質よりも量を重視したコミュニケーションで、百貨店内の雰囲気を改善
入社以来、大丸札幌店のオープンから約20年間にわたって勤務していた札幌の地を離れ、2023年の春より大丸心斎橋店に異動となったS.K。大丸心斎橋店は他店と異なる形態を持ち、それまで勤めていた大丸札幌店とは売り上げの規模や責任の重さも異なると話します。
「以前いた大丸札幌店と同じく、大丸心斎橋店でも営業1部の部門長を務めています。大丸心斎橋店では特選ブランド、化粧品、時計、美術、呉服、宝飾、婦人靴、家具など、高価な商品を取り扱うゾーンを担当しているので、全体の売上に対する責任も大きくなっています」
売上への影響力が大きくなると同時に、Kが抱える従業員の数も多くなりました。営業1部の社員は約60人ですが、そこに各ブランドで働くアルバイトやパートの数を加えると、なんと1,000人以上の従業員を束ねていることに。その中でもKは、すべての従業員に楽しく、価値のある活動をしてほしいと考えています。
「楽しく働くことのできる環境をつくるためには、円滑なコミュニケーションが不可欠だと思っているんです。まず信頼関係を築くために、どうでもいい話も含めてコミュニケーションの量を増やそうということで、会議の中でも小難しい話は減らして、なるべく楽しいことを話そうと伝えています」
百貨店の従業員たちは、毎日同じ事務所に全員が集まるわけではありません。各売場に分散して勤務している中で、どのように円滑なコミュニケーションを図っているのでしょうか。
「従業員はチャットで前日の売上を報告するのですが、その報告にプラスして、“本日のテーマ”に沿った質問に答えてもらうんです。簡単な例を挙げると、『好きなおにぎりの具は何ですか?』といったものです。その質問に対して『ツナマヨ』『鮭』などの回答が寄せられる。これによって出勤を報告する役割も兼ねています(笑)。
仕事から外れた会話を重ね、お互いの人となりを知っていくことで、仕事の上でも以前より会話がスムーズに広がるようになったと聞きました」
時には従業員にお題を設定してもらうこともあります。意外なテーマが飛び出すこともあり、Kにとっては新鮮な発見の場になっていると話します。
「2026年に300周年を迎える大丸心斎橋店はとくにそうですが、大丸の長い歴史と共に歩んできた年齢層の高い従業員が多いんです。昔のやり方を踏襲して、真面目に一生懸命働くという雰囲気ももちろん大切なのですが、私はもっと柔らかく、楽しく働いてほしいとも思っていました」
そこでKが考えたのは、人がより楽しく働けるようになるきっかけをさまざまな場面でつくるということでした。
「チャットでのフラットなコミュニケーションもそうですが、固定概念にとらわれず、何かきっかけをつくる。『こういうことをやってみるのはどう?』と機会を提供する。そして、それに対して素直な気持ちで乗ってくれる空気を醸成する。こうした取り組みが、楽しく働くことにつながっていくのではないかと思っています」
人が自ら変われる機会をつくる。部長職を通して学んだ、生き生きと働くということ
約20年間に及ぶ大丸札幌店での勤務。そこでの部長職の経験が、「人に自ら変わってもらえるような機会やきっかけをつくる」というKの現在の考え方を生みました。
「直接の部下ではない社員や何百人といる売り場の販売員さんたちのことを考えると、価値観や立場、年齢が違うし、所属している組織が異なることもあるので、トップダウンで指示することには限界があると思いました。
一方で、時間はかかるかもしれませんが、それぞれと同じ目線に立ってボトムアップしていくことには可能性があると感じたんです」
そこでKは、「いきいき倶楽部」という新たな試みを始めます。これは、40歳未満の社員を集めてクリエイティブな企画を考えるという取り組みです。ここには、社員がやりがいを持って生き生きと働くために、楽しめる機会を提供したいという強い思いが反映されています。
当初のチームメンバーは5人。はじめは手探りだったものの、次第に従業員を楽しませる企画がいくつか走り出しました。
「活動の一環として、注目の芸人さんを百貨店内にあるイベントスペースにお呼びしました。そこで、数日にわたってYouTubeの配信を実施。その結果、芸人さんといきいき倶楽部の従業員たちがとても仲良くなって(笑)。終わった後は、まるで学園祭のようだったねとメンバーが達成感に満ちた顔をしていました。
それが私にとってもすごくうれしかったんです」
本来の仕事と直結しているわけではありませんが、好きな企画を実現させたことで、チームとしての一体感が生まれたと感じたK。いきいき倶楽部はメンバーを変えながらも活動を続けてきました。
「札幌店にいた頃、私も店長に『やりたいことはなんでもやっていい』と言われ、自由に働くことができたんです。その経験が有意義だったからこそ、いきいき倶楽部でも同じように好きなことをやってもらいたいと思いました。
仕事だからといって固くなりすぎず、柔軟に好きなことにも挑戦してほしい。それが働きやすい環境づくりにもつながっていくはずだと考えています」
働く女性にも、たくさんの人生の選択肢を持っておいてほしい
札幌店で「いいチーム」をつくることへの思いが芽生えたK。3年半部長を経験したタイミングで、心斎橋店への異動が決まりました。
「心斎橋店への異動には、『長い歴史を持った店舗に新しい風を吹かせてほしい』というメッセージが込められているのではないかと自分の中で思っていました」
Kがコミュニケーションを増やすための取り組みに注力したのも、こうした異動の背景にある社内の期待に応えるため。もう1つ、彼女が汲み取った任務は、女性活躍のロールモデルになることでした。
「従来の心斎橋店は男性色が非常に強いお店です。社員や現場で働く従業員には女性が多くいるのですが、これまで女性の営業部長は少なかったと聞いています。子どももいる私が部長として赴任することで、女性活躍のメッセージを明確に伝える意図があったのだと考えています」
実際に男性の多い現場に立ってみると、女性の自分が部長として配属された意味、そして果たすべき役割が見えてきたと言います。
「個別で面談をしていると、男性の上司には相談しづらいこともあるという話を聞きました。そういったことも含め、単に女性管理職の比率を上げるためではなく、本当の意味で“女性活躍”を実現するための取り組みに尽力したいと思っています」
男性の上司にはなかなか話しづらい内容を女性社員から相談されることも多いK。結婚、出産のタイミングとキャリアアップについて悩む女性も多く見てきました。
真剣に仕事と向き合うことは大切ですが、自らも子どもを持つ身として、人生を長い目で見た上で、後悔のないキャリアを選択してほしいとKは語ります。
「女性も男性も、人生やキャリアにおいてさまざまな道を選択できる時代になりました。どのようにワークライフバランスの調和を図るかは人それぞれですが、プライベートにも向き合い自身の価値観を大切にしてほしいです。
相談を受けている中で仕事に熱を注ぎ、人生の選択肢を広げる機会が減っているかもしれないと思ったんです。限られた人生だからこそ、『この選択肢しかなかったから』ではなく、『さまざまな選択肢がある中でこのキャリアを選んだ』と、誰もが自信を持って言えるような職場の環境づくりが求められていることを実感しましたね」
百貨店で働く魅力は、歴史と変化を同時に体感できること
自分に求められている役割を実感し、働く女性のために広く貢献することをめざすK。一方で、彼女は店舗としての目標を次のように見据えています。
「大丸心斎橋店は国際的にも注目度の高い場所にありますし、新しい取引形態のモデル店舗としても期待が込められています。百貨店内の店舗だけではなく、周辺の店舗とも関わりを持って、エリア一帯としての可能性をどんどん伸ばしていきたいです」
女性活躍推進をはじめとし、Kは会社がまさに生まれ変わろうとする様子を目の当たりにしています。最後に、大丸松坂屋百貨店で働く魅力をあらためて尋ねました。
「300年・400年以上の歴史で培われた文化を大切にしながらも、時代に合わせて新陳代謝する大丸松坂屋百貨店を五感でリアルに体感しながら働けることがおもしろいです。
会社としても社員に成長の機会を積極的に与えようと変化しているタイミングですから、ぜひこの機会にさまざまなことに挑戦してほしいですね」
女性管理職として、女性のキャリアを歩みやすい道のりにつくり変えようと奮闘するK。新しく生まれ変わろうとする大丸松坂屋百貨店に追い風を吹かせながら、これからも果敢に挑戦していくKに期待が高まります。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです

