AR技術と手軽なiPadで品質確認作業を効率化
アビストは、これまで培ってきた設計開発の技術力と最新のデジタル技術を組み合わせ、顧客の潜在ニーズに応える「デジタルソリューション企業」をめざしています。
製造業や建築業において、設計通りの製品ができているかを確認することは非常に大切なプロセスです。しかし現状はこの確認のためにさまざまな機材を使い、製品を測定する必要があり、また部品が変形した際はベテラン技術員の経験を頼りに原因を特定し、対策を講じるという手法が取られています。
これにより非常に多くの労力やコストがかかるという課題がありました。
このような課題を解決するために、アビストはAR技術を活用した表示プログラム「DiffAR」を開発し、特許を出願しました。こうして、製造業における製品の設計通りの品質確認作業を効率化し、作業工程の削減に貢献します。
プロジェクトを進めている、アビストのイノベーションセンターに所属するメンバーである杉山 公昭と福永 一貴が語ります。
杉山:プロジェクトが始まったのは2021年の8月ごろですが、私は立ち上がって4カ月くらい経ったころに参加することになりました。当時、ARの開発については初めてで、詳しい知識も持っていなかったんです。けれど他のメンバーがプロジェクトに携わっているのを見て、楽しそうだなと感じていました。私は新しい技術やプロジェクトに興味を持つタイプなので、この大規模なプロジェクトに参加することがおもしろそうだと思いました。
福永:私も、以前担当していたプロジェクトが終わったタイミングで、今回のプロジェクトに参加することになりました。AR領域は私にとっても初めての経験で、新しいことを学べる機会として楽しみに感じました。
一方で、会社として重要視されているプロジェクトでもあり、入社1年目の私にとっては少しプレッシャーも感じていました。リーダーやAR領域のプロジェクト経験を持つ社員のサポートもありながら、システムの中核部分は杉山さんが、周辺部分は私が担当し、チーム全体で協力し合いながらプロジェクトを進めていきました。
ARが未経験の領域で進めてきたプロジェクト。とくに注力したのは、「iPad」を使って高精度な差分検知を可能にすることでした。
杉山:「DiffAR」はARの技術を活用して、iPadで実物製品と3D-CAD(3次元データの製図を作成するソフト) モデルとの差異を表示するシステムです。iPadを実際の製品に向ければ、設計したモデルとズレが生じている部分や変更した部分がリアルタイムで色分け表示され、確認できます。今までは毎回膨大な時間と手間をかけていた作業が、iPadひとつで簡単に行えるようになります。
既存のお客様から、3Dスキャナーを使用してはいるものの、スキャン結果と実物の差異を確認するまでに非常に時間と手間がかかるというお声をいただきました。大規模な測定器や高価な3Dスキャナーを使用することで精度を向上させることはできるかもしれません。しかし私たちはリアルタイムで結果を確認でき、誰でも簡単にどこでも高精度な差分検知を実行できることにとくにこだわりました。
プログラム開発の中で感じたやりがいと喜び
今回のプロジェクトでは、タイトなスケジュールの中で高い精度を求められましたが、そのような状況でも前向きに課題に取り組んでいった杉山と福永。何度もお客様のもとに足を運び、試行錯誤を繰り返していきながら進めてきたと語ります。
杉山:一番大変だったことは、位置合わせの精度を上げることでした。たとえば、3D-CADで投影しているモデルが右側に10cmずれてしまうと、そこの数字も10cmずれてしまう。そうなると、プログラムとしてまったく使い物にはなりません。モデルが、実物とピッタリ位置が合うように調整し、さらにそこから読み取られた数字も正確なものにすることが求められます。
最初は、数cm単位のズレがあったものが、今では㎜単位にまで精度が上がってきました。この精度の高さも「DiffAR」のひとつの強みです。しかしこの修正には1年以上の時間がかかりました。現在も精度をさらに上げるために開発を続けていますが、今でも苦戦しています。それでも、修正を重ねていくうちに徐々に精度が上がりプログラムが良くなっていく様子を見ると、やりがいを感じました。
プログラムの精度が上がっていくと同時に、お客様からの反応にも変化を感じるようになったことも、やりがいにつながったと語ります。
福永:未経験でのARの開発は、最初は勉強しながらだったので進めていくことが大変でした。しかし、新しい機能を自分で作り上げる過程は楽しく、お客様が喜んでくれると嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
先日、実際に製品を利用してくださるお客様にご紹介させていただいた際、さまざまな意見やフィードバックをいただき、この製品が本当に求められていることを実感しましたね。お客様のニーズに応えるために、今後も改良と努力を続けていきたいと思います。
失敗も学びのチャンス──技術者としての視野を広げ、プロジェクトを大きくしていく
今回、重要なプロジェクトを任された2人。プロジェクトをやり遂げることは責任も伴いますが、同時に学んだことも多かったと語ります。
福永:今回、AR領域の開発を担当し、お客様からの期待の大きさを実感しました。AR技術は、ビジネスにおいてまだまだ未開拓の可能性が多く潜んでいることを感じています。私は営業担当ではありませんが、技術者としても開発担当としても、マーケティングの視野をもっと広げていきたいと思っています。お客様からのさまざまな反応を通じて、学んで生かしていきたいです。
杉山:開発中はお客様からの期待に応えられなかったり、思った通りには動かなかったりと反省する部分も多くありました。しかし、そういった経験を単なる失敗として終わらせるのではなく、学びの機会と捉えてポジティブに受け止めることで良い方向に進めることができると感じました。失敗から何を学び、どのように改善できるかを考えるマインドは、今後のプロジェクトでも生かしていきます。
「DiffAR」は特許出願を達成しましたが、杉山は、この経験と技術を生かしプロジェクトをさらに発展させていきたいと語ります。
杉山:プロジェクトをより大きくしていくには、チーム構成をどのように調整するかも考えていく必要があります。現在は小規模なチームで進めており、ソースコード全体の把握や困っていることを相談しやすい、共有しやすいというメリットがありました。
人数を増やすと、コードの管理やプログラムのフロー設計にかかる時間と労力が増えてきます。大規模な開発を短期間で行うためには人数を増やす必要はありますが、最初は小規模に始め、スピード感をもって市場で受け入れられるものを開発することが重要です。今はまだどこに可能性があるのか模索している段階ですが、将来的にはプロジェクトを大きく成長させていけたらと思っています。
アビストのAR技術で業界の課題解決と発展に貢献したい
今回開発したARの差分検知プログラムは、今後は3D-CADを使用する、さまざまな業界の課題解決につながる製品として開発していきたいと杉山は語ります。
杉山:建設業界のお客様から、橋に取り付けられている部品が正しい位置に付いているかを検査するために使いたいという声をいただいています。検査対象物との距離が2m以内であれば検知が可能なので、使える場面を検討し、開発提案をしていきたいと思っています。まずは、自動車業界で使っていただき、将来的には電車や橋などの建築関係のお客様にも導入してもらえるよう動いています。
基礎技術はできあがっていますが、まだめざすアプリの50%くらいまでしか作れていません。今あるプログラムを汎用的なものにするか、カスタマイズした設計にするのかは、お客様の要望を聞きながら進めていく予定です。
将来的にはアビストのAR技術で、業界全体の発展に貢献していきたいと杉山と福永は語ります。
杉山:現在、アビストはこの差分検知のアプリに注力していますが、AR技術力は業界的にも高いと感じています。国内の産業向けにAR技術を活用したシステムを開発している会社は少ないですし、技術としてもまだ成熟していません。この「DiffAR」もアビストにしかない技術です。将来、「産業向けのARといったらアビストだよね」と言われるくらい、今後はもっとAR領域を広げていきたいと考えています。
福永:今回のプロジェクトを活かしながら、今後も積極的にAR領域に関わっていきたいと思っています。産業向けのAR製品として業界全体に影響を与えるようなものを開発したいと考えています。3D-CADのように、AR製品を使うことが当たり前になるような未来を実現できたら素晴らしいと思っています。
一つひとつの壁を乗り越えながら、お客様のニーズに応えるために開発を進めてきた杉山と福永。アビストのAR技術を今後も発展させるために、2人の挑戦は続きます。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです
