられる組織にしたいと思っています。現在、オリンパスの製造はQMSの視点が重視されており、ある意味それが新しい技術的なネタにもなっています。プロセスバリデーションへの対応にあたってはさまざまな壁もありますが、そこを乗り越えて、技術職ならではの醍醐味を味わえる環境を整えていきたいですね。
──最後に、新たに挑戦しようとしている方、それをサポートする方へメッセージをお願いします。
三上:新しい環境に身を置く時は、不安や緊張を感じることもあると思います。しかし私自身、思い切ってチャレンジしたことで得るものは非常に大きかったと実感しています。何かに挑戦してみたいという想いがある方は、勇気を持ってぜひ一歩踏み出してみてください。
藤村:「チャンスの女神には前髪しかない」と言うように、機会があればまずつかんでみることが大切です。仕事をしていれば、壁や困難にぶつからないことのほうが珍しい。壁が大きければ大きいほど、後から振り返った時に「あの時頑張ってよかった」と思えるはずです。
また、サポートする側の方はぜひメンバーに勇気を持たせてあげてください。私は「必要性が人をつくる」と考えています。まずは相手を信じて任せ、そのためのサポートを惜しまない。それこそが人を、そして組織を強くすると確信しています。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです

