MBSEによって、大規模化・複雑化する自動車開発の効率化に貢献
コネクティブエンジニアリング事業部内に設置されるMBSE DESIGN センタ。橋本はそのセンタ長を務めています。
「MBSE DESIGN センタの使命は、MBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)やMBD(モデルベース開発)といったデジタル技術を駆使し、機能安全やサイバーセキュリティの分野でのエンジニアリングを組み合わせることで、安全で豊かな社会づくりに貢献することです。主に自動車の開発に携わっており、近年はとくに自動運転システムの設計や開発に注力しています。
MBSEは、もともと米国の防衛やロケットといった航空宇宙分野など大規模で複雑なシステム開発を進めていく中で考案された方法論です。自動車開発のプロセスにこれを適用することで、効率化と品質の向上をめざしています。同時に、MBSE DESIGN センタは、MBSEの理念とエンジニアリングのノウハウを社内に広め、浸透させる役割も果たしています」
2024年2月現在、MBSE DESIGN センタは、3つのグループで構成されています。
「一つ目のグループは国内の大手自動車メーカーを主なお客様とし、二つ目のグループは自動車業界のサプライヤーに加え、バイクメーカーや建設機械メーカーなど自動車業界以外も担当しています。一方、MBSEやMBD、機能安全およびサイバーセキュリティを核とするコンサルティング業務を担うのが三つ目のグループです」
90名以上のメンバーが在籍するMBSE DESIGN センタのマネジメントを手がける橋本。センタの運営と、事業の発展をリードしてきました。
「3つのグループのグループリーダーや、同時進行する数十のプロジェクトのプロジェクトマネージャーとコミュニケーションを取りながら、部署全体のプロジェクト管理を行っています。さらに、MBSEや機能安全、サイバーセキュリティの分野において当社が提供するサービスメニューの拡充とお客様に提供する価値の向上にも努めてきました。現在は自動車分野が中心ですが、建設機械、航空宇宙、医療など、MBSEの理念を他分野にも広め、あらゆる社会課題の解決に貢献することをめざしています」
MBSEに感じた大きな可能性。黎明期から普及活動を推進
MBSE DESIGN センタでは、「走る・止まる・曲がる」といった自動車の基本機能を支える制御設計や開発に加え、自動運転を可能にするセンサー認識技術の開発にも力を入れてきました。
「自動運転技術では、周囲の環境を正確に認識しながら、自動車の運転を安全にコントロールすることが不可欠です。無線ネットワークやセンシング技術を用いた事故を防ぐ仕組みの構築、機能安全に関する世界標準規格への適合など、各自動車メーカーは多くの課題に直面しています。さらに、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)といった考えのもと、自動車を構成するソフトウェアを適宜アップデートすることで、自動車の購入後でも継続的に価値を提供する仕組みも生まれ、開発と運用が常にサイクルするようなこれまでにない新しい世界が到来しようとしています。
我々のエンジニアリング技術は、電子制御システムに必要な電子部品の実装などに適用されてきましたが、MBSEの導入によって、例えば要求仕様の見落としやセキュリティリスクの未考慮を防ぐことができます。開発過程での手戻りを減らし、実現したいシステムの最適化を早期に図れるため、開発コストを削減する上で、MBSEは非常に効果的です。また、設計の精度を自動車製造の前段階でコンピュータ上のシミュレーションを通じて確認できるMBDにも同様のメリットが期待できます」
以前、ソフトウェア開発の部署で自動車開発に携わっていた橋本。自動車の性能評価やテスト業務を担当する過程で上流工程の設計業務に興味を持ち、学びを深める中でMBSEに出会いました。MBSE DESIGN センタの立ち上げ当時のことを次のように振り返ります。
「自動車開発が直面する課題を解決する上で、MBSEの有用性を確信していました。そこで、同じ想いを持つ有志を集めて勉強会を立ち上げたんです。MBSEの本場であるアメリカや、日本で研究を行っている大学を何度も訪れ、理解を深めたことも。その上でお客様に提案したところ、『ぜひ導入したい』と依頼が次々と寄せられました。これを受け、2016〜2019年にかけて事業の立ち上げに至っています」
事業立ち上げ当時、MBSEに関する国内の情報量は乏しく、認知度も低いものでした。しかし、橋本らが精力的な活動を繰り返した甲斐もあって、現在ではMBSEが自動車業界の開発現場にとって必要な方法論であるとの認識が徐々に広まりつつあると言います。
「何度もお客様を訪問し、MBSEの必要性を説明した結果、提案を受け入れてくださるお客様が増えていきました。MBSEを導入することによって、設計や開発のプロセスが明確になり、以前は属人化していた業務が標準化されるなどの効果も生まれています」
業界のフロントランナーとして、MBSEのさらなる普及をめざす
長年にわたり第一線で自動車開発案件に携わってきた橋本。同業界の設計・開発の分野におけるユーティリティ性に日立産業制御ソリューションズの強みがあると指摘します。
「当社は、ソフトウェアとハードウェアの両方の設計・開発が可能であり、システムの上流設計も手がけることができます。このように多岐にわたる分野を支援できる点が我々の強みです。
さらに、クラウド技術からマイクロコントローラ、デバイス制御に至るまで、幅広いエンジニアリング分野での対応力も、お客様から高い評価を受けています」
また、現場に根ざしたものづくりを重視する、挑戦に寛容な同社の風土が、新しい開発の追い風になってきました。
「当社は幅広い領域の事業に取り組んでいるので、個々の志向やキャリアビジョンに応じて、仕事を選ぶことが可能です。自らが実現したいと考えることを追求しやすい環境だと感じています。
また、社内では互いに尊重し合う文化が根づいており、個人のアイデアや目標を周囲が支援する体制も整っています」
MBSEに早い段階から着眼し、事業をゼロから立ち上げて自動車業界の課題解決に貢献してきたMBSE DESIGN センタ。
「実は、MBSEに関する認定制度『INCOSE SEP』の国内認定合格者はわずか19名。そのうち4名がMBSE DESIGN センタのメンバーなんです。MBSEのプロ集団として、これからが我々にとって真のチャレンジ。業界のリーダーとして先頭に立つ絶好の機会だと考えています」
さらなる成長に向けて、橋本は次のように意欲を見せます。
「自動車が直面する交通渋滞の解消や事故の撲滅などの課題に加え、気候変動、自然災害、労働人口の減少といった幅広い社会課題に対応するシステムは、ますます大規模かつ複雑化しています。これらのシステムの開発は、MBSEやMBDといったデジタルエンジニアリング技術がなければ成し遂げられません」
MBSEを日本のものづくりが再生する力に
お客様の課題解決に向けて、橋本は社内外との連携にも重きを置いてきました。ワーキンググループやタスクフォースなど、組織を横断する社内活動に積極的に参加しています。
「事業部のメンバーが、それぞれのプロジェクトで得られた知見を共有する場を設けています。大規模で複雑なシステムを設計する中で直面している課題を各自が持ち寄り、皆で議論してアイデアを出し合ったり、理想の未来を描いて今後の方向性をディスカッションしたりしてきました。年齢や社歴、職位に関係なく、フラットな話し合いができています」
一方、業界の勉強会への参加や、国内外のジャーナルに論文発表など、社外活動にも精力的です。
「さまざまな社外の業界団体に参画し、MBSEやMBD、Safety & Securityなどの世界動向の情報や知見を入手し、社内に持ち帰って新しいソリューション開発につなげています。自分だけでなく、MBSE DESIGN センタのメンバーにも挑戦の機会を与え、各自の成長を後押しすることも心がけています」
そんな橋本がめざすのは、MBSEが当たり前の世界。これからも、地道に活動を続けていくつもりです。
「MBSEの普及は日本メーカーの競争力向上につながると思っています。MBSEの必要性を広く伝え、社会課題の解決に貢献していきたいです。
一方で、目覚ましい発展を遂げているAI技術をMBSEにどう適用できるかを検討するなど、MBSEにさらに磨きをかけることで、ますます高度化する課題の解決に対応していきたいと考えています」
日本をふたたび世界最強の技術大国にするために。MBSEの先駆者として、橋本率いるMBSE DESIGN センタはこれからも貢献領域を広げながら、大規模かつ複雑化するシステム開発を支援し続けます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです

