AI技術に特化して技術力を引き上げ継承していく。チーム内のナレッジ共有にも尽力
猪狩が所属するのは、技術管理統括部 先端技術支援部 AIインテグレーション室。AI技術を全社で活用できるようあらゆる面から支援している。
「先端技術支援部のミッションは、全社横断的に技術力を引き上げ継承していくこと。中でもAI技術に特化しているのがAIインテグレーション室で、AI関連の提案支援や開発支援などを行っています」
AIインテグレーション室のメンバー数は20名弱。提案・開発支援、社員教育、技術調査など、担当する業務ごとにチームを組成し活動している。
「開発・提案支援では、プロジェクトに最初から最後まで関わることもありますが、方針を決める段階で助言するだけのケースもあります。
社員教育では、エンジニアや営業など職種に関わらずAI技術のリテラシー向上を目的とする勉強会や、一般社団法人 日本ディープラーニング協会 (以後、JDLA)が提供するG検定・E資格の取得を目指した勉強会などを開催しています。その効果もあり、社内のG検定やE資格の資格保有者率はいまも国内の企業の中でトップクラスです そのほか、近い将来トレンドとなるであろう技術を調査し、全社にデリバリーする役割を担っています」
AIインテグレーション室の室長を務める猪狩。各チームをまとめるだけでなく、画像認識AIエキスパートとして自身がお客様に向けた提案・開発活動をリードすることもあると言う。
「たとえば 、大学病院と共同して画像診断AIの研究開発を行っています。最終的にソフトウェア開発につなげることも視野に入れていますが、研究の過程で新しい技術を試すなど、技術力を引き上げ継承していくためのアイデアを発見する機会にもなっています。
AI開発には、成果を予見し辛いという特徴があります 。例えば大学病院との画像診断AIの研究開発では、入手に手間のかかる医療データを扱っていますが、十分な精度のために必要なデータ量がどれほどなのかは、なかなか予見し辛いものです」
最近の事例として、AIを活用して教育デジタルコンテンツの利用環境を整備したデジタル庁の教育指導要領の案件や、株式会社豊田自動織機様のAI自動補正システムの構築を支援をしている。
「社外の取り組みへも積極的に参加しています。江東区主催のAI講座に登壇したり、日本工学院のIT教育プログラム開発委員会の委員を務めたりしながら、AI利活用の推進をミッションに活動しています」
入社以来、一貫してAIビジネスに携わってきた猪狩。最近はとくに同分野の需要の高まりを感じていると言う。
「ChatGPTの登場により、AIまわりの需要が高まってきているため、当社でも同サービスのカスタマイズに取り組み、お客様からの引き合いも増えてきました。DXの流れもあり、AIビジネスの中心は効率化。AIを活用することで業務を効率化したいと考えているお客様が多いと感じます」
最近とくに多いのが、内製化を試みたものの期待した成果が得られなかったために依頼が寄せられるケース。お客様のリテラシーも高まりつつあることから、AIインテグレーション室では知識の底上げに注力してきたと話す。
「AIは領域が広い上、トレンドの移り変わりが速いのが特徴です。すべてをひとりでまかなうことはできないため、チームとしての集合知を形成することを心がけてきました。技術や案件を共有する場を定期的に設けるなど、各々が得意分野を持ち積極的に情報を分かち合うよう努めています」
開発・提案支援とマネジメントの両輪で活躍。JDLAへの出向で得た手ごたえ
前職では、SIerの技術者としてシステム開発や運用、保守、インフラ構築などを手掛けていた猪狩。AIの仕事ができる環境を求め、富士ソフトに転職を決めたと言う。
「技術的に尖ったものを持ちたかったので 、AI関連の仕事がしたいと思っていました。しかし、AIといえば花形の技術領域。即戦力を求める企業が多い中、富士ソフトだけが未経験者にも門戸を開いてくれました」
入社後、猪狩が配属されたのは現在も所属する部署だった。
「技術をキャッチアップするところから始めました。その後、調査研究のため社内にAIサーバーを構築する業務に携わりました」
その後、猪狩はJDLAへ出向。自身にとって意義深い経験だったと振り返る。
「当時、当社はAIに力を入れていこうとしていた時期であり、JDLAが設立されたタイミングで賛助会員になりました。情報収集やネットワーキングが私に課されたミッションでした。
AIベンチャーのトップなど業界の第一人者と言われるような人と情報共有したり、情報の集め方を教えてもらったり、意思決定のスピードの速さなど多くを学ぶことができました。
江東区主催のAI講座での登壇や、日本工学院のIT教育プログラム開発委員会の委員の話も、団体で知り合った方からいただいたもの。出向したことで当社のプレゼンス向上に貢献できたと思っています。
私が帰任した後もJDLAには毎年人材を派遣し続けています」
15カ月にわたる出向期間を終えた猪狩。帰任後は、画像診断AIの研究開発プロジェクトのリーダーなどを務めるかたわら、JDLA産業活用促進委員会の委員としてディープラーニング活用事例の調査活動も担当してきた。猪狩の功績は社内でも高く評価され、入社からわずか4年で室長(課長)に就任した。
「2017年にリーダーポジションで入社し、2021年に室長へ就任しました。現在は部下のマネジメントをしながら、他部署向けの開発・提案支援なども増やしているところです」
AIが切り開く未来と富士ソフトの可能性
現在も取り組む医療画像診断AIの共同研究の中で、猪狩にとってとくに印象に残っている出来事があると言う。
「胸部レントゲン画像から骨粗しょう症の可能性を検知するという、通常ドクターが行わない診断方法をAIが実現できる可能性を示すことができました。 本来、骨粗しょう症を見つけるには、特殊な機械を使ってレントゲン画像を撮影する必要がありますが、この技術をうまく応用できれば、健康診断のときに撮影するような通常の胸部のレントゲン画像から骨粗しょう症を診断することができるようになります。
医療業界を含め、通常AIには業務の効率化が期待されることが多いのですが、効率化以外の面で医療の発展に大きく貢献しうる可能性を感じる出来事でした」
同時に、富士ソフトがAIビジネスを担うことの可能性も実感していると猪狩は話す。
「当社には、デザインを考える社員もいれば、システムインフラを構築できる社員もいます。どうすればドクターにとって使いやすいものになるかを含め、社会実装して運用・保守するところまで一貫して担えるのは当社だからこそです。
また、お客様から『AIをやりたい』と依頼があったとしても、お客様にとってAIが最適なソリューションでないと判断すれば、別の提案ができるのもシステム開発企業である当社ならでは。しかも、独立系ベンダーなので特定のサービスに縛られることもありません。ベストプラクティスを提案できるところに、富士ソフトの強みがあると思っています」
技術者として提案やサポートの幅が大きく広がるところに、AI技術に携わるやりがいを感じると話す猪狩。富士ソフトでは2023年8月、他社向けにChatGPTの導入サービスをリリースした。
「私のチームはこのリリースにあたり、社内版の環境を構想から実装まで1カ月間で構築し、準備を進めてきました。現在はさらなる機能拡張のための検証作業を実施しています」
AI技術の可能性に誰よりも敏感な猪狩だが、AIエキスパートとしてその態度はどこまでも冷静だ。
「当社のようなシステム開発企業の場合、ChatGPTのような新しい技術を使って何ができるのかなど、職種に関係なく全社員が把握することが大事だと考えています。
ただ、これまでAI界隈では何度か過度な期待を集めた時期があり、そのたびに幻滅期を迎えました。生成AIは重要な技術ですが、ブームに踊らされず現実的な活用方法を考えていくべきだと思います」
AI技術はとても有用な技術である反面、あえて使う必要がないところで使うのは正しくないと猪狩は語る。
「AIは手段であり目的ではありません。お客様の課題や目的に対して、AIが必要であればAIを組み込んだシステムを提案し、お客様にとってメリットがないとわかればAIを使わない提案をすることが重要です。生成AIに踊らされず、適材適所の手段を提案して、お客様にとって役に立つシステムづくりをめざしていきたいと思っています」
技術者として決してブレない軸をこれからも
AI関連の開発ボリュームを上げいくことが今後の目標だと話す猪狩。AIインテグレーション室の将来をこう展望する。
「これからも生成AIのように新しい技術がどんどん登場してくるので、最先端の技術をキャッチアップしながら、守備範囲をますます広げていきたいですね。また、今後はロボットや量子コンピューターなどとAIを組み合わせる、分野横断のニーズが高まっていくと予想されます。広く深く対応していく力をつけていく必要があります。今以上に社内外から頼られる組織にしていきたいです」
働く人々を支えるより良い仕組みづくりがしたい——技術者として決してブレることのない軸で、猪狩はこれからも富士ソフトだからできる価値提供を続ける。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

