AI×内視鏡。最先端技術と医学的知見を融合し、医療の未来を切り拓く
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
私は、情報支援ソリューション開発という組織に所属し、AIを活用した製品開発や技術開発を行っています。内科や外科など、さまざまな領域でデジタルヘルスソリューションの提供を通じて医療への価値提供を行い、医療の発展に貢献をすることが私たちの所属する部署のミッションになります。
具体的に言いますと、たとえば、内視鏡外科手術では、症例数は増加傾向にある一方で、国内の外科医不足や、高度な医療設備と医療スタッフの高い技能を要する手術の特性から、術者間および施設間での治療成績の格差が顕在化しています。この課題に対して、外科手術の標準化、安全性の確保、そして手術室運営の効率化を通じて、医療システム全体を進化させるなどの取り組みを行っています。
私が担当しているのは、内視鏡を用いた診断や処置を支援するAIの開発です。内視鏡の画像をもとに「どこが病変なのか」「どこが腫瘍なのか」といったことや、解剖学的な特徴を指示し、対象物の学習データを蓄積し、それらを使ったAIの開発を行うことで、医療従事者の皆さんが行う診断の支援や治療にかかわる支援ができることをめざしています。
医師とコミュニケーションを取り、協力を得ながら製品をつくり上げていくことで、実用性と信頼性を兼ね備えたソリューションの実現をめざしています。
──現在の仕事のどんなところにやりがいを感じていますか?
第一に、医療現場の第一線で活躍する研究者や臨床医との共同研究に携わる機会に恵まれていることです。もともと私は医療系のAI開発に強い関心を持っていました。そのため、最新の技術と医学的知見の融合に貢献できることが、やりがいにつながっています。
第二に、オリンパスという世界的な医療機器メーカーの一員として、グローバルな影響力を持つ製品開発に携われていることです。当社の製品は世界中の医療現場で使用されており、多くの患者さんの診断や治療に役立っています。開発を進めることで社会に貢献できることも、大きなやりがいになっています。
技術への関心から医療AIの世界へ。国家プロジェクトに参加して得た経験と学びが糧に
──入社の経緯と、入社後の仕事内容について教えてください。
私はもともとAI技術に関心があり、大学で医療AIの研究をしていました。超音波画像向けのAI技術の研究に取り組む中で、将来もこの分野で研究開発がしたいと考え、医療機器メーカーを志望していました。
オリンパスのインターンシップでは、内視鏡支援システムの研究開発で、そこにAIを組み込んで精度を上げたものにできないかという案件に携わることができ、自身のキャリアビジョンとの高い親和性を実感しました。オリンパスであれば、自分がつくったAIを世界中に届けることができるかもしれない──そう考えて入社を決めました。
入社後はインターンと同じ、研究開発に関する部署に配属され、インターン時に触れていた内視鏡システムのAI機能開発に携わりました。その後もさまざまなプロジェクトに携わり、一貫してAIの研究開発をしています。
──2年目から携わった、外科AI(情報支援内視鏡外科手術システム)プロジェクトについて教えてください。
これは複数の研究機関との協業による開発プロジェクトで、2019年に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の補助事業として採択されたものです。プロジェクトの主眼は、内視鏡外科手術における熟練医師の暗黙知をAI解析によりデータ化し、安全で均質な手術に必要な情報を適切に提供すること。言語化されていない知識や経験をAIに落とし込むことで、医療の均てん化をめざしています。
私はシステムを構成する3つのテーマのうち、情報支援内視鏡外科手術プラットフォーム(Information Rich Platform:判断支援)の開発に携わり、AIの機能の検討やAIシステムの構築を担当しました。
このプロジェクトは、医療従事者やパートナー企業を含む社内外とのコミュニケーションが非常に多いことが特徴です。開発過程では、私たちの立案した仮説が臨床現場の実態と乖離するケースも少なくありません。とくに医療従事者とは多い時は週次で進捗共有やディスカッションを行い、開発した機能のニーズ適合性を確認しながら調整を重ねました。
プロジェクトを通じて私が一貫して心がけたのは、多様な技術の可能性を探ること。内視鏡特有の知識を深めつつ、最新技術を組み合わせる努力が、最終的に性能の向上につながったと考えています。
医療従事者と建設的な関係を構築できているのは、長年にわたって臨床現場と連携してきた実績のあるオリンパスだからこそです。著名なドクターらと互いを尊重しつつ、異分野のプロフェッショナルとして共通の目標に向かって革新的な製品開発に取り組んだことは、貴重な経験となりました。
チーム力で最先端に挑む。医療とAIのより良い融合の実現に向けて
──外科AIプロジェクトに参加した経験は、現在の業務にどう活かされていますか?
まず技術面においては、現在の取り組みでも外科AIプロジェクトと同種の技術基盤を扱っています。そのため、専門知識や開発アプローチを積極的に応用してきました。
医療従事者と協働した経験も、非常に役立っていると感じます。プロジェクトへの参加を通じて、医療の専門用語や臨床現場の実情を理解し、要求事項を的確に抽出する力が向上した一方で、複雑な技術的内容を医療従事者の理解しやすいかたちで伝達するスキルも磨かれました。
医療と工学という異なる専門領域を持つ者同士のコミュニケーションには独特の難しさがありますが、医療従事者のニーズを的確に把握するスキルと、技術的概念をわかりやすく説明する能力の両面でプロジェクトの経験が活きています。
──AI開発のほかにも、取り組まれていることはありますか?
現在は、チームリーダーを務め、チーム全体の技術力向上をめざしてプロジェクトの枠を超えてメンバーへの技術支援も行っています。
リーダーとしてもっとも重視しているのは、各メンバーの強みを伸ばし、チーム全体が前向きに開発に取り組める環境をつくること。そのために、自ら率先して行動しつつ、楽しんで取り組める風土づくりをするようにしています。
──技術力向上のためには、どのようなことが必要だと思いますか。
私自身は、各プロジェクト内の取り組みを論理的に分析しながら進めることで技術力を向上させていきました。同時に、学会発表や論文などの最新情報を積極的に収集し、最先端のAI技術動向のキャッチアップにも努めています。
近年、AI技術は急速に進化していますが、私たちの根本的な使命は医療現場のニーズに即したソリューションの開発です。最新技術の追求と臨床ニーズへの適合というふたつの軸のバランスを保ちながら、開発を推進することが大切だと考えています。
そのため、メンバーに対しても常に、新しい知識や情報のインプットをしていくよう勧めています。
チームの力で、臨床現場との強い絆を持つオリンパスだからこそ実現できる技術開発を
──オリンパスで働く魅力をどんなところに感じていますか?
組織が一丸となって研究開発に邁進できる環境が魅力的です。みんなが医療や患者さんのためにという想いをもって、日々仕事に取り組んでいます。また社内には技術に対して真摯な姿勢を持っている人が多く、論理的思考を重視する企業文化が根づいています。
私のチーム内にはベテラン層のメンバーも在籍していますが、世代間の隔たりもなく、相互研鑽をできることがありがたいですね。
また、若手のうちからさまざまなことに挑戦できる環境に魅力を感じています。私も外科AIプロジェクトをはじめとする多様な開発案件に携わる中で、幅広い機能の開発を担当し、主体的に取り組むことができ、自由に発想する機会を得てきました。他社と技術的なコラボレーションをして先端技術を扱う機会もあります。このような環境があることは本当にありがたいと思っています。
さらにリーダーとしてチームをマネジメントする機会にも恵まれ、技術者として、またビジネスパーソンとして大きな成長を実感しています。
──今後の展望を教えてください。
現行進行中のプロジェクトを確実に完遂し、革新的な医療機器を市場に投入することが当面の目標です。同時に、リーダーとしてチームメンバー個々の潜在能力を最大限に引き出すサポート体制の強化にも注力するつもりです。
私個人としては、技術開発に強い関心を持っていますが、自身の技術力向上にとどまらず、チーム全体のパフォーマンス向上にも重点を置いています。過去に、社内外の専門家との連携のもとで複雑な機能開発に取り組んだ経験から、多様な視点や専門知識を持つ人材との協働が、イノベーションの源泉となることを実感しました。
製品開発の複雑化が進む今、個人の力でできることは限定的です。組織力を最大化し、効果的なチーム体制を構築することで、持続可能な製品開発プロセスの確立をめざしています。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです

