インドネシアの“日常”に、建物管理を根づかせる
右も左も分からないままインドネシアに渡りましたが、実際に働いてみると、建物管理という仕事の本質は国が変わっても大きく変わらないことに気づきました。
マンションであれば、住まわれる方が安心・安全で快適に暮らせるように、日々のメンテナンスが重要になります。漏水や騒音といったトラブル対応もまた日本同様です。だからこそ、日本で培ってきた経験がそのまま活かせる場面が多いと感じています。
そう語るのは、海外事業部 技術サービス部の課長としてジャカルタに駐在し、当社子会社でありインドネシア現地法人の PT. DAIWA LIFE NEXT INDONESIAへ出向中の樋口です。
現在、私が関わっているのは、高級コンドミニアムや複合オフィスビル、物流施設です。用途の異なる現場を横断し、施設管理の品質を整える役割を担っています。
私の一日は、いつも現場から始まります。清掃や設備点検の状況を現場スタッフと確認しながら「ここの汚れ、気になりませんか?」といった気づきを共有します。私自身もまた新たな現場で学びながら、サービスレベルを一つひとつ揃えていくイメージです。
建物管理の“本質”は変わらない一方で、日本で“あたり前”とされている基準をそのまま持ち込んでも、うまく機能しない場面もあります。
インドネシアには、“ジャム・カレット(ゴム時間)”と呼ばれる独特の時間感覚や礼拝の文化があり、現地のリズムに合わせた工程管理が必要でした。他にも、高温多湿の気候による建物・設備の劣化傾向の違いに加え、スタッフの感覚が異なることもあります。そうした違いを丁寧に観察し、対話を重ねながら、”この地で活きる建物管理のオペレーション” を構築しようと試行錯誤を続けています。
オペレーション構築を協働で進めてきたオーナー様からは、「できないことは正直に伝えてくれて、私たちや入居者のことを考えて提案をしてくれる。そこに他社との違いを感じます。」という言葉をいただきました。そう感じていただけたのは、解決すべき課題を定期的に共有し、優先順位をつけて対応してきた、その地道な積み重ねの結果かもしれません。
私は「Quality with Empathy」(共感から生まれる品質)という言葉が好きで、技術や知識よりも、目の前の方の困りごとに寄り添うことがサービス品質につながると考えているので、オーナー様からの言葉はとてもうれしいですね。
目の前の方に寄り添い、課題に一つひとつ対峙していく樋口の姿勢 は、オーナー様だけなく、オフィススタッフや建物管理スタッフとの関係づくりにも貫かれています。
業務内容を一方的に伝えるのではなく、「この人の言うことなら聞いてみよう」と思ってもらえる関係づくりを大切にしています。
現在、PT. DAIWA LIFE NEXT INDONESIAでは、駐在員3名とオフィススタッフ9名の計12名が働いています。昨年はチームの結束を高め、感謝を伝える目的で、初のカンパニーギャザリング(企業が従業員やその家族を招いて親睦を深めるイベント) が開催されました。
インドネシアでは仕事においても ”家族のような絆” が重んじられます。日本でも同じだと思いますが、社員同士の信頼関係は、建物管理といった日々の仕事の質を支える大切な土台だと思っています。社員やご家族向けのこのようなイベントはとても良い取り組みだと思うので、今後も定期的に続けて、次こそはぜひ参加したいですね。
建物管理の原点は日本に。挑戦の舞台はインドネシアへ
樋口が大和ライフネクストに入社したきっかけは、学生時代に参加した座談会でした。
知人の紹介で、社員の方と座談会形式で話す機会があったんです。型通りの選考ではなく、カジュアルな対話で進むプロセスが新鮮で、“面白そうだな”という直感で入社を決めました。
入社後は、ビル管理の現場からキャリアをスタートし、その後約10年間、マンションの日常点検や修繕を担う技術系部門で経験を積みました。現場に通いながら、点検の勘所をつかみ、修繕計画と実際の劣化状況を照らし合わせながら、必要に応じて修繕時期の見直しを提案していました。 管理職となってからも、現場に向き合う姿勢は変わりません。現場には、そこでしか得られない気付きや学びが常にあるからです。
マンションやオフィスビル、複合施設における日常修繕のハンドリングを通じて培った経験や、工事部と連携し大規模修繕工事に間接的に関わってきた経験は、樋口にとって「建物管理」を深く理解する土台となりました。 環境が変わっても前向きに適応し、課題に真摯に向き合う姿勢が信頼され、海外事業拡大に伴う増員メンバーとして、ジャカルタに赴任することになりました。
私の赴任前からインドネシアでの取り組み自体は始まっていましたが、管理棟数の増加や新領域への展開を見据え、現地体制を強化する必要がありました。その体制づくりの一員として、ジャカルタに加わることになったのです。
海外赴任の辞令は突然でした。当時、パスポートすら持たず、インドネシア語も話せない状態。それでも、“現場で鍛えた力は役立つだろう”という想いがあり、不思議と大きな不安はありませんでした。
振り返れば、これまでのキャリアは「やってみるか」の連続でした。昔、上司から学んだ「確からしさを自分で探す」その姿勢で、目の前の仕事に愚直に向き合ってきた経験。その延長線上に、今回のインドネシア赴任があると思っています。
技能実習生の”覚悟”を未来につなぐ
樋口がインドネシアで担うミッションのもう一つの軸が、日本のホテルで客室清掃業務に従事するインドネシア技能実習生の採用です。
日本はアジアの中でも比較的高い給与水準である一方、近年は横ばい傾向にあります。それでも、インドネシアの方々にとって日本は”安心・安全な環境で働き生活できる国”として、高い就業ニーズがあります。私たちは、技能実習制度の目的と関連法令を踏まえ、現地のパートナー機関や日本側の受け入れ支援団体と連携しながら採用を進めます。
面接は、現地採用の日本人とインドネシア人のスタッフとインドネシア語で行います。選考段階では”自分の言葉で自分のことをどんな表情で語っているか”といった姿勢や想い、そして日本で働く覚悟を中心に確認しています。
驚かれるかもしれませんが、選考の場ではほとんどの候補者が涙を流します。家族の期待や将来を背負った大きな決断だからこそ、喜びや悔しさといった感情が込み上げてくるのです。 私はその覚悟を受け止め、全員と握手と言葉を交わし、一人ひとりを送り出しています。
技能実習期間を終えると、日本で働き続ける人もいれば、インドネシアへ帰国する人もいます。その中で私が課題に感じたのは、帰国後にまた一から仕事を探さなければならず、日本で培ったホテルオペレーションのスキルを生かし、インドネシアでも継続して就業できる仕組みがないことです。
そこで、帰国後も日本での経験をそのままキャリアにつなげられる“循環型のキャリア”を実現する仕組みをつくりたいと考えています。将来的には、この循環型キャリアの仕組みを本格的に運用し、ニーズに応じて“働く機会”を継続的に提供できるようにしていきたいと考えています。
価値づくりの対象は「建物」から「街」へ。海外で磨かれる実践知
インドネシアで暮らしてみて感じるのは、思っていた以上に生活しやすいということです。家族と一緒に過ごすための住まいや学校など、赴任時に必要な環境が整えられていたことは大きく、日常生活の基盤をつくるうえで助けられました。とはいえ、見知らぬ土地での暮らしなので、自主的に週2時間ほどインドネシア語を学んでおり、語学検定にも挑戦しているところです。
約1年半の海外駐在を通じて変わったことは、日本とインドネシアの情勢を相対的に見るようになったことです。日本では実感しにくかった経済のダイナミズムを、ここでは日々肌で感じます。最低賃金が毎年5%以上上がり 、人件費や人材流動性も大きく変化していく。その前提に立って、採用計画やコスト管理など、日々の運営判断を行わなければなりません。さらに、経済成長に伴って高まる建物の管理品質への期待を先読みし、戦略に落とし込む必要があります。
建物の品質向上は、やがて街そのものの価値につながっていく。そんな実感が少しずつ芽生えてきました。
ここインドネシアで、建物の管理品質への関心が高まり始めたのはごく最近ですが、建物が存在し続ける以上、管理の需要は今後確実に伸びていくはずです。そのときに、私たちDLNIが”信頼されるプレイヤー”として名前を挙げてもらえる存在でありたい。「DLNIの管理は良いらしい」その評価を現場から一つひとつ積み重ねていくことこそ、海外事業を持続的に成長させる原動力だと考えています。
こうした未来を見据えた取り組みを支えるのが、樋口自身の“日本×海外×多様な建物”にまたがる立体的なキャリアです。日本や海外のマンション、オフィスビルなどで培った経験は、インドネシアにおける建物管理の高度化を支える実践知となり、新たな価値創出へつながっています。
日本だから、海外だから、という固定観念にとらわれず、良いと思うことを愚直にやってきました。インドネシアでの私たちはまだスタートアップの段階かもしれませんが、前向きでひたむきな仲間が揃っています。まずは、ホスピタリティに根差したサービスを安定的に届け、私らしく地道に着実に、海外事業の次の可能性を広げていきたいと考えています。
海外で学び続ける樋口の姿勢は、建物と人に向き合い、新たな「あたり前」をつくりながら街に価値を届けるという、建物管理の本質そのものでした。
※記載内容は2026年1月時点のものです
