フレッシュマン・リーダー制度をきっかけにメンター/メンティの関係に
──ご経歴と現在の業務内容について教えてください。
鈴木:2000年に入社後、マーケティング部門に配属になり、処置具のマーケティングを担当しました。2005年に夫のアメリカ駐在に同行するため退社し、2007年の帰国後に再入社して、内視鏡お客様相談センターを経て2018年から広報・IR部、現在のコミュニケーションズへ。社内向けコミュニケーションのチームをリードし、世界各地に広がる従業員に向けての記事の企画、作成、編集のほか、経営陣と従業員のタッチポイントイベント運営(タウンホールミーティング)なども行っています。
新開:1996年に入社し、医療国内営業、医療GI(内視鏡)マーケティング、医療アジア・パシフィックマーケティングなど、医療事業のセールスやマーケティングの分野でキャリアを積んできました。アメリカ、インドでの駐在を経験した後、2019年からグローバル人事を担当して、グローバルタレントマネジメントの仕組みの構築に携わった時期もありました。2021年からは医療事業部門に戻り、現在はAsian Pacific & Emerging Marketsのヘッドを務め、新興国(アジア、中南米、中東、アフリカなど)におけるビジネスの拡大を推進しています。
──おふたりが初めて出会ったのはいつのことでしたか?
鈴木:オリンパスには、新入社員が会社生活に慣れ、一人前の社員として成長するために、指導担当者が一定の期間、指導・育成する「フレッシュマン・リーダー制度(当時)」というのがありました。私は別の方からの指導を受けていましたが、合宿などでほかのフレッシュマン・リーダーのみなさんと交流する機会もあり、新開さんはそんなフレッシュマン・リーダーのひとりでした。
新開:鈴木さんは海外営業などグローバルを舞台に活躍する意欲を持っていましたね。私は当時、海外マーケティングを担当していたので、将来的に一緒に仕事をする機会があればと話していた記憶があります。
鈴木:新開さんの第一印象は、話しやすくて親しみやすい方でした。同じ部署の上司・部下になることはなかったのですが、私を担当したフレッシュマン・リーダーと新開さんの仲が良かったこともあり、フレッシュマン・リーダーと食事する場に新開さんが同席したり、海外のシンポジウムで偶然に顔を合わせたりしていました。
新開:不定期でゆるいつながりを持ち続けていた感じですね。
鈴木:部署の上司や先輩には話しにくいことも気軽に相談できたのは、近すぎず遠すぎない、ほど良い距離感のある間柄だったからだと思います。
マネージャーの道へ。コーチングがリーダーシップへの目覚めと自己発見のきっかけに
──鈴木さんがマネージャーに挑戦した経緯を教えてください。
鈴木:2022年の11月に上司から打診されたことがきっかけです。子どもが成長して手を離れつつあり、マネージャーのポジションには意欲的だったものの、不安を感じていました。
引き受けることをためらっていた私の背中を押したのは、ドイツ人女性の上司がかけてくれた言葉です。彼女自身、ドイツから家族を引き連れて拠点を日本に移し、一家の大黒柱として奮闘していました。その彼女から、「あなたがマネージャーに昇進しなければ、誰も昇進をめざさなくなるわよ」と励まされ、マネージャーに挑戦することを決めました。
もう1つ、私の決断を支えた出来事があります。新開さんと会う機会があり、コーチングを受けていたことでした。
マネージャーについて打診される前のタイミングでセッションを受けていたことはとても幸運でした。当時のチームが抱える課題を冷静に受け止め、マネージャーとしてチームを運営することのおもしろさや意義に気づくことができたのは、新開さんのコーチングを受けていたからだと思っています。
──コーチングの前後でどのような変化がありましたか?
新開:鈴木さんには組織やチームを良くしたいという強い想いがある一方、何から手をつけてよいかわからず、もどかしさを抱えていたのを覚えています。そこでまず、マネージャーとしてどうありたいか、どんな組織をつくりたいかを対話を通して明らかにしていきました。鈴木さんの場合、「相談し合える組織」「高め合える組織」「尊敬し合える組織」と、比較的早い段階で理想とするチーム像の輪郭をつかむことができていましたね。
鈴木:ひとりで自問自答していても、ありたい姿はなかなか見えてこないものです。セッションを通じて、新開さんに自分自身の内面にある答えをスムーズに引き出してもらえたと感じています。
答えは自分の中にある。2つの壁を克服して見えた、ありたい姿
──コーチングのプロセスと成果について教えてください。
鈴木:大きく2つの壁があったと思います。それぞれ課題を言語化し、具体的なアクションにつなげる作業を繰り返した結果、前に進むことができました。
1つめは経験の壁です。コミュニケーションズでは、自分よりも業務経験が豊富なメンバーをまとめていく必要があります。業務経験とマネジメントスキルは比例しないという理解のもと、具体的な課題を取り上げ丁寧に解決していきました。
もう1つは時間の壁です。子育てと並行しながら、限られた時間の中で職務を全うしなくてはなりません。自身のワークライフバランスをどう実現するかについても考える必要がありました。
新開:答えを出すのは私ではなく、鈴木さん自身です。私は、彼女の内面にある想いを引き出すことに徹底しました。理想とする姿を比較的早いタイミングで特定してくれていたので、それをどうかたちにしていくかを鈴木さん自身が考えられるよう、視野を広げ選択肢を増やしていくための問いかけを意識したつもりです。
鈴木:私が現場の課題について話すたびに、新開さんは「それで鈴木さんどう思ったの?」と尋ね、自分自身で考えることを促してくれました。直属の上司や先輩に相談すると、「こうすればいいのでは?」と実践的な助言をもらうことが多いので、これはとても新鮮な経験でした。答えを出せずに苦しんでいると、横からそっと助け舟をよこしてもらったことも。新開さんの問いかけに何度も助けられました。
新開:セッションの終盤で、「答えは自分の中にある」と鈴木さんの口から聞くことができました。コーチングの成果を実感した瞬間でした。
挑戦の先に見えた景色。「Want to do」よりまず「Want to be」を
──マネージャーに挑戦して良かった、あるいはサポートできて良かったと思う点は?
鈴木:現在のコミュニケーションズの部門に異動した当初は、経験不足を克服しようとひとりでもがいていたこともありましたが、現在はチームワークを楽しめるようになったと感じています。
新開:セッション中に、鈴木さんが「専門職やエキスパートとして仕事をするより、マネジメント業務のほうが楽しいと思えるようになった」と言ってくれたことがあったんです。「相談し合える組織」「高め合える組織」「尊敬し合える組織」の実現に向けて確実に近づいていることを実感し、コーチとして大きな手ごたえを感じました。
業務を前に進めていく上で、直属の上司や先輩との関係は重要ですが、どうしてもタスクベースの議論になってしまいがちです。違った視点を持つ、ナナメの関係にあるからこそできるサポートがあると考えています。
──これから挑戦しようとする方に向けて、メッセージやアドバイスはありますか?
鈴木:マネージャーになったことでチーム全体を俯瞰する視点が身につき、以前は見えなかったことが見え、できなかったことができるようになりました。
メンバーの適性を考えながら役割分担し、課題解決に向けて自分が思うようにチームを動かしていくのは、想像していたよりずっと刺激的でおもしろい仕事です。マネージャーに興味のある方は、ぜひ挑戦してほしいと思いますね。
また、ひとりで考えていると、気づかないうちに袋小路に迷い込んでしまうものです。以前、メンバーに相談すべきかどうかを新開さんに相談した時、「なぜ聞かないの?」と返され、自分で自分を行き詰まらせていたことに気づきました。それ以来、メンバーを積極的に頼るよう心がけています。周囲の人を巻き込んでいくことも大切だと伝えたいです。
新開:「Want to do」もさることながら、「Want to be」、自分がどうありたいかを描くことが重要だと思います。それがより良い仕事をするための原動力になると考えているからです。まずは自分のことを大切にして、自分としっかり向き合うための時間を設け、ありたい姿を見つけられると良いなと思います。
※ 取材内容は2024年1月時点のものです

