現場に寄り添った製品開発を。医療従事者と共に築く医療の未来
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
光学開発 医療先進技術開発という組織に所属しています。医療現場と製品開発の中間的な立ち位置で、ディスカバリー部隊として主にイノベーション活動を行う一方、新製品開発の初期段階に携わるほか、病院・診療所で働く医療従事者との連携強化にも取り組んでいます。
とくに耳鼻咽喉頭科では医療施設を週1度の頻度で訪問し、臨床見学や医療従事者とのディスカッション、ヒアリングを通じて現場のニーズを収集したり、製品開発担当に代わって医療従事者の問い合わせに回答したりしてきました。
現場や営業担当を通じて得た情報を社内にフィードバックすることも私たちの大切な役割です。製品開発部門だけでなく、マーケティング部門とも密に情報を共有しています。
また、医療施設と共同で行う臨床研究にも積極的に関わっており、医療従事者とのディスカッションを通して見えてきた現場のニーズに対して、新しい手技や製品の提案を行っています。
──オリンパスで働くやりがいをどんなところに感じていますか?
医療機器の提供を通じて社会貢献できるのはとても魅力的です。医療機器を市場に投入するためには、品質保証や法規制への対応など、製品化に向けてさまざまなハードルをクリアしなくてはなりません。さまざまな分野の専門家と協力して新たな製品を生み出していく仕事に、大きなやりがいを感じています。
「オリンパスと一緒により良い診断や治療について考えたい」と医療従事者からの要望が直接届くのもオリンパスならではです。これは当社の先輩方が医療従事者とのあいだで築いてきた長年の信頼関係の賜物です。そのバトンを受け継ぎ、医療によりいっそう貢献できる製品を世に送り出していきたいと考えています。
技術先行でなく現場ニーズを起点とした製品開発を。必要なのは段階的に未来を描く視点
──入社の経緯と、入社後の仕事について教えてください。
人を助けることができる医療分野に携わりたいと思い、オリンパスと出会いました。入社後は研究部に配属され、すぐにテーマリーダーを任されて消化器分野の新製品に搭載する画像処理技術の開発に関わりました。
当時から医療従事者と臨床研究を行っていましたが、私は若手で仕事を学んでいた時期。しかし医療従事者の皆さんは若手社員ではなく「オリンパスの代表」として私と接します。私はその期待に応えるべく、当社の考えや視点を伝え、医学的な議論にも対応するなど、対等な関係構築に努めました。
画像処理技術の開発は医療従事者の協力を得ながら数年間にわたって取り組みましたが、残念ながら狙い通りの効果を得られず、製品化には至りませんでした。悔しい思いをしましたが、製品として世に出すことの意義を新人時代に学べたことは貴重な経験になりました。
──その後、耳鼻咽喉頭科用の新画像処理の開発でテーマリーダーを経験されていますが、そこではどんな苦労や学びがありましたか?
耳鼻咽喉頭科用の極細内視鏡の開発にメンバーとして2年ほど関わった後、新しい画像処理の開発と新しい治療デバイスの開発を提案しました。提案後、著名な耳鼻咽喉頭科の医療従事者の協力を得られることとなり、製品開発が始動することに。プロジェクトはいまも継続中で、現在は私がテーマリーダーとして臨床研究を進めています。
製品開発においては、医療従事者や患者さんの協力のみならず、会社の戦略との一致、社内リソースの問題解決が必須条件です。社内外のマネジメントにはとても苦労しました。
とりわけ難しいと感じたのが、エビデンスの構築です。医療の専門知識がない中、医学的価値、実現可能性、機序の正確さを医療従事者に説得力を持って提案するのはとても困難な作業でした。
法規制の要件を考慮すると、医療機器に搭載する技術は新しければ良いというものではありません。アイデアを具体化するためには、医療従事者の皆さんの協力を得るための交渉に時間をかけるなど、周囲を巻き込みながら解決策を見つけ出すことがとても重要だと感じています。
また、医療機器は企画から市場への投入までのスパンが長いため、未来を予測しながら開発を進める必要があります。しかし医療従事者にとって、たとえば10年後の未来は漠然としているものです。長期的展望は求められますが、私は技術先行でなく現場ニーズを起点とした製品開発を実現したいと考えています。
そのために段階的に未来を描いていく視点が欠かせません。今の治療で改善したいことは何かなど身近な議論からスタートし、徐々に未来の話へと広げます。医療従事者の皆さんと対話を重ねるたびに知識や考え方の幅が広がるのを実感しています。
医療現場のコロナ禍対策で得た手ごたえ。医療従事者との連携強化の取り組みにも尽力
──2020~2023年にかけてCOVID-19対策品(内視鏡用シングルユース防護具)の開発にプロジェクトリーダーとして関わられていますが、参加の経緯はどのようなものでしたか?
