【台湾洋上風力担当者・チーム対談】
数々の困難を乗り越え達成したファイナンスクローズ
大型案件の開発チームが語る魅力と想い

▲写真左から、成田、伊藤、黒石、萩原
2023年9月に最終投資決断・ファイナンスクローズに至った、総事業費9,600億円の台湾の海龍(ハイロン)洋上風力発電事業。現地の事業会社には実に20カ国籍以上の多様なメンバーが200名近く所属し、2026年の完工・商業運転開始に向け案件開発にあたっています。
今回は、本店プロジェクト本部で同案件を担当する、プロジェクト開発第一部第二営業室の4名の皆さんに、これまでの開発の苦労や案件の魅力、チームの雰囲気などを伺いました。
登壇者プロフィール
萩原 聡(はぎわら そう):2007年新卒入社。入社後CFO部門にてマーケットリスクマネジメントに携わる。その後中国語修業生(※)を経て、2012年よりプロジェクト本部。アジア発電事業のM&A、Post Merger Integration、Refinanceなどに従事。
黒石 明弘(くろいし あきひろ):2008年新卒入社。入社後は経理部にて決算統括を担当。その後スペイン語修業生(※)としてコロンビアへ赴任し、その後2013年よりプロジェクト本部。中南米での新規インフラ開発事業、チリでの海水淡水化事業に従事。
成田 諭一郎(なりた ゆいちろう):2013年新卒入社で、入社時よりプロジェクト本部。これまでアフリカ・CIS地域・中国の発電案件を担当、また中国・インドネシア駐在を経験。
伊藤 眞弓(いとう まゆみ):1991年新卒入社、以来プロジェクト本部。業務職海外派遣(※)制度を利用し1年4カ月のシンガポール駐在経験あり。
※ 三井物産の海外派遣プログラム。若手社員向けの海外派遣制度には、地域エキスパートを育成する「海外修業生」、専門性を高める「部門研修員」があります。また、中堅層向けにはビジネススクールに派遣する制度、業務職向けには「業務職海外研修員」、「業務職部門研修員」制度を用意しています。
総事業費9,600億円の巨大プロジェクト。一人ひとりが果たしてきた役割は
──本日はありがとうございます。まずは9月のファイナンスクローズ達成、おめでとうございます。関係者も多く現在は事業会社でも200名近くのメンバーで開発にあたっているとのことですが、その中で皆さんのハイロン案件への関わりや、それぞれの役割を教えていただけますでしょうか。
萩原:私は本日メンバーの中では一番古株で、ハイロン案件には2018年半ばより携わっています。事業会社設立直後の2019年5月より現地赴任し、事業会社の財務・会計部門を立ち上げました。Deputy CFOの立場でしたが、当時は事業会社も10人に満たない組織でしたので、EPC(設計・調達・建設)以外のすべてと言っても過言ではないくらい、関係省庁との交渉や、許認可対応、開発費の管理等、必要なことは何でもやってきました。2021年以降はプロジェクトファイナンスの組成が本格化したので、軸足をファイナンス組成に移し、この9月にファイナンスクローズを達成。私個人のミッションも一旦達成ということで、本店に帰任したばかりです。
黒石:私はもともとスペイン語修業生で、2017年から5年間、チリの銅鉱山向け海水淡水化事業の事業会社へ赴任していました。そちらの事業で完工の道筋が立ち、2022年5月よりチリから帰国、ハイロン案件を担当するようになりました。本事業は国際協力銀行から融資のみならずエクイティ拠出をいただいているのですが、その取りまとめや、当社が2,600億円もの投融資保証を行うための社内稟議対応を主に担当しました。
伊藤:私は2020年よりハイロン案件に携わっているのですが、初期開発のフェーズはとにかく開発費の管理が大変だった記憶があります。その後、台湾にアセットマネジメント会社を設立する際は、自分で手を挙げて6週間現地出張に行かせてもらいました。会社設立や会計・監査法人の選定、規定整備、現地スタッフへの業務指導などを行いました。
成田:私は2021年より本件を担当しています。主に、株主としての当社の目線から、電力販売契約や融資契約の交渉、融資銀行団との折衝などを行ってきました。萩原さんの後任として、2023年12月よりハイロン事業会社への赴任を予定しています。2026年の完工を見届けるまで、事業会社のCFO補佐を務める予定です。
黒石:われわれの室は全部で10名、もともとは他の案件も見ていましたが、2022年4月よりハイロン案件の専任室になりました。加えて、当社から現地事業会社への出向者も7名出しています。本店メンバーの拠点は東京ですが、コロナ後は毎月のペースで現地出張にも行っていました。台湾は近いので、月曜から金曜まで出張して、週末は日本で家族と過ごすこともできるのは、ありがたかったです。
コロナ、ウクライナ情勢、物価高……最悪の外部環境で達成したファイナンスクローズ
──これだけの大規模案件、かつ難易度の高い案件で、本当に忙しかったと思いますが、振り返ってみて、最も思い出に残っていることは何ですか?
成田:やっぱりファイナンスクローズですよね。僕は担当して3年になりますが、周りからもずっと「いつファイナンスクローズするんだ」と言われていましたので。外部環境的な逆風続きでしたがなんとか達成できました。
黒石:新型コロナウイルス感染症の大流行から始まり、台湾の地政学リスクの高まり、ウクライナ情勢の悪化。物価高や金利インフレに加え、先行する台湾洋上風力案件で甚大な建設遅延とコストオーバーラン(当初予算を超えた工事費の増加)が発生、融資銀行団の技術デューデリジェンスは想定以上に時間を要しました。
伊藤:これらの問題が起きるたびに関係者間での交渉が激化しました。正直、案件の先行きが見えない時期もありました。
萩原:おそらく外部環境としては最も良くないタイミングでしたが、開発を止めるわけにはいかないという難しさがありました。本事業ではプロジェクトファイナンスで5,400億円を調達する必要があり、多数の融資行の参画が必要ですが、これらの外部要因を背景に、洋上風力案件でもともと実績のある輸出信用機関や市中銀行が一部撤退するという事態に見舞われました。
成田:大変な状況でしたが、少しでも多くの資金を集めるべく、財務部と協力し、正に全社をあげて、邦銀や三井物産として関係の深い外資銀行への説明を行いました。また本事業では台湾ドルでの調達が必要であるため、競争力のある地場銀行の関与が重要になるのですが、その地場メガバンクの一行、しかもファイナンスアドバイザーとして他行をリードする立場にある銀行が本件からファイナンスクローズ間近で撤退という決断になってしまったんですよね。
萩原:はい、その銀行の判断はわれわれの努力だけではどうしても覆せませんでした。残る現地の他の銀行から少しでも多く資金を引き出せるよう、丁寧な説明と説得を続ける日々でした。最終的に、他の現地のトップ銀行2行は、三井物産との関係や、案件自体を高く評価し、一案件あたりの過去最大融資額を約束してくれました。
成田:9月のファイナンスクローズの直前は、事業会社・スポンサー・融資銀行団がチーム一丸となってクロージングのための前提条件充足に当たりました。大きなマイルストーンが目前に近づく高揚感の中、とても言葉では言い表せない特別な数日間となりました。
黒石:スポンサー間の出資比率は6:4(当社)で、パートナーがマジョリティではありますが、プロジェクトファイナンスに関しては当社がリードしてまとめあげた自負があります。民間事業ではありますが、日本政府や台湾政府の支援も得てなんとかここまで来ました。
それぞれ違うモチベーションの源泉。個々人の想いを大切にする三井物産のカルチャー
──心が折れそうな事態が次から次へと起こる中で、皆さんが頑張れたモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか?
黒石:まずは社会的意義の大きさでしょうか。洋上風力はクリーンかつ安定的な大型電源で、アジアでも今後台湾をはじめ、日本や韓国などで開発が見込まれる有望分野です。再生可能エネルギー比率を30%に引き上げることを目標にしているプロジェクト本部の戦略にも合致しています。再生可能エネルギーは小振りの案件が多い中、洋上風力は当社がこれまで蓄積した大型電源開発のノウハウが活かせる領域で、事業を通じて脱炭素社会への移行をめざすという意味で、社会的意義が非常に大きい案件だと思います。
伊藤:私は幼少時に台湾に住んでいて、台湾には特別な想いがあるんです。自分の力で、クリーンな電力供給という形で台湾や、そこに住む人々に貢献できるというのが、一番の心の支えになっています。
萩原:素晴らしいですね。三井物産はそういう個々人の想いを大切にして、担当案件を割り振ってくれる文化があると思います。あらためて懐の大きい会社だなと感じますね。
成田:僕は、迫力に欠けるのですが(笑)、「風車が回っているのを見たいなぁ」っていう気持ちでやっています。開発から完工までこのチームにいるつもりなので。後は、難易度の高い案件なので、この案件で踏ん張って経験値を積めば、他は怖くないのではという気概でやってきました。
黒石:当社の資金を多額に使わせてもらっているので、健全なプレッシャーもありましたし、成田さんが言う通り自分の成長機会の場と前向きに捉えることで、モチベーションをキープすることができたと思います。細かな失敗はあったと思いますが、大きなマイルストーン達成後の充実感はやっぱり気持ちいいですね。
明確なミッションに、フルコミットのメンバー。迷ったら“For the Project”
──皆さんがそれぞれ想いをもって仕事をされていることがよくわかりました。チームの雰囲気や、仕事をする上で大切にされていることについて、教えていただけますか?
黒石:チームの特徴として、ミッションが明確で、進むべき道が決まっているので、何をやったら良いのか悩むようなことはありませんでした。間違いなく全社でも重要案件の一つなので、当然プレッシャーは大きいですが、周囲のサポートが得られやすく、さまざまな部署の方に助けてもらい、ここまできました。
成田:チームのみんながフルコミットしていて、責任感が強く、仕事本位、案件本位な人が多い印象です。オンだけではなく、室で家族連れバーベキューをやったり、ファイナンスクローズ記念には社内のお世話になった方々にお声がけしてフットサル大会を開催するなど、オフでの交流も盛んですよね。
伊藤:そうですね。開発が長期にわたる中で大変な時期もありましたが、「赤ワイン」と「肉」でストレス発散したりもしましたね。ワインエキスパートの黒石さんが選ぶワインは格別です。
黒石:ワインもそうですが、皆さん、仕事だけでなく趣味も充実されている人が多いですよね。皆さんは、仕事をする上で大切にしていること、何かありますか?
萩原:事業を推進していると、大なり小なり判断を迷うことが多々ありました。そういうときに、“For the Project”(プロジェクトのためになっているか)を判断軸に、チームやスポンサーに対して、自分の意見を提案するよう心がけています。さまざまな意見がありスポンサーと事業会社の意見が食い違うこともありましたが、常に“For the Project”かどうかを自分の判断基準として持つことで、それが拠り所となり、納得感を持って進めることができました。
伊藤:“For the Project”は、チームで共有している価値観だと思います。私は、自分の中で「ここまでで良い」という限界を作らないことを信条にしています。難しそうに見えることも、「できるかも」と思ってものごとを見ることで、解決の糸口が見えたり、新しい世界が広がったりする経験をしてきました。意識して「難しさ」を「興味」に変える心がけです。
黒石:興味って大事ですよね。僕も仕事の中に楽しいことを見つけて、興味を持って自分の成長機会を作るようにしています。たとえ与えられた仕事であっても、「やったことないからおもしろそう」「答えがないからおもしろそう」といった具合に、楽しさを見つけられるかは自分次第。それから、先ほど話した事業を通じた社会貢献の話と通じますが、常に「家族に誇れる仕事でありたい」と思っています。
成田:皆さん本当に人それぞれですよね。私はマイルストーン達成したときのことを想像して、モチベーションにしています。やっているときはしんどいことの方が多いですけど、「これが上手くいったら、何か感じることがあるんだろうな」と想像して、日々頑張っています。これまではファイナンスクローズを目標にしていましたけど、次は3年後の完工ですね!
伊藤:成田さんはご家族を連れて赴任されるんですよね。娘さんは、成田さんがチームに来たころに生まれて、もうすぐ3歳ですね。幼少時代を台湾で過ごされることになりますね。
萩原:うちも子どもが7歳と2歳で、上の子は台北の日本人小学校に通っていましたし、下の子はなんと台湾生まれです!2人ともとても台湾の生活を楽しんでいました。
伊藤:台湾にゆかりのあるお子さんたちが、将来日本と台湾の架け橋となって、未来の案件を作ってくれるかもしれないですね。
質の高い原体験を。難易度の高い案件だからこそ得られる成長機会
──それでは最後に、プロジェクト本部やハイロンチームに関心を持ってくださっている方々に向けて、メッセージをお願いします。
成田:事業会社に多く人を出していて駐在機会も多いですし、本店に所属していても現場が近いので、頻繁に出張し現場感を持って仕事をできます。インフラ案件を単に本店で管理するだけではなくて、事業会社の経営や、手触り感を持って案件開発を行いたい人にはぴったりだと思います。
萩原:若手の時に、尊敬する先輩から、一流の商社パーソンになるために重要なことは「高質(こうしつ)の原体験を積むこと」で、そのためには積極的に「火中の栗を拾いにいけ」と教わり、入社以来大切にしています。ハイロン案件は、外から見て大変な案件と思われるかもしれません。それ自体は否定しませんが(笑)、事業会社であれ本店であれ、いろいろな形で貢献ができ、高い質の現場体験が積める機会に恵まれています。困難を承知でチャレンジしたいという向上心のある方に、ぜひ来てほしいです。成長機会をお約束します。
──皆さん、お忙しいところありがとうございました。事業を通じた脱炭素社会の実現に向け、大型プロジェクトを推進している皆さん。次の大きなマイルストーンである完工に向けて、頑張ってください!!
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
