2万人の声に「中立」に向き合う
大和ライフネクストのマンション事業本部において、CS(カスタマーサティスファクション)に関する全社方針の策定・CS向上のための企画を行う「CS推進室」。ホスピタリティの最大化をテーマに掲げ、日々さまざまな取り組みを行っています。
──「CS推進室」の役割について教えてください。
田口:一言で言うと、ホスピタリティの向上を通じて事業を成長させることです。
私たちが担う“管理”という仕事は、顧客との長期にわたる契約の締結を通じて安定的に稼働する、いわゆるストックビジネスに分類されます。お客様が当社の管理サービスに満足し、契約を継続したいと思っていただける状態でなければ事業が成立しません。
「利益を追求するべきか、CSを追求するべきか」という議論がありますが、マンション管理はまさしくその両輪で考える必要があり、CS推進は事業を成長させる役割の一部を担っていると考えます。
菅谷:会社の成長のため、そしてお客様へのより良いサービス提供のために、お客様の声を事業・サービスに反映させることが私たちのミッションです。
そこでCS推進室ではCSの全社方針をつくり、目標を立て、CS向上に向けたさまざまな企画を行っています。
──「お客様アンケート」についてはいかがですか?
菅谷:活動のベースとなっているのが、大和ライフネクストが管理を受託するマンションの理事様を対象に実施している「お客様アンケート」です。実施は1年に1回、対象は約2万2千人で、そのうち1万6千通ほどが私たちのもとに返ってきます。
アンケートに目を通す時に私たちが最も大切にしているのが「中立」であることです。あたり前のことのように思えますが、社内の事情やサービス内容を熟知していると、どうしても「ここはこうだから仕方がない」と無意識のうちに社内の目線で物事を考えてしまうもの。偏りやすいことを自覚した上で「中立」を強く意識し、お客様のお気持ちや置かれた状況を想像しながら読むことを心がけています。
アンケートの結果は、期間・エリア・支店などさまざまな切り口から多角的に分析を行い、定性・定量で定めた目標の達成に向けた改善策の実施を各セクションに促しています。
田口:従業員一人ひとりの対応を促すのはもちろんですが、たとえば「長期修繕計画がわかりづらい」「資金計画に関するアドバイスがもっと欲しい」といったコメントをいただいた際には、長期修繕計画課やマンション会計部などの専門部門の力を借りて、お客様にわかりやすく伝えるための新たなツールをつくったり、担当者向けの講習を開いたり、組織の中で仕組みとして解決できることを探して実行するのも私たちの大切な仕事です。
「研修」ではなく「ワークショップ」で考える力を育む
──ホスピタリティ人材の育成について教えてください。
菅谷:全国の各支店でそれぞれ選出された「CS推進リーダー」で構成される「CS推進リーダー会」を年に6回ほど開催しています。これは一方通行的な「研修」ではありません。意見交換や情報共有などの双方向のやりとりを通じて、ホスピタリティとは何かを考えるためのワークショップを取り入れた場としています。
ワークショップでは、私たちが提示する議題に対して各グループでディスカッションをしてもらい、互いに発表し合うことでそれぞれが新たな気づきを得ることをめざします。テーマは、CS推進リーダーの皆さんから寄せられるお困り事や、お客様アンケートでいただくご指摘などをもとに設定しています。
たとえば、先日実施したリーダー会では「断り方」を取り上げました。「管理会社がやってくれるだろう」とお客様が思われていることが、じつは契約上対応することができないといったことがよくあります。どうしても断らなければいけない場面で、どういったホスピタリティが発揮できるかをみんなで議論し、それぞれの気づきを共有し合いました。
田口:ホスピタリティを持った対応というのは、お客様が100人いれば100通りあって、算数のように公式に当てはめれば答えが出てくるものではありません。テキスト通りの対応では充分ではなく、一人ひとりのお客様に合った対応を、その時、その場で考える必要があります。
だからこそ私たちは「ワークショップ」という形で、お客様の気持ちを汲み取り、喜んでいただけるサービスを提供する力を育むための場を、従業員に積極的に提供していきたいと考えています。
リーダー会でディスカッションした内容は、各CS推進リーダーが全国各地の支店に持ち帰り、内容を共有する場を設け、支店単位での取り組みにつなげています。そのほか、CS推進リーダー以外のメンバーも参加できるようなワークショップを全国各地で定期的に開催しています。
菅谷:もう1つ、私たちが力を入れているのが「インナーホスピタリティ」の向上です。
インターホスピタリティという言葉は“従業員同士が互いを思いやるホスピタリティ”のことを意味します。現場でお客様と直接やり取りする従業員だけでなく、私たちのようにバックオフィスで働く従業員を含め、社内で常にホスピタリティが発揮されている状態にしないとお客様に対してもホスピタリティを発揮できないという考え方です。
すべての従業員が互いを尊重し、ホスピタリティを持って接し合う環境をめざして、バックオフィス部門の従業員を対象としたワークショップなども開催しています。
ホスピタリティは「○○力」の掛け合わせ
──大和ライフネクストがめざす「ホスピタリティ」について、具体的に教えてください。
菅谷:お客様アンケートに寄せられたコメントを見ていくと、ホスピタリティには本当にいろんな形があるのだなと気づかされます。
多く寄せられる声の1つとして「管理員の挨拶に心がこもっている」「担当者の対応のスピードが速い」といったものがあります。気持ちの良い挨拶、丁寧な対応などは、日常的にお客様と顔を合わせる管理員や担当者にとって欠かせないホスピタリティですよね。実際にこのコメントをもらった管理員に話を聞くと、「今日一日がすてきな日になりますように」という想いを込めて挨拶をしているのだと教えてくれました。
一方で、「今住んでいるマンションにどういう課題があるのかを気づかせてくれた」「どうしたらいいかわからなかったことを適切にアドバイスしてくれた」「正しい方向に導いてくれる安心感がある」といった声も多く寄せられています。形は異なりますが、どちらも大切なホスピタリティなんです。
田口:「課題に気づかせてくれた」「アドバイスしてくれた」というコメントは、大和ライフネクストがめざすサービスの形の1つである「マンションごとの課題感を察知して潜在的なニーズを掘り起こし、課題解決をするための最適なご提案をする」ことをまさに体現している例であると思います。
たとえプロの知識を持っていたとしても、ただ一方的に提案するだけでは「感謝いただけるサービス」とは言えません。「傾聴力」「共感力」「想像力」「提案力」など、ここには挙げきれないさまざまな力を結集させて、目の前のお客様のためになることをすることこそが、ホスピタリティなのではないでしょうか。
従業員の皆さんには、心のこもった挨拶や丁寧な対応はもちろんですが、目の前の人が何に困っていて何をしてほしいのか、お客様のニーズを汲み取る力を鍛えてほしいと思います。そしてそのために、私たちがやっているワークショップを活用してもらいたいと思います」
デジタル化が進む世の中にこそ必要な“ホスピタリティ”
──「ホスピタリティ」の評価についてはいかがでしょうか?
菅谷:大和ライフネクストは、不動産情報サイト『SUUMO』を運営する株式会社リクルートが首都圏新築マンション購入者の顧客満足度などを集計した「SUUMO AWARD 2024」(首都圏版)分譲マンション管理会社の部・スタッフホスピタリティ部門(100戸以上の部)において、「最優秀賞」を前回に引き続き2回連続で受賞しています。
また、当社が独自に行っている「お客様アンケート」においても、毎年少しずつではありますが着実に結果が改善しています。従業員一人ひとりの日々の取り組みをお客様に評価いただいている結果だと受け止めています。
田口:社内でも「CS表彰」といって、担当者個人や支社単位での取り組みを表彰する制度を設けています。良い取り組みを社内で共有しみんなで称えることで、“ホスピタリティ向上をめざすことがあたり前”だという組織風土を醸成していくことも、私たちの大切な役目です。
──これからの「CS推進室」について、どうお考えでしょうか?
田口:世の中のあらゆるサービスでDX化が急激に進んでいますが、マンション管理も例外ではありません。実際に当社においても、お客様によりご満足いただくべく新たな管理手法の開発が活発に行われています。
一方で、「お客様目線」のサービスを開発・提供していくためには、ホスピタリティを持った人の力が必要であることは間違いありません。さらに、DX化の時代だからこそ「ホスピタリティ」を発揮するアナログの部分が、お客様への提供価値として今後さらに重要なものになっていくと私たちは考えています。
CS推進室が関わる領域を拡大し、発信力をより高めていくことで、ホスピタリティの最大化に引き続き取り組んでいきたいと思います。
菅谷:ホスピタリティは「サービス」のようにマニュアル化したり、均質化したりすることができません。
だからこそCS推進室では、これからも従業員に対して相手の気持ち・ニーズを「汲み取ること」「想像すること」が大切であると発信し続け、そのための「視点」や「気づき」をみんなで考える場を提供し続けていきたいと思います。
お客様ごとのニーズを汲み取り、最適なご提案を。マニュアル化できない「ホスピタリティ」に対するCS推進室の挑戦は続きます。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです
