「人に向き合い、本気になれる」仕事との出会い
福島県双葉町で開業したリトリート型ホテル「FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA」の総支配人を務める練生川。その原点にあるのは、学生時代に打ち込んだサッカーでした。
「学生時代はずっとサッカーをやっていました。一時期はプロをめざしていたくらい、本気で取り組んでいました。
どうすればチームが勝てるのか、そのために自分は何をすべきか。いつも頭の中は、そればかりでしたね」
当初はスポーツに関わる仕事を考えていたといいます。しかし、就職活動で出会ったある企業の話が、その後の進路を大きく変えました。
「就活イベントでブライダル業界の方の話を聞く機会がありました。
『スタッフが一丸となってお客さまのために全力を尽くす』『お皿洗い一つにも情熱を込める』。そんな話を聞き、とてもワクワクしました。
チームで一つのものをつくり上げる感覚や、誰かのために本気で向き合う熱量が、サッカーと重なったんです」
その想いを胸に、新卒でブライダル会社へ入社。
タキシードコーディネーターとしての勤務を経て、レストラン部門や新規式場の立ち上げなど、約8年間にわたり最前線で経験を積みました。
「とくにレストランの現場が好きでした。お客さまが入店されてからお帰りになるまでの時間を、スタッフ全員でつくっていくんです。
目が合っただけで『次に何が必要か』が分かる瞬間もあって。一人ひとりが目の前のお客さまと本気で向き合っているからこそ生まれる一体感があり、それが本当におもしろかったですね」
レストランの現場に立つ一方で、新しい場所を一からつくり上げる経験も重ねてきました。
「26歳のときには、新しい結婚式場の立ち上げを任せてもらいました。備品を選び、現場を整え、オペレーションを構築し、テストランを重ねて開業へ。営業も含めて、本当に幅広く携わりました。
今、ホテルの立ち上げに関わっていても、そのときの経験が活きていると感じています」
その後、海外の有名レストランの日本進出プロジェクトに参加。
サブマネージャーとして店舗運営に関わり、チームとしてミシュランの星獲得も経験しました。
「とても刺激的な環境でした。VIPのお客さまも多く、超一流のサービスを知るお客さまに『ここは違うな』と思われてはいけない、そんな緊張感の中で仕事をしていました。
レストランは、短い時間の中でも人を感動させることができる場所だと思っています。特別な体験を期待して来店されるお客さまに、それ以上の価値を届ける。その難しさと達成感は、ほかではなかなか味わえないものだと思います」
“攻め”から“守り”へ。その中で見えた仕事の本質
レストランの現場で経験を積む一方で、練生川は自身の働き方や将来について考えるようになります。
「レストランがある程度軌道に乗ると、サービスだけでなく、売上管理やマネジメントなど裏側の業務も増えていきました。
もちろんやりがいはありましたが、ちょうど2人目の子どもが生まれた時期でもあり、このままだと自分だけが満足するキャリアになってしまうのではないかと考えるようになったんです」
転職活動を進める中で出会ったのが、大和ライフネクストでした。
「次の仕事を考えたときに、衣食住の“衣”と“食”は経験してきたので、“住”の領域に関わってみたいと思いました。
ただ、自分は営業や接客など、“攻める”仕事が得意だと思っていたので、建物管理のような“守る”仕事は向いていないのではないかという気持ちもありました。
そんな中で、『これまでと違う経験が成長につながるのではないか』というアドバイスを受け、不動産の中でも“管理会社”を紹介してもらったことが、入社のきっかけになりました」
入社後はマンション管理の現場を経験し、その後は工事部へ異動。修繕工事の提案などにも携わりました。
「最初はまったく違う仕事だと思っていたのですが、実際にやってみると、共通する部分が多かったですね。
マンションにお住まいのお客さまのご要望に応えたり、お困りごとを解決したり。そうした小さな積み重ねの中で信頼関係を築いていく感覚は、レストランでのサービスと変わりませんでした」
そうした経験を通じて、“守る仕事”への見方も変わっていきました。
「建物管理は“守る”仕事だと思っていましたが、実際には提案を通じて暮らしの価値を高めていく仕事だと気づきました。結果としては守っているのですが、取り組んでみると想像以上に“攻め”の要素が強い仕事だと感じました。
レストランも、建物管理も、結局は人と向き合う仕事なんだなと思いましたね」
双葉町での挑戦──新しいホテルを、一からつくる
そうした中で出会ったのが、「FUTATABI FUTABA FUKUSHIMA」立ち上げプロジェクトでした。
「社内公募の案内を見た瞬間、“やりたい”と思いました。やっぱりホテルやレストランの仕事が好きなんですよね。ブライダルやレストランで培ってきた経験を、もう一度活かせる機会になるかもしれないと感じました。
それに、新しいホテルをゼロからつくる機会は、そう何度もあるものではありません。純粋に挑戦してみたいという気持ちが大きかったですね」
もちろん、迷いがなかったわけではありません。
「家庭もありますし、責任もあります。
ただ、大和ライフネクストは、挑戦したいという気持ちを尊重してもらえる会社だと思っていました。何より、家族との時間も大切にしながら働ける環境だと感じていたので、一歩を踏み出すことができました」
そして、双葉町という場所でのホテルづくりにも、特別な意味を感じていました。
「震災や復興については報道を通じて見てきました。双葉町という場所で、自分にできることがあるなら挑戦してみたいと思ったんです。
ここで手を挙げなければ、きっと後悔する。そんな思いがありました。
ブライダルで培ってきた経験と、大和ライフネクストで学んできた経験。その両方を活かして、このホテルを自分たちの手で形にしたいという気持ちが強かったんです」
人と地域とともに──“また来たい”場所をつくる
総支配人として練生川が大切にしているのは、「人」です。
「一番気にしているのは、現地で働く一人ひとりの毎日ですね。楽しく働けているか、成長に対して前向きでいられるか。その点はとくに意識しています。
ホテルのコンセプトや、自分たちが大切にしたい価値観も、できるだけ言葉にしてメンバーに伝え続けています。リーダーになるメンバーには、根っこの部分を丁寧に共有するように心がけています。そこが揃っていれば、現場の空気感は自然とできあがっていきます」
そして、チーム作りにおいて何より重視しているのが「仲間」の存在です。
「ホテルは、一人ひとりがお客さまのために全力で動く仕事です。ただ、その思いが強くなりすぎると、キッチンや清掃、バックオフィスなど、裏で支えてくれている存在が見えづらくなることもあります。
だからこそ、“仲間がいるからこそ価値を届けられる”という感覚を大切にしています」
そうした考えの背景には、自身がこれまで多くの人に支えられてきたという実感があります。
「振り返ると、本当に人に恵まれてきたなと感じます。前職で出会った方々から学んだことはもちろん、この会社で出会った人たちにも支えられてきました。
今も、自分と同じように手を挙げて双葉に来てくれた仲間や、採用チームをはじめ、本当に多くの人が関わってくれています。だからこそ、このホテルが前に進んでいるんだと思います。
自分一人で成し遂げたという感覚はなくて。周りの人に支えられながら仕事ができていることが、本当にありがたいですね」
双葉町との関わり方についても、赴任当初と現在では感じ方が変わってきました。
「私は北海道出身で、福島にルーツがあるわけではありません。でも実際にこの場所で暮らしてみると、見え方は大きく変わりました。
今は自分も双葉町に住む一人として、この地域のことを自分ごととして考え、地域の皆さんと一緒に歩んでいきたいと思っています。
FUTATABI FUTABA FUKUSHIMAも、この地域に根付く存在になれたらうれしいですね」
その先に見据えるのは「また来たい」と思ってもらえる場所です。
「今も変わらず、一番好きなのはレストランです。食事はその土地を感じるきっかけになりますし、お客さまと最も多く接点を持てる場所だと考えています。
だからこそ、ここで過ごした時間を通じて、一人でも多くの方に『また来たい』と思ってもらえる場所にしたいです。ようやくお客さまをお迎えできることに、今はとてもワクワクしています」
人に向き合い続けてきた経験を糧に。
練生川はこれからも、仲間や地域とともに、人が集い、また訪れたくなる場所をめざして、双葉町で挑戦を続けていきます。
※記事の内容は2026年6月時点のものです。
