京都の会社でのインターンが日本で暮らすきっかけに
ドイツで生まれ育ち、パッサウ大学で情報数学を学んだフランツ。大学院時代、2000年3月に京都の会社でアルバイトをしたことが日本で暮らすきっかけになりました。
「大学時代はずっと勉学に励んでいました。大学院時代にもっといろんな世界を見てみたいと思い、働きながら旅行ができるところはないか探しました。ちょうど、ITインターネットバブル時代だったこともあってIT系の求人は山ほどあり、大学に入ってきた求人情報の中で目にとまったのが日本の京都の自動車販売会社でした。
日本のことはよく知りませんでしたが、大学にはアジアからの留学生がいて、その人はユニークで魅力的な人でした。それに、アメリカで仕事をするのは私にとって普通過ぎておもしろみに欠けるとも感じていました。そして、私自身大学で日本語を勉強していたこともあり、行くことを決めたんです。
日本では、平日に会社で自動車のインターネット販売サイトを作成する仕事をし、週末は観光地を訪れるという日々。その時に今の妻と出会い、一緒に日本の各地を旅行しました。仕事も日本の生活も順風満帆で楽しかったのですが、修士論文を仕上げるためにその年の10月にドイツに戻りました。
ドイツに戻った後は博士課程に進み、学生たちの教育の手伝いをしながら研究を進めました。遠距離恋愛も順調で、2002年に結婚。バイエルン州パッサウで一緒に暮らし始め、子どもにも恵まれました。しかし、知り合いのいないドイツで暮らし子育てをすることが、だんだんと妻にとって辛くなってしまい、家族揃って日本で暮らすことに決めたんです。
私は日本で仕事を探し、2009年に国立情報学研究所で研究員として働き始めることに。2012年からは千葉大学に移り、学生の指導もしながら研究を続けました。大学の仕事は楽しかったんですが、任期満了に伴って新たに仕事を探しました。その時、大学で紹介されたのがアビストだったんです。会社としてIT事業の新規立ち上げを計画している時で、自分の今までの経験が活かせるのではないかと思い、入社しました」
自ら営業して勝ち取った経験が自信につながる
2016年にアビストに入社したフランツ。入社後は製作途中であった受付ロボット「abitel」の開発を担当しました。その後、2019年に新規に立ち上げるAIソリューション事業部へ異動となります。
「AIソリューションは会社として初めて挑戦した事業だったので、開発を行いながら事業化について検討を進めていました。私は顧客となる可能性のある企業の話を聞き、必要なことは何か、ソリューションとして提案できることはないか、実際に聞いてみることが必要だと考え、行動を起こしてみることにしました。
顧客としてまず頭に浮かんだのが、スタートアップの勉強会で知り合った企業でした。話の中で倉庫のシステムがもっと効率化できるのではないかと疑問に思っていることを知り、提案営業をしてみることにしたんです。
当初はまだ相手のことをよく知らず、また、この分野に関する知識も乏しかったため、勉強をしつつ相手の状況を想像して概要の説明資料を作り上げ、提案へ行きました。報告を行ううちに、状況をより詳細に教えてくれるようになり、具体的で実現可能性の高い提案ができるようになりました。
そうして、初の契約を獲得できました。何度もお客さまのもとへ通って現状と課題をヒアリングした熱意と、技術や事例を調べて工夫して作った提案内容が評価されたのだと思います。提案したシステムは無事に作り上げ、売上を計上することができました。自分の力で顧客を見つけて提案し、契約を獲得して製品を作る。首尾一貫して携わり、売上に貢献した経験は今の自信につながっています」
顧客の声を聴くことを大切に
2022年、アビストはAIに関わらず広い分野の研究開発が必要だとの考えからAIソリューション事業部をデジタル推進部門へと改編。また、基礎研究をより進めるためにイノベーションセンターを設立し、フランツは現場の責任者である課長職へ就任しました。
「現在、イノベーションセンターでは約20人の社員が働いています。ほぼ全員中途で入社し、優秀で個性的なメンバーが揃っています。そして、【今までにない新しいサービス・ものを生み出す】というイノベーションに興味を持っています。 課長職として大切にしていることは、まず顧客第一であること。顧客のニーズを聞いて、信頼される製品・サービスを提供するということです。
このため、顧客とのミーティングを大切にしており、月に1~2回は定期的に行うよう調整しています。直接会って話すことで、この人のために頑張っていくんだと思うこと、下手な商品を作ってがっかりさせたくないと思うことが仕事に対する原動力になると考えています。
上司の役割は、かつては部下に仕事の指示を出すことでした。しかし、技術革新が速く、顧客のニーズも日々変化する中では上司が適切に判断することが難しくなっています。私は、自分の役割を神様である顧客と開発者であるチームメンバーをつなぐ『天使』だと考えています。適切な情報を流し、プロジェクトがスムーズに進むように心がけています」
加えて、顧客の声だけではなく、働く社員の声も大切にしていると続けます。
「現在、イノベーションセンターは特定の場所にオフィスを持たず、在宅で勤務をしています。昔は社内に机があり、その後も便利な場所にワーキングスペースを借りていた時期もあったのですが、利便性の観点から在宅勤務としました。物理的な場所がない代わりに、バーチャル空間にワークスペースを持っており、その中の会議室で会議をしたり、仕事部屋で時に雑談をしたりしながら仕事を進めています。
私は前職時代、朝から晩まで出社して仕事をすることが好きだったのですが、メンバーの希望や新型コロナウイルス感染症の拡大が考えをあらためるきっかけになりました。ただ、顔を合わせないと孤独に陥りやすいため、メンバーには2人のペアを作って、相談しながら仕事を進められる環境を作っています。
そして、定期的に4~6人でチームを作り、現状の報告やうまくいった事例の共有、悩んでいることについて相談する時間を確保しています。私は日本語がまだ未熟なこともあり、メンバーに厳しく言ってしまうこともありますが、できるだけ聞くことを重視してメンバーの状況や気持ちを理解するように努めています」
モノ作りをもっと楽しく魅力的に変えていきたい
最後に、フランツは今後に向けてインパクトのある製品を世に出したいと語ります。
「2022年に発表した会社のめざすべき企業像として、当社は『デジタルソリューション企業』を宣言しました。小さな新規事業として始めた事業ですが、光を浴びて期待されていることをうれしく感じています。
お客様も、今までの取引から大手メーカーが多数あるので、世の中にインパクトを与える大きな仕事ができる可能性があります。そのためには1人ではできないことをチームとしてやり遂げられるように、足りない所を補い合うチームを作っていきたいと思います。また、一人ひとりの技術力を上げるために、教育にも力を入れていきます。
モノ作りをもっと楽に楽しく魅力的に、専門的な知識がなくてもできるように変えていきたい。また、多くのデータがある中で管理、分析、予測をより簡単にしていきたい。そして、それを社内だけでなく、社外の方にも使ってもらえるようにしていきたいと考えています。
インパクトのある製品を世に出すとともに、ずっと一緒に働きたい、他の人を誘って一緒に働きたいと思うように、やりがいがあり、おもしろい仕事ができる組織にしていくことが目標です」
フランツの挑戦は続きます。世の中を変えるその日まで──。
※ 記載内容は2023年6月時点のものです
