イタリアンシェフ、34歳で初めての海外移住を決断
2018年、韮沢はフルタイム店長として、自らが起こしたイタリアンをメインとしたカフェレストランを切り盛りしていた。家には寝に帰る生活で、妻と3歳の長男とゆっくり過ごす暇はなかった。
韮沢 「ずっと飲食業でキャリアを積んできて、自分の店を出すという念願はかなったものの、自分の右腕となる人材がなかなか見つからず……。結局朝から晩まで自分が厨房に立つ日々でした。この生活を後50年も続けるのは無理だなと、漠然とした不安はありましたね」
そんな折、妻に前職の同僚から声がかかる。
韮沢 「またマレーシアで働かないか、と。妻にはもともとマレーシアでの勤務経験があり、そのときの同僚からでした。もっとも、子どももまだ小さかったため、彼女の中で再就職は選択肢にありませんでしたが、一方でマレーシアでの子育てに関しては興味を示しまして。
僕としても、このまま忙しく飲食店を切り盛りするか、思い切ってマレーシアに移住して働くかを考えてみて、結果として、妻の代わりに自分がその職に転職しよう、と決めました」
こうして決まったマレーシア移住。最初の職務は、DXCテクノロジー・マレーシア(以下DXC)から日本のクライアントをサポートする、サービスデスクのエージェントだった。DXCからのビザが降りるまでの5カ月間で、自分の店を畳み、渡航の準備をした。
韮沢 「ビザの手続きも、DXCが手配した代理店がサポートしてくれました。英語力には自信がなかったんですが、翻訳機能や代理店などの助けを借りてなんとかなりました。もともと海外は旅行でしか行ったことがなかったため、ほかにも住むところや食べ物など、不安がなかったと言えばうそになりますが、周りに助けられたところが大きかったです」
マレーシア生活の幕開け──刺激と発見の連続な日々
それまで飲食業を営んできた韮沢にとって、ITはまったくの異業種だった。
韮沢 「DXCからの綿密なトレーニングがあって、本当に助かりましたね。じつは、入社前はパソコンをウイルスまみれにした経験があるほど、ITリテラシーが低かったんです(笑)。
セキュリティやWindowsの操作方法など、業務に必須の知識はしっかりとトレーニングが用意されていました。それでもわからないところは、現地にいる日本語を話せる同僚に聞いて、理解するようにしていきました」
同時に、生活面でも日本とは大きく異なる点が多く、毎日が刺激と発見の連続だったと言う。
韮沢 「マレーシアは一年中温暖な気候ですが、そのせいか建物内はすごく冷房が効いているんです。オフィスにはジャケットを持って行くといいとか、映画館は冷蔵庫みたいに寒いとか、水道水は飲めなくて浄水器は必須とか、毎日新しいことを学んでいく感覚でした。スーパーにも、見たことのない野菜がたくさんあって、おもしろいです」
マレーシアは子育てにうってつけ!さまざまカルチャーに触れ、尊重し合える環境がある
韮沢の移住の大きな動機の1つだった「マレーシアでの子育て」に関しては、実際に住んでみて、とても満足していると言う。とくに、妊娠出産に係る医療サポート、小さな子どもに対する世間の寛容度、学校教育に関しては、日本よりもマレーシアの方が大きく優れていると思う、と話す。
韮沢 「妊娠出産のサポートに関しては、マレーシアで生まれた第二子・第三子のときに感じました。まず、マレーシアでは麻酔科医が常駐している病院が多いため、出産も無痛分娩がスタンダードです。これは衝撃でしたね。逆に、自然分娩の可能性を医者に話すと『Are you crazy!?(正気か!?)』と言われました(笑)。
また、妊娠しづらい方や、年齢的に配慮が必要な方への理解と応援も、非常に進んでいると思いました。生殖補助医療も、日本ほど特別視されることなく普及しており、人それぞれの考え方を尊重する風土が国全体にあるのが素敵だな、と思いますね。
費用も日本で行うよりも格安ですし、病院によって差異があるかもしれませんが、僕たちがお世話になった病院では、医療サポートもしっかりと充実していました。出産先として、とても良いと思います」
小さな子どもに対する世間の寛容度に関しては、とくに妻が、身をもって感じていると言う。
韮沢 「日本にいたころは気疲れが多かったそうです。東京に住んでいると、夜泣きをすると近所に迷惑なのではと思ったり、混雑した電車で、抱っこしている子どもの靴が人に当たらないかヒヤヒヤしたり、いろいろな場面で気を遣っていたようです。
マレーシアでは、『子どもだから仕方ない』が浸透していますし、みんなほほえましく見守ってくれているそうです。あと、どのコンドミニアムに住んでも、大体敷地内にプールとジム、公園があるので、子どもを遊ばせることができますね」
学校教育では、選択肢の多さ、インクルーシブな教育内容がとくに優れていると言う。
韮沢 「最後に学校教育ですが、まずは選択肢の多さですね。教育・養育施設は軒並み充実しています。東京では保育園に入園させるのも苦労しましたが、マレーシアでは複数の施設を訪ねて比較検討ができました」
韮沢は、肌の色や宗教に捉われず、多様性に面することができる環境は、子どものためになるのではないかと語る。
韮沢 「子どもたちには英語が喋れるようになってほしい、というのはもちろんですが、それ以上に多様性がある環境で育って、さまざまな文化的背景と当事者感覚がわかる大人になってほしいと思っています。
その意味で、マレーシアは適しています。肌の色も宗教も、食習慣も身体的特徴も違う子どもたちが、同じ施設で共同生活を送る中で、お互いのカルチャーに触れ、尊重し合える環境です。次男の保育園では、英語を公用語にしつつ、中国語とマレー語の基礎も習っていたり、イスラムのお祭りと中国のお祭り両方を祝ったりしているようです」
海外勤務のススメ。まずは現地に飛んで体験してみることから
初めての海外移住を経験した韮沢が思う、海外に出ることの利点とは。
韮沢 「海外から日本を見ることができることです。同じ国際ニュースでも、マレーシアの報道と、日本の報道、アメリカの報道で違う見方が展開されていて、物事を多面的に見られるようになったと思います。また、日本を世界の中の一国として見ることができるようになり、他の国への移住ハードルも格段に下がりましたね」
最後に、マレーシア移住の一推しポイントを聞いた。
韮沢 「プライベートが充実することでしょうか。都市部に住んでいても自然が近く、週末はよく海に出かけています。また、物価が安い中でも、ハイテクな物は諸外国からどんどん取り入れているため、暮らしやすさは年々上がっています。加えて、DXCではテレワークのポジションもあり、子育てもしやすいです。
食の好み、気候の心配は、現地で体験しないとわからないもの。人生を賭けた一大事とは捉えず、まずは来てみたらいいと思います!日常生活でも会社でも、英語ができない人にも寛容な文化がありますし、ぜひマレーシアで一緒に働きませんか?お待ちしています!」
