最適なバランスを意識しながら、すこし先の未来を見据えた車体開発に携わる
野澤が所属する車体技術開発部では、おもに車両の骨格の開発を行っています。ガラスの部品やドアロック、燃料の配管システムなども扱っており、その中でも野澤は鉄鋼材料やアルミニウムを使用したクルマの骨格部分の開発を担当。
「将来の車体の競争力を担保するために必要な技術開発の方向性を検討・提案することが私の役割です。EVの開発が進むにつれ、プラットフォーム自体の形が変わってきています。また、タイミングや時代によって、世間から求められるクルマのサイズや規格、値段なども変化。さらに市場によっても、重要視されるポイントが違います。
たとえば、軽量化や剛性の確保、衝突性能の技術ひとつとっても、条件が違えば既存のものが適用できなくなってしまう。将来を見据えながら、それぞれの要求に応えられるような開発を進めていくことがミッションです」
共に働くチームメンバーは野澤を含めて4名。他部署のメンバーとも情報交換をしながら、一つひとつの業務を進めています。心がけているのは、必ず自分の目で確認したデータをチェックするという点。
「同じデータでも、役割分担が違えば着眼点が変わります。できるだけフラットに情報を精査できるように、他のメンバーの意見も参考にしつつ、生のデータや部品そのものの写真も自分で細かく確認するように努めています」
先を予測しながらの車両開発の課題は、予測の精度を上げていくことだと言います。
「すぐに結果が出る仕事ではないからこそ、予測したものが合っていたのか間違っていたのかが後々明らかになります。その振り返りをどう行うのか。どうやって予測の精度を上げていくのかが、課題です」
また、すこし先の未来の車両骨格についてのイメージを野澤はこう語ります。
「バランスが大事だと思っています。私の担当は車両骨格なので、具体的なクルマのイメージを描くのはなかなか難しい。それでもマーケットやセグメントに適したバランスをめざしながら開発を進めることを意識しています」
美しいカラーのクルマに心奪われて。入社前に感じた直感を信じ、日産自動車へ
幼いころから、ロボット競技の番組が好きで、理系に進もうと心に決めていた野澤。アカデミック寄りの分野よりも、目に見えるものに携わりたいという思いが強く、大学では機械工学を専攻しました。
「よりモノづくりに近いトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑に関する技術)について学びました。就職もモノづくりに直接携われるメーカーを考えていて、自然と自動車業界を意識していましたね」
そんな中で、日産自動車に入社を決めた理由は2つあります。
「1つは大学時代、私が抱いていたクルマのイメージは黒やシルバーだったのですが、それがある日、テレビCMですごく美しい色の自動車を見かけて、衝撃を受けたんです。日産の『キューブ』や『マーチ』でした。こんなに個性的なエクステリアのクルマがあるんだ、と感動したことが、入社を決めた理由の1つです。
もう1つは、就職活動中、いろいろな企業で働く各大学のOBやOGの方が就職活動をサポートしてくださったのですが、日産自動車のリクルーターの距離感がすごく心地が良かったんです。一方的なところがなくて、ちょっと質問したいと思うころに連絡をくれたり、相談した内容にしっかりと答えてくれたり。そんな適度な距離感を図れる人がいるなら、きっと自分にとって働きやすい職場なのではないかと感じました」
野澤の直感は正しく、入社して以降も、仕事の進め方や周囲との付き合い方など、すべてにおいて自分にフィットした距離感の会社だと実感。「入社前のイメージとほぼズレがなく仕事ができている」と語ります。
入社後、3度の異動によって、野澤は多くの経験を積みました。
「入社して4年間は車体骨格の設計に携わりました。『マーチ』や『ラティオ』など、比較的小型と言われるクルマと、次期開発車のアッパーボディ設計業務に従事。次に配属になった車体技術開発部では、クルマのエクステリアに関する技術開発に1年、ルノーとのアライアンス強化に3年間携わり、フランスにいるエンジニアとコミュニケーションをとって、設計基準を統一していく業務を担当しました」
その後、プラットフォーム計画・開発部に異動となり、プラットフォーム戦略と、商品企画の戦略にエンジニアリングの立場から携わることに。
「これまで携わってきた領域とは別の業務だったので、一気に視野が広がりました。一から学んだ経験、築いた人間関係が今でも大きな財産です。そして2020年、再び車体技術開発部に異動になり、今に至ります」
フランスとの仕事で気づいた思想の違い。仕事との向き合い方やポジティブな考え方
複数の部署やチームで仕事をしてきた野澤がこれまでを振り返ったとき、とくに印象に残っているのはフランスとのやりとりです。
「英語でコミュニケーションをとらなくてはいけない点は苦労しましたが、技術的な部分の答えは日本もフランスも同じだと思っていたんです。同じ部品を作っていて、機能と要件はほぼ同じですから。ところが、実際にやりとりを進めていくと、設計としてめざすところや仕事の進め方などたくさんの違いに気づきました。一言で言うと、思想の違いです。
彼ら彼女らは、仕事に対してすごく真摯に向き合いつつも、家族や自分の時間を大事にしていて、そのベースの上に仕事がある。そんなふうに私は感じました。また、社内外・年齢・ポジションに関係なく、相手の責任範囲を尊重し、敬意を持って議論し、フラットな姿勢で接してくれる。こうした仕事との向き合い方や、何をもっとも大切にするかという考え方の違いに触れられたことは、自分のことを振り返るきっかけになりました」
もう1つ印象に残っているのは、失敗やトラブルが起こったときの反応や対処法です。
「たとえるなら『トラブルとは天気のようなもの』という捉え方をしているように見えました。これはすごく印象的でしたね。極端な話、失敗やトラブルって起こるときには起こるし、起こらないときには起こりませんよね。この考え方が無責任だと感じる人もいるでしょうが、彼ら彼女らは常にポジティブに捉えていて、誰かを責めたりしません。『それぞれが専門性を発揮しみんなで向き合おう』というスタンスがいいな、真似したいなと思いました」
現在入社15年目を迎えた野澤。会社の中でも中堅の立場となり、仕事に対する取り組み方を変えていく必要性を実感していると言います。
「アウトプットの形を自分で提案しなくてはいけない点が一番大きいです。入社当時は、ここまでやればOK、という道筋がある程度提示されていました。けれど今は、自分の役割を把握した上でこういうアウトプットをしなくてはいけない、そのためにはどう進めていくかを他のメンバーにも提案する必要があって。自分の責務を強く感じています」
思いもよらないアプローチに驚く。エンジニアの思想に触れる瞬間がこの仕事の醍醐味
野澤は仕事のやりがいを聞かれると、エンジニアならではの醍醐味について語ります。
「仕事柄、自社他社問わずいろいろなモデルを調査しているのですが、何世代か前のモデルや、今まで気にしていなかったモデルを見たとき、思いもよらない発想や考え方でクルマが造られていることを実感する機会があって、本当におもしろいと感じます。たとえば、当然車体が持つべきものだと思っていた機能が別の部品に割り当てられていたり、車体の骨格の配置が想像と違っていたり。
しかも、それを熟練エンジニアが見ると、設計の開発部品の位置だけで開発者の意図や思想がわかってしまう。たとえ自分が携わっていない仕事だったとしても、皆さん的確に言い当てます。開発したエンジニアもすごければ、その思想に気づくエンジニアもまたすばらしいと思います」
たくさんの車両を研究する中で、とくに野澤が感銘を受けたのは「アリア」。最新モデルには本当にいろいろな技術が搭載されています。
「車体そのものからルノーと共同開発しているのですが、EVという点を含めても、新技術が集結しています。じつは2022年、ドイツで開催された車体技術発表会でアリアの開発者がプレゼンテーションをしました。私はそのサポートをしたのですが、2021年のキャシュカイに続いてグランプリを受賞。まさに日産自動車の覚悟と期待そのものが投影されたモデルだと思います」
今後、めざしていきたい目標について、野澤は「頼りにされる存在になりたい」と言います。
「自分がしっかり仕事の成果を出していれば、周囲の人たちに話を聞いてもらえるし、必要にされるようになるのだと思います。そうすると、さらに仕事がスムーズに進みやすくなります。正直、社内の9割はまだ接したことがない人で、新しい案件がスタートする際は、必ず初対面の人が数人います。そんな環境の中でも、信頼される技術者になることが目標です」
国籍、言語、性別、入社経緯などじつに多様で、その違いを違いと認識していないほど、ダイバーシティの考えが浸透した日産自動車。だからこそ、異なる考え方やアプローチに触れたとき、新鮮な発見とおもしろさを実感すると野澤は言います。多様な人との出会いによって大きな刺激を受けながら、新技術の搭載に果敢に挑戦し、心奪われるような魅力的なクルマを生み出していきます。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです
