「どうやったらできるか」を、ともに考える。粉モノ・液モノ技術で挑む極限の触媒開発
世界中のお客さまに革新的なクルマを届け続ける日産の心臓部を作り出す、パワートレイン・EVコンポーネント生産技術開発本部。その横浜工場で、素形材・成形技術開発部 塑性加工・粉体プロセス技術グループに所属する保前は、応用化学の知見を活かして最先端の技術開発と量産化を担っています。
「当グループでは主に粉体を扱っており、自動車の排ガスを綺麗にする浄化触媒(化学反応を促進して有害物質を取り除く部品)の開発から量産部品の立ち上げまでを一貫して行っています。
自動車向けだけでなく、次世代のマルチフューエルやSOFC(固体酸化物形燃料電池)といった、未来の電動車や環境技術につながる新たな領域の粉モノ・液モノ技術の開発にも取り組んでいます」
チームは、20代から40代までの8名の少数精鋭。理系出身者が中心ですが、そのバックグラウンドは多彩です。
「化学専門ばかりのイメージを持たれがちですが、実は化学系と物理、工学系の出身者がちょうど半々くらい。どれだけ優れた化学反応をラボで見つけても、実際の工場で大量生産するためには、機械設備をどう立ち上げるかという工学的なアプローチが不可欠だからです。日々、それぞれの専門知見を持ち寄って活発な議論を重ねています」
現在、保前は触媒に含まれる高価な貴金属の量を極限まで減らした新部品の立ち上げと自動化設備の立ち上げ。さらに、その先を見据えてさらに貴金属の量を減らした次世代触媒の開発という大きなプロジェクトを任されています。
「初期のコンセプトから比べると、私が入社した段階で貴金属量は4分の1、現在は8分の1にまで減らすことに成功しました。これを次は16分の1、最終的には貴金属を使わない触媒の技術開発を進めていくことが私のミッションです。
最先端でありながら、常に「現場」と隣り合わせの仕事をする上で大切にしているのは、『困っている人がいたら絶対に助ける』ことと、『絶対に最後まで諦めずにやり切る』ことです。日産には部署の垣根を越えて『どうやったらできるか』を一緒に考えてくれる文化や横のつながりがあります。
だからこそ私も相手の部署に徹底的に寄り添い、どんな壁にぶつかっても逃げずに泥臭く、最後までやり切ることを自らの軸としています」
「人と同じは嫌」という志で日産へ。未経験からモノ目線で壁を乗り越えていった日々
学生時代は応用化学を専攻していた保前。就職活動当初は携わりたい業界はとくに考えていませんでしたが、「人と同じになるのがとにかく嫌だ」という尖った性格が日産との出会いを引き寄せます。
「就活の時期になり、自分が本気で好きになれるものは何かと自分のルーツを深掘りしていきました。その中で、一般の人が操れる機械の中で、最もスケールが大きいものを作りたいと考え、自動車業界をめざすようになりました。
その中で、日産は私にとって圧倒的に尖って見えました。ハイブリッドなのに電気の力だけで100%駆動する『e-POWER』の仕組みを知った時はおもしろさや独自性に衝撃を受けましたし、新型のフェアレディZが発表された時も『この時代にこんなカッコいいクルマを出せる企業は他にない』と思い、ここで他と差をつけるモノづくりがしたいと確信しました」
しかし、入社直後の配属発表で、保前は大きなギャップに直面します。
「面接ではエンジン設計・開発職を希望していたのですが、配属されたのは横浜工場の生産技術開発職。当時の私は『生産技術開発ってなんだろう? 自分が工場のラインに入って手作業で組み立てをするのかな』と本気で勘違いしていたほど、最初は右も左もわからない状態でした。
そんな私を救ってくれたのが、日産の手厚い新卒研修制度でした。私の時は9カ月から1年に及ぶ研修期間が用意されており、工場の現場体感や自分たちの手でゼロからひとつのモノを作り上げる『モノづくり実習』。
さらにパワートレインの生産技術開発に関わるあらゆる部署の役割を座学で丁寧に説明してもらう期間もあり、そのおかげで『自分には何ができるか、何がしたいか』をじっくりと咀嚼し、大きな安心感を持って生産技術開発職へ飛び込むことができました」
塑性加工技術グループへ配属後3年目まで触媒生産ラインの維持や、新部品の最適な生産条件構築、4年目には革新要素技術開発グループへ転属し1年間先行技術開発を経験するなど、激しい環境変化を経験します。その中で直面したベテラン社員との実力差という壁も、独自の工夫で乗り越えていきました。
「配属された当初、職場には年齢の近い先輩がおらず、10年から20年ほどキャリアの離れた優秀な先輩ばかりで、最初は自分のスキルとの差に焦りを感じていました。そこで、目標の置き方を『人』から『モノ』へと切り替えました。
新部品の立ち上げにおいて、製品の規格中央値を目標とした製造条件・管理方法を見出すことを100点のゴールとして設定する。そうやってモノと誠実に向き合い、現状の自分のスキルとのギャップを数字で冷静に埋めていくようにしてからは視界が一気に開け、仕事がぐっとおもしろくなっていきました」
涙が出るほどの感動。現場の「ありがとう」と街を走るクルマに宿る私たちの誇り
失敗を恐れず、モノ目線で愚直に課題と向き合い続けた保前。現場で汗を流した分だけ、忘れられない最高の瞬間を味わうことができたと言います。
「入社して最初に取り組んだ新部品の立ち上げの時、なかなか安定した生産条件を確立できず、良品を連続して作り続けることができない期間が続きました。毎日工場の製造現場へ通い詰め、作業者の方々と一緒に泥臭い試行錯誤を繰り返しました。ようやくラインが安定した時、現場のリーダーから『保前くん、本当にありがとう』と言っていただけました。あの時の言葉の重みは今でも忘れられず、自分の仕事が泥臭くも現場の人の心を動かしたのだと心から嬉しかったです。
さらに、現場の仲間たちと必死になって作り上げた触媒が、実際のクルマに搭載されて街を颯爽と走っている姿を初めて目撃した瞬間は、信じられないくらい胸が熱くなって涙が出そうになるほど感動しました。
触媒は車体の下側にある部品なので外からは見えません。それでも、確実に地球の空気を綺麗にしながら走っているのだと思うと、これこそ生産技術開発の最前線にいる人間にしか味わえないかけがえのないやりがいだと実感します」
大学時代は自動車用ではない触媒の研究をしており、「もう触媒なんてやりたくないと思って日産を受けました」と当時を振り返って笑う保前。しかし、日産の生産技術が持つ「圧倒的なスピード感」が情熱に火をつけました。
「日産の最大の強みは、先輩たちが工場内に築き上げてくれた、独自の『自社保有の生産設備』があることです。もし、この自社設備がなければ、新しい材料を試すたびに外部に依頼し、結果を待つだけで1年が過ぎてしまいます。
しかし日産には、横浜工場の中に粉や液を自由に加工して試作できる内製設備がある。だからこそ開発のサイクルが圧倒的に早く、世界初となる新技術の向上スピードも桁違いに早いです。
触媒の仕事は、他部署の人に技術の中身を理解してもらうのが難しいという側面もあります。ですが、だからこそ、誰も真似できないような最先端の技術をこの内製設備から世に送り出して、社内外の人々をあっと驚かせたい。注目を集め、自分たちの手で会社に貢献したいという想いが、今のモチベーションになっています」
小さな「やり切った経験」を武器に。エンドユーザーに一番近い場所で創る喜び
入社から5年。目の前の部品に夢中だった保前は、一歩ずつ、しかし確実に理想のプロフェッショナルへの道を歩み始めています。
「入社当初は雲の上の存在だったベテランの先輩方の背中が、ほんの少しだけ見えるようになってきました。私が尊敬する先輩はクルマ全体の構造にもの凄く詳しかったので、私も触媒という小さな部品だけを見るのではなく、エンジンから排気システム全体、そして車体へとどう繋がっているのかを俯瞰して考えるように意識しています。
これから新しく入ってくる後輩ができた時は、言葉ではなく『背中』で語れるロールモデルになりたいですね。『これくらいでいいや』と妥協する姿ではなく、『ここまで徹底的に突き詰めてやり切るんだ』という情熱を示したい。そのためにも、私自身がもっと技術を追求し、成長し続ける存在でありたいです」
日産の生産技術開発というエキサイティングな職場で輝くために必要な素養について、就職活動に励む学生たちへ向けて等身大のメッセージを送ります。
「日産の生産技術開発で活躍しているメンバーに共通しているのは、とにかく『知的好奇心が旺盛で、細かい変化に気づく感性を持っている』ことです。『なぜこうなるのだろう?』というマニュアルを超えた先の些細な違和感に気づく知的好奇心があれば、大学での専門が化学か物理かといった学科の壁は一切関係なく、誰でも大活躍できる環境が整っています。
学生の皆さんには、どんなに小さなことでもいいから『何かひとつを最後までやり切った』という経験をしてほしいです。勉強でも、部活でも、アルバイトや趣味でも、なんでも構いません。その成功体験がひとつあれば、会社に入って困難な壁にぶつかった時、必ず自分を支える絶対的な自信になるはずです」
最後に、保前は自らの仕事に対する誇りを語ります。
「私は、現在日産で働いている自分の姿がとても好きです。なぜなら、自分の仕事に100%の誇りを持っていますし、誰に仕事ぶりを見られたとしても、胸を張って『自信を持って日産のモノづくりを支えている』と言い切れるからです。
日産には、新しい挑戦に対して絶対に『そんなのできないよ』と否定せず、どうやったら実現できるかを全員で親身になって考えてくれる素晴らしい文化があります。そして、生産技術開発は図面を形にし、良品を世に送り出し、エンドユーザーであるお客さまの笑顔に最も近い場所で感動を味わえる、最高に贅沢な仕事です。
他とは違う、あなただけの情熱と知的好奇心を持って、この刺激的な日産のモノづくりの未来を、私たちと一緒に創り上げていきましょう」
※ 記載内容は2026年6月時点のものです
