医療の安全と命を守る──正確性とスピードが求められるシステムの使命
DXCテクノロジー・ジャパン(以下、DXC)のライフサイエンス&ヘルステックデリバリー本部に所属する江口。15年以上にわたり自社製品である「ClinicalWorks/ADR」に一貫して携わり、キャリアを築いてきました。
「現在は担当する製薬企業のお客さまに向けたプロジェクトをリードしています。システムの導入をゴールとするのではなく、周辺システムの整備からお客さまのビジネス支援、日々の使い方のご相談まで、包括的にサポートするのが私の役割です」
製薬企業には、販売した医薬品の副作用などの安全性情報を継続して収集・評価し、規制当局へ報告する医薬品安全性監視(ファーマコビジランス:PV)という重要な義務があります。ClinicalWorks/ADRは、その一連の業務を支援するシステムです。
「医薬品はさまざまな試験を経て承認・製造販売されますが、使い方や特定の疾患を持つ患者の属性によって、予期せぬ反応や未知の副作用が生じることがあります。システムは、日々寄せられる何百件という膨大な副作用情報の中から、とくに患者の安全にとって重要なものをを判断して報告する仕組みです。一連のプロセスを効率化し、『情報の鮮度』と『精密さ』を確かなものにすることがこのシステムの狙いです」
膨大な処理を滞りなく完遂させ、医療の安全を守り抜くためには、システム単体の力だけでなく、それを支える人々の確固たる体制が欠かせません。
「人の命に関わる情報を扱う現場だからこそ、システムにはいかなる時も高い信頼性に基づく稼働が求められます。この重要な使命を果たすため、社外では安全性の情報収集や報告を担う製薬企業のPV部門や技術的な側面を支えるIT部門と密に連携しています。
さらに社内においても、製品開発チームや、私が所属するシステムをITサービスとしてデリバリーするチーム、そしてSaaS環境の運用チームと密にコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めています」
高度なシステムでありながら、プロジェクトの起点は常にお客さまの抱える課題へ耳を傾けることにあります。
30年の歴史と顧客の信頼を受け継ぐ。次世代システムへ向けた大胆な進化
日本で開発され、30年以上の歴史を持つClinicalWorks/ADRは、とくに日本の規制当局(独立行政法人医薬品医療機器総合機構:PMDA)への報告業務において、日本での設計によるシステムの使い勝手の良さなど、国内の製薬企業から非常に高い評価を得ています。長い歴史を持つシステムに携わる中で、江口は現在のフェーズを次のように捉えています。
「国内開発のソリューションとして、日本の業務に深く寄り添いながら、長年お客さまと共に育ててきたシステムだからこそ、この製品が築いてきた価値をしっかりと受け継いでいかなければならないという強い思いを持っています。現場の声を反映し続けてきた歴史そのものが、このシステムのアイデンティティなのです」
競合製品が数多く存在する国内市場において、ClinicalWorks/ADRが選ばれつづけてきた理由について、江口は蓄積された実績とお客さまからの信頼を挙げます。
「日々お客様の声を取り入れ、改善を積み重ねてきたからこその信頼があります。30年という長い歳月の中で蓄積されてきた実績と使い勝手の良さは、私たちの大きな強みです。現在はこの確固たるベースを活かしながら、システム基盤を次世代に向けてアップデートしていく重要なフェーズです」
顧客の信頼というベースの上に、どのように次世代の進化を描いていくのか、江口は次のように語ります。
「これまでの良さをしっかりと引き継ぎつつ、今のモダンな考え方や生成AIをはじめとする新しい技術を取り入れ、大胆に進化させていく必要があります。
製薬業界は正確性や判断プロセスの説明性が厳しく求められるため、過程がブラックボックス化されやすい生成AIの適用には慎重なアプローチが不可欠です。しかし、安全性情報の管理は多くの方が携わる労働集約型の業務でもあります。だからこそ、AIを適切に組み込むことができれば、お客様の業務環境を根本から大きく改善できるはずだと、私自身強い期待を持って模索を続けています」
過去の知見と技術を総動員。真の課題解決に伴走するプロフェッショナル
江口がとくに注力しているのは、機能のアップデートだけではない「使う人のケア」だと話します。お客様に寄り添う姿勢は、実際のプロジェクトでも遺憾なく発揮されています。
「最近担当したプロジェクトのひとつに、M&Aに伴うシステムの統合がありました。合流する企業ではこれまで別のシステムを利用されていたため、データ移行はもちろん、ビジネスそのものをClinicalWorks/ADRへ統合していくプロセス全体をご支援しました。
初めて私たちのシステムを利用されるお客様にとっては、他システムとの運用ルールの違いによる戸惑いや、業務上解決すべき課題が数多く発生します。だからこそ、システムの導入そのもの以上に、使う側のユーザーのケアに力を入れて進めたのです」
DXCには、豊富なナレッジが社内に共有され、若手でもすぐに深い知識にアクセスできる環境があります。江口もその知見を積極的に活用し、社内の専門チームも巻き込みながら、お客様の課題解決に取り組んでいると話します。
「お客様からは『他の企業ではこうした状況でどのように解決しましたか?』というご質問も多くいただきます。過去の類似ケースを引き出し、解決事例を複数ご紹介しながら、新しい業務手順書(SOP)の作成を一緒に進めました。
システムという枠を超えてサポートを続けた結果、スムーズに統合の目処が立ち、お客様から『本当に助かっています』という厚い信頼の言葉をいただくことができました。こういった言葉に大きなやりがいを感じています」
最新の技術をいかにしてお客様の真の課題解決につなげるか。確かな技術力と相手を思いやる想像力を胸に、江口は今日も最適な解決策を追求し続けています。
患者とユーザーの健やかな環境を守る。伴走型マインドで描くプロジェクトの未来
システムの進化を通してお客様の業務環境をより良いものへと変えていくためには、それを担う組織やメンバーの成長も欠かせないと江口は語ります。
「DXCには昔から、お客様と共に解決策を練る伴走型のマインドが根付いています。今後の組織には、この姿勢と最新トレンドのアップデートの両立が不可欠です。DXCには自ら学ぶための情報や事例が豊富に共有されているので、積極的にアクセスして知識を深めてほしい。お客さまに真の価値をもたらす提案を自ら考え抜き、主体的に行動できるプロフェッショナルへと成長してほしいと願っています」
常にお客さまの目線に立つ江口の視線は、単なるシステムの稼働状況だけでなく、実際に現場でシステムを操作し、日々の安全性情報管理業務を担う製薬企業の担当者たちに向けられています。
「安全性情報管理の業務は決められた期限内で確実に報告を完了させることが求められる、非常に責任ある重要な仕事です。担当されている方々は常に時間的プレッシャーに晒されており、思った通りに業務が進まなければ残業してでも期限に間に合わせなければならない、そんな厳しい環境にあります。
万が一システムが意図した通りに稼働しなければ、担当者の限られた業務時間を奪い、多大な負荷をかけてしまうことになります。つまり、このシステムはユーザーの働きやすさや生活にも直結する、非常に影響の大きなものなのです」
その責任の重さを踏まえた上で、江口はシステムを通じて実現したい未来について、最後にこう語ります。
「システムの先にいる患者の安全を守ることはもちろん大前提ですが、その手前で日々医薬品の安全を守っている人々の存在は、意外とイメージされにくい部分でもあります。システムの安定と高いパフォーマンスによって、この業務を担う担当者が安心してスムーズに業務を進められる環境をつくること──それが、結果的に患者の安全にもつながっていきます。
今後、新しい技術を取り入れる際にも、現場の健やかな生活を支える視点は決して忘れてはいけないと思っています」
30年の歴史を持つシステムを進化させる原動力は、最先端のIT技術だけではありません。関わるすべての人の生活や幸せを想像し、共に歩もうとする江口の温かな眼差しが、製薬業界の安全性向上という大きな社会貢献へとつながり、医療の未来を確かに支えています。
※ 記載内容は2026年5月時点のものです
