設計プロセスの“見えない品質”を追求し、医療機器開発の重要な一面を担う
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
設計管理を担う部署に所属し、約300人のメンバーを統括するVice Presidentを務めています。
設計管理とは、規制が厳しい分野に欠かせないプロセスであり、当社が国内で開発するすべての製品において、この設計管理の仕組みを整備・推進することが私たちのミッションです。
また、安全性や医学的有効性を実現できているかを市販前に最終検証するなど、医療従事者によるユーザー評価業務なども行っています。
医療機器の安全性に関する考え方は、ここ数十年で大きく変化してきました。以前は設計通りに製造されることが重視され、製造プロセスが主なチェック対象でしたが、近年は医療現場でのヒューマンエラーや想定外の使用が引き起こすリスクを、設計段階で最小化することが重要な課題となっています。そのため、図面にはあらわれない設計プロセスを明らかにし、適切に管理することが求められるようになってきました。
外部監査においても、設計管理は重点的に確認される部分です。「なぜこの設計を選択したのか」「この検証方法が妥当である理由は何ですか」「どのように検証しましたか」といった具体的な説明を行っています。
──オリンパスで働くやりがいをどんなところに感じていますか?
私たち設計管理エンジニアリングは、オリンパスが医療機器メーカーとして「リーガルマニュファクチャラー(法的製造業者)」を名乗る上で、重要な役割を担っています。
医療機器メーカーとしてグローバルに事業を展開するには、製品そのものの品質だけでなく、それを生み出すプロセスの品質も大切です。
各国の規制当局からの厳しい要求に応えながら、世界中の医療現場に製品を届けていく点に、責任とやりがいを感じています。
現場視点で仕事がしたい。エンジニアからマーケティングの最前線へ
──入社の経緯と、これまでのキャリアについて教えてください。
学生時代、医療機器の研究室で、がんの治療方法に関する研究を行っていました。たとえば、MRIやCTでがんを発見できたとしても、それが適切に治療されなければ意味がありません。そのころから検査や診断だけでなく、治療に興味を持っていました。
当時、日本の大手医療機器メーカーの多くがMRIやCTなど診断用の機器を手がける中、治療機器の開発にも取り組んでいたのがオリンパスでした。私が研究していたがん治療分野の装置を製品化していた点に強く惹かれ、入社を決めました。
入社後は、電気系エンジニアとして治療機器の開発に長く携わりました。しかし、しだいに「ユーザーに近い仕事をしたい」と考えるようになり、10年目のタイミングでキャリアプランの一つにあった商品企画部に移る機会を得て、商品企画部に移り、マーケティング業務を経験しました。
中でも印象に残っていることは、ドイツとの共同開発プロジェクトが具体化する段階に入り、技術面の協業責任者として現地に赴任をしたことです。ユーザーや市場のニーズや戦略上の要求を分析し、それを製品仕様に反映する役割を担いました。
──ドイツへの赴任を通し、日本以外の国の方と働く中でどのような学びや気づきがありましたか?
現地でまず直面したのが、思考パターンのギャップです。当時、ドイツの事業所は買収から間もない小規模な組織。ベンチャー気質が色濃く残っていたため、日本のやり方とは異なる部分が少なくありませんでした。
たとえば、外部要求の変化に対応が必要な際、現地の事業所では組織規模の利点を活かし、驚くほど迅速に意思決定を行い、対応を完了させます。こうしたスピード感のある業務プロセスからは、多くの学びを得られました。
「正解がひとつではない」という視点を学べたことも大きな収穫です。仕様をすり合わせる際、現地のメンバーからは予想もしない意見が出されますが、これは彼らが「ユーザーにどういう価値を提供できるか」を広い視点で考えているからにほかなりません。
一方、長年開発を続けてきた日本側では、過去の経験から技術的な制約を想定し、最初からおおよその範囲を限定してしまいがちです。ところが、この判断は暗黙のうちに行われ、その理由が十分に共有されていなかったために、現地と日本のメンバーのあいだで議論はたびたび平行線をたどりました。
そこで痛感したのは、お互いが何を重要視しているのかを掘り下げ、細部まで言語化して伝えることの大切さです。協業には透明性が欠かせないことを思い知りました。
さらに、プロジェクトを円滑に進めるための方法論を学べたことも貴重な経験でした。たとえば、意見が対立した際、客観的な基準を示す第三者の存在が議論を進める助けになることがあります。現地では意見の衝突がたびたびありましたが、ユーザーを軸に据えることで議論が前進していくことに気づけました。
リーダーへの挑戦。新たな役割を経験する中で見出したもの
──帰国後、リーダーを担う中で、どのような変化がありましたか?
