オフィス向け複合機・プリンターを提供する富士フイルムビジネスイノベーションのデバイステクノロジー(DT)事業が、ついに欧州に進出。
その担い手である松井さん、功刀さん、大池さんに、進出までの経緯や立ちはだかった壁、それを乗り越えるための原動力について伺いました。
<PROFILE>
FUJIFILM Europe GmbH 兼 FUJIFILM UK Ltd. Device Technology Division
松井 弘明さん
富士ゼロックス(当時)で、10年以上営業を担当。その後、社長・会長の秘書を1年経験。2021年、希望が叶い海外事業部に異動し、新市場進出に携わる。
富士フイルムビジネスイノベーション デバイステクノロジー事業本部 海外事業部 海外事業開発グループ
功刀 拓実さん
富士ゼロックス北海道(当時)で10年近く営業を担当した後、2年間の中国駐在を経験。その後、東京や北海道で再び営業を行い、2023年から海外事業部で商物流の構築などを担当。
富士フイルムビジネスイノベーション デバイステクノロジー事業本部 海外事業部 海外業務インフラグループ
大池 千歳さん
約10年間、地域統括会社のFUJIFILM Business Innovation Asia Pacific Pte. Ltd.やFUJIFILM Business Innovation Taiwan Co., Ltd.でマーケティングを担当。2023年から海外事業部でブランディングや代理店ポータルの運営を担当。
アジアや中東などを経て、ついに欧州へ進出の決め手とは?
──当社のDT事業が欧州に進出するまでの経緯を教えてください。
松井:富士ゼロックス時代は、日本を含め、アジアパシフィックの15の国・地域でビジネスを行っていました。2021年に富士フイルムビジネスイノベーションへと社名が変わってからは、インドやメキシコ、中東など、新たな市場への参入を進め、市場規模が大きい欧州においても参入に向けた準備をしてきました。
グラフィックコミュニケーション(GC)事業のプロダクションプリンターは、先行して2021年から欧州で販売を始めていましたが、今年4月、ついにDT事業もイギリスとイタリアへの進出を果たしました。現地の販売代理店を介して、複合機などのオフィス機器を販売しています。
──欧州での進出先としてイギリス、イタリアが選ばれた理由を教えてください。
松井:早くから欧州での進出先として候補に挙がっていたのがイギリスです。イギリスには、全土をカバーできる規模の大きな販売代理店が複数存在し、そういった代理店と契約すれば一気にビジネスを広げられると考え、優先順位を上げて参入準備を進めていました。
また、当社は競合と比較して高速機に強みを持っています。そのニーズがイギリスでは多かったことも進出理由として挙げられます。続くイタリアについては、低速機のニーズの方が多いものの、販売代理店を束ねる大型グループとのつながりが生まれたため、拡販のチャンスと捉え進出を決断しました。
──欧州進出における皆さんの役割は?
松井:私は2021年より欧州事業立ち上げに携わり、昨年からはFUJIFILM Europe GmbHとFUJIFILM UK Ltd.に兼務出向し、DT事業の推進を担っています。現地でDT事業を受け持っているのは私一人だけで、日本からのサポートを受けながら、販売代理店との価格交渉や販売代理店への製品情報のインプット、販売ワークショップの企画・開催、事業計画、業績管理など幅広い業務を担当しています。
大池:私はマーケティング、ブランディングを担当しています。ほかの地域で展開した施策を参考にしながら、欧州ではどのようなメッセージが受け入れられるのかを日本で検討し、マーケティング施策の立案や、広告ビジュアルの作成を行うほか、販売代理店向けの販売コラテラル(※)提供なども担っています。
※ パンフレットやリーフレットといった販促物など、ブランドの世界観をつくる制作物
功刀:日本を拠点に、商物流の構築、契約・予算・部品周りのサポートなどを行っています。また、ドイツ・デュッセルドルフで開催された世界最大級の国際印刷・メディア産業展「drupa2024」の富士フイルムブースにDT事業も出展し、私はブース運営などを担当しました。
欧州進出に立ちはだかるたくさんの壁
──欧州進出にあたって大変だったことは?
松井:4つの難しさ・壁に直面しました。1つめは言語の壁です。英語だけならまだしも、スペイン語、フランス語など、欧州は地域によって言語が異なるため、現地の販売代理店とのコミュニケーションも一筋縄にはいきません。
2つめは文化の壁です。欧州には異なる文化や商習慣を持ったさまざまな国が存在するので、各国のやり方にも適応しなければなりません。
そして3つめが、国や地域によって強い競合が異なることです。日本やアジアでは市場シェアが高くない競合が、特定の地域では高いシェアを占めていることもあり、そういった競合に対する攻略方法を検討しなければいけません。
さらに、代販という販売形態が4つめの壁です。当社のビジネスはこれまで直販が中心でしたが、2021年以降DT事業が進出した地域では全て代販でビジネスを行っています。確固たるノウハウがない中、販売代理店により多く売ってもらうための策を考えるのに苦労しています。
▲FUJIFILM Europe GmbH 兼 FUJIFILM UK Ltd. Device Technology Division 松井さん
大池:あとはブランドの認知度向上にも困難を感じています。「販売代理店からは認知されていてもエンドユーザーには届いていない」「イメージングソリューション事業は認知されていても複合機は認知されていない」「製品の良さが直販体制のある国・地域と比べて伝わりづらい」といったことが多いため、きちんとブランディングを進めていく必要があります。
言語と文化の壁に対する打開策を模索しながら、ブランディング施策を検討しているところです。
功刀:そうですね。今回私たちが出展した「drupa」では、オフィス向けの機器ではなく、主に産業機材が展示されていますが、こうした販売代理店へのアピールの機会を一つひとつモノにし、徐々に認知度を高めていければと思います。私が担当している国内からのサポートでいうと、イレギュラーがとても多い点に苦労しています。
例えば、商品の輸送航路において、地域情勢が悪化すれば別航路で輸送することになり、納期変更が必要になります。また、スペアパーツを届けるまでのリードタイムも、アジアパシフィック地域に送るより長い日数がかかるため、従来の常識が通用しないビジネスに挑戦しているんだと日々実感します。
──そうした困難に対するアプローチとして注力していることはありますか?
大池:私のチームの取り組みでいうと、ブランディング施策が挙げられるかと思います。「アジアにおけるA3カラー複合機のシェアNo.1で信頼できるグローバル企業」「お客様の課題に対してソリューションを提供できる企業」といった当社の価値を伝えるための入り口となるような、インパクトのあるキービジュアルを制作し、今年度は欧州向けに展開しています。
「Say hello to your new office workers.」という市場参入を連想するようなワードとともに、製品の多様な機能を、マルチタスクをこなすリアルのオフィスワーカーとして表現し、未来や創造性を感じられるデザインとしました。
▲昨年度活用したブランドキービジュアル(左)と、現地の意向を反映して今年度新たに制作したブランドキービジュアル(右)。ブランドをアピールするだけでなく、宣伝部の支援もあり、提供価値の訴求力を高めたビジュアルへとブラッシュアップ
“これまで通り”のことなんて何もない。でもだからこそ、面白い
──たくさんの壁を乗り越えようとしている真っ最中だと思いますが、その原動力となっているものはありますか?
大池:決まった流れがまだ出来上がっておらず、道なき道を進むのは不安ですし、社内の合意を取り付けるのも大変ですし、容易に物事は進みません。でもその分、これまでとは違った楽しさがあると私は感じています。他のメンバーも同じように困難を前向きに捉え、どうやったら前進できるかをポジティブに考えていると思います。
▲デバイステクノロジー事業本部 海外事業部 海外業務インフラグループ 大池さん
松井:そうですね。日本国内だと商物流や販売プロセスといったレールがすでに完成していますが、私たちはそれを自分たちの手でつくることができます。新たな地域への進出に携わらなければ味わえないやりがいだと思いますね。ゼロからビジネスをつくりあげていく上で、それは当たり前のことだと思いますが、とても高いモチベーションで取り組むことができています。
功刀:今回海外進出に初めて携わったことで、これまでの日本国内における積み重ねの大きさを改めて実感しました。偉大な先人の方々が構築してきた商流・物流、信頼、実績は、つい当たり前のもののように感じてしまいますが、それをゼロから築きあげるのはそう容易ではないと気付くことができました。
▲デバイステクノロジー事業本部 海外事業部 海外事業開発グループ 功刀さん
──最後に、今後の展望を教えてください。
松井:徐々に欧州市場での販売とお客様先への設置が増えてきており、まずはホッとしています。引き続き販売代理店と密に連携を図り、市場へ製品を流通させていくことで、認知度を高めていければと考えています。日本からブランディング支援してくださる大池さんと欧州のマーケティングチームと連携し、お客様、特にエンドユーザーのブランド認知度向上を図り、販売につなげていきます。
功刀:製品の魅力や価値をいかに販売代理店に伝えていくかが、第一の要になりますよね。そうして製品を市場に送り届けることができたら、あとは売上をいかに伸ばせるかがポイントになります。ただ、それには人手も必要です。新市場でのビジネス拡大に向けて、一人でも多くの方と一緒に取り組みたいと思っています。
▲「drupa」のDT事業ブースを担当した皆さん
大池:新しい道をつくるという、チャレンジングな仕事に取り組めるのが海外事業部の魅力です。松井さんや功刀さんもこのビジネスに携わりたいという希望が叶って今のキャリアを実現されているので、一緒にビジネスをつくっていきたいという方はぜひ仲間として参画いただけるのをお待ちしています。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです
