AIが“相棒”となる内視鏡手術の実現をめざして。常に好奇心に誠実に向き合う
──所属部署と現在の仕事内容について教えてください。
2022年4月に設立されたATR(Advanced Technology Research/先進技術開発)に所属しています。ATRは、5年後や10年後を見据えて、先端技術を製品に実装するための研究開発を行う組織です。その中で私は、外科内視鏡手術や、内視鏡検査・処置などにAIを活用するための技術開発に取り組んでいます。
現在は、医師が内視鏡と、処置具を用いてポリープなどの病変を切除する手術を行っていますが、これをAIやロボットができるようになることをめざしているのです。
手術を完全に自動化することはまだまだ先の話かもしれませんが、たとえば、病変の発見をAIがサポートすることで、万が一、医師が違う箇所を切除しそうになった場合に警告する機能などは、比較的実現しやすいものだと考えています。
内視鏡を使った手術では、切除する箇所がわかりにくいケースもあります。熟練の医師が持っている判断基準をAIが学ぶことで手術のアシストができるようになり、AIが“相棒”としてサポートしてくれるイメージです。
こういったことが今の技術でどこまで実現可能なのか、何が課題になっているのかといった情報を集めながら、検証しています。
──仕事をする上で、どんなことを大切にしていますか。
常に好奇心を持つことです。私たちの仕事は、新しいものをつくってイノベーションを起こすこと。そのためには、未知なる挑戦にモチベーションを感じられることが大切で、その原点は好奇心だと思っています。
大人になると、子どものころに持っていた好奇心を忘れて、新しいことを勉強しなくても物事を進められるコンフォートゾーンに入ってしまうことがあります。もちろん、私自身もラクな方を選びそうになることはあります。でも私は、先が見通せるルートはあまりワクワクしないんです。だから、自分の好奇心に誠実に向き合い、「今、ワクワクしているか?」を常に問いながら、仕事をしています。
新しい挑戦が製品になり、世の中に届く──仕事の楽しさを知った経験が糧に
──エンジニアになったきっかけや、入社までの経緯を教えてください。
幼いころからゲームが好きだったことと、当時、中国では情報系の分野が流行していたこともあり、両親が「コンピューターを勉強してみたら?」と勧めてくれたんです。最初は、ゲームをするためにコンピューターの勉強をしていました。
その後、18歳のときに留学で日本へ。最初の2年間は日本語学校に通い、大学入学後は画像や音声の信号処理、主にデータサイズの圧縮をする研究を行っていました。
リーマンショックの影響で就職活動は苦労しましたが、縁あってオリンパスに入社することができたのです。
──入社後は、どのような仕事を経験してきましたか?とくに印象に残っている出来事があれば、合わせて教えてください。
最初は、デジタルカメラにISP(Image Signal Processor/映像信号を処理する機能)を実装する仕事に携わっていました。
その後、工業用の内視鏡に3Dシステムのアルゴリズムを実装する業務や、デジタルカメラのAIオートフォーカス機能の開発、顕微鏡にAIを用いて病理診断できる機能を実装するための開発など、映像、工業、医療機器分野に幅広く関わってきました。
中でもとくに印象に残っているのは、最初に携わったデジタルカメラの開発です。
先輩に声をかけてもらい、当時まだカメラに使われたことのない半導体チップを使うというチャレンジをしました。これがすごく楽しくて、「ゴールデンウィークに旅行に行くより開発をしていたい」と、思ったほど。
エンジニアとしての好奇心をきっかけに新しいことに挑戦して、それが製品となって世の中に届く。その楽しさを知るきっかけになった、宝物のような経験です。
カメラの開発は、比較的納期が短くて、プレッシャーもあるんです。つらい時期もあり、会社を辞めようかと思ったこともあります。でも、この経験があったから、続けることができました。
人々の健康に貢献したい。その想いで、夢物語のような挑戦に本気で向き合う
──どんなところに仕事のやりがいを感じていますか。
オリンパスの経営理念(「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」)にもありますが、医療分野での研究開発は、人々の健康と安心に貢献できる仕事です。
一人の医師が働ける時間や場所は限られています。実際、難しい手術をこなせる医師は先々までスケジュールが埋まってしまっていて、手術を受けたくてもなかなか受けられないという現状も耳にします。もちろん、費用面の問題もありますし、世界的な医師不足も課題です。また、日本では医師の高齢化についても対策を考えなければいけません。
医師が熟練の技術を身につけるのは時間がかかりますが、AIによる手術のサポート、自動化が実現したら、それをコピーしてどこでも利用できる。
AIを活用することで、質の高い医療を、より多くの人に提供できるはずです。
──現在の仕事で、難しさや課題に感じていることはありますか。
私たちが扱っている医療機器は、人の命に関わる技術ですから、「安心・安全なものでなければいけない」という大前提があります。自分が手術・診療を受ける立場だったとして、医師と、AI・ロボットという選択肢があったときに、自分自身がAI・ロボットという選択をできるかどうか。そうでなければ、製品として提供することはできません。そのためには、技術を育てながら、患者さんの安全を守った上で、どこまで製品で実現できるかを見極めて市場に提供していく必要があります。
AIが自動で手術を行うということは、今はまだ夢物語のような挑戦かもしれません。当然、リスクもあります。それを背負った上で挑戦するためには、私たち社員一人ひとりが、本当に「医療に貢献したい」と思っていることが必要だと思います。
ATRはもちろん、当社には誠実に仕事に向き合い、みんなで新しいことにチャレンジしていこうというエンジニアがいます。さらに、AI研究においては、グローバル企業ならではのインフラもあります。こういった環境で仕事ができるのは、オリンパスならではの魅力です。
医師の負担を減らし、誰もが良質な医療を受けられる世界を作りたい
──ご自身のこれからのキャリアをどう描いていますか。
エンジニアとマネージャーを両立したキャリアをめざしたいと考えています。優秀なエンジニアでも、マネジメント側になると技術から離れてしまうことは少なくありません。けれど、良い製品を開発するためには、新しい技術や世の中の動きを学び続け、どのように製品に取り入れるかを考える必要があります。
私自身、AIがどこまで進化するかにとても興味があり、研究者としてそこを究めたいという気持ちがあります。ですから、エンジニアとしてスキルアップすることと、チームのマネジメントをすることのバランスを模索していきたいと思っています。
──今後チャレンジしたいことを教えてください。
現在、何か質問したら、人間以上の知識を持って回答してくれる生成AIが注目されています。これを、ヘルスケアの分野でも活用できると、さらに可能性が広がると考えています。たとえば、体調で気になることがあった場合にAIに相談できる、といったことです。AIがカバーできる部分はAIに任せることで、医師は人間にしかできない部分にもっと時間を割くことができます。
人間をサポートしてくれるAIを作ることができれば、医師の負担を減らせて、より多くの人が質の高い医療を受けることができるようになる。人間とAIが力を合わせることで、そんな世界が実現できると思います。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