Directorに就任して製品の設計全体を管理する立場となり、技術に携わる時間は減りましたが、現場を離れることへの抵抗はありませんでした。エンジニアとしての強みが必ずしも技術だけに限らないと考えていたからです。
たとえば、特定の技術に関する知見をチーム運営に応用すれば、より幅広い製品群に貢献することができます。当時の私にはグローバルの共同開発をリードした経験があったため、自分の影響範囲を大きく広げられるチャンスだと捉えていました。
ただ、専門ではないメカ系組織も含めて統括することになったため、メカ系に精通したマネジャーたちと方向性をすり合わせることには注力しました。どの部分を任せ、どの部分を自分が担うべきかを明確にする必要があります。その上で、最終的な判断が下せるような体制を整えていきました。
──リーダーの仕事の難しいところや醍醐味を教えてください。
難しいところは、どのように伝えるか、発信するかというところ。メンバーそれぞれに考え方があるため、大きな旗を振りながらも、個々に向き合っていくことが必要です。支援していくところと、リードしていくところのバランスも重要だと感じています。
一方で、やりがいも大きいです。チームづくりを通じて、自分1人では到底なしえないことを実現できることは、リーダーならではの醍醐味です。また、メンバーが活躍し、成長する姿を見届けられることも、私にとって大きな喜びになっています。
──仕事をする上で大切にしていることはありますか?
これまで受けた恩に感謝し、それを周囲に還元しようと努めています。たとえば海外赴任中、国内のメンバーに何度も助けられた経験から、帰国後は恩返しのつもりで、どんな頼まれごとにもできる限り応えようと心がけてきました。
海外赴任中にお世話になった方に直接恩を返すことはできませんが、巡り巡ってつながっていくものだと信じています。日本の組織がグローバルの中で存在感をさらに高められるよう、自分ができることに全力で取り組んでいくつもりです。
規制強化を成長の糧に。真のグローバルメドテックカンパニーをめざして
──今後の展望を教えてください。
オリンパスが世界中から必要とされる医療機器メーカーとなるためには、各国の規制当局からの信頼を獲得することが不可欠です。そのためには、高品質な製品を生み出すプロセスや一つひとつの活動を継続的に改善していく必要があり、設計管理が担う役割は非常に重要だと考えています。
今後、医療機器に関する規制や審査基準はますます厳しくなるでしょう。法規制への対応に追われるのではなく、より広い視野でそれらを前向きに受け止め、自分たちの力に変えていくことが重要です。知識やスキルを磨き続けながら、これらの新たな要求に迅速かつ柔軟に対応し、グローバルメドテックカンパニーをめざしてよりいっそう貢献していきたいと考えています。
──最後に、次世代のリーダーをめざす方にメッセージをいただけますか?
ゴールを共有し、それを実現するための方針をすり合わせる、つまり“チームをつくること”がリーダーの役割だと考えています。それができれば、自分1人では達成できないことも実現できますし、自分が得意なことをチーム全体に波及させ、成果を高めることも可能です。
現代社会は情報のスピードも量も膨大で、リーダーがすべてを1人で背負うのは現実的ではありません。「権限移譲」という言葉がありますが、各分野に精通した適任者をチームの中核に据え、任せるべき部分を信頼して任せることが、良いチームをつくる近道だと思います。
さらに、仕事一筋のスタイルを長く続けるのは難しい時代です。私にとって、家族との会話が最大のリフレッシュ方法になっていますが、オンとオフをうまく切り替えられることも、リーダーに必要な資質かもしれませんね。
※ 記載内容は2025年1月時点のものです