コロナ禍に直面する医療現場に医療機器メーカーとして貢献しようと立ち上がったプロジェクトです。社内のいくつかの部門からメンバーが選出され、R&Dの代表として私に声がかかりました。耳鼻咽喉頭科および消化器内視鏡科の医療従事者からいただいた提案がきっかけとなり、COVID-19対策品の開発がスタート。医療従事者たちのアイデアと各メンバーの専門性をもとに実用化を成功させたのが、内視鏡用シングルユース防護具でした。
前例がないほどの短期間で開発が実現したのは、現場のニーズと「医療を止めない」というメンバー一人ひとりの強い想いがあったからこそです。高い技術とモチベーションを持った分野の異なる専門家と協力して新たな製品を生み出すやりがいを肌で感じたプロジェクトでもありました。
このプロジェクトは、会社全体としても優先度を上げて一体となって取り組んだものであったため、結果として社会貢献を実現できたと感じています。
──そのほかの研究開発や、医療従事者との連携強化の取り組みについて教えてください。
2023年から当社の注力領域である呼吸器科と泌尿器科の分野にも取り組んでおり、診断デバイスと治療デバイスのイノベーション活動を推進しています。
医療現場のニーズに即した製品を提供し続けるためには、医療従事者らとの関係構築が欠かせません。オリンパスでは全社の取り組みとして、顧客接点の強化、当社メンバーの顧客視点やマインドの醸成、オリンパス内での組織横断的な活動支援など、医療従事者との連携強化に向けた施策の立案と実践に力を入れてきました。
社内では多数のプロジェクトが動いているため、あえてリソースを割かなくても、中には医療従事者のニーズに応えられるケースもきっとあるはずです。ニーズを正確に理解し、深く掘り下げることで、医療従事者の要望に応える機会を増やすことをめざしています。
連携を強化するためには、各自が医療現場に足を運んでタッチポイントを設け、医療従事者とコミュニケーションする以外に道はありません。オリンパスのさまざまな部門のメンバーが、それぞれが担うフェーズに応じて、適切な方法で医療従事者と議論を重ねていくことが重要だと考えています。
社内外の連携をイノベーションの力に。オリンパスだからできることを
──仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
医療従事者と接する際、当社の考えや技術を押し付けないよう心がけています。医療に貢献するためには、現場視点での開発が不可欠です。医療従事者が直面する課題を解決し、その先に新たに浮かび上がる次の課題に挑むという具合に、医療従事者と歩調を合わせながら、共にあるべき未来を想像し、かたちにしていけたらと考えています。
また、現場視点での開発を実現するためには、社内のあらゆる部門との協力も欠かせません。私は困ったことがあれば誰にでもためらわず気軽に相談する性格ですが、責任感があるゆえ自身で解決しようとして、孤立してしまうケースは少なくないと思います。
たとえば、自分の仕事の前工程・後工程の担当者と相談しながら仕事をすれば、より良い結果を出せるはずです。周囲とコミュニケーションを取りたいと考えている方は案外多いと私は感じています。
社内では変革プロジェクトがいくつも動いています。変化に積極的な会社の方針を支えとして、社内外の多くの関係者を巻き込みながら、イノベーションを推進していけたらと思っています。
──今後の展望を聞かせてください。
医療機器の製品化までの道のりは長く、アイデアをかたちにできる確率は1%未満です。つまり、それだけ医療現場からニーズを収集し、そのニーズに応えられるだけの技術が求められているということ。医療現場との連携をよりいっそう強化し、一体となってエビデンスを構築し、医療の貢献につなげていきたいです。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです

