“知る・参加する・シェアする”をコンセプトに、ボランティア参加人口を増やしていく
——所属部署や仕事内容について教えてください。
日本地域統括(JP-RRO) は、オリンパスグループの国内関係会社を含む日本地域のグループ経営の全体最適化を統制する役割を担い、日本地域における経営理念の浸透などをミッションとしている組織です。
私が担当しているのは、社会貢献。そのミッションは、社会課題の解決への取組と、その活動を通して経営理念を体現することにより、企業価値の向上に貢献することです。
がん啓発・次世代教育支援・ボランティアの大きく3チームに分かれてメンバーと共に活動しています。 がん啓発というのは、がんで亡くなる方が多い日本において、がん検診の受診率を上げ早期発見につなげていこうとするもの。
次世代教育支援というのは、次世代を担う子どもたちに内視鏡医療に関する内容の理解促進を行うもの。これらの活動はオリンパスらしい、価値がわかりやすい社会貢献活動と捉えています。
一方で、私が携わっているボランティア機能は、オリンパスが企業として実施する意義が理解されにくいハードルがあります。ですが、さまざまな社会課題解決に取り組むNPOやNGOなどとのパートナーシップのもと、多くの社員が「企業市民」として社会課題の解決に参加する機会を提供できる機能だと考えています。私はこのチームの戦略を構築する役割を担いつつ、チームメンバーとともに戦略の実行も主導しています。
——ボランティアチームでは、主にどんな活動をしていますか。
ボランティア機能は、“知る・参加する・シェアする”というコンセプトで立ち上げました。業務対象外のボランティアという特性上、単に参加機会を提供するだけでは活性化しないと考え、社会課題を知ってもらう機会として「知ることから始めるボランティア」と題したウェビナーの開催、さらに意見や想いを社員同士でシェアする社内SNSを提供し、知る・参加・シェアをボランティアのパッケージとして展開しています。
多種多様な社会課題をすべてカバーすることは難しいため、メドテックカンパニーとして親和性の高い健康やウェルフェアにつながるものや、多くの社員が参画しやすいように日常生活のなかで実施できるものなど、優先順位を意識しながら企画しています。
また、ボランティアに興味を持っていても実際に参加アクションに移れない方も多いため、たとえば世界環境デーに合わせて環境活動を実施するなど、時世に合わせたきっかけ作りや、背中を押すことにも注力しています。
これらの活動の結果、ボランティア機能の立ち上げから1年間で延べ2000人以上の社員がボランティアパッケージに参加してもらいました。短期間でこんなに多くの社員に参画してもらえるとは思っていなかったので、本当に嬉しい驚きです。
自分自身の“To Be”を見つめ直し、異動を決意
——入社以来、どのようなキャリアを歩んできましたか。
中途採用でオリンパスに入社してからはデジタルカメラのグローバル商品企画を担当。その後医療事業に異動し、APACエリアやグローバルのマーケティングを担当してきました。その間に、出産・復職も経験しました。海外出張なども多いグローバル業務の中で、子育てをしながらどう働くかに向き合ってきました。
転機を迎えたのは、2018年ごろ。目の前の膨大な仕事に追われる中、一度立ち止まって自分の生き方を見つめなおしたいという気持ちから、“To Be(自分のありたい姿)”をリスト化して可視化してみました。
すると、自分も含めた周りの人たちが笑顔でいられる存在でいたいという想いに気づきました。仕事においても、周りの方と実際に対話をし、その人たちの健康や安心、心の豊かさにつながるようなダイレクトな活動がしたいんだと気づいたんです。
社会貢献部門ならば、自分が実現したいことができるのではないかと考え、社内公募制度を活用して異動希望を出し、1年後に異動が実現しました。グローバルマーケティングで築いてきたキャリアを捨てるのではなく、それを生かした新しいキャリアを社会貢献で築けるはずと考えています。今でも、迷いが生じたときは、当時のTo Beリストをお守りのように見返しています。
——ボランティアチームを立ち上げるのは大変だったのではないですか?
社会貢献部門に異動して最初の2年ほどは次世代教育活動を主査し、大きなやりがいを持って実行していました。ところが、コロナが始まった2020年にボランティア機能の立上げを任され、初めは大きなとまどいがありました。
実は当初、私自身が「ボランティアは、企業が行う社会貢献活動なのだろうか?」という疑問を少し抱いていたんです。オリンパスにはすでにがん啓発活動と「内視鏡の授業」を展開する次世代教育活動があり、事業とも親和性が高いオリンパスユニークな活動が確立されていた中で、ボランティア機能を新たに立ち上げる必要性を理解しきれていませんでした。
また、日本においては、欧米のようにボランティアのような慈善活動が文化として定着・浸透していないため、がん啓発や次世代教育と並ぶ主要機能として立ち上げることができるのか、大きな不安がありました。
そこで、まずは企業ボランティアの情報収集・分析・言語化を集中して行いました。主査の自分自身がその意義と価値を理解し、腹落ちできていないと、周りの人にも理解してもらうことはできないと考えたからです。異動前のキャリアで培ったグローバルの交流関係も大いに活用しました。
その結果、ボランティア活動はオリンパスグループ社員1万人以上を巻きこんで大きな社会的インパクトを生み出すことが可能なこと、ボランティア活動に参加する社員が増えることで会社へのエンゲージメントが向上するなど、ポジティブな可能性をさまざまに秘めていることに気づき、この機能を日本で大きく育てていくことに挑戦することにしました。
社会貢献活動は、その役割を担う私たちの部門だけが行うのではなく、社員1人ひとりが「企業市民」として参画することが「あるべき姿」であり、その機会を多くの社員に提供するのがボランティア機能の役割と考えています。チャリティーの文化が定着していない日本では、まずはその土壌をつくるところから始める必要があり、今でもその高いハードルを感じています。
でも、ボランティア活動が一部の人たちが行う特別な活動ではなく、企業理念を体現するアプローチのひとつとして当たり前に行っていけるように、そのハードルも楽しみながら取り組んでいきたいと思います。自身のTo beにもマッチしているため、今は幸せとやりがいと感じながら仕事をしています。
ボランティア活動は“優しさの交換”。気づきや学びが得られるまたとない機会
——仕事のどんなところにやりがいを感じていますか。
これまで接点のなかった社内外の方との直接的なタッチポイントが多く、ボランティア活動を通じて皆さんと“優しさの交換”ができていることにやりがいを感じています。仕事を通して、人や社会とつながっていると実感できることがたくさんあります。
社内では、初めて参加してくれた社員から、「ボランティアへの意識が変わった。また参加したい」と言ってもらえたり、ボランティア活動報告をシェアするSNSに真摯な想いを書き込んでくれたりしたときは、仲間が増えたようでEmpathyを感じます。
また、支援しているNPOの方から「オリンパスの社員の方は、本当に皆さん心が温かいですね、驚きました」と言葉をかけられたときなどは、オリンパスが昔から持っている本質的な部分が伝わったように感じて、嬉しかったですね。ボランティアは、まさにコロナ禍で立ち上げ、展開してきたのですが、人とのコミュニケーションが希薄な社会に変化していくなかで、わたしは人の優しさをたくさん感じることができました。
社会貢献というと、誰かのために何かしてあげることだと思っている方が多いのではないでしょうか。実際は、活動を通して、参加した自分たちの気づきになることや学びになることもたくさんあり、それまで経験したことのない感情に出会う機会というのも少なくないんです。相手から思いやりやパワーをもらうこともたくさんあります。そこをぜひ、経験してほしいなと思っています。
——とくに印象的だった活動はありますか。
2023年度に初めて新入社員研修の一環として行ったボランティア活動です。認定NPO法人ファミリーハウス様の協力を得て行ったものですが、同法人は、小児がんなどの難病の治療のために自宅を離れて都心の病院に通う子どもとご家族が、一時的に病院の近くで安心して暮らせるハウスを提供しています。
知る・参加する・シェアのコンセプトに基づき、まずは小児医療を取り巻く課題を知ってもらった上で、闘病生活のなかで不安な日々を送る利用者に向けて、ウェルカムグッズの作成や寄り添うメッセージを送るという取り組みでした。
シェアされた感想のなかには、「事業ではない非財務の領域で、人々の健康への貢献というものを実体験を通して学び、その大切さを実感した」「患者やそのご家族がどのようなことを考え、どのようなことに困りながら治療をされているのかがよくわかった。このことを理解したうえでオリンパス社員の一員として仕事をしていきたい」といった声が寄せられ、わたし自身が大きく勇気づけられました。
もともと、わたしは「患者さんへの直接的な支援につながるボランティア活動を立ち上げたい」という強い想いがありました。当社の事業視点から社会貢献活動を考えると、がんなどの病気の早期発見・早期治療につながる活動の価値がわかりやすいのですが、現実には病気が進行して苦しんでいる患者さんもたくさんいます。
亡くなってしまう病気の子どもたちもたくさんいます。わたしたちは医療の会社ですが、患者さんやご家族は、医療だけでは解決できない課題をたくさん抱えている、そんな人たちボランティア活動で寄り添うことができるはず、と思っています。オリンパスが提供する製品やサービスの先には、必ず患者さんやそのご家族がいることを心に刻む経験を、多くの社員の皆様とつないでいきたいと思いますし、それが私の考えるOur Purpose(私たちの存在意義)の体現です。
ボランティアが浸透した未来をめざして
——仕事をする上で、大切にしている価値観はありますか。
スピードと効率、そして優先順位を明確にしながら、高いクオリティでしっかりと結果を出すことを意識しています。とくに、事業から異動し、今はコストセンターに所属しているからこそ、あえて結果にこだわり、活動の価値が伝わりやすいようにしていく必要があると思っています。
もちろん、To Beリストで可視化したスマイルも忘れずに、今の仕事や出会いに感謝しながら、しっかりと社会と会社に価値を創出したいと考えています。
——ボランティア活動について、今後の展望をおしえてください。
まだ立ち上がったばかりの若い機能なので、ひとつずつ新たなことに挑戦していきたいです。まずは、広報活動の強化ですね。会社がグローバル化を強化し、多種多様な情報が日々交錯しているなかで、業務外であるボランティアの情報はなかなか社員に届きにくい課題があります。
せっかくボランティア活動に興味があっても、その存在が認知されていなくては、スタート地点にも立てていないのと同じ。グループの関係会社や、労働組合、人事部門、そしてボランティアSNSのメンバーなど、一緒に推進してくれる仲間を作りながら、存在感を高めていけるように取り組んでいます。
ボランティア活動への参加が当たり前になることが理想ですが、そうした風土をつくるために制度や環境を変えていくことも重要だと考えています。たとえば、2023年度から福利厚生のメニューの中にボランティア活動を加えることができました。これは、ボランティアにかかった費用をキャッシュバックするというもの。
この制度ができたことでボランティア参加者がぐんと増えるわけではないと思いますが、会社のオフィシャルな制度にボランティアが組み込まれたことは、社員のボランティアへの意識を変化させる上で大きな意義があると感じています。
ボランティアはそもそも自発的な善意に基づく活動で「業務対象外」であるため、本来業務を行う会社組織での浸透・推進のハードルが高いんです。でも、上司や経営陣がボランティア活動に積極的に参加している姿を見たら、「自分も参加してもいいんだ」と思うメンバーは多いはず。
そのため、マネジメント層も巻き込みながらボランティアの文化をつくりたいと思っています。コロナにより希薄化された社内コミュニケーションに課題意識を持っているマネジメントは多いと思います。ボランティア活動はチームビルディングの手段としても活用できますし、社員がより広い視点でものごとを捉えることにつながる社員育成にもつながるので、マネジメントの方々も大きく巻き込みながら盛り上げていきたいと考えています。
今も、社内のボランティアSNSで自分の組織のメンバーの投稿には必ず欠かさずコメントしてくださる役員の方も。日頃なかなかお会いできないようなシニアマネジメントの方ともつながれる機会を提供できていることも実感します。それも、業務外のボランティアだからこそ、なのかもしれません。
風土や制度を変えることは、イコール会社を変えることなので、簡単な道のりとは思いませんが、できるところから一つひとつ取り組みを重ね、気づいたら“ボランティアの情報がいたるところにある”状態にするのがめざすところ。サッカーワールドカップやWBCの試合翌日にはその話題で盛り上がるように、「先週末、〜のボランティアに参加してきたよ」といった会話が社内に飛び交うようになればうれしいです。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです

