グローバルな技術連携で、オリンパスのコア技術をリード
──所属する部署とお仕事の内容について教えてください。
オリンパスの技術部門を統括するコアテクノロジーディベロップメントは、デジタルのものづくり、生産技術、製造技術を手がける3つの部隊から構成されています(2023年9月取材当時)。その企画部隊として位置づけられるのが、私の所属するグローバルコアテクノロジーオフィスで、コアテクノロジーディベロップメントと一緒にヨーロッパ、アメリカ、アジアの各拠点との技術連携を推進したり、それによる開発プロセスの効率化をしたりするための戦略立案や仕組みづくりを行っています。
十年先の未来を見据えた技術開発を先導することが私たちのミッション。中でも私は、戦略討議をファシリテートするような業務を主に担当しており、海外で製造技術をリードするメンバーによる情報交換の場を定期的に設け、各拠点の困り事やニーズを拾い上げてグローバル単位で集約させることで、技術開発が進むべき明確な方向性を決めていく役割を担っています。
規制も考え方も拠点ごとにさまざまです。海外の状況についてはある程度は理解しているつもりですが、直接話を聞いたり見たりすることで思わぬ意見が出てくることも。時に現地に飛んで調査したり、向こうから来てもらったり。対面して議論することの大切さを、最近はとくに身に染みて感じています。
各拠点の技術トップ(責任者)を相手に議論することも多く、その際大切にしているのは、オリンパスの存在意義を常に意識すること。「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」というOur Purposeを掲げている通り、私たちが最終的にめざすのは医療分野における社会貢献です。世界中にいる仲間たちとの共通項として、「患者さんのためにオリンパスとしてやるべきことは何かをいつも軸に据えて行動する」ようにしています。
──医療に貢献する仕事のどんなところにやりがいを感じていますか?
医療に対する姿勢や考え方も拠点ごとに異なります。その点も理解した上で、十年先の未来を見据えながらオリンパスのコア技術の方針を決めていく仕事に大きな責任と誇りを感じています。
また、グローバルコアテクノロジーオフィスの一員となってから、上層部とコミュニケーションを取る機会が増えました。そういう意味では、日々、経営に近い目線で仕事ができている点にもやりがいを感じていますね。
技術者として接着剤開発を経て現場へ。海外の製造過程と働き方を学んだことが転機に
──これまでのキャリアについて教えてください。
オリンパスに新卒入社して最初に配属されたのが生産技術材料技術部。技術者としてカメラ、顕微鏡、内視鏡に使用する接着剤の開発を担当しました。
接着剤は内視鏡の筐体を軽量化する上で欠かせないもののひとつ。医療機器であるため使用できない材料があるほか、リユースに耐えられる仕様が求められるなどさまざまな制限があり、高い技術が求められます。
一方、接着剤は液体の状態で扱うためコントロールが難しく、製造工程でのトラブルが多い分野でもあります。工場からのフィードバックはあるものの、接着剤が現場でどのように使われていて、どんな問題があるのかなど、現場について把握しきれていない部分が少なくありませんでした。
そこで、より現場にフィットした技術開発がしたいと自ら志願して会津オリンパスへの出向。約3年にわたって工程の品質管理と改善を担当しました。工場で接着剤が実際にどう使われているのか、製造工程にどんな問題や苦労があるのかなど、現場で得た情報の材料技術部への還元に努めました。
──出向期間中にドイツでの研修に参加されていますが、現地で学ばれたことを教えてください。
当時、ハンブルクの工場で課題となっていた接着剤の不具合を現地のメンバーと共に解析し、改善方法について検討しました。
日本とドイツの工場とでは製造プロセスがまったく異なります。たとえば、国内では部品をひとつずつ流れ作業で組み立ていくのに対して、ドイツではまとまった数を一気に仕上げてから次の工程へと渡す「バッチ生産」が一般的です。製品の構造やつくり方、考え方までまるで違うため、技術に関して意見交換できたことは双方にとってとても刺激的な経験になりました。
中でも印象的だったのが、ドイツの工場ではプロセス管理のデジタル化が進んでおり、日本でも見習うべきところが多くあると感じたことでした。
一方、日本の強みとして再認識したのが、どんなに難しいとされる設計も実現してしまうという技術力です。試行錯誤しながら難しい加工法を編み出す器用さも含め、ヨーロッパの方々にも知ってもらい、連携することでものづくりをさらに高めあっていけるのではないかと感じました。
そうした製造方法もさることながら、もっとも衝撃を受けたのが働き方の違いでした。ドイツの労働時間法では、原則として1日の労働時間は8時間以内と定められています。プロセス管理においてデジタルの強化が推進されているのもそのため。誰もが短時間で良いものをつくろうと、業務に明確な優先順位をつけながら働いています。こうした考え方や働き方を日本にも導入すべきと感じると同時に、技術だけでなく環境も把握し、連携推進することの重要性を強く認識しました。
企画部門に所属して見えたオリンパスの魅力と課題
──帰国後から現在までの流れを教えてください。
材料技術部の光学材料開発ユニットに帰任し、ほぼ同時期にSV(スーパーバイザー)となって特定部位のための接着剤の開発に携わりました。その後、2022年に企画部門に異動し現在に至っています。
企画を担当するようになってとくに印象に残っているのが、海外の各拠点のリーダーを集めた戦略討議のファシリテーションを初めて任された時のことです。海外の技術トップ(責任者)らと会話するのはそれが初めて。自分にとってハードルの高い仕事でしたが、先輩にも助けられながらなんとか乗り切ることができました。
また、帰国後は、社内の働き方改革プロジェクトにも参加しています。このプロジェクトは「働く場所」と「働き方」の両側面から取り組みを行っており、現在、タスクフォースのサブリーダーとしてプロジェクトを推進中です。未来に向けた技術の職場環境のあるべき姿を描き実現させていくこととともに、そこで働く私たち技術者自身のワークライフバランスの拡充にも注力しています。
当社が真の意味で価値あるグローバルカンパニーになるために必要な取り組みですし、自分たちで働く環境を考えていけるのは、オリンパスの大きな魅力のひとつだと感じています。
もちろん、単に環境を変えるということだけでなく、自らの行動を変えていくということも重要なポイント。さまざまなことに踏み出すことを心がけています。中でも、近年話題に取り上げられることが増えた男性育休についてもしかりです。SVに就任して間もなく、上司の快諾を得た上で2カ月の育休を取得しました。
当時、私の周りにはまだ育休を取られる男性が少なかったのですが、研修先のドイツでは男性社員が育休を取得するのが当たり前という環境を間近で見ていたこともあって背中を押されました。とはいえ、部下に負担をかけてしまうのではと最初は心配したのも事実です。タスクをリスト化して打ち合わせを繰り返すなど、業務の引き継ぎを念入りに行ったことで、自分自身も安心して育休に入ることができました。
いまや男性が育休を取得することが常識となりつつありますが、少し早いタイミングで経験しその価値を自ら体現できたことは、ビジネスパーソンとしてキャリアを重ねる上で大きな糧になったと思っています。
──開発部門から企画部門に移ったことで、視点や仕事との向き合い方はどう変わりましたか?
技術部門を統括するコアテクノロジーディベロップメントの全体像がつかめるようになったことで、人とお金とモノの動きを想定しながら、相手の責任範囲を意識してコミュニケーションが取れるようになりました。
海外拠点を含めオリンパスが非常にすぐれた技術群を備えていることを知ったのも、企画部門に来てからです。効率化に向けた連携スキームの構築に向け、とても前向きな気持ちで取り組むことができています。
一方で、以前は気づかなかったオリンパスの課題も見えるようになってきました。たとえば、日本に高い技術があることは海外でほとんど知られていません。そのため、各拠点で同じ技術課題に時間や労力が割かれるなどの非効率が生じてしまっています。
それは、国内の技術者たちがこれまで海外に向けて積極的に発信する機会があまりなかったことが理由です。工場見学に訪れた海外の視察団が目を丸くしながら延々と質問し続けるなど、日本の技術力は群を抜いています。そのことを自覚した上で、今後は積極的に海外に向けて技術をアピールしていくことが求められると感じています。技術開発に携わる方にそんな時間的な余裕がないことも理解できます。
しかし、グローバルメドテックカンパニーをめざすオリンパスにとってはとても重要なこと。各拠点との連携強化に向け、私たちとしても、まずはそれぞれの拠点が持つ技術を整理・共有していくところから始めたいと思います。
技術連携を強化し、グローバルシナジーを生み出す。イノベーションの牽引役に
──グローバルコアテクノロジーオフィスの一員として、グローバルな連携の実現に向けて必要なポイントは何だと思いますか?
オンライン会議やさまざまなツールによって、グローバルとの垣根はなくなっているといっても過言ではありません。いまはチャットで言葉を投げかけるだけで誰にでもメッセージが送れる時代です。グローバルカンパニーをめざす当社では、世界規模で相談できる仲間がいることは、本当に素晴らしいことだと感じています。文化の違いや考え方の違い、仕事の進め方の違いなどはもちろんあります。
しかし、海外のメンバーからも学ぶことは多く、彼ら、彼女らは無駄な作業を嫌う反面、相談を持ちかけると親身になって聞いてくれる度量の大きさを持ち合わせています。世界の各拠点でも自分の技術を使ってもらうくらいの気持ちで、まずは一歩を踏み出してみてほしいなと思います。
──今後の展望について教えてください。
まずは、各拠点間の連携のハードルを下げられたらと考えています。現在は私たちが橋渡し役となっていますが、海外と日本の技術部門同士が気軽に直接コミュニケーションできるような環境づくりが目標です。すでに、私たちが関係を仲介した後もやりとりが続いているケースもあるなど、連携が生まれる兆しが少しずつ見え始め、手ごたえを感じています。
また、いずれは海外に駐在して現地の課題解決に取り組むことも視野に入れています。国内と海外の双方の技術開発への理解を深め、グローバルメドテックカンパニーとしてふさわしいエンジニアリング戦略を立案し、連携強化に貢献していきたいですね。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです

