回復傾向のインバウンドを担当。各国の文化を理解し、最適なPRを展開
2006年に入社し、松坂屋名古屋店での勤務を経て2010年から東京にある本社販売促進部に異動したA.K。インバウンド担当として社内で最も長い経歴を持ち、2023年8月現在は戦略策定やチームマネジメントに従事しています。
「私のミッションは、海外から日本に来られるインバウンドのお客様に、大丸松坂屋百貨店でよりたくさんお買い物をしていただくことです。現在は本社のインバウンドチームに所属して、海外に向けた販売促進・PRを行っています。
店頭でのお客様対応の環境を整えることも私の業務範囲です。海外の決済システムを使えるようにしたり、免税サービスを不自由なく利用いただけるようにしたり。言葉の壁がある中でも快適な接客をめざし、サービスレベル向上に向けた接客ツールの整備なども行っています」
コロナ禍で一度は落ち着いたインバウンド需要。2022年10月に入国規制が緩和されてからは、近隣国を中心に日本への海外旅行も回復していますが、インバウンド市場ゆえの難しさがあると言います。
「たとえば、中国では2023年の8月10日にようやく海外への団体旅行が解禁されました。これからますます来日の動きが活発化するものと思われます。
このようにインバウンド需要を大きく左右するのが各国の方針・政策です。海外の方が旅行先に日本を選ぶかどうかは、一企業の取り組みというよりも、国の働きかけによるところが大きいので、国内外の動向を注視する必要があると考えています」
販売促進・PRの企画は、四半期ごとに組み立てられます。どの国からの旅行客が多いのか、その国ではどんな祝日があり、大型連休はいつごろなのか。大規模な人の移動を予測し、その1~3カ月前にはプロモーションを届けられるよう計画していきます。
「いま取り組んでいるのが、中国向けの決済キャンペーンです。また、韓国向けに、ブロガーを起用したPRも展開しています。国ごとに文化背景が異なるため、とくにプラットフォームや手段、価値観が違うところでは、なるべくその国にアジャストできるよう、パートナー企業とコミュニケーションを取りながら試行錯誤しています。
たとえば、ファッションやメイクのトレンドひとつ取っても、国によって好まれる色合いはさまざま。こうした微妙な感覚を、中国出身のメンバーを含むチーム内でのコミュニケーションから拾い上げるよう努めています」
現在、チームに所属するのは6名。大阪駐在のメンバーも束ねるマネジャーとして、Kには大切にしていることがあります。
「インバウンドは担当業務が非常に幅広いため、まずはメンバーが各業務をひとりで完結できる状況をつくっていかないと、なかなか業務効率が上がりません。『いま誰が何をやっているのか、どこまで進んでいるのか』をきちんとグループ内で共有し、活発に意見交換できるような環境づくりを心がけています」
気がつけば、かなっていた夢。百貨店で出会ったものづくりの仕事
学生時代、百貨店で働きたいという強い思いがあったわけではなかったと打ち明けるK。とある人からかけられた言葉が、この業界に進んだきっかけでした。
「当時はものづくりがしたくて、大学を卒業したら専門学校に入り直そうと考えていました。でも、何をつくりたいのかがなかなか絞れていなくて。そんな時、アルバイト先の店長から『だったら百貨店に就職してみたら』と言われたんです。
その店長は百貨店で働いた経験がありました。『百貨店では百貨のものを扱っている。その中から自分の目で見て決めても遅くないんじゃないか』という話を聞かされて腹落ちし、百貨店を志すようになりました」
入社後、Kが配属されたのは名古屋店の紳士アンダーウェア、ソックス売場。そのおよそ1年後、当時の販売促進本部宣伝課に異動したことが転機になりました。
「店舗の折り込みチラシやはがきの作成といった広告業務に携わるようになりました。それまで、ものづくりと言えばかたちのあるものと思い込んでいましたが、広告もまた広い意味でのものづくり。自分がやりたいのは『誰かに何かを届けること』であって、必ずしも有形とは限らないことに気づきました。
その後、企画業務も経験しましたが、ものづくりをしている実感がそこでもありました。結果的に、学生時代の憧れが現実のものになったと思っています」
2014年10月に「免税品目を拡大させる」という国の方針が発表されたことを受け、2015年には本社組織の中に初めてインバウンドの担当部門が発足。会社としてもインバウンドに力を入れようとしていたタイミングでKに白羽の矢が立ち、インバウンド担当としてのキャリアをスタートさせます。
「それまで販売促進部でWebサイトの運営、PR広報から広告業務、販売企画まで、販売促進にまつわることを広く浅く経験させてもらってきました。インバウンド担当を拝命したことで、これまで学んできたことを少しずつ活かしていく場を与えてもらったと思っています」
革新的取り組みで先陣を切る。「中国バーコード決済」導入の舞台裏
2015年からインバウンド担当として活躍してきたK。とくに印象に残っているというのが、自身が旗振り役となって「中国バーコード決済」の企画を推し進めたときのことです。
「2017年ごろから中国で浸透しているバーコード決済を全店・全館に導入しようというものでした。いまでこそ日本でも普及していますが、当時としては先進的な取り組み。上司の提案からプロジェクトが立ち上がり、全店舗への導入を私が担当しました」
プロジェクトを推進するに当たり、Kが最も意識したのが現場目線でした。
「本来の仕様では2段階の決済が必要なため、販売員にとって大きな負担となっていました。これをPOSレジで読み取りができるような仕様に変更しています。
ツールが目の前にあったとしても、店頭に立つ方が『手間がかかって大変』と思えば、お客様におすすめするのを控えてしまうもの。販売員が煩わしいと感じない、わかりやすいシンプルな仕組みにするよう努めました。
また、啓蒙活動にも力を入れました。『何かあったらすぐ問い合わせしてください』と呼びかけて回ったことを覚えています」
こうした地道な活動が功を奏し、2019年には取扱高が数百億円を記録。社外からはこんな反響も。
「インバウンドに携わるさまざまな代理店の方からのセールスが大幅に増えました。『大丸松坂屋百貨店はこんな新しいことをやっている』と、BtoBでのブランディングに寄与できたと思っています。
また、他社がやろうとしてなかなか実現していなかった領域に着手したという意味で、優位性を得ることができたとも感じています」
これまで10年近くにわたってインバウンド向け販売促進・PRの取り組みに関わってきたK。いまの仕事のやりがいについて、次のように語ります。
「国内と比べ、物事の理屈がわかりやすいのがインバウンドの特徴です。たとえば、ある商品が突然売れ始めたとします。国内だとその背景がわかりづらいことがありますが、海外の場合、『中国の芸能人が使ったから』という具合に、原因と結果がはっきりしていることが少なくありません。
ただそのぶん、施策がうまくいかなければその結果もわかりやすい。そこがこの仕事の醍醐味だと思います」
グローバル規模でコミュニケーションをデザイン。インバウンドだからこそのおもしろさ
今後もインバウンド戦略に取り組んでいきたいと言うK。これから実現したいことを語る言葉に力がこもります。
「すべての百貨店の中で、インバウンドのお客様に最も利用していただける企業にしていきたいですね。『日本に旅行するなら、とりあえず大丸・松坂屋には行っておこう』というイメージづくりができればと思っています」
一方、本社勤務が長くなるということは、それだけ現場から離れる期間が長くなるということ。数字を通して現場の情報をキャッチするのが一般的ですが、現場の声を直接聞く機会を設けることにもKは意欲的です。
「とくに弊社で最大の免税売り上げを誇る大丸心斎橋店とは、ミーティングの場を毎週設けて、『あれはわかりづらかった』『これはもっとこうしたらどうだろう』と叱咤激励を受けています。
また、チームのうち2名のメンバーが大阪に駐在しているので、彼ら、彼女らが現場で得た情報をチーム内で積極的に共有してもらっています」
現場の声を拾い上げながら、これまで得た豊富な知見を活かして施策を進めてきたK。企画業務、そしてインバウンドに関わる魅力についてこう話します。
「企画を実現するためには、たくさんの人の手を借りる必要があります。つまり企画とは、コミュニケーションをデザインしていくような仕事。企画の仕事は具体的なアウトプットが見えづらく、努力に対するリターンもなかなか感じられませんが、さまざまな人とのコミュニケーションの中でかたちにしていけるところにおもしろさがあると思っています。
さらにインバウンドともなれば、より幅広い知識が求められることになりますが、まさにそこに自分の、組織の成長の余地があるのではないでしょうか」
やりたいことが見つからない学生に対して、「少しでも気になったら、思い切ってその分野に飛び込んでみるのもひとつの手」とメッセージを送るK。大丸松坂屋百貨店のあるべき未来に向け、新しい仲間と手を携えながら、ここからまた新たな一歩を踏み出します。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

