精密な内視鏡に求められる高度な加工技術。部品だけでなく加工用の器具も自前でつくる
──現在の仕事の内容について教えてください。
汎用フライス盤(※1)や汎用旋盤(※2)のような手作業で加工する機械のほか、数値制御プログラムによって自動化されたマシニングセンター(※3)などを使って、精密な内視鏡の製造には欠かせない治具(※4)の製作と改善を行うのが私の主な仕事です。
また開発部門から依頼を受けて、新製品の内視鏡部品の試作を行うことも。図面をもとに、量産性や機能を検討しながら、要求を充たす部品をつくるという、開発初期の部分を担っています。
それらの業務と並行して、国家技能検定の取得推進を目的とした汎用フライス盤の技術指導や、新入社員や異動者など新たに配属された方への教育も担当しています。
消化器内視鏡の先端部分は、患者さんへの負担を少なくするために、種類にもよりますが細いものだと5~6㎜程度の太さになっており、使われている部品はとても微細です。そのため、製品に使われる部品だけでなく、部品を加工するための治具もとても精密で、治具をつくるにも高度な技術が求められます。内視鏡の製造は、市販されている設備だけで成り立つものではなく、部品をつくるための治具も含めて、その多くを自前で準備しています。
部品加工の工程の多くは自動化されていますが、自動加工機械の工程設計を適切に設定できるようになるために必要な技能のエッセンスは、汎用フライス盤や汎用旋盤といった手作業を伴う汎用加工に凝縮されています。汎用加工は、いわば機械加工の基礎をなす技術。汎用加工の経験があるかどうかで、その後の技能習熟の度合いに大きく差が出ると言われています。
また、臨機応変な対応ができるのも汎用加工の特徴です。部品をつくる動作を機械に命令するプログラムをつくるにはかなりの時間がかかるため、試作検討の際など必要な部品が少数の場合は、効率の観点から汎用加工機械が選ばれます。
──医療機器の製造に関わる中で、どんなところにやりがいを感じていますか?
身内が病気を抱えたこともありますし、私自身も以前に体調を崩したことがあったことから、健康でいられることがどれほど大切かをよく理解しているつもりです。自分が担当している部品や治具が内視鏡をつくる際に使用されることで安全安心なものづくりに貢献し、間接的に患者さんの健康の役に立てていることをとても誇りに思っています。
(※1) 刃物を回転させて素材に当てることで加工する機械。機械は作業者自身が操作する
(※2) 素材を回転させて刃物に当てることで加工する機械。機械は作業者自身が操作する
(※3) 自動工具交換機能をもち多種類の加工をプログラム化して連続で行うことができる工作機械
(※4) 加工や組立、検査などの工程において、製造をサポートするために用いられる器具
入社して一変した仕事観。世界中の人々の健康に貢献できていることが原動力に
──会津オリンパスに入社した経緯、入社後に印象的だったことを教えてください。
高校卒業後、他の光学機器メーカーに就職して機械加工を担当しました。その後、ベアリングなどの部品を加工する会社に転職。そこで以前オリンパスで働いていた方と出会い、私の機械加工の仕事ぶりを見て、「もっと高い技術が求められるところでも務まるはずだ」と、オリンパスへの転職を勧められたことが入社のきっかけです。
当時は仕事にやりがいを見出せていなかったため、迷いながらの転職でしたが、オリンパス入社後、機械加工に対する印象が180度変わりました。
まず衝撃的だったのが、会津工場がとても清潔だったこと。こんなきれいな環境で働けるとは夢にも思っていませんでした。
また、充実した指導体制があることにも驚きました。職人気質の方が多く、「見て覚えろ、やって覚えろ」みたいな世界から一転、丁寧に作業手順を教えてくださったり、わからないことを質問すればすぐに対応していただいたり。ものづくりのおもしろさに気づき、機械加工の仕事が楽しく思えるようになるまで、あまり時間はかかりませんでした。
オリンパスに入社して医療機器の製作に携われたことも、機械加工に前向きに取り組めるようになった理由のひとつです。内視鏡の部品はとても小さい上、精密機械でもあります。「1mmの1,000分の1の寸法で仕上げてほしい」と要望が出されることもあるなど、前職に比べて加工の難易度が格段に高く苦労する場面も少なくありませんが、世界中の方の健康に貢献できていると思えることが、仕事への原動力になっています。
──さまざまな技能検定に合格されていますが、始めたきっかけや取得後どんな変化があったか教えてください。
入社前は技能検定があることさえ知りませんでしたが、合格している人が周囲に多いことにも触発されて、自分も技能検定に取り組むようになりました。社内外の研修に参加できる機会も多く、オリンパスでは従業員のスキルアップを支援する制度がとても充実していると思います。
社内ではさまざまな勉強会が開催されていますし、国家技能検定に合格すれば報奨金が支給されます。努力すれば努力しただけ社内での評価につながることもモチベーションになりました。
これまでに国家技能検定(※5)汎用フライス盤、NCフライス盤、機械保全のそれぞれで1級に合格しているほか、職業訓練指導員免許、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種(ラインケアコース)も取得しています。このうち国家技能検定汎用フライス盤1級については、女性として福島県内初の合格者でした。
客観的に技術力が証明されたことが自信につながりました。機械加工は男性が多い職場。能力がないにもかかわらず、女性であることで優遇されているのかもしれないと思っていた時期もありましたが、検定に合格できるだけの技術が身についていることをいまは確信できています。
(※5) 中央職業能力開発協会が主催する、技能の習得レベルを評価する国家検定制度。機械加工、建築大工やファイナンシャル・プランニングなど全部で131職種の試験があり、検定に合格することは、確かな技能の証として高く評価されている
全社技能競技大会で最優秀賞を受賞し成長を実感。後進の育成にも意欲
──入社後、印象に残っている出来事があれば教えてください。
関係会社を含めオリンパス全社で行われる技能競技大会において、金属加工部門 フライス盤の部の第1回大会で最優秀賞を受賞したときのことが記憶に残っています。これは技術力の向上をめざして毎年開催されているもの。男性技能者を相手に好成績を収められたことで、女性でも対等に渡り合えることを示せたことに確かな手ごたえを感じました。
また、職場に戻って最優秀賞を獲得したことを伝えたところ、「あれだけ頑張っていたのだから当然」「千代さんの技術力なら何も不思議じゃない」と当たり前のように受け止められたことがうれしかったのを覚えています。
誰よりも長く機械に触れてきた自負があり、人一倍努力してきたつもりですが、高い技術を身につけることができたのは、周囲の協力体制があったおかげ。私が心おきなく競技の練習に打ち込めるような環境を整えてくれるなど、職場の皆さんのサポートがなければ受賞は難しかったと思っています。
──職業訓練指導員免許を取得するなど後進の育成にも注力されている理由は?指導者として心がけていることとあわせて教えてください。
私ひとりだけが高い加工技術を持っていてもあまり意味がありません。技術がチーム内で共有されてこそ組織の力につながると考えているので、全員に最優秀賞を獲らせるくらいのつもりで、新しく入ってきた方々の指導に力を入れています。
男性による育休取得が当たり前になったことで、業務の標準化がますます求められるようになってきました。性別に関係なく、全員が同じように機械加工に携わり、同じように休暇が取れるようなチームづくりをめざしています。
心がけているのは、それぞれがやりがいを持って無理せず努力できる環境づくりです。悩みを相談できずに思い詰めてしまう方もいるので、相談しやすい雰囲気の醸成に努めています。
自ら考え行動できる人材の育成にも取り組んできました。言われたことを的確にこなすことも大切ですが、明確な目標を持ち、自分なりの方法で課題解決に取り組むことが成長につながると考えているからです。
ただ、刃物が材料を切る瞬間を目で確かめたり、削る音を聞いたり、機械の振動を手で感じたりと、汎用加工機による手作業では、五感をフル稼働させなくてはなりません。誰にでも簡単にできることではないため、理解しやすいよう手順書にまとめる一方、作業者の負担を軽減する目的で自動化も進めています。
多様性と機会均等がオリンパスの魅力。誰もが等しく活躍できる職場づくりに向けて
──どんなところにオリンパスの魅力を感じますか?
自分の頭で考えて行動し、努力したぶんだけ、性別に関係なく正当に評価が得られている実感があります。女性であることを理由にキャリアをあきらめていたのは過去のこと。オリンパスは女性が男性と同じように活躍できる会社だと思います。
──今後の展望を聞かせてください。
現在は社内で使用する治具の製作と改善に主に取り組んでいますが、これからは内視鏡の開発や設計にも貢献できたらと考えています。患者さんにとって負担の少ない、より良い内視鏡づくりにますます貢献していくことがいまの目標です。
また、働く女性を支える取り組みにも参加していきたいと思っています。近年、職務等級制度が取り入れられたことで、年齢や年次、性別に関係なく業務の成果が評価されるようになってきました。自分自身もスキルにさらに磨きをかけながら、意欲ある女性が能力を発揮するためのお手伝いができたらうれしいです。
人によって得手不得手はさまざま。「男性にはこの仕事」「女性にこの仕事は向かない」と決めつけるのではなく、本人の意思と希望、適性などを尊重した、誰もが等しく活躍できるような職場づくりをめざしています。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

